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エピローグ

 













 何て言ったらいいんだろう、ガードルード。この愛おしさを。





(ああ、そうだ。あの後すぐに妊娠が発覚して。エミリーが産まれて俺はまた、忙しいことを理由に先延ばしにして)







 何て言ったらいいんだろう、この愛おしさを。




 君のことが好きなのに上手く言えない、煌く陽射しの中で笑っている彼女を見ると息が詰まる。




 途方に暮れてしまうから、自分の幸福に。






(愛情表現はしているつもりなんだけどなぁ~、それでも好きって言わなきゃ駄目なのかな)





 知っている、誰よりもよく知っているくせにぼやいている。



 薄っすらと目を開けようとして失敗してしまった、重たい目蓋を閉じて額に手を当てる。






(今日で結婚して十年。・・・・・・今更重たいか? でもなぁ)






 一応計画はしているんだ。



 彼女が好きだって言っていた婚約指輪を買った、本当はあの時にずっとずっと買いたかったから。






(ガードルード、ガードルード。嫌だな、もしも。俺だけが君のことを好きだったら)






 彼女はもうすっかり安心していて、以前のように「ルーカスさん、私のこと好き?」と聞かなくなってしまった。




 ガードルード、ガードルード。もう望まれていないとしたら。




 ああやって君が問いかけてくれる度に安心していたのに、あの不安そうな青い瞳を見てほっと息を吐いていたのに。




 ふいに寝室の扉が開いて、石鹸とお湯の香りが漂ってくる。





(ああ、そうだ。お揃いにしているんだった。シャンプーと石鹸)





 そんなことで口元が緩む。俺は眠った振りをしていた。



 さらりと揺れ動く衣擦れの音と彼女の足音、不満そうな気配が漂って溜め息を吐く。






「もうっ、ルーカスさんってば。待っててくれるって言ったのに!」

「・・・・・・待っていたよ、ガードルード」






 こちらの茶髪を撫でてくれる指先を掴んで、ふっと目を開けてみれば。



 驚いたように青い瞳を瞠って、ふんわりと花のような微笑みを浮かべる。



 彼女はサテン生地の白いネグリジェを着ていて、その銀髪と美しい顔立ちに見惚れていた。




 俺はもう三十九歳で彼女は二十九歳。



 好きだと言うのなら今だと言う気がした、だって今日は結婚して十年になるのだから。




 肘掛け椅子に座ったまま、こちらを覗き込んでくるガードルードの銀髪を掬い上げて、その途方も無い煌きにそっとキスをしてみる。







「・・・・・・好きだよ、ガードルードちゃん。ずっと意地を張っていて言わなかったけど。本当は前からずっとずっと好きだった。君に告白した時の気持ちのままずっと、」

「ほんっ、本当に!? ルーカスさん!?」

「えっ? あっ、ああ」








 驚いたことに彼女は焦って詰め寄ってきてそのまま、崩れ落ちて膝に縋ってきた。



 紺色のズボンをぎゅっと握り締めて、熱い息を漏らしてえぐえぐと泣き始める。






「よかっ、よかったぁ~・・・・・・ずっと一生。言って貰えないかと思ってた」

「言うよ、そんなこと。する訳が無い・・・・・・・・」






 俺だけが好きなのかと思っていた。



 真夜中の寝室で泣きじゃくる彼女の頭を撫でている、胸が詰まって上手く言えない。



 俺も泣き出しそうになって、鼻の奥がつんと痛くなる。





「好きなんだ、ずっと。言ってなかったけど。本当は拷問されたあの時に、この気持ちが届けば良かったんだけど」

「でも、遊びだって言ってたから。・・・・・・ただの欲の捌け口だったのかなって、そう思ったから」

「だったらこんなに大事にする訳が無いだろうが・・・・・・ったく、ほら」








 俺が両腕を広げると嬉しそうに飛び込んでくる、ああ。






(良かった、ちゃんと言えて・・・・・・ガードルード)






