第六編「ヨーヨーよりも」
せんせいが、ビニールプールをもってきた。
中にはいっぱいの、ヨーヨー。
ゴムをつけたヨーヨーに、カギみたいのをひっかけて、つれたらそのヨーヨーをくれるんだって。
ようし。組の中のだれよりもおおくとって、みんなにじまんしてやろう。
あ、またしっぱい。
なんどやっても、ぼくだけとれない。
だんだん、つまらなくなってきた。
「こうやるんだよ」
となりにいたおなじ組の女の子が、ぼくの手にじぶんの手をかさね、うごかしてみせた。
……あ。ひっかかった!
「そう。それでね、こうやって、やさしくひっばるの」
その子のうごきに合わせ、おなじように手をうごかし、そっとひっぱり上げる。
すると。
「……とれた! とれた、とれた!!」
つい大きなこえで、はしゃいでしまった。
ぼくの手の中には、とりたくてしかたなかったヨーヨー。
「よかったね」
そういって、その子はにっこり、わらってくれた。
そのかおに、おもわず、どきりとする。
……なんでだろう。
でもぼくにとっては、そのえがおが見れたことのほうが、ヨーヨーを手にいれたことよりも、もっとうれしく思えてしまったんだ。