彼は禁断のアイテムに手を出した。
水着デートが空けて3日目。
とうとう学校での水泳授業が始まるっ!!
既に私は予行演習というか、男子の前で水着になる経験を済ませているので、学校での水泳授業に恐れはない・・・・。ただし、女子と一緒に着替えというのが問題・・・・・・
私は、お姉様が一度心から消えた時の衝撃で男性の心を復活させてしまったので、同性の裸にも興奮する事態になっていることは、既に証明済み。だって、水着デートの時の女子更衣室で私は興奮してしまったもの。
しかも今回は全員がJKというパラダイス。
誰もが綺麗な体をしているこの世代。ここで着替えるというのは、あまりにも危険だった。
だから、その日。私は憂鬱だった。
どうしよう・・・。これ以上男の子としての心が目覚めちゃったら、私。女の子を好きになっちゃうかも・・・・。
そんな心配もあって、私はお姉様にお願いする。
お姉様。私が理性を失いそうになったら、止めてくださいね。
だって、私、やっぱり、男の人と結婚したいの・・・・・。
そう頼む私にお姉様は「わかっておる。わかっておる」と、優しく承諾してくれた・・・・。
だから、私は一応の安心はあるのだけど、それでもやはり、女の子として・・・・盗み見するように同性の女の子の裸を見て興奮することに嫌悪感を感じていた。
自分が、そういう立場になったら嫌だし、なんというか罪悪感があるもの・・・・。
ただ、それは私の思い込みに終わる。
何故なら・・・・・
「うわー。榊。何その胸っ!! いやらしすぎない?」
「明、全然、ぜい肉ないじゃないっ! まじ、羨ましい~っ」
「本当にすっごいサイズね。 ね、ちょっとだけ・・・ちょっとだけ触ってもいい? 変な意味じゃなくてさっ!!」
着替えの場にあって、逆に私は、女子たちの興味の対象に晒されていたからだっ!!
女子たちは、私の体を遠慮なく触りだした。
「うわっ!!なにこれ? たぷたぷ~~。」
「すごっ!! おっきいい~~っ!!」
女子たちは、性的に興味があるわけではなく、あくまで珍しいものに興味を示して私の体を触ってくる。
「やっ! やんっ!!
み、みんなっ!! やめてよぉ~~・・・・」
私は女子たちの衆目に晒される羞恥心と、同性の級友たちの裸体が迫ってくる状況に恐怖して、怯えてしまって、身悶えする。
しかも、中にはすっごい上手い子がいて・・・・・・「ちょっと、やめてよぉ~~・・・いや~んっ!」と、音を上げさせられた。
「あははっ! 何、甘ったれた声上げてんのよっ!
そっちの気があるんじゃないの?」
「はぁ~・・・本当に色っぽい声ねぇ・・・。
そんな声で川瀬君を誘惑してるんじゃないのっ!?」
などと、面白がられる始末。
でも、おかげで私は女の子の裸に興味を示す余裕などなく、着替えを済ませることが出来た。
そして、着替えを終えてスクール水着姿でプールに現れた時、私の姿を見た男子が歓声を上げたっ!!
「おおおお~~~~~っ!!」
と、どよめきにも似た歓声に、他の女子たちも苦笑する。
「まぁ、明は、仕方ないよね・・・・。」
「エロ過ぎるよね。この体・・・・。」
私の体は同学年の女子にとって、嫉妬の対象ではなくて、もう男子の感動に同意する存在だったらしい。
まぁ、これを原因に嫌われるよりはいいけど、それもちょっと、どうなんだろう?