 愛おしい名前を心の中で呟いた。ふわりとシトラスの良い香りが漂ってきて、その清らかな水の匂いを噛み締める。





 嬉しそうな彼女を抱き締めて、そのまま何も言えずに座っていた。



 やがて彼女が俺から離れて、こちらを嬉しそうな笑顔で見つめてくる。







「ねぇ? ルーカスさん? 私のこと好き?」

「好きだよ、ガードルードちゃん。本当はずっとずっと好きだったんだ」








 緊張したけど渡そうと思っていた婚約指輪を、青い小箱に収められたそれをポケットから取り出す。




 俺の手の上に乗った青い小箱を見て、ガードルードが青い瞳を丸くさせて交互に見つめてくる。







「キャンディー? お菓子?」

「何でだよ・・・・・・そういう所は相変わらずなのな、お前。ほら、指をかせ」

「わっ」







 椅子から立ち上がって青い小箱を開けて、不思議そうに首を傾げている彼女の指に婚約指輪を嵌めてやると。





 彼女が青い瞳を瞠って、アクアマリンの石が嵌まったシルバーの指輪と俺を交互に見つめてくる。





 その愕然とした表情に笑いが込み上げて、悪戯が成功した少年の気分となって彼女の指先を掬い上げ、ちゅっと愛おしく口付けた。






「好きだよ、ガードルード。あの時は言えなかったけど。お前に拷問されていて」

「でも言ってた、私が信じられなかっただけだった・・・・・・・」

「それはそうだな! 是非とも反省してくれよ? そんでからえーっと」

「なぁに? ルーカスさん」






 締まらないけどちゃんとプロポーズがしたくて彼女の足元に跪いて、ぱかっと青い小箱を開けて見せる。






「本当はずっとずっと好きだった。きっと最初から、出会った時から惹かれていて」

「ルーカスさん」

「あの時ちゃんと好きだって言ってまともにプロポーズが出来たら良かったんだけど。まぁ、遅くなったが。本当はずっと好きでした、改めて俺と結婚して下さい」

「っはい! 狩り達成~!」

「何でだよ!? もうちょっとマシな言葉は無いのかよ!?」







 飛び込んできた彼女を抱き締めて笑っていた。ああ、良かった。







(今日も彼女が俺の傍にいる。もう何も怖くない、あの牢屋で待たなくてもいいから・・・・・・・)







 ようやく手に出来そうだった幸福を諦めて彼女を幸せにしようと思っていた、でも。





「うん、俺は。ちょっとぐじぐじと悩みすぎだったのかもなぁ~」

「ルーカスさん。次、お風呂入ってきてくれる? その、冷めちゃうからね!?」







 その恥ずかしそうな表情の彼女に笑って、額にキスをしてやると嬉しそうに微笑む。







「うん、まぁ。ケーキは明日でもいいか。食べたいものは他にあるんだし?」

「私、ケーキは二個よね? ねっ? ねっ?」

「勿論だよ、お嬢さん。そのつもりで俺は六個買ってきたんだからさ?」







 勿論三人の娘達も可愛くて仕方が無いのだが、ケーキを二個あげたいのはいつだって彼女だけだった。



 君は知らない、俺が「娘達に」と言い訳をして君の好きなケーキを買ってきていることを。






(うん、まぁ。これも。いつかは言おうかな?)





