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トランジション-nu-ill  作者: むとっち
イルベリ 奉仕者編
11/26

北海道みたいな雰囲気のところ

 廃炉作業が終わり、自宅に戻ってからはしばらくダラダラ生活していた。

 自分の能力でどんな無茶が出来るのか。そんなことを色々と妄想するが、あまり有効に使える場面がないなあと思っていた。災害があれば危険な場所での作業とか出来るだろうし、あとはう~ん宇宙飛行士とかも面白いだろうか?

 そんな妄想をしながら、今日も友人の動画配信を見ていた。

 最近は人気のVTuberと仲良くやっているらしい。仲良くというかなんかもういちゃいちゃという感じだ。ほほえましいのだが、なんか……なんかむかつくな。

 配信を見終わり、やることがなくなったので日課の散歩に出かけた。歩いて10分くらいのところにある広い公園をぐるりと歩いて回る。原発で一か月も同じ格好で作業し続けたせいか、Tシャツと綿パンのスタイルが気に入っていて続けている。良く言えば丈の長いパンツは長い足を強調し、オーバーサイズなTシャツが柔らかな印象を見せるマニッシュなコーデだ。だがこれはスタイルがめっちゃ良い美人だからそう言い張れるんだろう。

 自意識過剰すぎるかもしれないが、通り過ぎる人が自分を見ているのがわかる。ほら見ろ、もっと俺を見ろ、美人だろ~~? この美人がこの間までハンマー持ってゴリラみたいにコンクリぶち殴ってたんだぜ~~? 信じられるか~??

 

「くっくっくっ、あっはっはっはっは~~!!」


 駄目だ、笑いがこらえきれなかった。

 完全に変な人て目で見られちゃったよ。いいんだよ、美人ならちょっとくらい変な人でも。

 帰りにカレーショップ C&Cに寄りロースカツカレーにメンチカツをトッピングしてソースをかけまくって食べた。この体になる前だったら胸やけするので絶対に無理なトッピングだったが、今はカレーに好きな揚げ物を好きなだけ乗せられて最高だ。

 マンションに戻り、ポストを確認するとやたらと分厚い封筒が入っていた。

 なんだこれ、どこからだ? 横田基地? 米軍からか。

 部屋で封を開けて中身を確認すると、英語と日本語の便箋、そして横田基地への招待状が入っていた。

 内容はざっくり言うと廃炉作業での活躍聞いたよ凄いじゃん、ちょっとうちらにも力貸してよという感じだ。

 実はこの展開は予想していた……というか期待していた展開の一つだった。

 今の自分の能力ははっきり言って日本ではあまり役に立たない。というか迷惑なだけの能力だ。かといって海外でこの能力を発揮しようと思ってもパスポートを取得できない。自分ではどうにもならないので、海外から手を伸ばしてもらうしかないが、最も手っ取り早いのは米軍だ。米軍ならミリタリーオーダーがあればパスポートがなくてもアメリカと日本を行き来できる。もちろん船を使って密航という方法もあるが、可能であれば米軍に協力してもらうのが一番良い方法だろうと考えていた。

 


 招待状に記載された日時に、電車に乗って横田基地へと向かった。

 一応マイナンバーカードなども持ってきてはいるが、写真と顔が全く違うので意味をなさないだろう。

 入るときに身分証明が必要になるが、どうするつもりなのか。

 横田基地の赤い大きな門の前に立つ。でかでかと掲示された警告の看板。少し思い悩んだが、気にせず中へと入っていくことにした。歩いて奥へと向かっていくと、当然ながら守衛に声をかけられた。

 送られてきていた封筒を取り出し、中の招待状を見せると、離れずに待つよう指示された。なにやら無線で連絡を取っているようだ。

 しばらく待つとスーツのような軍服を着た男性が車に乗って現れた。車に乗せられ、基地内を移動し、駐車場で止まる。案内されるまま、建物の中へと入っていく。どうやらここが米軍司令部らしい。

 そのまま米軍司令部の地下会議室まで案内される。中で待っていたのは、軍司令官の空軍中将だった。背後の入り口は武装した二人の米兵がふさいでいる。


「福島第一原発の廃炉の件について耳にしている。これほどの短期間で処理できたことを、我々としても大変喜ばしいと思っている。もし、君が望むのであれば、なのだが、君のその類稀な才能を別の場所でも発揮してみないか? 我々にはそれを援助する準備がある」

「ああ、アメリカでもメルトダウンがありましたよね。スリーマイルでしたか」

「いや、あそこは君の手を借りるまでもない。もう一つあるだろう?」

「……まさか、チョルノービリ?」

「そうだ。ウクライナとロシアの戦闘地域ではあるが、圧力容器の中でも無傷の君にとっては散歩するようなものだろう。あの場所は戦略的に見て非常に重要な地域でもあり、君の力で早期に除染することが出来れば、戦況に与える影響だけでなく政治的な意味も非常に大きい」


 廃炉(Decommissioning)ではなく、除染(Decontamination)という言葉が選ばれていた。これは俺が被爆すれば、放射性物質が壊変する事を知られているのを意味している。放射性物質が飛散した地域でもふらっと歩くだけで除染できる可能性は大いにあるし、それを期待されているという事でもある。


