表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/143

我、覚醒したりっ!!

”見えるものを見えるまま真っすぐに見る。”

お姉様のその言葉は私の心に響いた。

そう。人は期待が先行すると「物事を自分が見たいように見えてしまう」生き物だから、私は彼らの求めるものを彼らの姿をしっかりとみるべきなの・・・・。

そう気が付いたとき、私の心は大切なことにハッと気がついた・・・。


そ、そうだったわ!!

お姉様、私今気が付きましたっ!!

ギャップ萌えって大事だけど、やっぱり公式設定って守らないとだめですよね!?

私が今描いている隆盛りゅうせい総受け本は間違っていたわ!!


「なんでそうなるっ!!

 ・・・・・いや、マジでなんでそうなる。

 え?・・・・妾そういう誤解を受ける話をしちゃったっけ?」


なに、怪訝な顔をしているんですか!?

私、今、とっても大事なことに気が付いたのっ!!

変化球って確かに大事だけど、あるべきものをあるべき形のまま捕らえるのって、とっても大事ってことにっ!!

恋愛もッ!BLもっ!!

私は、そう気が付いた途端、いてもたってもいられなくなって、今まで書いた隆盛総受け本の下書きを引き裂いたっ!


「あああああっ!! な、なんという勿体ない事をするのじゃっ!?」

お姉様っ!! うるさいっ!!

私は私の漫画を完成させないとだめなのっ!!

「・・・・・な、何故か妾の言葉があかりの作家魂に火をつけてしまったようじゃの・・・・。

 全く、芸術家というものは意味が解らぬ。どこで何のスイッチが入るか見当もつかぬのぅ・・・・・」

呆れるお姉様を無視して私は鉛筆を手にすると一心不乱で紙に妄想を書き込んでいく。

その時、私は、心の中で「もっと、あるがままに・・・・ あるがままに美しくっ!!」と、唱えていた。

そこに書き込まれた物は、圧倒的に受けキャラであるべき、不知火先輩とはじめの女装レズ物っ!!

「おおおっ!! か、完璧じゃっ!!

 美しもの×美しいもの=完璧なものじゃっ!!

 どちらも魔性のような美しさを持ちながら、受けキャラらしい細身の肉体っ!!

 それだというのに二人ともヘタレ攻めという物語的なアンマッチさがもどかしくって、これは、これでっ!!

 アリじゃなっ!!」

アリですよねっ!?

いや、むしろ、こうでなくてはならなかったのですっ!

「ではっ!? では、隆盛は、どうなるのじゃっ!?

 やはり、はじめと絡めるのかっ!?」

・・・・・年下攻め・・・・

「んきゃあああああああっ!!

 し、不知火の奴がっ!! 隆盛の圧倒的な雄力おすぢからに押されて、先輩の尊厳を奪われるようにメス堕ちさせられる展開かっ!?」

勿論っ!! それは、はじめを挑発するためのものでもありますっ!!

「つ、つつつ、つまりっ!! 可愛い焼きもちを焼きながら、隆盛と不知火の間に割って入って、隆盛を・・・・・・奪い合うとっ!? そうじゃなっ!?」

ふふふ・・・。まさに、その通り・・・。お姉様、これこそ同性愛ものの最大の不思議ですっ!!

百合ものに男を混ぜて、最終的に男が百合を食ってしまう話を書いたら、殺し合いの戦争が始まるのにっ!! 女装レズに男を混ぜても歓迎されるという矛盾っ!!

「おおおおっ!! ・・・・・・・? いや、それ。別に矛盾しとらんじゃろ。

 結局、ショタ×2人と攻めキャラなわけで、普通にハーレム系のBLでは?」

女装レズって言ってるんだから、レズでしょっ!?

「・・・・いや。男同士では? そこをレズという言葉で逃げるのは、ただのヘタレじゃろ?」

は?

「・・・なんじゃ?」

・・・・はぁっ・・・・

これだから、にわかは・・・・・。

「あー-っ!? 戦争かぁ? 妾に戦争仕掛ける気かぁ~~~っ?」

ああ。いいです、いいです。そういうの・・結局、お姉様には、まだわかりませんよね。

この領域の話は・・・・・。

「・・・・・ちっ、見損なったぞ明。

 女装キャラの真の魅力もわからずに、女という欺瞞の皮を被せるようなヘタレだったとはなっ!!」


あーっ!! わかりましたよっ!?

じゃぁ、作品で納得させればいいんでしょっ!? 作品でっ!!

今から、隆盛を混ぜたシーンまで書くから、向こう向いててくださいっ!!

