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パワフルおばさん達と新たな常連客の誕生 

 私がいつも好んで通う喫茶店は、駅から出てしばらく歩いた先にある。この東口駅前通りは、駅と繋がるデパートの他にも、元電気屋だったアミューズメントビルやもう一つデパートだった所がある。


 商店街通りと呼べるものは、メインのとおりだけなのに、実はその横や裏にもいっぱいお店があることを発見した。


 それでも私が足を運ぶのは、昔ながらの喫茶店だ。今日はお昼の激戦が始まる前にやって来れた。


 お店に入るとカウンターの老紳士がちょうど帰るため会計をしていた。私を見るなりニヤッとしたので、その席を使っている事はバレたようだ。


 なんとなく常連の仲間入りを果たせた感じで嬉しいものだ。店員さんに席を片付けてもらい、カウンターに座る。


 ひと足違いで最近仲良くなったサバサバ系女子がやって来て、私を見るなり舌打ちした。


「奥に詰めて」


 かち合った時は先に来た方が奥にズレるのが二人の間の暗黙の了解になっていた。この喫茶店内だけしか会わないし通じないのだが。


「おすすめにしたの?」


 今日のおすすめは焼きそばだ。ソースの香りだけでご飯が進む。ライスは別料金だけど。


「今日はどうしてもドリアが食べたくて、ミートドリアにした」


「ふぅん、生意気だね」


 天邪鬼な彼女の褒め言葉だ。ここのドリアは先に仕込みが済んでいるし、オーブントースターを使ってチンするだけ。忙しい時でも、手は空くので頼みやすい一品だ。


 中味はオムライスのご飯に、小麦粉とミルクとバターで作ったホワイトソース、玉ねぎスライスが敷かれてたっぶりのチーズにミートソースが掛けられる。これをオーブンでじっくり焼くのだから美味しいに決まっている。


「サイゼの方が安いのに」


 それは知っている。私の家の近所にはないし、この駅ではデパートの中になるので凄く混むのだ。


 私がおすすめを頼まなかったから対抗心が芽生えたのか、彼女はシーフードドリアにした。こちらはアサリやイカなどがトッピングされて、一層豪華になる。


「バイト代が入ったね?」


 私が追及すると彼女は仕方なく頷く。親からのお弁当代が頼りの貧乏学生との違いを見せつけてくれた。まあ、イカリングとアサリ一個おすそ分けしてくれたのでありがたく頂きましたよ。


 二人でハフハフしながらドリアを食べていると、お客さんが次々とやって来た。


 その中には見慣れた制服のおばさん方もいる。この喫茶店のある建物の隣にあるスーパーの店員さん達だ。

 仲良し三人のパワフルおばさん達は、お昼の常連客だ。三人の出勤日や休憩時間が合う時にここへやって来る。


 利用頻度は、週に一度くらいなのだけど、賑やかなので覚えやすい。今日は若いお姉さんを連れていた。制服が違うので、パートではなく正社員の方なのだろう。


 親切にパワフルおばさん達が教えているようだ。カウンターに座るとあまり客席の事は気にならない。ただ、流石に真後ろの席となると、声は筒抜けだった。


 サバサバ系女子は諦めたように首を振る。これもまた楽しめと、達観していて羨ましい。


 パワフルおばさん達がおすすめを頼む中で、お姉さんはミートドリアを頼んだ。あれだけ説明され、おすすめを推されていたのに、強い。


 ただ、入って来た時にちょうど私達が食べていたので目に入ったようだ。


 パワフルおばさん達も、わかるわ~とそれはそれで受け入れ、料理の来るまで話しが盛り上がっていた。


 仲が良さそうで何よりだった。耳をダンボにして聞いていた私達もホッとした。


「気が合いそうだよね」


 隣に座るサバサバ系女子が呟く。私も同じことを思ったけれど、果たしてどうなるか――――――――



 ――――――――それ以来、お姉さんは早番の日は仕事終わりにコーヒーを飲みに来る常連客の一人になった。スーパーでもお客さんで賑やかなので、食事の時間は別として、静かにゆったり過ごす時間が欲しかったらしい。


 新たな常連客の誕生に、私は嬉しくなった。そして、この喫茶店の持つポテンシャルを、あの喧騒の中から見出すあたりは流石だなと私は思った。 


 


■□■□■□■□■□■□■□■□■


 



 本文には載せられなかった喫茶店版の焼きそばレシピ。


 材料は玉ねぎ、人参、ピーマン、キャベツ、もやし、豚肉、焼きそばの麺 ウスターソース、オイスターソース 干し海老 青のり 紅生姜。


 焼きそばの麺は大抵マルちゃんの焼きそば。先にレンジでチンしてほぐしていました。大盛りのトキは二玉。大食い会社員の方は三玉いけたと思います。ご飯を頼んで炭水化物祭りにするかどうかは······自由です。


 短編連作九話目となります。

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