下着が届いたっ!!
・・・・・・・ど、どうしようっ!!
し、不知火先輩にバレちゃったっ!?
俺は、今すぐに言い訳を考えなければいけないっ!!
「こ、こここ、骨格ってやだな。・・・・・俺のどこが女みたいなんですか?」
不知火先輩は、じっと俺を見ている。
誰よりもきれいな顔の不知火先輩が俺を見据えている。
普段なら、見とれるところなんだろうけど・・・・・・綺麗な顔に問い詰めるように見つめられると、その美しさが、今度は怖く感じる・・・・・
そんな先輩に見つめられていると・・・・・
・・・・・・・ドキドキしちゃう。
「・・・お前が妾のマゾっぷりをどうこう言えるか」お姉様が呆れるように心の中でつぶやいた。
でも、だって!!
凄いのよ!不知火先輩の顔!!
パチパチしたおめめに長いまつ毛。細い顎。線の通った高くてほそい鼻筋。ピンクの薄い唇に白い肌。
本っ当にキレイ・・・・。
俺が先輩の顔に見とれていると、不知火先輩は「はぁっ」とため息をつく。
「君も僕をそんな風に見つめるんだね・・・・。」
え?
「これまで色んな女の子や・・・・・男から告白されたよ。正直ね。
でも、付き合いたいと思ったことはない。みんな結局、僕の容姿だけを好いてくれているのは、わかっていたから・・・・・。」
あ。
そうなんだ。先輩にとって「キレイ」と思って見つめられる視線は、外見だけを褒められている気がするってことなんだ。
「でも・・・・明。」
「でもね、明。君に見つめられるのは、嫌な気がしない。なんでだろう?
君が僕を一人の絵かきとして尊敬していてくれるからかな・・・・・。
それとも・・・・・それとも・・・・・」
不知火先輩はそこまで言うと、苦しそうにしながら心境を吐露する。
「それとも、僕が君のことを好きになってしまったから・・・・・君のことが女の子に見えてしまうのかな・・・・・。」
そこまで言って、先輩は、ハッとした表情をして・・・・・・「ごめん、忘れて・・・・・・。」と言うと、疲れ切った様子で帰ってしまった。
俺は、一人、美術室に残されてしまった。
え・・・・?
あの・・・もしかして今のは・・・・・・・
あのっ!!・・・・・・・。
「あれだけ盛大に好きと言われて、何を迷うことがある。あれは告白じゃな。
ま、無意識に言ってしまった言葉じゃ。
お前に付き合ってくれと言ったわけではない。」
・・・・
・・・・・・す、好き?
不知火先輩が・・・・・俺のことを・・・・・好きと言ってくれたの・・・・?
どうしよう・・・・
お姉様っ・・・・・私、どうしたらいいの?
「知らぬ。決めるのはお前じゃ。
女じゃと告白して「不知火の女」になるか、男に戻って忘れるかじゃな・・・・。」
・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・
「あと、他の道があるのも忘れてはならんな・・・・。」
他の道?
「・・・・・忘れたか。このホレっぽい尻軽娘が。
お前には、兄の武に親友の隆盛に初が、まだおるんじゃぞ?」
だ、誰が尻軽女ですかっ!!
・・・・・って、いうか・・・・・・・私って、誰が好きなんだろう?
皆、それぞれ個性あって、皆、女の子が好きになる男の子だよね?
「まぁ、はっきりいって乙女ゲー並じゃの。イケメンに囲まれ過ぎじゃお前は。羨ましい話じゃのぅ」
それで、そんな状況で・・・・誰かが好きって言えるのかな?
「知らぬ。妾は好きになった男とは、速攻で寝る。」
お、お姉様ッて・・・・・・・
「豊穣神とは、それでよい。まぁ、妾は女とも子を成すが、それでも妾も女じゃ。
やっぱり男に愛されたい。一晩中、側にいてほしいし、いたいと思う。
お前にとって、誰が一番かのぅ?」
・・・・・・・わかんない。
そもそも、今の気持ちだって女の子になったから、突然、湧いてきた感情だし・・・
隆盛もそれまでは友達だったし
不知火先輩も尊敬する先輩だったし
お兄ちゃんだって、大好きなお兄ちゃんってだけだった。
初なんか、女の子にならなければ、そもそも会わなかったかもしれない・・・・・。
「まぁ、よくよく考えてみることじゃの。
くれぐれも後悔せぬ事じゃ。
女になるにしろ、男に戻るにしろ・・・・な。」
はぁ、気が重い話だなぁ・・・・。
そもそも、私、男の子に戻らないといけない理由って何だろう?
うーん。
・・・・・・・やっぱり、これまでの人生が変わってしまうってことが大きいかなぁ?
