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いつもお世話になっております!

少々遅れてしまいましたが誤字報告適応させていただきました!

手直ししながら投稿してるはずなのに「なんでこれ見逃せたん……?」ってのが意外に多くて草☺️

(あの男たちは……? そしてどうしてオリバーはお嬢様に狼藉を働くラッフィナートの若君になにも言わないの……?)


 アンナは沢山の疑問を思い浮かべながら素早く視線を巡らせて状況を把握しようと(こころ)みる。


(――オリバーがなにも言わないということは、オリバー自身が黙認しているから……? つまりお嬢様の行動を止めたい……? ――彼は臨時だから許可無くお嬢様に触れられないっていつのもあるんでしょうけど……――ではなぜ若君は……――あの男たちがお嬢様に手ずから食べさせようとしているから? ……いいえ、おそらく邪魔が入らなければお嬢様だってあの料理をちゃんと受け取ってからのお食べになるはず――)


 素早く頭を回転させながらアンナの注意がアウセレ人たちが手にした料理に向いて――その正体に気がついたアンナはヒュッと息を飲み、顔を青ざめさせる。


「お嬢様、なにを食べていらっしゃるんです⁉︎」


 手に持っていた荷物を置くことや、ここには見知らぬ他人が沢山いるということ、そして自分たちの主人がお忍びであるということ――全てをすっ飛ばして、アンナは叫んだ。


 そんなアンナの声にリアーヌの動きがビクリと止まる。

 そしてその声がしたほうに視線を向けるリアーヌのその顔にははっきりと(まずい……)と書かれていた。


 ヴァルムの娘であるアンナ。 顔立ちこそそこまで似てはいないが、その言動の端々にヴァルムを彷彿とさせるものが多々あり、そんなアンナに叱られることを、リアーヌはとても苦手としていた。


「ようやくご帰還か……」


 オリバーの呆れたような声を聞いたアンナは、自分が戻らなかったからリアーヌをここから動かせなかったのだと理解して強い後悔に襲われる。


(帰りでは時間が取れないかもしれない、なんて思わずに、目に付くものだけ買って戻っていれば……)


「戻ってきたならもう帰るよ⁉︎」


 アンナが戻ったことに気がついたゼクスは、リアーヌを羽交い締めにしながら無理やり移動させる。

 ――体勢だけでいうならばかなりの密着を見せている二人だが、そこに恋愛的な気配は全く無く、まるで親がグズる子供を強制的に移動している様子と酷似していた。


「でもまだお刺身……」


 アンナの出現により、差し出される刺身や寿司に大口を開けたり、制止するゼクスに本気で抗ったりすることは無くなったリアーヌだったが、ゼクスに移動させられながらもその視線は料理に釘付けになっていて、差し出される料理を皿ごと受け取ろうと幾度となく手を伸ばしている。


「ダメだって言ってるだろ⁉︎」


 そんなリアーヌの手を下げさせながらゼクスが叫ぶように言う。

 お忍びだから……とラッフィナート側のメイドを一人も連れてこなかったことを激しく後悔しながら――


(っていうか、オリバーがリアーヌに軽々しく触れられないってのはまだ理解出来るとして、こっちのアウセレ人たちを遠ざけてくれないのはなんでなんでだよ⁉︎ それ職務怠慢じゃねぇのっ⁉︎ )


 ――このゼクスの疑問の答えは簡単で、オリバーがたった一人しかいないリアーヌの護衛であるがためだった。

 主の健康を守るために主から目を離したら、他の者に主を害されていた――など笑い話にすらならない。


(――あの料理に毒が仕込まれてたらどうしようもないけどなー……ま、アウセレとはボスハウトもラッフィナートも友好関係築いてるし、ピンポイントでこのお(ひぃ)さんが狙われることもねぇだろー)


「でもくれるって……」

「言いながら受け取ろうとしないで⁉︎」


 まだ諦める気配のないリアーヌと位置を変え、アウセレ人たちを自身の身体全体でブロックしつつ、グイグイと店の入り口のほうへ押し出していく。


『ヒョイって食べちまちな!』

『うん!』


 しかしアウセレ人たちのほうも、今までは忌避され続けてきた自分たち母国料理をここまで美味しそうに食べる少女を気に入り、これも食べろ、それも食えと、料理を手にリアーヌたちの後をついていくのだった。


「ちょっと⁉︎」


 あの危険物を持つ三人とはかなり距離を取ったと思っていたゼクスは、知らない間にリアーヌの口がもぐもぐと動いていたことに目を丸め、自分の背後にピタリと張り付いていたアウセレ人たちにビクリとその肩を揺らす。


 そんな一行を他の客たちがニタニタと笑って見ていることに顔を顰めたオリバーは、再びリアーヌに注意を促そうと、大きく息を吸い込んだアンナに気がつき、慌てて口を開いた。

 まるで、アンナが“お嬢様!”と声高に下げふことを阻止するかのように。


「――あー! ……もしかしてこれは緊急事態ってヤツ、ですかね⁉︎」


 ――この旅はお忍びでなくてはならない。

 護衛の数もメイドの数もボスハウト子爵家の格には到底合っていない。

 ようやく持ち直したボスハウト家の株を“ケチ”だの“倹約家”だのという悪意ある言葉でわざわざ下げる必要などない――

 オリバーはそう考えていた。


「……――その通りですわ! 間違いなく緊急事ですとも!」


 オリバーから質問に、一瞬キョトンと目を丸くしたアンナだったが、すぐさまその意味を理解して何度もコクコクと頷きながら答える。

 出かける前、父ヴァルムがオリバーに向かって「……緊急事以外はお嬢様に触れぬように。 ――戻り次第確認しますので、言い逃れはできないと思いなさい?」と言っていたのを思い出したためだ。

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