玉座の間へ
「全く。毎度の事ながら重たい空気を出さないでよね~」
「それは大変失礼致しました」
部屋を出てしばらくすると、シア様はウォール様へ小言を言い始めた。
「ふっかけたのはナインだけどさ。国王が関わっているだけで敵意むき出しにするのやめてほしいよね」
「まあそれも致し方ないのかなと」
「ウォールは優しいね。僕ならキレ散らかすよ?」
先程までウォール様も誰も寄せつけないようなオーラを放っていたのに部屋を出ると意外と普通にシア様と会話をしている。
「ラーラ様。お見苦しいところをお見せして大変失礼致しました」
「いえ、私のことはお気になさらず……」
「ただ、ナイン様が気に食わないだけですので」
満面の笑みでそう答えるウォール様に、あははと乾いた笑いしか返せない。
仲が良くない複雑な事情があるのだろう。
この話題には触れないほうがいいと思った私は明るい調子で話題を変えた。
「そ、そういえば! 私、実際の国王様を見るのは初めてなんです。絵姿のように威厳のある方なのですか?」
明らかに不自然な話題変更。シア様やウォール様の視線が気になるが、なにか言われる前にとすぐさま話題を重ねた。
「でも出回っている絵姿って若い時のお姿と聞いたこともあるので、実は違う感じなのですか?」
お会いできるの楽しみと最後に言葉と付け足して、どんな方なのか顎に手を添えて想像を膨らませてみた。まあ、全力で話題を逸らすためにそういうポーズをしたのは認める。
王宮特区にいてもそのお姿を拝見することはほぼないと言われている国王様。
基本的には城で政を行い、外出が必要な場合はウォール様のような遣いに任せるという。そのため、国民の大半は絵姿でしか国王を知らない。
このことは四大公爵家と知っていたことであったが、まさかそんな国王様のお姿を拝見できる機会がこんなに早く来るとは思っていなかった。
「ただの引きこもりおっちゃんだよ」
「いや、そう言えるのシア様だけかと」
「城どころか部屋からも滅多に出ないし、引きこもりのプロだよ」
「……シア様は不敬って言葉知ってます?」
「まあそれでも国を収められるから優秀な国王だよ」
「下げて上げて自由か。ラーラ様。国王はとても威厳のあるお方です。シア様のことは無視して最上の敬意を忘れずに」
シア様の自由な発言に国王がどういう人か全く想像することが出来なかったが、優秀で威厳のある方ということはわかった。
ウォール様がおっしゃってたように最上の敬意を払い、ご挨拶をさせて頂こうと誓った。