番外編 補足と牢屋のこぼれ話(少しだけ)
「だから君には是非ともガードルードの母親になって欲しい。あの子も君に懐いていることだし、勿論給金は弾もう。いわば俺は君に契約結婚を持ちかけている」
青みがかった黒髪にダークブルーの瞳を持った美しいその人は、冷たい無表情でそう告げてきた。
だけど私は知っている、この人が誰よりも優しい人であることを。
夕方の喫茶店にて微笑みを浮かべていると、目の前に座ったアレクサンダーが戸惑ってこちらを見つめてくる。
黒いタートルネックのニットが様になっていて恐ろしく優雅だった。でも私は白いニットを着ているから、もしかするとオセロのように見えているかもしれない。
白と黒とできっと、対になっている。そんなことがどうしてだか、とても嬉しかったのだ。
ほわほわと、赤い紅茶から白い湯気がほんの僅かに立っている。指先を揃えて微笑んで、それを見つめていた。
さぁ、この鈍い人になんて言って愛を告げようか。どうしようか。
「私ね、アレクサンダー兄さん?」
「懐かしいな、その呼び名は。昔はよくそう呼んでいた、君が俺のことを」
「そうね? でもこれからはアレクサンダーさんだなんてよそよそしい呼び方じゃなくって。私の好きなアレクって呼びたいわね?」
見る見る内にアレクサンダーの顔が赤くなっていって、その照れ臭そうな無表情に笑ってしまう。
「ねぇ? 私、ずっとずっと前から貴方のことが好きだったの。だから契約結婚だなんて淋しいことを言わないで、ちゃんと私にプロポーズしてくれる?」
「あ、ああ。まさか君がそんな」
白い手で口元を覆って、真っ赤な顔に困った表情を浮かべて見つめてくる。
その情けない表情に愛おしさが募った。きっと私も彼もここで幸せになるべきなのだ。
「っふふ、だって私。ずっと好きだったんだもの。貴方は初恋の男性だからね?」
「はつこいのだんせい・・・・・・?」
「そうよ、アレクサンダーさん。アレク。私と結婚してくれますか?」
彼の白い手を握り締めると熱かった。きっと私の頬と同じくらい熱かった。
夜中にふと目が覚めると、ガードルードがすぴすぴと鼻を鳴らしてしがみついていた。
(ああ、そっか。俺、ガードルードと結婚したんだっけ?)
起こさないようにそっと寝台を抜け出して、トイレに行って帰ってくると。
腹を出して寝そべっていたので、苦笑しつつ白いタオルケットをかけてやる。
彼女は俺とお揃いのパジャマが着たいと言い出したので、同じフリル付きのピンク色パジャマを着ていた。
自分に選択肢があるとは微塵も思っていないし、彼女もそう思っていなかったらしい。
その安らかな寝顔を見てふっと微笑む。銀髪に青い瞳のお姫様を手に入れてしまったのだ、俺は。
「少しだけ。お腹が膨らんできたかな・・・・・・・? それとも俺の気のせいか?」
ここに自分の子供が宿っている。無事に生まれてくるといいが。
彼女を丁寧に端に寄せて、ぎゅっと愛おしく抱えて両目を閉じる。
寝台近くの窓からは静かな月光が射し込んできて、彼女の煌く銀髪が闇の中で浮かび上がっていた。
「好きだよ、ガードルードちゃん・・・・・・好きだよ、良かった。君と離ればなれにならなくて」
そうだ、もうあんな風に怯える必要は無いのだ。
(ああ、良かった・・・・・・どうかどうか子供も。我が子も無事に生まれてきますように)
明日は何をしようか、彼女に何を作ってあげようか?
そう考えると口元が緩んでしまった。熱い彼女を抱きかかえ、深い眠りへと落ちてゆく。
「ねぇ、ルーカスさん? 何だかとっても良い夢を見てしまったの! ルーカスさんが実は私のことがとんでもなく好きで幸せだねって感じの! 夢なの!」
「そっかぁ~、良かったなぁ。そんな夢が見れて。ガードルードちゃん」
(こっわ!! 怖い怖い、やっぱり独り言でも言わないでおこう、そうしよう。起きてたらまずいもんな・・・・・・!!)
「ルーカス・マクラウド? そんな男はいないぞ? 帰ってくれ、さっさと」
傲慢そうな刑務官にそう言って追い払われてしまい、ユージーンは深い溜め息を吐いた。
その手には赤い印が付いた地図が握り締められ、それに目を落として考え込む。
(おかしいな、これで四軒目だ。どの刑務所にもいない、どうしちゃったんだろう? 一体)
この前までは面会できていたのに。一体どうして彼はどこにもいないのか?
(もう少し探してみるしかないか・・・・・・あれは)
人はどうしてルーカス・マクラウドに執着しているのかと、そう聞いてくるが。
(とんだ愚問だ。何故なら彼だけが怒ってくれるから。俺のことを叱り飛ばしてくれるから)
確かに俺は淋しくないのだろう。声をかけたらいくらでも女の子は寄ってきてくれるし、たいがいの男はご飯を奢ってくれる。
(しかし、本気で叱ってくれるのはルーカス君だけだよ。あーあ、あの女の子。どうしてルーカス君の匂いがするんだろうか?)
昼時の公園を銀髪の女の子が歩いている。
白い手足に白い首筋に苛立って、いっそ後ろから襲い掛かって首でも切ってやろうかと思った。
とりあえずは地図を握り締め、ぐしゃっとポケットに突っ込んだ。
(一体どうして君がルーカス君の匂いを纏っているんだろう? 不愉快だなぁ・・・・・・・)
しかし犯罪者になるつもりは無いので、なるべく怖がらせないように甘い声を出して話しかけてみる。
「わぁ。可愛くて綺麗な女の子だ。それに、ルーカスの匂いがする」
補足
プロローグでのルーカスの説明が分かりにくかったので。
ケーキを六個買ってきて保冷魔術をかけて、玄関を開ける前に寝室へと移動させました。意外とまめな男です。
そしてプロローグでは「お昼ご飯を一緒に食べたいな」とユージーンが言っていましたが、話し合った結果夕方に会うこととなりました。
ルーカスはひっそりとウェディングドレスのカタログを請求していたりと、十年目にプロポーズ計画を立てていたので昼間デート→夕方に告白したよって報告といった流れです。
ああ、とうとう終わってしまうんだなぁと思いましたが。
魔術犯罪防止課にて、ぶっきらぼうで苦労性な男×面食いハイテンション女子が恋愛をする話を書こうと思っていて。
面食いヒロインが「顔が良すぎて次の言葉が出てこないっ・・・・・!!」とか「彼には何だかんだと言って黒のボクサーパンツを履いて欲しいの」(キリッ)とかやばめな発言をして騒いでゆくラブコメです。そこにルーカスがぼんぼん登場するんですよね。
ちなみに今日雑用課を更新するんですが、そこでもルーカスは出てきます。お別れ感がまったくないです。もうこいつらに会えないのか・・・・・ってしみじみとしていましたが、普通に出てくるんで涙が引っ込みました。
プロットも破壊されて更地となっていましたが、綺麗にまとまって良かったです。そして全ての作品において登場人物が好き勝手に動くことが判明し、非常に憂鬱です。
これからもプロットを考えず、頭を空っぽにして書いていこうかと思います・・・・・・・全部あちら任せで生きて行きます。
それでは最後までお読みいただき、ありがとうございます。
誰かがこの小説を読んで少しでも「楽しかった!」と思ってくれると嬉しいです。あー、誰かを喜ばせるようなものが書きたい・・・・・・!!




