いけずっ!!
私とお兄ちゃんは見つめあったまま、手を握り合ってお互いのことを見つめあった。
「明・・・・。」
「武さん・・・。」
私達はお互いの名前を呼びあうことで、これまで自分たちが恋人同士になることの障害になっていた兄妹、兄弟としての一線を越えることができた気がした。
それは、恋人同士として一歩を進むことと同時に、兄妹としての関係の終焉を意味していた。
私が幼いころに両親が再婚して、それで出来た私のお兄ちゃん。お兄ちゃんはずっと、弟だった私を守ってくれていた。そんなお兄ちゃんだったけど、私がお姉様に女の子に変えられてしまってから、私のことを異性として受け入れてくれて、私と結婚したい意思を伝えてくれた。本来ならば、その時に私たちは、兄妹、兄弟関係は終わり、新たな一歩を踏み出さなければいけなかった。
でも、私にとってお兄ちゃんはずっとお兄ちゃんだったし、お兄ちゃんにとっても私は守らなければいけない妹という存在であることを乗り越えることが出来なかった。
それが、たった一言「お兄ちゃん・・」という称号を私が捨てたことで乗り越えてしまうのだから、人間って不思議ね。
なんていったから・・・・? そう、コトダマ。言葉には魂がある。その人の気持ちだけを含んでいるのではなく、言葉そのものに魂が宿るという意味。だから言霊という。
私達は、今、その言霊の力を実感していた。
私の口から零れた出た言葉には、魂が込められていたから、言葉以上の力で私たちの関係を束縛していた。そこに私の気持ちに嘘が合ったら、こんなことにはならなかったと思う。私は本気でお兄ちゃんの事を敬愛していたし、本当のお兄ちゃんのように思っていた。そして、お兄ちゃんも私のことを本当の弟、妹として受け入れてくれていたからこそ、私の言霊を受け入れてくれた。
私の口から零れた言葉を、武さんは乾いた砂が水を吸い込むように飲み干して満たされる。
水は砂に吸われることで交わりあい、湿気を含んだ土となり、新たな存在に作り変えられるように。私の魂が込められた言霊を武が受け止めて新たな関係に作り変えられるの。
「武さん・・・。」
私は、噛みしめるようにもう一度、その名を呼ぶ。武さん・・・・。愛おしいその名を・・・。
武さんは、私の呼ぶ名を味わうように聞いてから、深く一度頷くと、「じゃぁ、そろそろ行こうか?」と言って、体を起こす。
私は、今の時間を楽しみたいのに、武さんはもう、時間のことを気にしていた。男の人って、本当に現実的ね。
私は、今をもっと楽しみたかった。だから、武さんのその冷静さが、憎たらしくって、「やぁん・・・・・起こしてぇ~・・・・。」と、寝転がったまま手を伸ばして甘えたような声を上げて、困らせてやるの・・・・・。
でも、武さんは、私の手は取らずに、私の腰を抱きかかえるようにして持ち上げて、私を起こす。
「きゃああっ!!?」
私がびっくりして声を上げると、武さんは、「はははっ、軽いなぁ・・・。明はっ!」と、嬉しそうにわらって・・・・・それから、私の尻を鷲掴みにして、「こんなにステキなお尻をしてるのにな・・・。」と、セクハラ発言っ!!