 その夜は満たされていて、彼女の香りに酔って過ごしていた。


 翌朝起きた彼女が何度も「ねぇ、好き!? 私のこと好き!?」と言ってきて可愛かった、また襲ってやろうかと思った。







「はー、良かった。そうだ、今日の夕方。ユージーンと会う約束をしているんだけど、来るか?」

「相変わらず唐突ね、あの人も・・・・・・勿論行く! パパも会いたいって言ってたし。孫に」

「ああ、そうだなぁ。そんじゃあエミリー達は預けるかぁ」






 今日は休日なのだし久しぶりに子供達を預けて、彼女と夕方までまったりとデートするかと考えていたところ。





 のそのそと寝台で起き上がった彼女が、青い瞳をじっとりとさせて見下ろしてくる。






「前からちょっと言おうと思ってたんだけど。ルーカスさんはエミリーだけ可愛がり過ぎじゃない?」

「えっ、うーん・・・・・・まぁ、そんなつもりは無いんだけど。お前と同じ銀髪だからなぁ~」

「そうなの? そんな理由だったの?」

「それ以外にある訳無いだろ・・・・・・・でもちゃんとアリスとアリサのことを愛しているよ。勿論お前のことも」






 期待に満ちた青い瞳に笑って、何度も「愛しているから大丈夫だよ」と言って聞かせて、着替えて朝食の準備をする。







「パパーっ! おはようっ!」

「おっ、エミリー。おはようって、お前!? 鼻血が出たんだな!?そうなんだな!?」

「じつはまだ出てる・・・・・・・!!」

「やめなさい、わざわざ鼻をほじって血を出すな!! ティッシュ、ティッシュ!」






 銀髪に青い瞳のエミリーは彼女によく似て変わり者で、その白い鼻を拭いてティッシュを詰めてやって、可愛いなぁとしみじみそう思っていた。



 彼女とよく似た可愛い女の子、銀髪に青い瞳の可愛いエミリー。






「よし、これで綺麗になったぞー? って、ぐ!?」

「パパーっ! おはようアタックー!」

「アタックー! おはようっ!」





 俺と同じ茶目茶髪で双子の娘の、アリスとアリサが叫んで飛びついてくる。



 勿論この二人の娘もガードルードにそっくりで可愛くて仕方が無いのだが、ついつい、一番下の子であるエミリーを可愛がってしまう。



 それを知っているからか最近、よくこうして抱きついてくる。





「はーあ、もう。朝からお前らはな~」

「ごはんっ、ごはんっ!」

「お腹減った、お腹減った! ドライフルーツしか食べたくないの!」

「何でだよ・・・・・・嫌いって言ってたじゃん、ドライフルーツ。この間は残してたのに」

「パパ、鼻血がまた出てきたー!」

「勝手に取るなっていっただろ!? 何で取ったんだよ、あーあ、もう! ティッシュティッシュ!」






 あの時使っていた真っ赤な絨毯の上で、娘達三人の世話をしていると何故か全身水浸しとなった彼女がリビングにやって来て。





「ルーカスさん、私ね? 顔をまだ上手く洗えないみたい・・・・・・久々に失敗しちゃった!」

「昨日もそれを言ってなかったか? まったくも~、よくそんなので働いているなぁ~」

「魔術道具の開発は出来るの! でも顔は上手く洗えないの!」

「大抵の人間はそれ以外のことが上手に出来るんだけどな~、何でだろうな~」





 ガードルードは技術職を選んで就職して、犬アレルギーのアリサとアリスの為に「僕も一緒に連れて行って」というアニマルバッグを開発して一人前に仕事をこなしていた。




 空腹のまま彼女の顔を拭いてやって、ふいに愛おしくなって額にキスをする。






「それじゃあ皆で飯を食ってから出かけるか~、今日は何かと忙しくなりそうだな・・・・・・・」

「エミリーもユージーンに会うっ! 会うっ!」

「パパ! アリスもアリサも会うっ!」

「会うーっ!」






 俺の目の前で、ガードルードそっくりの娘達がびょんびょん飛び跳ねて見上げてくる。



 ふと見るとガードルードが自分も並ぶべきだと感じたらしく、慌ててエミリーの後ろに立って両肩に手を置く。






「ルーカスさんっ! 私もユージーンに会いに行きますっ!」

「行きますっ!」

「行きますぅ~!」

「行きますーっ!」





 可愛らしい妻と同じ顔立ちの娘達にお願いをされてしまい、ふっと鼻で笑ってしまう。どうして全員無表情の真顔なのに、どことなく嬉しそうなのか。






「ガードルード、お前は最初から会いに行く予定だろ? あとそれからお前らはおじいちゃんのお家で留守番なー?」

「えーっ? えーっ?」

「ずるーい、パパばっかりずるーいっ!」

「ぶー、ぶー!」






 不満の大合唱が響く中で、ガードルードがふふんと偉そうに胸を張る。




 ああ、幸せだ。どうしようもなく。




 彼女の頭をぽんぽんと叩いてやって、銀髪に青い瞳のエミリーを抱き上げた。






「駄目だ、お前らはお留守番なー? それにおじいちゃんとおばあちゃんだってお前らに会いたがっているし。何でも好きなものを買ってもらえよ」

「わーいっ! それじゃあ行くっ! それじゃあ行くっ!」

「パパ! エミリーばっかりずるいよ、アリサもアリサもーっ!」

「アリスも! アリスも!!」

「はいはい、落ち着けってもう。順番だって」






 これこそが幸せなのだと、彼女と彼女にそっくりな娘達に振り回されているのが。






(だけど決して、俺はドマゾの変態ではないぞ・・・・・・・・!!)
























