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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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「甘やかすことは、決してリアーヌのためにはならないと思いますが……?」


 ニコリと笑顔を貼り付けながらも、ビアンカは咎めるような視線をゼクスに向けながら言った。

 その言葉にゼクスはヒョイっと肩をすくめると、宥めるように両手を上げながら口を開く。


「いやいや、今回の場合はリアーヌの言葉がきっかけで結果的にいい方向に向かうと思いますよ?」

「――結果だけが全てではないでしょう? リアーヌがケンカを売ったのはパラディール家ですよ⁇」


 たしなめるようなビアンカの言葉に、ゼクスはリアーヌに向き直ると、真剣な顔つきで言いきかせる。


「――そこは本気で気をつけようね? きっと二度目はご家族にも迷惑がかかるから……」

「ごめんなさい……」


 リアーヌはショボン……と眉も肩も落としながら力無く項垂れた。

 ビアンカはそんなリアーヌの様子にフンッと小さく鼻を鳴らすと、ゼクスに視線を移し口を開く。


「ラッフィナート様のお見立てをお聞きしたいですわ?」

「ではあちらへ……」


 ゼクスは人気の少ない廊下の先にあるベンチをさしながら軽い礼の姿勢をとって見せた。



「――それで? ご説明願おうかしら⁇ なぜいい方向に進むと考えられたのかしら⁇」


 ベンチに腰掛けた途端、ビアンカはゼクスに向かってたずねる。

 その言動ににゼクスは苦笑を漏らしたが、なにを言うこともすることもなく、質問に対する答えを説明しはじめた。


「ビアンカ嬢とて、最近のレジアンナ嬢のウワサをお聞きになっていないわけでは無いでしょう?」

「……あくまでもウワサですけれどね?」


 探るようなゼクスの視線を受け、ビアンカは少し眉をひそめながら答え、そっと視線をゼクスから外した。

 大貴族のご令嬢ということで、とても答えづらそうにしている。


「――でしたらリアーヌの先程の発言が、全くの的外れだと言い切れないことはご理解いただけるはず……」


 ゼクスの言葉にリアーヌはキュッと唇を引き結んで、膝の上に置いていた手に力を込めた。


(的外れどころか、公式ファンブックに裏付けされた、紛れもない事実なんですけどねっ! ……だからこその大問題なわけですが……!)


 やってしまった……と、大きく肩を落としたリアーヌだったが、ビアンカたちはそれに気が付かずに話を続ける。


「リアーヌの指摘通り、あの方のエスコートには問題があったご様子――しかもかのご令嬢の性格上、それはかなりのご不興を買ったでしょう」

「――全て推測に過ぎませんが……おおむね同意致しますわ」

「で、あるならば……――この際リアーヌの指摘が真実ではなくてもかまわないと思いませんか?」


 ヒョイっと肩をすくめながらゼクスが紡いだ言葉に、ビアンカどころかリアーヌまでもがギョッと目を見開いた。


「……え、良いんですか?」

「俺はそう考えてるよ?」


 呆然とにたずねたリアーヌにあっさりと頷くゼクス。


(あ、いや……あの情報は公式から発表された真実でしかないんだけど――真実だからこそ文句が言えない暴言だったのでは……?)


「――詳しく説明していただいても?」


 ビアンカも不可解そうに顔をしかめてはいたが、そう言って話の続きを促した。


「全ては結果次第ですが――リアーヌにああまで言われたあの方はこれから先、婚約者のために心を砕き、時には下手にも出てエスコートをなさるはず……――というか、しますよ普通の男なら」

「……そうでしょうね。 少なからず心当たりもあるご様子でしたし」


 ゼクスたちは苦笑を浮かべながら肩をすくめ合う。


「その結果、少しでもかの方のお心が動けは、あとはお二人の周りがなんとかするんじゃないですかね?」

「……両家共に気を揉んでいる、程度のウワサ話は耳に届いておりましたわ」


 二人が納得したように頷き合う姿を眺めながら、リアーヌは一人項垂れ続けていた。


(違うんです……問題はあの二人にも両家にも無いんです……フィリップに『レジアンナのことを妹としか見てない』って事実を認識させてしまったことなんですよ……)


「――そりゃ気も揉みたくなりますよねぇ……この国屈指(くっし)の名門――その中でも特に有名な家のお嬢様がド派手なドレスにケバい化粧で社交界にご登場ですよ? ……よく周りが許したもんですよ」

「……すぐに領地へと帰った私たちの耳にも届いたんですから、騒ぎの大きさも知れるというものですわ」


 声をひそめ、口元を隠しながら言い合う二人の会話に、リアーヌは別の意味で嫌な汗をかいていた。


(……えっ? そんな騒ぎ知らないんですけど⁇ ってか、レジアンナが赤とか黒とかのドレスで胸元バーン! 背中ドーン! なドレス来てるのなんか、デフォなんじゃ無いの⁉︎ あの子いっつもそんな感じじゃない⁇)


 その知識は、ゲームのプレイヤーだったからこそ知っている知識だった。


 入学当時、嫌がらせを受けていたとはいえ、クラスの違うレジアンナとリアーヌの間には面識らしい面識などは存在しなかった。

 そのためリアーヌは気がついていなかったのだが、レジアンナがゲームの中のような格好をして社交界に現れたのは今年が初めてであり、今年から社交界に顔を出し始めたリアーヌは遠目にはその姿を目撃していたのだが――リアーヌがそれを特別気にすることは無かった。

 リアーヌの中でのレジアンナの人物像は、妖艶なドレスと真っ赤な口紅をまとって主人公の前に立ち塞がる、悪役令嬢でしか無かったのだから――

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