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不安と緊張のお茶会 その③

「そういえば教育担当はシアとエミルでしたね。お二人の教育どうですか?」


 ケーキを口にし、紅茶を飲み、そして程よく談笑。

 そんなゆったりとした時間が過ぎていく中、ナイン様は私の教育について尋ねてきた。


「む、難しいことも多いですが、たくさん学ばせていただいております」


 わからないことは多いけれど、まだ一週間。

 これからの私に私は期待している。きっと頑張ってくれるだろう、私。

 他人事のように自分自身を励ましていると、シア様が自慢げに語り出した。


「ラーラ嬢は根性があるよ! 最初の二、三日は僕の話を静かに聞いていたんだけどね、最近はわからないことはわからないってちゃんと言うんだ。それで僕が教えると、さらにわからないことを積極的に質問するんだよ!」

「初めて聞くほにゃらら理論がどうとか言われてもわからないですし……それを聞いても結局は余計わかりませんが」


 やれることはやろうと本も読んでいるが、まだシア様の言っていることを理解することはできない。


「でも、魔法学校に通ってた時よりは自分のためになっている気がします」


 学校という場所は一人の先生に対して生徒複数人だ。一人一人に時間を割けないし、ある程度の知識を得たらすぐ次へと進んでしまう。

 それに比べてここでの教育は、シア様やフラナ様が一対一で教えてくれる。しかもただ教えるんじゃない。時間をかけて極限まで突き詰める。

 学校だったらスルーしてしまうようなことも理解できるまで学ぶため、自分の身になっているのをこの短期間で少しだけ感じていた。


「ほう。魔法学校という集団教育ではどんなことをするんですか?」

「そうですね。普通に授業もありますが……強化合宿とかでしょうか」

「強化合宿?」


 シア様以外のその場にいる全員の頭の上に『?』と出ているような気がした。

 王族や奇跡の子の教育はおそらくマンツーマンや少人数なのだろうなと勝手に想像する。


「泊まりで魔法の技術を磨くイベントです。チームで協力しながら夜の森をーー」


 そう、以前私が通っていた魔法学校では強化合宿というものがあった。

 昼は対人模擬試合。夜は森での魔物討伐ミッション。

 個人の実力が求められる昼とは違い、六人一組での夜の森のミッションは個人的に楽しかったのを覚えている。

 協力することでチームの絆も深まるし、互いに技術を磨き合えるし、なにより仲のいい友達ができる。

 みんな元気だろうか。急に辞めることになったため別れの挨拶もできなかった。


「素敵な男性がいっらしゃったのではなくて?」

「確かにたくさんいました」

「まあ!」


 急に前のめりになったミーシェは私に早く話してと期待の眼差しを向ける。

 強化合宿に興味を持ってくれたのだろうか。


「夜の森では大変頼りになる方々ばかりで」

「ええ、ええ。それで?」

「いろんな魔法を互いに発動させて、あーでもないこーでもないと試しながら魔物を倒すんです。互いに別々の属性が得意だったので心強かったんです」

「……うん?」

「対人戦も作戦を練るのが上手な方がいまして、裏の裏のさらに裏をかくんです。それが見事に決まった時はすごく爽快で……あれ?」


 相槌が聞こえなくなった気がしたのでチラリとミーシェを見ると、ケーキを頬張りながら更なるケーキを使用人に頼んでいるようだった。

 先ほどまで興味津々に話を聞いていたと思ったが、実はあまり興味がなかった? それとも単にたまたまだったとか?


「ミーシェは恋の話が聞けると思っていたみたいだよ」


 カイン様がくすくすと笑いながらそう言うと、全力で肯定するようにミーシェは何度も力強く頷いていた。


「こ、恋ですか?」


 とはいえ、そっち方面はからっきしだった。

 憧れはあったけど恋人になりたいと思える人はいなかったし、実際プライベートな用事で声をかけてくる男性もいなかった。

 だから、いつか親が決めた人と結婚するんだろうなと漠然とした未来を想像していた。


「うーん、特には」

「初恋は?」

「初恋……」


 まだだ。私の反応を見て察したミーシェがさらに続ける。


「では、触れ合いをした男性はいらっしゃらなかったんですか? 例えば手を繋ぐとか、抱き合うとか! そこからドキドキと意識しだして恋に発展、なんて」

「特に……は」


『ラーラ。会いたかった……っ』


 なかったはずだと思ったが、一つだけあった。

 でも私は首を横に振る。何度か思い出してはあの行動の意味をぐるぐると考えているが、本人に聞く勇気もないのだから、変に考えては失礼だ。

 それにきっと深い意味はなくて、同じ瞳だから、なのだ。


 私が首を横に振ったことで、残念そうにするミーシェ。

 恋はまだまだ縁遠い。いつかそういうものを経験する日が来たらいいなと思った。

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