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美月ちゃんって・・・・。

お姉様の介抱の甲斐あって私は、正気を取り戻したように冷静になることが出来た。

でも、こんなことになる前にお兄ちゃんのエロボイスに耐えられずに部屋に引きこもってしまったから、今、きっとママもお兄ちゃんも心配しているはず。

私はベッドから体を起こすと下のリビングへ降りて行った。

ママもお兄ちゃんも私を見るなり、「大丈夫?」と声をかけてくれる。少し罪悪感。

「大丈夫よ。ちょっとお兄ちゃんのエロボイスに恥骨をやられちゃっただけだから・・・・」と言うわけにもいかないので、私は「昨日ちょっと夜更かししすぎたのかな? 急に立ち眩みが来ちゃって・・・・。でも今は大丈夫だから。」と、笑顔を見せると、ママは「その顔色なら、本当に大丈夫そうね。もうっ! 夜更かしだなんて、心配させないでよね!!」と、ホッとした表情を見せる。お兄ちゃんも私の顔色で私の体調を判断して、「あかりは、いけない子だな。」と、叱る。

その声にお姉様が「んきゃああああああっ!! 、妾も、妾も昨日夜更かししたから、叱って!! 叱って!!」と発狂する。

・・・・。気持ちはわかる。悔しいけど、今、メチャクチャ私もドキッとしてるもん。

「やんっ! お兄ちゃん、もっと明を叱って!!」って言いたくなってるもの。でも、私は耐えることが出来ている。さっきは、お兄ちゃんのエロボイスに一撃で沈められちゃったけど・・・・・。

うん・・。大丈夫。私は耐えられる。

お姉様の魔法で暴走気味の生殖本能は抑えられている。ただ、その代償として、男心が復活し始めているのが気がかりだけど、それ以上にあの状態から脱却できたことの方が大きいと私は判断する。


「さぁ。いつまでも立ってないで。ご飯にしましょう。 

 明? 食べられそう?」

冷静に自己分析していた私にママが尋ねる。

テーブルを見ると、今日は私の大好物のマイタケの素揚げがおかずに入っている。

「勿論っ!! 私一杯食べちゃうんだからっ!!」

私はマイタケを見て、ガッツポーズをとって小さくジャンプする。

その様子がお兄ちゃんの心をとらえたのか、顔を崩す。

・・・。あ、萌えてるなぁ・・・。お兄ちゃん、妹にそんな感情抱いたらダメなんだよぉ? と、私は嬉しくなって心の中で小悪魔っぽく突っ込みを入れてた。

「ダメよ。体調が悪い時にそんなにキノコ類を食べちゃ。明の分を取って冷蔵庫に入れておいてあげるから、マイタケは明日にしなさい。」

そ、そんなぁ~~・・・。

私の体調を気遣うママの有り難い言葉は、有難迷惑なんだけど、これは母心。感謝しないといけないことは重々承知している。だから、私はママの言葉に素直に従う。


「明。明日はどうすんだ? どこかに出かけるのか?」

食事中に、お兄ちゃんが思いついたように尋ねてきた。

「うん、美月みづきちゃんとはじめと一緒にアニメショップのイベントに行くの。」

私は、スマホで検索して、明日行われるアニメショップのイベントの詳細が載っているページをお兄ちゃんに見せる。スマホを受け取って画面を見たお兄ちゃんは、「あ、これはダメだ。連れて行ってあげたいけど、事務所との絡みがあるから、こういうの勝手にいけないんだ。」と、顔をしかめながらシビアな話をする。

ふ~ん。そうなんだ。

大人の世界の話ってややこしいね。ちょっと顔を出すだけでも色んな問題が起きるのね。

「そりゃあね。俺たちは金を貰って、イベント会場に出るのが仕事だし。勝手は出来ないさ。」

お兄ちゃんは、すまなさそうに言うけれど、そういう事なら仕方ないわ。気を遣ってくれてありがとうって気にかけてくれたことのお礼を言う。

「それにしても、そういうファンと触れ合えるイベントって、楽しみだけど大変なんだよなぁ・・・・。

 滅茶苦茶なセリフを要求してくる奴がいるから・・・・さ。」

と、お兄ちゃんがにんまり笑って私を見る。・・・・いや。多分、これは、以前に滅茶苦茶なセリフを要求した私の中のお姉様に向かって話しているんだわ。

それに気が付いて私は笑ってしまった。


翌朝。私は、美月ちゃんとはじめと待ち合わせてアニメショップに出かける。

美月ちゃんは、お兄ちゃんが来ていないことを知ると、心底残念そうにしてくれた。

「美月ちゃん、お兄ちゃんのこと、好き?」

「・・うん。最近知ったけど、すごく好き。良い声優さんだよね。

 ・・・・・・あの声は恥骨に悪い。」

「「わかるっ!!」」

美月ちゃんの言葉に私とはじめは前のめりになって賛同し、お互いを見あって笑っちゃった。そうだよね、女の子ならわかるよね。お兄ちゃんの声は恥骨に悪いっ!!