「へー、それで? 結婚式も挙げるんだ?」

「ああ、まぁ。こいつがどうしてもしたいと言い出してだな・・・・・・・」

「ルーカスさんの嘘吐き。がっつりパンフレットまで貰ってカタログだってもごもご、」

「いいから黙ってろ、お前は」





 ようやくようやく彼女のウェディングドレス姿が見れるのだから、はしゃいでしまうのも当然のことだろう。






(しかしこの年にもなって恥ずかしいな・・・・・・まぁ、するけど)






 今の時刻は夕方の十六時で、喫茶店にてユージーンと会っていた。




 あれだけ散々騒いでいた娘達もアレクサンダーが「今から遊園地に行こうか、おじいちゃんとおばあちゃんと」と言った瞬間、けろりんとした表情で「パパ、ママ、行ってらっしゃーい!」と言って手を振っていたので。







(やや淋しい・・・・・・まぁ、娘なんて。そんなもんか)






 向かいに座ったユージーンは甘く微笑んで、頼んだバナナサンデーをちまちまと掬い上げて食べていた。





 その飛び跳ねた黒髪とオレンジ色の瞳の顔立ちは甘く整っていて、左頬には青黒いドラゴンのタトゥーが施されている。




 相変わらず両腕のタトゥーも筋肉質の体もマフィアのようで、今日は白いタンクトップにデニムを履いていた。




 胸元には十字架と髑髏のネックレスがじゃらじゃらと光り、ダイヤモンドとルビーが輝いているハイブランドの時計が目に眩しい。





 一方の俺は無難に灰色のシャツとデニムを着ていて、隣に座ったガードルードはいつもの青いシャツワンピースを着ていた。





 そしてガードルードもバナナサンデーを食べている。




 俺としてはバナナサンデーを食べる気分ではなかったものの、二人が続けて頼んだ後では「それじゃあ俺もバナナサンデーで」と言うしかなく。






「それでね? 特別に貴方も招待してあげるわ、ユージーン! 私達の結婚式にね!!」

「わぁ、ありがとう。ガードルードちゃん。ははっ、楽しみだなぁ。アリサちゃん達が着飾ったのを見るの」

「お前、いちいち俺を煽るのやめろよ・・・・・・・・絶対に絶対に、お前のような男に娘はやらんからな!?」







 ユージーンが甘く笑って「ははっ、すっかりパパだ~」と言ってバナナを掬い上げ、もちゃもちゃと食べ始める。







「でも十年よ、十年。ちょっと長過ぎない・・・・・・?」

「長い、超長い」

「うるさいなぁ、も~。まったく」





 ひっそりとテーブルの下で彼女の白い手を握り締め、思わず口元が緩んでしまう。


 そんな俺を見てにっこりと甘く微笑み、ユージーンが生クリームを舐め取っていた。





「良かったね、ルーカス君。拷問されたけど幸せになって。ふふっ、ドマゾの変態だ~」

「頼むからやめてくれよ、もー・・・・・・・・」

「あのねっ? ルーカスさん、私も今度遊園地に行きたいの! 二人きりで!」

「はいはい、連れてってやるから。落ち着けっての、もう」






 散々これからのことを話し合った後、ふとユージーンから真っ赤な薔薇の花束を手渡される。




 それには何故か珍しい青い薔薇も混ざっていて、驚いて愉快そうなユージーンの顔を見つめていた。




 オレンジ色の瞳が恍惚と細められ、道行く人々の視線を集めている。






「十周年おめでとう、ガードルードにルーカス君。また俺と会ってくれるかい?」

「ああ、まぁ。それは勿論・・・・・・お前は今何だっけ? トナカイを追いかけているんだって?」

「そう、楽しいよ。一緒に来る? トナカイのスープをご馳走してあげるよ?」





 その言葉にガードルードが腕を絡めてきて、不満そうに鼻を鳴らしてユージーンを見上げた。






「一緒に行くわ、また! アリス達と一緒に!」

「うん、家族でおいで。ガードルードちゃん、愛してるよ?」

「はっ!? ちょっ、お前な!?」






 俺への嫌がらせなのかユージーンが彼女の額へとキスをして、苛立ったガードルードが足のすねを蹴り飛ばしていた。





 その後ろ姿を見送って、腹立たしい気持ちで真っ赤な薔薇と青い薔薇の花束を抱えて、彼女と手を繋いでのんびりと歩いていた。