「はっ!! たわけっ! 

 妾が、そのような不純なBLをみとめるとおもうなやっ!?」






「んきゃあああああああっ!!

 最っ高っじゃっ!! 完全に女になり切っておるかのようで、それなのにまだ先輩としての威厳を保とうとしながらっ!! それでも隆盛の女になって、はじめと隆盛を奪い合って絡み合うシーンなどっ!! 

 身重である妾の恥骨が攻撃されておるわっ!!」

ふふふ・・・。参りましたか、お姉様。

新しい世界の扉が開かれたでしょう?

「ううう・・・うむっ!!

 悔しいけど・・・・うむっ!!」

しかし、私がこういった境地に到達できたのもすべて、お姉様の言葉のおかげ・・・・・。

「・・・・・わ、妾。そういう意味で言った言葉じゃ・・・・。」

とにかく、よしっ!!

この設定なら、最初っからイチャイチャしてて、無駄な場面展開のためのページもいらないっ!

薄い本の名に恥じない薄い本が作れるはずですっ!

「・・・し、しかしのぅ・・・。」

なんですか?

たけるはどうするのじゃ?」

っ!! 

「・・・・忘れておったのか? 

 あの、ラスボスを・・・・。」

・・・・ふっ、不覚っ!!

つい、学園物というジャンルにとらわれて、お兄ちゃんを出すのを忘れていたっ!!

ど、どうしよう・・・。

続きものにしようかな?

「うむ。それも一つの手じゃな。

 なに、同人誌は個人の趣味じゃ。好きなようにすればいい。

 自分の思う様に書き、思う様に作ればよい。描きたいものを書き残すくらいなら、続きを作った方がよいと妾は思うぞ。」

そ、そうですよね。そもそも、少ないページ数で全てを表現することなんか不可能ですし・・・・。

今は20部くらいの小ロット生産も受け付けてもらえますし・・・。予算を考えて小部数で3部構成のストーリーにすれば何とか・・・・。

「そして、強いていうならば、ここにはもう一つ大きな問題がある。」

まだあるんですかっ!? ・・・ちょっと嫌になってきました・・・・。

「そうしょげるな。悪い話というわけでもない。」

・・・というと?


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


!!?

「これはお前があの者たちを好きになるために描くもの。ならば、登場人物たちに愛される対象として、お前が出てこないのは、問題じゃ。」

そ、そそそ、それはっ! レズ物の恋人役を男がかっさらうのと同じ。

BLで女の子が最後に恋人をかっさらう展開とか、死刑確定ではっ!?

「ふふふ・・・・。焦るな焦るな。浅慮は損じゃ・・・。つまりの・・・。」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


ああああああっ!!

そ、それは「おい、そこ代われ」系の夢絵というかっ!! ・・・・・えええええっ!?

アリなのっ!? 自分を男性化させて、BLの中に入り込ませるなんてっ!? アリなのっ!?

「ありに決まっておろうがっ! 何よりも、お前は元男。BL化させて何の問題があろうかっ!?」

・・・・やだ・・・。私すっごい事を考えてる。

お兄ちゃんや隆盛に・・・・女装レズ娘二人組に・・・・・

メチャクチャ、エッチな目に合わされてるドМの私の妄想・・・・・。

「それでよいっ!!

 さぁ、己の欲望のままっ! 書き進めよっ! 明っ!!

 そして、妾をたのしませるのじゃ~~~っ!!」

はいっ!! お姉様っ!!! 私、描きますっ!!

欲望のままに妄想のままに、すっごいエッチな事されちゃってる私の漫画をっ!


火に油を注ぐとはまさにこの事・・・・。

滾り切った私の創作魂と欲望は、全60ページの大作を・・・・・・・明け方までに描き上げてしまった・・・・。

朝日差し込む部屋の窓を見ながら・・・・「ああ。朝チュンか・・。」と、呟く私・・・・。

全エネルギーを使い切って枯れ果てた私は自分の書いた大作を見て、倦怠感を抱えた体で自分自身に呆れながら思うのでした・・・。

・・・・・・私、何やってんの・・・?と。


ああ・・・お姉様。私、分りました。

これが賢者タイムなのですね・・・・。これと同じ現象が繁殖期ラヴシーズンの終わりの起こるのですね・・・・。

お姉様は、ニッコリ笑ってから、

「一緒にすなっ!!」

と一喝するとともに、私のお尻を叩くのでした・・・・・。

きゃああああんっ!! と、私の可愛い悲鳴が夜明けを告げるニワトリのように鳴き響きました・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