それから、3人で雑談しながら歩いてイベント会場のアニメショップに着いたとき、既に会場にはたくさんのお腐れ様と思しき女子たちが集まっていた。

少し時間が経ってイベントを開始するアナウンスが流れる。このイベントは、BL作品の購入特典で、一人一セリフを言ってもらえる。私たちは、ドラマCDをその場で購入して、声優さんの前の列に並ぶ。

二人とも、どんなセリフを要求するのかなぁ・・・・・。と、思っていたら、お姉様が「この欲求不満のメス犬め、どんなお仕置きしてほしいのか言って見ろっ!! って、お願いしてほしいのじゃっ!!」って子供みたいに駄々をこねてきたので、私は恥ずかしいけど、声優さんにお願いすると、声優さんは「エッチな子だね‥。」って笑いながら、セリフを言ってくれた・・・。悔しいけど、「エッチな子だね・・・。」って言われて、ドキッとしちゃった。私は隆盛りゅうせい、不知火先輩、お兄ちゃんの3人以外は今のところ恋愛対象じゃないけれど、流石、プロね。惹き込まれちゃったわ。お姉様も大喜びでキャイキャイ言って喜んでる。

「ありがとうございました。」

私がセリフの礼を述べて列からはけると、私の後ろに並んでいた美月ちゃんが、とんでもないセリフを要求する声が背中越しに聞こえてきた。それはトンデモなくエッチなセリフで、とてもここでは書けない。流石の声優さんも顔をしかめて難色を示し、BL制作会社の人が間に入って別のセリフを要求しなければいけないほどのエッチなセリフだった。美月ちゃんは、ちょっと不貞腐れながら「じゃぁ。もう普通に” お前を俺専用の肉奴隷にしてやるから 後ろを向いて壁に手を付け” で、いいです。」と、これまたドМなセリフを要求する。

普通・・・・・普通ってなに? 美月ちゃん・・・・・。

声優さんは、苦笑しながらも、そのセリフをオッケーして言ってくれてた。

あ~・・・ビックリした。

美月ちゃんて、意外なほどドМだったのね。

その本性を知ってはじめも大層驚いたように、「び、びっくりしたぁ~。美月ちゃんて、凄いんだね。」ってイベント会場のアニメショップを出てから、驚きの声を上げる。

美月ちゃんは、声優さんに会えて暴走しちゃったの・・・・と、我に返ったのか、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら事情を説明する。まぁ、声優さんに会えてそうなっちゃう子もいるのかな? あ、いたわ。私の心の中にもそういう淫乱な人が。

「明・・。お前、妾の恐ろしさがまだわからんと見えるな・・・。お仕置きされたいのかえ?」

ご、ごごごご、ごめんなさいっ!! つい、話の流れで・・・・・。


「それにしても。美月ちゃんって百合だと思っていたけど、男の人もイケるんだね・・・。」

と、はじめが思っていても聞きにくい事を正直に話す。うーん。天真爛漫なやつめっ!!

でも、よく聞いたっ! そこは私もちょっと気になっていたのね。だって、プールの時にあんなにエッチに私に攻めて来たくせに、男の人もイケて、しかもドМだったんて、ちょっと意外。

はじめの答えにくい質問に美月ちゃんは照れ笑いをしながら答える。

「私ね・・・。別に百合ってわけじゃないよ? 女の人も可愛いから好きなだけ・・・。

 あかりちゃんのことも、実は男の子の頃から知っていたし、あの頃は、カッコよかったから、気になっていたし・・・。」

と、まさかのカミングアウト。

「え? 美月ちゃん。 それって、男の子の頃から私のことが好きだったってこと?」

「・・・は・・・はい。」

美月ちゃんは恥ずかしそうに頷いた。

「でも、明ちゃんも女の子のことも好きだよね。だって、あの時私を拒めなかったから。」

そういって、熱い視線を私に送る。その瞳は色っぽく潤んでいた・・・。その色気に私はドキッとする。そして、その時、初めて気が付いた。美月ちゃんの今日のコーディネートがとても露出が多い事に。大きく胸元が露出したタンクトップの上にアウターのブラウスを羽織っているものの、夏らしい涼しげなシースルーで挑発的だ。そう、彼女は今日、初めから私を挑発していたんだ。

その事に気が付いた私の心の中に復活し変えていた男心が復活しようとしていた。高揚して、額に汗ばむ。

その胸に抱きつきたいという欲求が私を支配しようとした時、はじめが口をはさむ。

「わかるっ!! 明ちゃんって、押せば受け入れちゃうタイプだよね。

 私も女装のやり方を教えてって頼まれた日に女装レズに持っていけるかも! って、期待しちゃったもん。」

・・・・いや。君ね。実際、私に襲い掛かって来てたからね? 覚えてないだろうけどさ・・・・。


でも美月ちゃんは、そんなはじめの言葉に異を唱えた。


「でも、私。襲い受けキャラだから・・・・。はじめちゃんみたいに押し切れないかなぁ。」


って、襲い受けキャラなんか~~いっ!!

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