第三編「飴色占い」
赤色、黄色。緑に、ピンク。
子供のころは、飴のパッケージを開くたび、胸をときめかせていた。
何故なら、クラス内でちょっとした占いが流行っていたから。
赤だと悪い日、黄色はちょっと注意が必要で、緑はラッキーデー。
そして、ピンクは。
「……何だったっけ?」
指先で飴玉をつまみながら、思い返そうとするけど……出てこない。
これは、さっき同期の男子──片思いの相手でもあるのだけど──が、書類と一緒に渡してくれたものだ。
お疲れ様、という言葉つきで。
この飴の、色は不明。
濃いめのカラフルな包み紙で覆われているから、透かしても中の色は見えない。
──いいや。食べちゃおう。彼は誰にでも優しいから、労い以上の意味なんてないんだろうし。
パッケージを破って、色を確認する。ピンクだ。
口に入れると甘くて、残業の疲れが和らいでいく気がした。
よし、もう少し頑張ろう。
口の中で飴を転がしながら、彼からの書類を確認する。
と。小さな付箋が付いているのに気が付いた。
『もう一息だね。今の案件が片づいたら、一緒に食事でもどう?』
びっくりして、飴を飲みこんでしまった。
そして、付箋をまじまじと見返す。
付箋の色はピンク。飴と同じ色だった。
「…………あ」
思い出した。子どものころの、飴色占い。
赤は悪い日、黄色は注意、緑はラッキーデー。
そして、ピンクは。
『ピンクの飴が出た人は、恋が叶うでしょう』