 辺りは真っ赤な夕暮れに染まり、彼女が思い出の場所に行きたいと言い出したので公衆トイレへと向かう。





「お前、毎回こんな所を通ってきたんだな・・・・・・しかも男子トイレじゃねぇか、もう」

「女子トイレだと何かと気を遣っちゃうから! 毎回男子トイレを使っていたの、はい」

「意味分かんないぞ、それ・・・・・・はーあ、お、開いた」





 ぼろぼろと白いペンキが剥がれ落ちた用具入れの扉を開けて、一歩足を踏み入れてぱたんと扉を閉める。





 そこにはかつての黒い鉄格子と空っぽになった牢屋があって、俺と彼女は時々ここで休んでいる。




 二人きりで過ごすには最適な場所で、俺も今ではすっかりこの牢屋が気に入っていた。





「ねぇ、ルーカスさん?」

「ん? 何だ?」






 笑顔のガードルードに袖を引っ張られ、優しく微笑んでくちびるにキスをする。



 満ち足りた気持ちで抱き締めていると、まだもう少しイチャイチャしていたかったのにしゃりんとお知らせの音が鳴り響いた。




 ガードルードがポケットから魔術手帳を出して、そのメッセージを読み始める。





「あっ、パパが近くまで来てるみたいよ? ルーカスさん、一緒に晩御飯を食べないかって。どうする?」

「あー、そんじゃあ。久しぶりに皆で食べに行くか~」

「ウィリアムも誘おうっかな~、どうしようっかな~」

「やめろ、この前彼女に振られたばっかりって言ってたじゃん・・・・・・それに」






 好きだと言ってからも、何とか俺の嫉妬心を煽ろうとしている彼女が可愛かった。



 ルーカスは優しく微笑んで、ガードルードの銀髪を耳の後ろへとかけて頬に手を添える。



 二人の頭上には豪華なシャンデリアが光り輝いていた。






「・・・・・・・大丈夫だよ、もう愛しているから。もう何も不安に感じなくてもいい、今まで悪かった。本当はずっとずっとこうして可愛いと言って、抱き締めてキスしてやりたかったんだけど」

「っふふ、いいの。もう。それに好きだと言ってくれなかっただけで他には何でもしてくれたし」






 魔術手帳には遅くなると書き込んで、二人で好きなだけ寄り添って心ゆくまでキスを交わしていた。







「それじゃあ。帰るか、ガードルードちゃん。俺達の家へ」

「そうね、帰りましょう。ルーカスさん。私達の家へ」






 がしゃんと黒い鉄格子が開いて閉じて、俺達はその牢屋を後にした。



 満たされた気持ちで彼女の手を握り締め、ふと思いついて話しかけてみる。






「ガードルードちゃん。次の休みはどこへ行きたい? 久々に旅行にでも行くか?」

「そうねぇ、折角の三連休だし・・・・・・海にでも行きたい、海へ!」

「いいよ、それじゃあ行こうか。海へって・・・・・・結婚式を控えた花嫁は日焼けしちゃ駄目だ! 却下!!」

「えーっ!? そんなぁ、えーっ!?」







 でもこれから先はいくらでも時間があるんだ、俺はもうどこにだって行ける。



 彼女にソフトクリームやドーナッツだって買ってやれる。



 買い物帰りや仕事帰りの人々が行き交う中で、派手な薔薇の花束を抱えて、ガードルードと手を繋いで笑っていた。






「結婚式が終わった後に行こうぜ、ガードルードちゃん。お嬢さん」

「ぶーっ、半年後ぐらいなのに・・・・・・!!」

「それでも駄目だ、日焼けは厳禁。禁止」

「ぶーっ、はぁーい。まぁ、いいや」






 ガードルードが嬉しそうに笑って腕を絡めてきて、あまりの幸福に胸が狭苦しくなっていた。



 ああ、良かった。



 明日も彼女が俺に笑いかけてくれる、好きなだけ「愛しているよ」と言って抱き締めてその頭を撫でてやれる。







「言い忘れてたけどね? ルーカスさん。あの時は拷問しちゃってごめんね! あとルーカスさんのことが好き。世界で一番大好きなのよ? 分かった?」

「分かった、分かった。はーあ」

「泣いた? 泣いちゃった!?」

「泣いてない! いいから早くもう帰ろうぜ、腹減ったし。エミリ-達にも早く会いたいし。あんまりグッズを買い込んでなきゃいいけどなぁ・・・・・・・」






















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