女の子になるまでは、こんな気持ちにならなかったし、当然、男の子としての人生にそんな選択肢もなかったから、ずっと、男の子として生きてきた。
だから、私の人生は当然。大半は男の子の人生なんだ。
女の子の人生なんか、ほんの数日の事。
私の先祖の遺伝子のせいで、女の子になったらすぐに男の子を好きになる。順応しちゃうって、だけで・・・・・そこで好きになったのって、「恋」って言えるのかなぁ・・・・・
遺伝子上の悪戯が生み出す波によって、到来する繫殖期。それって、肉欲ってだけで「恋」って言えるのかな?
私はそんなの嫌だなぁ・・・・。
肉欲じゃなくて、ちゃんと恋をして、選びたいなぁ・・・・・
・・・・・
・・・・・・・・
私が複雑な感情で家に帰ると・・・・・
下着が届いていたっ!!
「おう、流石。プライム発送。翌日配達じゃな。早速、着てみるかえ?」
幸いなことに箱は、下着メーカーではなく、注文先のネット業者の箱。
しかも、品名も「防犯対策に下着ではなくレッグウォーマーにしてください」と記載するように頼んであったので、継母にもバレずに買えた。
ー早速、着て見るかえ?ー
お姉様の言葉を聞いて、下着をつけた自分を想像すると、私は、下着を着てみたくなった。
私は、部屋の鍵をかけると、カーテンも閉め切った。
そして、ドキドキする思いで、真新しいブラジャーとパンツに着替える。
さすが、お姉様の目測。ぴったりだ・・・・
「いずれ、それが合わんようになるからな。お前の女体はまだまだ成長過程じゃ。なにせ、妾の眷属じゃからのぅ・・・・」
・・・ああっ。かわいいっ!!・・・・・。
「・・・・聞いておらぬの・・・・・ま、しかたないか。」
私は鏡に映った自分を見て、女の子になったことを実感していた・・・・。
どうしよう・・・
どうしよう・・・・・・ずっと女の子のママでいたいかも・・・・・。
「何を言うとるか。お前はちょっと前から、男言葉を忘れるほど、女になっておるわ・・・。」
あっ・・・・。
そういえば、さっきからずっと女言葉だったなぁ・・・・・・
もう、いいかなぁ・・・。
でも・・・・・
「肉欲だけの恋愛は嫌じゃと?
・・・・・・バカな子じゃ。そんなことを考えること自体、女じゃ。」
・・・
・・・・・そうかもしれない・・・・。
もう、それでいいのかもしれない。
・・・・わからないけど。
「ま、決断を急ぐことはない。お前に戻る意思があるならば、助力はしようぞ。」
うん。
・・・・・ありがとう。お姉様。
それにしても下着だけってのも変な感じがするわね。
やっぱり、可愛い服も買ってみたいかもしれない。
そういえば、初が、量販店の服屋さんだったら、普通に買えるとか言ってたなぁ・・・・。
ランジェリーショップは無理だけど、服くらいなら買いに行けるとか言ってたし、行ってみようかな・・・・。
すると、お姉様が呆れたように・・・・・・意外な盲点を突いてきた。
「何を言うとるのじゃ、お前は。
お前は女なんじゃから、普通にランジェリーショップでも、何でも入れるじゃろうが?」
・・・・・
・・・・・あああああああああっ!!
そ、そうだった!!
私、女装男子でも何でもない、れっきとした女の子なんだから、普通に女の子の服を買いに行けたんだった!!
な、なんで、気が付かなかったんだろう?
「あの頃は、それだけまだ、お前が男に戻る意思が残っておったという事じゃろうなぁ・・・・。
自身のことを男と思っておったから、男のまま女であることをバレないようにするために、隠れて下着を着装することを考えておったからのぅ・・・・・。
今は、女としての歓びを満喫しようとしておるから、女物の服を普通に買いに行こうと思っただけじゃ。」
そ、そっかぁ・・・・そういや、隠れて下着を買うために初を脅してまで女装の仕方を聞いたんだっけ・・・・・
「ただ、複雑な話じゃ。男として生きることよりも、肉欲に身をゆだねることへの抵抗だけが、お前の男として生きる可能性を残して居る。」
うん!
肉欲に身をゆだねるのは嫌!
隆盛も不知火先輩も私を完全に女に落としたいなら、ちゃんと私を好きにさせてよっ!!て、かんじかな。
「向こうはお前の素性なんか知らんわ。ただ、不審に思って居ったり、無意識のうちにお前の女としての魅力に惹かれておるだけじゃ。」
・・・・・そうなんだ・・・・。
ふーん。
「ところで、肉欲に身をゆだねるが嫌だと申したな。
それならば、今夜からBLは禁止だな。」
やだー--------っ!!
「では、今夜は、あれにしろっ!!
ほら、職場の先輩が鬼畜過ぎてメス堕ちするあれっ!!」
やんっ・・・・・お姉様のエッチぃ・・・・・・・