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成り上がり令嬢暴走日記!  作者: 笹乃笹世
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「事情があるとはいえ、あなたはれっきとした教養科の、しかもAクラスの生徒なのよ? それがまともにお茶も飲めず、菓子の一つもろくに食べられないってどういうことですの?」


 ビアンカの言葉には呆れと怒りが入り混じっており、リアーヌは小さくなっていた身体をさらに縮こめる。


「だって……お茶のカップって触ったら絶対カチャカチャいうじゃん……音立てたらダメなのに――だからなるべく触らないようにしてて……お菓子は一口で食べれば絶対にこぼさないから……」


 リアーヌの答えにビアンカは再び大きなため息をつき、睨みつけるようにリアーヌを見た。


「……念のために聞くけど、それってボスハウト家の教え?」

「……だって、出来ないと罰があるから……――家庭教師の目を盗んで口に放り込んでた……」


(お茶会のお菓子ってどれも小ちゃめだったし……――そもそも私ってば、ご褒美もらえなかったのに、罰だけはしっかり受けさせられてたとか――え、なにそれ私めっちゃ不幸じゃん……!)


「なんのためのレッスンよ……」

「……今は、よくないことをしたんだなってちゃんと理解してるんで、その(さげす)むような視線はやめていただけると……私、そういうのご褒美だと思えない側の……」

「――ハッキリ言うけど」


 ビアンカはモゴモゴと喋べるリアーヌの言葉を遮るように、座った瞳でキッパリと言い放った。


「……どうぞ」

「次もこんな失態を犯すようでしたら、友人からただの知り合いに格下げしますわよ」

「なっ⁉︎ や、やだあぁぁぁぁっ 見捨てないでぇぇぇっ!」


 隣に座るビアンカの腕に縋りつきながらリアーヌは訴えたが、ビアンカは鬱陶(うっとう)しそうにリアーヌの腕を振り払う。


「イヤよ。 菓子を口に押し込むような人と友人だなんて、私の名誉に関わりますもの」

「――勉強する! もうごまかそうとかしないからっ‼︎」


 ツンッとそっぽを向いたビアンカに、リアーヌは再度縋りつきながら言った。

 そんなリアーヌの態度に心底呆れたように言い放つ。


「……通常、そう思うのは受験前でしてよ」

「ですよね……?」


 ため息混じりに紡がれたビアンカからの正論に、リアーヌは大きく肩を落として撃沈した。


(――なんとかしなくちゃ! この上さらにボッチな学園生活とかムリすぎる‼︎)


 リアーヌは膝の上に置いていた手をぎゅっと握り締めそう決意すると、グッと背筋を伸ばして気合いを入れ直した。


 ――そんな時だった。


「あっいたぁー。 ねぇねぇ君って【コピー】ってギフト持ってる子でしょ?」


 いきなり現れた男子生徒に声をかけられた。


「……へっ?」


 リアーヌは状況がよく掴めず、キョトンと目を丸くして声をかけてきた男子生徒に視線を向ける。

 するとそこには――


「これの写本って頼めない? ちゃんとお礼はするからさ!」


と、素晴らしく整った顔にニコリと笑顔を貼り付けたゼクス・ラッフィナートがいた。

 とても整った顔立ちをしていて――攻略対象者だ。

 少しだけ長い襟足の黒髪に紫の瞳で口元の艶ぼくろが印象的だ。


「今日中に返すって約束してたんだけど、全然読み終わらなくてさぁ……――頼めないかな⁉︎ 頼むよ!」


 そう喋り続けるゼクスの顔を、呆然と見つめ続けてていたリアーヌだったが、その瞳がキラリと光が反射したかのように光るのを見て、慌てて顔を背けた。


(あっぶな⁉︎ ゼクスって【魅了】のギフト持ちで、めぼしいギフト持ってる女子生徒を次々と惚れさせて、頼みを次々に聞いてもらうっていう……イケメンであっても結構なクズ男なんだよね……――まぁ、超の付くイケメンが「ちょっと頼めないかなぁ?」とか「その話詳しく聞かせてよー」とか言って来たら、ギフトが無くてもお願い聞いちゃう女の子は多いと思うけどさぁー……――だからこそ、女の子のほうはギフトをかけられたと認識しづらく、万が一バレてもその時は使っていないと、言い逃れられるよう計算されてるんだけどねー……)


「頼むよー。 この前もここで写本してただろ? あんな感じでさ!」


 その言葉に、リアーヌの体がピクリと反応する。


(この間の? そっかぁ……へー、お前、見てたんだぁ……?)


 リアーヌはヘラリ……と、その口元に微笑みを貼り付けると、再度ゼクスを真正面から見つめ返した。

 目があったゼクスはもう一度、胸の前で手を合わせながら「この通り! ね⁉︎」と愛想よく笑っている。


(そうだよねー? この顔のよさは攻略対象に決まってるよねー⁇ つまり――私がいやがらせを受け続けていることには、なんの興味も示さないくせに、主人公にだけ(・・)はお優しい攻略対象様ですねっ⁉︎)


 リアーヌはゼクスの無駄に整った笑顔を眺めながら、心の内で怒りの炎を燃え滾らせていた。


(はじめましての会話がこれ……? 現在ちょっと助けて欲しいのは圧倒的に私のほうでは⁉︎ 隣のクラスでいやがらせ受けてるヤツ華麗にスルーしておいて、自分の願いを叶えるためにはソイツを利用しようって⁉︎ ……そんなどクズを助ける義理、私にあります⁉︎

 ……――そんなもん、これっぽっちも無いに決まってるだろっ! イケメンだからって自分が優しさを見せない相手に、優しくしてもらおうだなんて、思い上がらないことだっ‼︎ ――寝言は寝て言え!)

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