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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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 ゲーム知識があり、この先の展開を熟知しているリアーヌが、思いつくがままに言葉を紡いでいた――


「――いも、うと……?」

「あれあれ? もしかして気がついてなかった感じですかぁー⁇ せっかく女性として見てもらおうと、大人っぽいドレスに化粧までしたっていうのに……――なんてお気の毒なレジアンナ様……」


 自分の言葉で急に勢いを無くしたフィリップに勝ちを確信したリアーヌは、勝ち誇るような顔を向けて言い放つが、混乱しているフィリップがそれに対して反応を返すことは無かった。



 ――その代わり、ビアンカから太ももをつねられ、ゼクスはお菓子をリアーヌの口に詰め込んで、そのドヤ顔を強制終了させたのだった。


(……言い過ぎた自覚はあるけど、そんなに強くつねらなくったって……――このお菓子うま……なんか一番のお偉さんフリーズしちゃってるし、今からたくさん食べても許されるだろうか……?)


 リアーヌは太ももをさすりながら、固まってしまったフィリップとテーブルの上の残りのお菓子に視線を走らせつつ、口の中のお菓子の美味しさに瞳を輝かせた。

 その視線に気がついたゼクスは、素早く菓子が並べられた大皿を素早く自分の方に引き寄せると、リアーヌに見せつけるように持ち上げ「――ちょっとの間だけだから、大人しくしてようね……?」と少々圧の強い笑顔で言った。

 お菓子に目を奪われながらコクコク頷くリアーヌに、大きく息をつきながら視線を交わし合うゼクスとビアンカ。

 黙らせることに成功したとはいえ、先ほどまでの発言が無かったことになるわけではない――フィリップの様子を伺いながら、この窮地をどうやって切り抜けるべきか、二人は必死に頭を回転させ始めた。


「――妹……? いや……――そう、なのか……? 私は……⁇」


 ブツブツと呟きながら完全に自分の世界に浸っているフィリップに、パトリックたちもどう声をかけるべきか、手をこまねいているようだ。

 そんな様子を、ゼクスに次々と運ばれる菓子を咀嚼しながら見ていたリアーヌは、いい気味だとばかりに小さく鼻を鳴らす。


(どうあがいても悪いのはお前と主人公なのだと理解すべき。 つーか大体のルートで攻略対象者が一番の悪! 貴族の常識知ってながら主人公にちょっかいかけたんだから。 コイツはその挙句に婚約者を妹扱いして、失態を理由に婚約破棄。 自分は真実の愛を見つけたーとか言っちゃってさ! なにが真実の愛じゃ‼︎ レジアンナの方はずっとお前に恋してたんやろがいっ! でももう大丈夫だよレジアンナ‼︎ 私がちゃんと言っといてあげたからねっ これからは上からなエスコートもされないし妹扱いだって――……妹扱いだって……?)


 リアーヌは自分の顔から血の気が引いていくのを感じていた――


(やっば……――私言っちゃったじゃん……えコレどうすんの⁉︎ フィリップ、レジアンナのこと妹としてしか愛してないって気がついちゃったよ⁉︎ ――え、これ……主人公が他の人ルートに進んだらどうなるわけ……? この人(妹にしか見えないんだけどなぁ……)とか思いながらレジアンナとの結婚生活を送ることに ――そんなのお互いに地獄じゃーん……)


 顔色を悪くして、急に俯いてしまったリアーヌをどう思ったのか、ゼクスはその手に紅茶が入ったカップを握らせると、少し強めにドンドンとその背中を叩き始めた。

 渡されたカップに口をつけながら、背中を叩く痛みに身をよじるリアーヌ。

 視線で大丈夫かどうかを確認されたので、小さくコクコクと頷いて見せた。

 ゼクスはホッとしたように息をつくと、それまで叩いていたリアーヌの背中を優しく撫でつける。

 その手の優しさを感じるながら、リアーヌは少しの希望をいだいていた。


(――そうだよ。 優しさと信頼! 愛が無くても優しさがあれば良い関係は築けるって先生たち言ってたし、政略結婚が当たり前の貴族社会で、たとえ家族愛であろうとも、愛情を持って結婚するわけだから、悪くはならないと思うんです! ――……ダメかなぁ? 家族愛だって愛だよ? きっと穏やかで楽しい家庭が築けると思うけどな……? 少なくともレジアンナは愛してくれるよ⁉︎)


 カップを両手で握りしめながら少し顔色を回復させたリアーヌに、今度はビアンカがゆっくりと顔を近づけて口を開いた。


「――リアーヌ?」

「……ひゃい」

「――感情は抑えるものだとご存じでして……?」

「……――申し訳ありませんでした」


 小声で謝りながら、リアーヌは(あ……そっか。 私フィリップに対しての態度としては確実にやらかしちゃってるんだ……)と、ようやく事態を把握したのだった――




 それからフィリップが自分の思考の海から戻ってくることは無く、うやむやのうちにフィリップの体調不良を理由に、お茶会はお開きとなった。


 サロンからの帰り道、トボトボ廊下を歩くリアーヌの少し先を歩いていたらビアンカが、周りに人が居ないことを確認してか、、大きくため息をつきながら振り返る。


「――改めて宣言しておくけど、あなたがあの場でご不興を買ったとしても、私は庇いませんわよ?」

「はい……」


 呆れたようなビアンカに、リアーヌは叱られた子供のように首をすくめながら答える。


「花園のことはあなたにだって言い分があるんでしょうけど……――何事にも言い方ってものがありますのよ?」

「すみません……」


 シュン……と肩を落とすリアーヌ。

 そんなリアーヌを庇うように声を上げたのは、ゼクスだった。


「リアーヌも反省してますから……」


 困ったように眉を下げて、リアーヌを嗜めるのでは無く、ビアンカを宥めようとしている。

 そんなゼクスの態度にビアンカは苛立ちその眉を跳ね上げた。

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