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ヤッちゃんさんとナポリタン

 今日もまた、いつもの喫茶店に向かう。駅の改札を出ると相変わらず人が多くて歩きにくい。


 私はこの駅前について勘違いしていたみたいだ。喫茶店のある東口側は商店街通りが一つで小さい駅なのだと思っていた。でも実際は東口から大きなデパートに繋がっていて、そこで色々と買い物が出来た。


 さらに駅の反対側も同様だ。当たり前なのだけど電車が通る線路があれば街は二分される。用がなくて気づかなかっただけで、東口より店がある。


 西口は環状交差点になっていた。格好良く言うならラウンドアバウト式のロータリーというのか。信号のない複数の道路に繋がる交差点の先にいくつもの商店街通りがあった。


 大半が飲み屋だったりパチンコ屋だったりいかがわしい店らしく、昼から飲んだくれたおじさん達もいて、愉快に笑っていた。


 駅の混雑具合を考えると納得出来る。だけど私はお気に入りの喫茶店へと向かう。だって怖いもの。



 怖いと言えばヤッちゃんさん。年齢は四十後半から五十くらい。ホタテの歌を歌っていた方に似ている感じの強面の常連さん。ただ見かけは怖いのに、あんみつを食べている時は笑いそうになってしまった。


 ヤッちゃんさんは店長さんと仲が良いらしく、時々土地がどうこう話していた気がする。聞いてはいけない話しを聞いてしまった気がしてドキドキした。

 店内に流れるジャズの音楽よりも耳を塞いだって聞こえるくらい声が大きいのだから聞くなって言われても困る。


 恐れ知らずのおばちゃん達のお喋り声が、この時ばかりはありがたい。今日はオススメのランチを食べに来たので、朝の静かな一時のようにはいかないと、覚悟したのに。


「学生か。マスター、特盛にしてやんなよ。卒業したらウチに来るか? ガハハハ」


 私が耳ダンボしていたのに気づいたのか、ヤッちゃんさんに肩を叩かれ恐ろしい勧誘をされた。


 ランチのセットにはモーニングのようにドリンクが付く。私はもちろんコーヒーで、先に持って来てもらう。食前と食後にコーヒーが飲めるのが幸せ。


 しかし、ヤッちゃんさんの魔の一言で、楽しみにしていたオススメの喫茶店のナポリタンは超山盛りになっていた。当社比三倍、ナポリタンだけに速さ三倍の赤い人までチラつく。


 コーヒーのおかわりどころではない。今はこの山盛りナポリタンと戦わなければならなくなった。


 ナポリタンの味付けの基本はケッチャプのみ。具も簡素に玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム、ウインナーの輪切りにしたものと塩胡椒。具材を先に炒め、作り置きのパスタを湯で温め、一人前に対してお玉でケッチャプ一杯投入する。隠し味にコンソメスープを入れたりするのかと思ったけれど、それはなかった。粉チーズとタバスコはお好みだ。


 山盛りの美味しそうなナポリタン。でも私は泣きそうになりながら、焼けたケッチャプの甘さと旨味に感動しながら食べたよ。ホール係の店員さんが、心配そうにお水を注ぎ、コーヒーのおかわりを注いでくれる。

 ヤッちゃんさんがニコニコしながら重圧をかけて来るので、私は必死だ。


 大食い選手なら簡単でも、線の細い私には飯テロだ。意味が違うけど。三人前以上あったナポリタンは美味しくて、意外と完食出来た。まさか自分がそこまで食べれると思わなかったよ。


 食べきった勝因は、シンプルなナポリタンだと言うこともある。この喫茶店の厨房のコンロが、中華店のように火力があるのと重そうな中華鍋のせいだ。


 炒飯での火力の違いはよく聞くけれど、ナポリタンにも味に違いがあるんだと思った。たぶんケッチャプがいい感じに焼けるんじゃないかな。

 私の中で、喫茶店のナポリタンの思い出と基本と言ったらこのシンプルなケッチャプ味のみになった。


 見事に完食した祝いに、ヤッちゃんさんがランチ代を奢ってくれた。後で店長さんが教えてくれたけれど、ヤッちゃんさんは近所の工務店の社長さんだった。


 土地の話しは、仕事の話しだったわけ。まあ、強面だからと勝手に私がビビっただけなんだ。すみません。


 気前が良いのは若い社員を本当にスカウトして、見どころありそうな子にちょっかいをかけているそうだ。


 お腹いっぱいで動けなくて苦しかったけれど、結局一食浮いて素直に喜んでしまった。今だと考えられないフレンドリーさがこの喫茶店にはあった。

 有難迷惑な事もあるんだけど、常連客になりかけている私を彼なりに歓迎してくれたのかなと思った。



■□■□■□■□■□■□■□■□■




◇ ナポリタンについて ◇


 ナポリタンの歴史、蘊蓄を語られてもいまさら感がいっぱいで困りますよね。


 そこで趣向を変えて、小説家になろうにて投稿された作品の中で、ナポリタンに関わる作品を選んでみました。


 題して【小説家になろう、ナポリタンの歴史】 です。検索でナポリタンと入力した際に表示された71作品のうち、作者名称がナポリタンの方や、ナポリタン描写のすくないもの、ホラー系のものなどは除きました。



◆ 喫茶店のナポリタン、そして牛乳


・作品コード N0110IG

・ジャンル エッセイ〔その他〕

・作者 大狼 太郎 先生

・掲載日 2023年5月26日



◆ ナポリタン


・作品コード N7705IB

・ジャンル エッセイ〔その他〕

・作者 藍井 み空 先生

・掲載日 2023年 02月14日



◆ うちのナポリタンの作り方


・作品コード N3786HU

・ジャンル エッセイ〔その他〕

・作者 hhh 先生

・掲載日 2022年 08月18日



◆ 極上の時間


・作品コード N0997HQ

・ジャンル 純文学〔文芸〕

・作者︰はちみつレモン 先生

・掲載日 2022年 05月12日



◆ 国道17号を行く小旅行――板橋から大宮。自転車強行軍


・作品コード N8508FM

・ジャンル エッセイ〔その他〕

・作者 無機名@鬱屈 先生

・掲載日 2019年 05月14日



◆ ナポリタンの喜び


・作品コード N9022EG

・ジャンル エッセイ〔その他〕

・作者 色原 理音 先生

・掲載日 2017年 09月24日


※ 食事関連で探せばもっとナポリタンに関する作品があったかもしれませんが、今回はこのような形で行ってみました。


※ 作品の紹介に関して、作者様の許可は頂いておりません。作者の方が不快に思われ連絡があった場合は、作品紹介文章を削除させていただきます。



※ 作中のヤッちゃんさんは、そういう感じの方がいたのは事実ですが、職業等は創作になります。怖くていけない面が事実になります。


◆◇◆


※ 追記 検索 「ナポリタン」では出で来なかったけれど、美味しそうなナポリタンのお話しを発掘した時に追記しようかと思います。


◆ おいしいパスタ屋さんのある街


・作品コード N3575II


・ジャンル ヒューマンドラマ〔文芸〕

・作者 RAN 先生


・掲載日 2023年 07月23日




 公式企画、秋の歴史2023 短編連載二話目となります。レトロな喫茶店の歴史と言えば、ナポリタンは外せないと思い物語にしました。

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