男子たちの感動の声は、悪い気がしないでもないけど、別に好きでもない男子から向けられる好意の目は、すこし怖い。
むしろ私は・・・・やっぱり、隆盛の目が気になる・・・。
自分でも意識しないうちに私の目は隆盛を探していた。
そして、男子の中でも長身で筋肉質な隆盛をすぐに見つける。
そのギリシャ彫刻のように美しい筋肉美は、私の目にギラギラと痛い。目の毒。これは目の毒・・・・・。
その分厚い大胸筋。肩メロンと呼ばれる三角筋。シックスパックの腹直筋の見事さに、心も体も芯からうずく・・・。
それは当然、他の女子も同じことで、誰ということなく、「川瀬君・・・本当にかっこいい・・・。」と、ため息をついてみるのだった。
体育の時間は2クラス合同で行われるのだけれど、その合同クラスの美の象徴として、性の対象として・・・私たちは、視線を釘づけにしていた・・・。
一人は、私。大きな胸に引き締まった腰としなやかな太もも。特に大きな胸は男子の注目を集めている。
もう一人は、隆盛。その鍛え上げられた肉体美に女子の目は釘付け。
そして、最後の一人が・・・初だった。
初は、男子なのに、クラスの男子の視線を集めていた・・・。
細くて小さな体は、女性的だったし、何よりも可愛いその顔は、女の子にしか見えない。しかも、初は何故か、両手で胸を隠していた・・・。
・・・・ああ。やっぱり・・・恥ずかしいのかな?
私は、男子の目線におびえて小さくなって胸を隠す初が可哀そうになって、目が合った時に手招きした。
初は、びっくりしながらも、恐る恐る近づいてきてくれた。
「ねぇ、初。どうしたの? さすがに胸を隠さないと恥ずかしいの?」
と、私は尋ねた。
だって、初は、男の子。隠すような胸は無いのだから、隠すのは何というか不自然と思ったから・・・・・。
でも、初は、涙目になって私を見つめると「だってぇ~・・・・」といいながら、両手で隠していた胸をほんの少しだけ、はだけて見せた。
っ!!
それを見て、私は驚いたっ!!
何故なら、初の胸が小さいながらも、ぷっくりと膨らんでたのだから・・・・。
「は、初・・・・あなた・・・・・。
それ・・・・どうして・・・・?」
私が驚いて呟くと、初は真っ赤になって再び胸を隠して、目を堅く瞑る。
震える肩と、紅潮した頬。涙目になっていた様子は、初の心境が切羽詰まっていることを示していた。
「女性ホルモンに手を出したのか・・。
おそらく、ネットで購入したものじゃろうなぁ‥‥。」
と、お姉様がつぶやいた。
女性ホルモンっ!? って、あのニューハーフさんが使う・・・あれですか?
「うむ・・・・。こうなると危険じゃのう・・・・。
ネットで手に入るものは、非合法なもの。決して体に良いものではない。
かならず・・・・・悪影響が出るぞ。」
悪影響っ・・・・・!!
お姉様の言葉に私は息を飲んだっ!!
そ、それって、大丈夫なんですかっ!? 初に健康障害が出るって意味ですかっ!?
狼狽える私にお姉様が「うろたえるでないっ!! それぐらいは妾が止めてやるっ!」と、安心させてくれた。
同時に「初に言うてやれ。ネットのものは本当に悪影響が出る。絶対に手を出してはいかん。きちんと医者に処方してもらえっ!・・・とな。」と指示もする。
私は、お姉様に従って、その言葉のまま伝えると初は、肩を震わせて泣きながら「はい・・・・。」と、言ってくれた・・・。
しかし、こうなると・・・・。初は、もう普通に男子と同じ水泳の授業を受けることは出来ない。いや、受けさせるわけにはいかないっ!
そう決断した私は、担当の女性体育教師に事情を説明した。
「えええっ!!!?」と、女性教員は声を上げて狼狽えたけど、やがて、男性教諭に相談して・・・・・。本日、初は体育を見学することになった。
”校長先生の判断を仰がないと、自分たちではどうしてあげればいいのか決断できない。”
それが体育教師の言い分で、今日は初を見学させる以外にできることがないのだという。
それはその通りだろう。恐らく、私達の県でも前代未聞の大事件だ。違法に取得した女性ホルモンを男子高校生が使用していたのだから・・・・・。これは、学校だけでなく、ご両親を交えて話し合わないといけない大問題。
だから、これ以上は・・・・誰にもどうしようもできないことは、明白だった。
体操服に着替えて見学者の席に座って、私達の水泳を見学する初は、とても寂しそうに見えた・・・・。
そんな姿を見つめていた私と隆盛は放課後に決意する。
「これから、毎週。市民プールで初と泳いでやろうっ!!」・・と。