「一応の確認ですが、戦闘に巻き込まれた場合は……」

「無論ウクライナ軍を援助してほしいと思っているが、最終的な判断は君に任せる」


 今このタイミングでチョルノービリを除染できれば、ベラルーシ内のロシア軍からの進行を防ぐ重要な拠点として機能するのは間違いない。

 しかしこれはそんな単純な話ではない。

 重要なのは、高度に放射性物質で汚染された地域を除染する手段が、ウクライナ側、もっと言えば西側にあることを国際的に示すことだ。汚染されても問題なく除染できる方法が手近にあるとわかれば、西側諸国は原発の稼働を容認するだろう。それによって西側諸国のエネルギー問題が解決することで、東西のパワーバランスが大きく動くことになる。

 しかもこれは可能性の話ではなく、昨今のエネルギー問題を巡る情勢を考えれば確実に起こることが簡単に予想出来る。現在の西側諸国は電力が喉から出が出るほど欲しいはずだ。ロシア産ガス等を購入する必要がなくなり、自国内のエネルギー問題が解決すればもはや力の衰えたロシア相手に遠慮する必要などなくなり、連合軍をもってロシアを攻撃することになるだろう。

 自身の力をより重要なところで、国際的な場で発揮できれば望ましいと考えてはいたが、これは思っていたよりも影響力が大きい。大きすぎる。

 そしてこれは果たして本当に国際的な平和に寄与すると言えるのだろうか?

 しばらくそんな考えが頭を巡り、そして答えた。


「やります」


 たった一個人の能力が国を動かすなんてことは無い。

 まして国際情勢を大きく変化させるなんてありえない。

 そう思っていたが、ごく稀なケースでこういう事もあり得るのかもしれない。

 アメリカはウクライナへ派兵する準備は進めているものの、国際的な情勢を鑑みて派兵はしていない。その為、医療、救助活動の支援という形でウクライナへ入る事になった。

 輸送機に乗り、横田基地からアラスカ州のエリメンドフ空軍基地を経由し、物資や人員の再編をしドイツのラムシュタイン空軍基地へと飛ぶ。さらにそこからポーランドのジェシュフ国際空港を経由し、ようやくウクライナのリヴィウ国際空港へ到着した。

 ここからチョルノービリまではひたすら陸路だ。

 軍用トラックにのってひたすら東に進む。リヴィウの町中を抜けるとそこからはもうひたすら畑ばかりだった。左右を見ても畑しかなく、同じような景色が延々と続く。まるで北海道に来たみたいだ。

 長い移動時間の間、トラックの中で兵士たちとつまらない話を延々としていた。

 飯はこっちの方が美味いだとか、虫が多いところは嫌だとか、NBAのピストンズが連敗してるのを笑ってたりとか。シビル・ウォーがつまんねーとか言ってたりとか。

 なんでお前らそんなに俺に話しかけてくるんだよ。美人だからか? ワンチャンあるかもってナンパしてんのか? まったく。

 そしていくつかの街を抜け、丸一日かけてようやくキーウに到着した。重要な軍事拠点となっているキーウで支援物資の搬出と補給のついでに一泊した。翌日、チョルノービリへ向けて北上する。キーウ周辺は今のところ比較的安全ではあるが、チョルノービリが近づくにつれて緊張が高まってきていた。

 そして2時間ほどかけてチョルノービリに到着する。立ち入り禁止区域に入り、4号機が封じられている石棺を覆うドームのそばまでやってきた。ここからようやく仕事だ。

 スレッジハンマーを担ぎ、分厚い金属容器を持ってドームの中へと入っていく。トラックで運んできた容器はいっぱいある。像の足とかいうやつを破壊すればいいんだろ?

 地図を見ながら石棺の周りをうろうろし、石棺内部の炉心部に一番近いところを探す。

 大体の位置に目星を付け、石棺をハンマーでぶん殴って破壊していく。

 この石棺を作るのにも相当な犠牲を払っている。申し訳ないと思いつつも、人が通れる穴を作っていく。廃炉というか、建物を壊すというよりまるで手作業でトンネルを掘っているようだ。コンクリートを砕いては先に進むという作業をひたすら繰り返し、ようやく朽ちた金属の塊のようなものに遭遇した。

 多分これが炉心部だと思うんだよな。

 もはや金属とも言えないガレキをハンマーでぶん殴り、破片にして容器に詰めていく。容器はトラックから滅茶苦茶いっぱい持ってきたが、運ぶのが大変だ。蓋のある分厚い金属のバケツのような容器にひたすら破片を入れ、蓋をして、運び、トラックに積む。日が暮れても、夜になっても延々とその作業を繰り返した。その間、別の作業員が食事を持ってきてくれたり、放射性廃棄物の入った容器をトラックで運んで行ったりしてくれた。当然その際に線量も測定しているが、やはり想定よりだいぶ落ち、炉心近くでも防護服さえ着ていれば特に問題のないレベルまで低下しているようだった。

 不眠不休で炉心周辺を破壊し続け、一週間ほどかけて高線量の部分を全て除去し、通常の作業員でも対応可能なレベルにまで線量を落とすことが出来た。同時に作業員が急に増え、石櫃の解体が急速に進められることになった。

 二週間もすると作業は全て重機で行われるようになり、出番は無くなってしまった。

 特にやることもなく暇なので、特に線量が高いと言われる周辺地域をぶらついてみることにした。ただ歩くだけでもある程度除染できるからだ。

 今思えばこれはあまりに軽率だった。

 ここが戦地だということをすっかり忘れていたのだ。

福島第一原発の廃炉も相当ありえん内容だけどこっちの方がさらにありえんな…

♡滅茶苦茶間違いだらけのこと書いてると思うけど大目にみてぴょん♡

ハンマー最強! バケツ最強!

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