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決着は卒業パーティーで……(どうか俺の心を読んでくれ!)  作者: 悠木 源基


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第21章


「レディアって頭がいいし、頑張り屋だけど、意気地がないわよね。それって、はっきり言って大きな欠点だわ。

 頭が多少鈍くたって普段怠け者だって、最後に物を言うのは意気地(いくじ)、気合い、根性なのよ! 

 それがないと結局大切な物は守れないし、愛も信じられないし、誰かを本気で愛せないわ!

 私は何があってもダムリンを信じてるし、どんな困難な未来でも共に生きて行く覚悟があるわよ。貴女と違ってね」

 

「私だって……」

 

「私だって……なに?

 ラッシュフォード様を信じられなくて、彼の心を読むことも知ろうとすることも止めてしまったくせに」

 

「だってラッシュは私を裏切ったのよ。私のことが好きだ。ずっと側にいたいと言っていたのに、どうやったら私から離れられるかって、そればっかり考えるようになったのよ。

 つまり私のことを嫌いになって、疎ましくなったということでしょう?

 

 学園に入学してからラッシュは私のことを色々言っていたけれど、それは思春期の照れだと思っていたからなんとも思わなかった。

 それにダムリン殿下から注意をされてからはすっと側にいてくれたし、心の中で私に謝ってくれていたから。

 

 でも、最終学年でエメライン様が来られてからラッシュ様は徐々に変わっていったわ。一人でいたいと言い出したくせに、今度はいつもエメライン様と一緒にいて。

 だから、ラッシュの心を読むのを止めたのよ。なんで好き好んでラッシュが別の女性へ想いを募らせるのを聞かなければいけないの?

 そもそも私がラッシュの心を読んでいたのは、彼の精神を安定させるために彼の内面を知る必要があったからよ。

 でも彼は既に自分をコントロールする方法をマスターしていたのだから、私が彼の心を読む必要なんてとうになかったのよ」

 

 いつにないフリシアのきつい物言いに、珍しくレディアは感情を高ぶらせ、泣きながらこう言い放った。

 

「そうね。確かにもう心を覗く必要はなかったかもね。でも、彼の気持ちを知ろう、察しようとする努力はすべきだったわ。

 でも意外だったわ。ラッシュフォード様に執着されている貴女を私達は気の毒に感じていたのに、実際は貴女の方が彼に執着して側にいたがっていたなんて」

 

「好きな人の側にいたいと思うの当然でしょ? 貴女と王太子殿下だっていつもピッタリくっついているじゃないの」

 

「それはそうだけど、私達はそれぞれに学ばなければいけないことがあるから、別行動をすることも多いのよ。いくら仲がよくても別個体なのだから、なんでも一緒というわけにはいかないわ。

 ラッシュフォード様だって一人で何かをしたいと思って当然じゃない。それを裏切りだと捉えるなんて、それこそ異常よ」

 

「異常?」

 

 フリシアの言葉にレディアは唖然とした。自分の思考が常軌を逸していたことにようやく気付いたのだ。

 ラッシュフォードをただ守ろうと思って頑張ってきたつもりだったのだが、彼が成長するに従って、むしろ自分の方が相手に頼り、執着して、束縛しようとしていたのだ。捨てられたくなくて、離れたくなくて。

 

 自分はただの家庭教師であり、いずれはこの国の公爵となる彼とは別れ、故郷に帰ることが決まっていた。王太子の婚約者となったフレシアとは違って。

 昔、ラッシュフォードは自分を婚約者だと思ってくれていたようだが、国王陛下がそれを認めるはずがない。ミカモン魔術公国の乗っ取りを恐れているのだから。

 

 だからこそ、せめて学園を卒業するまではラッシュフォードを独占したかったのかもしれない。それなのにそれができなくなって、おかしくなってしまったのだろう。

 

 ようやくそのことに気付いたレディアが滂沱の涙を流した。すると、先程まで彼女を突き放していたフレシアが優しくこう言った。

 

「ごめんなさい、酷いことを言って。貴女が異常だなんて、そんなの嘘よ。あまりにも貴女が自分の殻に閉じ籠もってしまっているから、ショックを与えてそれを壊したかっただけなの。

 貴女って人からの感情を受け取るばかりで、自分の感情は溜め込むばかりだったでしょう?

 もう家庭教師としての役目が終わったというのなら、一人の女性として自分の気持ちをラッシュフォード様に伝えた方がいいわ。怖いからといってもう逃げては駄目よ。それでは何も解決しないんだから」

 

 するとレディアは首に横に振った。そして、

 

「仮にラッシュが私のことなんてもうなんとも思っていなかったとしても、私が本音を漏らしたら動揺してしまうかもしれない。もしそうなったら魔王様が暴れ出してしまうわ。

 本当は少しずつ吐き出していた方が良かったのに、私のせいでそれを止められてしまっていたから。

 最近はほとんど地震がないでしょう? そろそろ魔王様が溜め込んだエネルギーが爆発しそうなのよ。歴史的大災害とまではいかないとは思うけれど」

 

 と言うと、フレシアは何故かニッコリと笑った。

 

「憶測で人の想いを伝えるのは齟齬が生じる恐れがあるので止めておくけれど、ラッシュフォード様のお気持ちは貴女が考えているものとは違うと思うわ。

 彼は私達が思っているより、ずっと大人になっていたみたいよ。

 

 それに、魔王様がもし暴れても大丈夫なように、ダムリン殿下がしっかり対処しておいてくれたから大丈夫よ。

 うふっ! その上、なんと伯父様にも連絡入れておいたからなんの憂いもないわ。時は来たれり。

 貴女はただ素直に自分の気持ちを吐き出しなさい。ただし、ラッシュフォード様の気持ちも素直に聞かなければ駄目よ。わかったわね!」

 

 冷静沈着でしっかり者の姉レディアと、どちらかというと勘と勢いで無鉄砲に行動する妹フレシア……

 幼い頃から周りにそう思われてきた従姉妹同士だったが、その日はその立場が逆転していた。

 二人ともそれを照れくさく感じながらも、嬉しそうに微笑み合った。

 

『私には甘えられる人がちゃんと側にいたんだわ…』

 

『ようやく私もレディアに守られるだけでなく、守れるようになれたんだ……』

 

 読んで下さってありがとうございました!

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