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自然体

「そんなに無理することないのに・・・・・。」

「ごめんね、あかりちゃん・・。私まで入っちゃったから、沢山食べさせることになっちゃって・・。」

等々、私を慰める言葉を全員が言ってくれた・・・。

違うのっ!! そうじゃないのよっ!?

私はそういう微妙な感じになりたくなかったから、頑張ってたのっ!!

やめてっ!! そんな可哀想な目で私を見ないでっ!?

「あ~あ。恥ずかしいのぅ。

 正直に言わんからこんなことになるのじゃ。」

まさかのお姉様からの駄目出しッ!

・・・・・どうしよう・・。私、立ち直れないかも・・・。

もう。何を食べてもおいしくないわ。

きっと、一生、私何を食べても美味しいと感じなくなるんだわ。

「悲劇のヒロインを気取って可哀そうな子アピールしても無駄じゃぞ。

 妾には人間の心なんか読めるのじゃからなっ!

 あかりが妾の気を引こうとして演技しておることぐらい先刻承知じゃ。」

もーっ!! ちょっとは付き合ってくださいよっ!!

「いやじゃ。いつまでも拗ねとらんと、さっさとあ奴らの相手をしてやれ。」

え~・・・。お姉様厳しい~・・・。

・・・・て、いうか。人間の心が読めるなら、お姉様に確認したいのですけど、美月みづきちゃんって、本当に百合娘なんですか?

「ふ~む。

 なるほどな・・・・。それは気になるところか?」

そりゃ、そうですよ。あれが行き過ぎた友情なのか、本当に百合なのかで私のするべき対応って変わりますよ。

「しかし、お前は女でも攻めてくれるなら、ウェルカムじゃろ?」

いや、恋愛ってそれだけで成立するとは限らないじゃないですか?

私は将来、愛する旦那様と子供に囲まれた生活がしたいと思います。

「ふむ。

 同性とセックスだけの関係は構わないが、最後まで連れ添えないというわけじゃな。」

・・・・まぁ、そうですね。

私もお姉様みたいに赤ちゃん産みたいですね。

その大きなおなかを見てると、幸せそうに見えますし・・・・・。

「ふっふっふ・・・・。妾は豊穣神ゆえに子を産むのは最高の歓びじゃ。

 妾が産み落とす生がこの世の生きとし生けるものを救うのじゃから、これほどの幸福があろうか。

 その幸せがわかるというなら、あかり、お前は妾の眷属としては立派なものじゃ。」

えへ。

褒められちゃった!

「しかしな。妾は、美月の気持ちについては教えてはやらん。

 それは、美月をお前で解決するべき問題じゃ。

 それを自分たちの力で乗り越えなければ、お前たちは成長できぬ問題じゃからな。」

どういうことですか?

「それは自分でかんがえろ。さぁ、そろそろ、あ奴らの相手をしてやるのじゃ。」

はーい。

私は納得できないものの、確かにずっとこのままというわけにもいかないので、現実世界の人たちの相手をしてあげないと・・・。


そう思いながら、私は私を慰めてくれる皆に

「ごめんね。ちゃんと正直に言えばよかったね。」

そう素直に謝ると、皆は、ホッとしたように笑うと「じゃぁ、仕切り直して食べようか」というお兄ちゃんの一言で食事を再開する。

その後はとりとめのない話をしながら、(ただし、はじめだけが、隆盛に「はい、あーん。」のラブラブアタックを何度もしかけてたけど)無事に食事を終える。

途中は地獄だったけど、明るいムードのままで終われてよかった。

あ~。よかった、みんなで楽しく終われて・・・・。

・・・・

・・・・・・・・

・・・・違うっ!!

何してんのっ? 私っ!?

ここで勝負を決める話、どうなったの?

皆で今日ここに来て、滑り落りて、ご飯を楽しく食べた。だけっ!?

昨日と今日と何が違うのっ!?

どうしよう!? 私結構、女子力あると思ってたのに、これじゃ私、全然、勝負できない女の子じゃないのっ!!

私は、自分のダメダメっぷりを自覚して、愕然とするっ!!

そうなると、今日はもうダメ。私はもう一気に距離を詰めようと頑張りたいけど、それも出来ずに食事を楽しく終わらせてしまった。あの時にもっとはじめみたいにグイグイ、アタックをかけないといけなかった。なのに、もうお料理というようなアイテムが残されていない上に、食事をしてからは、お兄ちゃんのお仕事の都合で時間がない。

しかも、皆、お食事の時の私の失態のことを気にしてて、気を遣ってエッチな攻撃をしてこないっ!?

なんで?もっと、ハグとかしてきてくれていいのよっ!?

美月ちゃんですら、私に抱き着いてこないしっ!!

