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(待って待って待って……え、イヤな予感がする……いや本当に……――エドガーがイルメラを庇って階段から落ちて、ケガしたエドガーはトーナメント戦を欠場……? ――この未来だった場合……――ここが、あの二人がギクシャクしちゃう決定的なターニングポイントだったりしない……⁇ ――いや、ゲームだとあんまり詳しく書かれてなかったから断言は出来ないけど……――出来ないけど、サンドラを庇って怪我したからトーナメント戦に出られなくてエドガーのどん底学園生活がスタート。 そんなエドガーの心を癒し支える主人公――ってのがエドガールートなんだけど……――この後またサンドラを助けるてケガする未来とかやって来ますかねぇ……? ただなぁ……――私主人公としてエドガールートやったけど……それでもちょっとなストーリーだったんだよねぇ……――ケガが原因で大切なトーナメント戦に出れなかったエドガー、そのことを気に病み自分を責めるサンドラ、エドガーも最初はそんな彼女を気づかっていたが、そのケガが治ってからも成績が思うように上がらず、次第にサンドラの存在が煩わしくなっていってしまう……――そもそもエドガーの口から出るサンドラの話も「悪いやつじゃない……」「あいつは悪くねぇのに……」みたいな話ばっかりだし、サンドラのほうもサンドラなりにエドガーを支えようとする描写がちょこちょこあって――なんか恋愛ゲームやってるのに浮気相手みたいなポジションだったんだよねぇ……まぁ、私がもっともドン引きしたのは、ゲームのクライマックス、婚約破棄を突きつけられて発狂したサンドラに向かって「あなたの想いは恋心でも罪悪感でも無いわっ! 許されたいって自己愛よっ‼︎」とか言い放って――よくそんな酷いセリフをかけられるもんだと……――いや、その選択肢を選んだのは私なのですが……――だってそれが一番エドガーの好感度が上がるって先人たちがSNSでいったんだもん!)


「やっぱりそうでしたのね……――けれど、先生も問題ないとおっしゃっていましたし……大事(おおごと)にならなくて良かったわ」


 ホッとしたように胸を撫で下ろしながら言ったビアンカに、リアーヌは同意することが出来なかった。


(……いや本当に大事(おおごと)なんですよねー……ゲームシナリオ的にはとんでもない大事件なんですぅ……――え、帰り道にエドガーがサンドラ庇って再びケガとかある? なかったら詰みよ。 あの二人がこの事件をきっかけにすれ違わないことが決定しました! ……いや、個人的にはあの二人にとっても良いことだと思ってるけど――……主人公がエドガールート進もうとしたらどうしよう……? いや、そもそもエドガーがくすぶってサボりとかしてなかったら主人公と出会わない説……? ……――え、私このゲーム箱推しと言っても過言じゃないぐらいに愛してるのに、シナリオめちゃくちゃにしまくりなんだけど……――初手がゼクスと婚約だし……フィリップのとこもちょっとやらかしちゃってるし。 ――いや、そもそもどいつもこいつも揃いも揃って「真実の愛に気がついてしまったんだ!」とか言って堂々と浮気してるわけだから、こんな些細な変化でへこたれずに、それでも見事に結ばれて見せろって話なわけで……――なんか、この人生始まってからどんどん主人公に寄り添えなくなってるんだけど……――やっぱり立場が変わると見方も変わっちゃうよねぇー……)


「――大丈夫だよ。 ちゃんと口止めしておくから……」


 黙り込んでしまったリアーヌをどう思ったのか、ゼクスが安心させるように笑顔を向ける。


「ぇ……? あー……はい……⁇」


(――あ、ギフトの話ですか? 回復バレちゃいましたよねー、的な⁇)


「――私どもにお任せいただければ、と……」


 二人の会話に、オリバーが恭しく頭を下げながら口を挟む。


「あー……ザーム様の“ご友人”候補、でしたね?」

「はい」

「――分かりました。 お任せいたします」


 ゼクスはオリバーにそう返した後に、すぐさまリアーヌに向き直って、優しい声で続けた。


「――でも彼が直接リアーヌのところに来ちゃったら俺が対応するからね? いつでも言いに来て?」

「――お願いします」


(それは純粋にありがたいです! ……ただ、私はそのことを不安に思ってたわけではなく、ただ単に考え事してボーっとしてただけなんですけどね!)


「――俺的には彼だって必死だと思うんですけど……オリバーさんの見立てでは?」


 ゼクスはオリバーに向かってたずねる。


「――今回のことで専属がいない恐怖をイヤというほど味わったでしょうからね……――格安で治療を請け負ってくれる、回復持ちと治癒持ちを紹介するつもりではあります……――……生徒ではありませんが」


 オリバーさんの言葉に、リアーヌたちは揃って「あー……」と気の毒そうな声を上げる。

 今回のケースで考えてみても、学園内にいてすぐに駆けつけられる者と、そうではない者であったならば、確実に前者を選ぶであろうという考えに、すぐに至ったからだった。


「――贅沢を言っている場合ではないでしょう。 入学して今まで専属がいなかったんです……――だったら学校外ででも、腕の確かな格安の癒し手との繋がりを選ぶかと……」

「……一石二鳥をねらうかも?」


 オリバーの言葉にリアーヌは、少し考えてから首を傾げながら言った。


(普通に考えたら、学校外の人も紹介してもらって、その上で専属も欲しがるもんなんじゃないの?)


「――そこは“私の紹介”ですので……」


 オリバーは言外に「代わりを紹介してやったのに、お嬢様に専属を――と迫るようであれば、黙っていませんとも……」と、圧を滲ませながらニヤリと笑って見せた。


「――納得」


 ゼクスは思わずそう言いながら頷き、その隣でリアーヌもゆっくりと頷いていた。


「――騎士科の試験は厳しい、というのはこういう事情からでしたのね……」


 しみじみと呟かれたビアンカの言葉に、皆の視線が集中する。


「ああ……確かビアンカ嬢のお兄様は――?」


 ゼクスはそこまで言って、視線で続きを確認する。


「ええ、騎士科の卒業生でした。 なにかの折に兄から「試験内容でいういうならば、教養科よりも騎士科のほうがずっと厳しいものだ」と言われたことがありまして……その時は信じられませんでしたけど……――試験は年に一回でその結果が全て、となりますと……その言い分もあながち間違いではないのだな、と……」


 ビアンカの言葉に同意するようにうなずにながらゼクスも口を開いた。

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