焦る私の気持ちも知らずに時間は過ぎていく・・・・・。

来た時は、あれほど興奮した女子更衣室での着替えも、この気持ちのままじゃ何も感じない・・・。

あ~はいはい。私の方がオッパイ大きいですよーだ・・・・。

こうなったら、もう開き直って、心の中で悪態をつく。

着替えが終わった後だって、お兄ちゃんと車の中で二人っきりなのに、お兄ちゃんは、多分、気を遣って敢えてお仕事の話しかしない。

お仕事の話なんか、お家に帰ってからでもできるでしょっ!?

もっと、そのエロボイスで明のことを罵ってよっ!! 私すぐに堕ちちゃうからねっ!?

・・・・・

・・・・・でも、結局、お兄ちゃんとも何も進展しないまま。今日は終わってしまった・・・。



どうしようっ!! お姉様っ!? 私、駄目な子でした?

家にかえってから燃え尽きたジョーのようにベッドに腰かけながら今日一日のことを思い出して落ち込む私がお姉様にすがると、お姉様は私を慰めてはくれず、

「これだけ長い間、引きずっておいて今更何を言うとるのじゃ。

 だから言うたじゃろ。もっとしっかり考えてからやれと。

 お前は、時間をかけて、相手と距離を詰めていかねばならんタイプなのじゃ。わかるか?」

と、たしなめられてしまった。

ううっ・・・・・。わかりました。

お姉様は、いつも正しい。そりゃそうか、だって、お姉様は神様だもんね。

「まぁ、そうは言うてもあれじゃ。

 お前には性転換とか体質的に先祖返りしてもらっておるから、繁殖期ラヴシーズンというものがあるという事も忘れるなよ?」

繁殖期ラヴシーズン・・・・そういや、そういう設定ありましたね。

「設定ってなんじゃ。そんなことを言うても、真実じゃから仕方あるまいに・・・・・。」

まぁ、そうなんですけど。ちょっと場面が明るくなるかなぁって。

・・・・・でも、繁殖期ラヴシーズンを過ぎると、具体的にどうなるんですか?

「そりゃ、賢者タイムが来る。」

賢者タイム・・・・?

って、なんですか、それ?


「事を終えた後のちょっとしたアンニュイな感じのことじゃが・・・・。まぁ、それはいいわ。

 具体的に言うとじゃな。オスにそれほど好意を感じなくなるわけじゃな。」


え?

じゃぁ、男の子を好きにならなくなるんですか? 私・・・。

「いや、お前ら人間は年中発情期のエロエロ生物じゃから、恋をしなくなるわけではないが、

 今ほど恋に落ちにくくなるというわけじゃ。」

な、なんか年中発情期のエロエロ女神さまに人間のことを滅茶苦茶言われてる気がする。

「・・・・・明よ・・・・。ワレ、今、何とぬかした?」

いえ、ちょっと・・・・。すいません。

「お前な。妾が本気出したら、このあたり一帯を沈めることぐらいわけないんじゃぞ?

 言葉には気を付けよ。」

はい。

「全く、妾が慈悲深い豊穣神だからこの程度で済んでおるのじゃぞ。これが竈神じゃったら、火あぶりされとるわ。」

こっわ・・・・。

「・・・・話を戻すとじゃ。

 繁殖期ラヴシーズンが過ぎた後、お前は、今ほど恋に落ちにくくなる。

 要するにちょっと手を握ったくらいでは、そこまで恋心を刺激されん。男どもは攻めにくくなるの。」

え~・・・。こう言ったらなんですが、チョロさも私の魅力の一つだと思うのですが・・・・・。

「おおうっ・・・・かなり自虐的なことを言う。

 捨て身のネタじゃな。

 じゃが、まぁ、そういう部分もあるな。隙がありすぎる女もどうかと思うが、隙が全くない女も男は苦手じゃからのぅ。

 ほどほどにチョロいのがよい。」

・・・ですぅよね~。ガード高すぎるのは逆効果ですよね。

「昔からの。歌垣には「美女の悪口歌」というのがあって、ガードが固すぎる美人は今期を逃すという事を揶揄する歌がうたわれとる。まぁ、そういうことじゃな。」

私、どうすればいいのかな?

チョロい演出をすればいいのかな?

「・・・お前に腹芸は無理じゃ。

 それよりも・・・のぅ。ここは素直に

それでもお前を落としてくれる男こそが本物と思うことにした方が健全じゃと妾は思う。」

・・・・たしかに。


「自然体でいよ。 

 そして、見えるものをみえるがまま真っすぐに見て、あ奴らの思いに応えてやるのが一番じゃ。

 いずれ来る繁殖期ラヴシーズンの終わりが来ても、混乱せぬようにそれだけは教えておいてやるわ。・・・・」


”見えるものをみえるがまま真っすぐに見て”

お姉様のその言葉は私の心に響いたのでした・・・・。

 





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