でも、私は、武さんにお尻を鷲掴みにされると、その言葉に対して怒りをあらわにするどころか、雄ライオンに押さえつけられたメスのように抵抗する気力もなく、服従してしまいたくなる。
ああ・・・・。やめて・・・
そんなことをされたら・・・私、今すぐにでも武さんを受け入れたくなってしまう。
体の芯がうずき、私は身をよじらせながら、「や・・・・・やめて・・・」というのが精一杯。
それを武さんが、どう受け取ったのか、わからないけど、「・・・おっと」といって、手を放すと「ちょっと羽目を外しすぎたな。ごめんごめん・・・。」と謝った・・・・。
羽目を外しすぎて・・・・・というからには、武さんは、私が拒絶したと思ったのかもしれない・・・。私は気持ちが伝わってないことが歯がゆくて、お兄ちゃんの腕に手を当てて「・・・・そうじゃないの・・・ばかっ」と、言って拗ねて見せる。
そうじゃないのよ、武さん。嫌も嫌も好きの内というか、これだけ気持ちが高ぶっている今の私なら、武さんが強気に出てくれれば、受け入れていたと思う。
公衆の面前で唇を奪われても、肌に舌を這わされても・・・・・嫌だ嫌だと小さな抵抗を見せながら、それでも征服されるシチュエーションを求めていたのに・・・・っ!!
女の子を鈍感さでじらすなんて、酷い男っ!! 女の子に手が早く、多くの女性を手込めにしてきた武さんが、こんな気づかいするなんて・・・・・。
「そんなことわからないなんて、まだまだ”お兄ちゃん”ねっ!!」
私は、あそこからもっと深く進展しなかったお兄ちゃんの優しさが逆にちょっともどかしくなって、そう言っていじわるを言ってやるんだからっ!!
「おい、そりゃぁ、ねえだろ・・・・。何が正解だったんだよ?」
と、苦笑しながら私の後を付けてくるお兄ちゃん・・・。
お兄ちゃんのバーッカっ! 女心の分からない朴念仁には、良いお薬よっ!!
私とお兄ちゃんが、歩いて皆の所へ戻ると、初がすっかり出来上がっているように、頬を赤らめながらも嬉しそうに隆盛に抱き着いて、その分厚い胸板に顔をうずめるように小首をかしづかせていた・・・・。
そして、私が目が合うと、「これ、私のだから‥‥」と、宣言するかのように、背伸びすると隆盛のホッペに口づけした。
「ああーっ!!!!」
き、キスしたぁ~~っ!!
ちょ、ちょっと、何してくれてんのよっ!!
私はビックリして声を上げると、周囲の人がビックリして、こっちを振り向いた・・・・。
「こ、声が大きいってっ!!」
不知火先輩が、恥ずかしそうに声を潜めて注意する。
だって、・・・・・・
だってぇ~~・・・・・。
そして、隆盛も恥ずかしかったのか知らないけれど、「おい、よせよ・・。」って、言いながら掌で優しく初のおでこを押して、自分に抱き着いたその体を押し離す。
「いやああ~ん・・・・。」
名残惜しそうに初が鳴いた・・・・・。その声の可愛らしい事・・・・。
もしかしたら、さっき私がお兄ちゃんに甘えた声を上げた時よりも可愛いかもしれない・・・・。
隆盛もその声にドキッとしたのか、珍しく顔を真っ赤にしてるし、お兄ちゃんも不知火先輩も少し萌えてしまったのか、ちょっとニマニマして初の可愛らしさを味わっているように見える・・・。
そっかぁ・・・・男の人って、こういう声に弱いのね・・・・・。
ロリコンの隆盛だけじゃなくて、この二人まで虜にするんだから・・・・。男の人ってお姉様の言う通し、本質的にロリコンなのかもしれない・・・。
私は初に嫉妬しながらも、初のテクニックを勉強する。流石は、動画で多くの男性を手玉に取る美少年・・・。勉強になるわぁ・・・・・。
その後、昼食をとって解散しようという話になって、私達は、水着のまま入れるレストランで昼食をとることにする。
席は、最初「お兄ちゃんと私」、「不知火先輩と美月ちゃん」、「隆盛と初」の組み合わせで座った。これは、初が隆盛から離れようとせずに強引に決まりかけた組み合わせだったけど、そこに不知火先輩が異を唱えた。
「まだ、勝負は決まっていないはずだ。
ここは男女に分かれて座るべきじゃないかな?」
不知火先輩の声には迫力があった。それだけ、私のことを思ってくれている証拠・・・。その言葉は私に向けられたmのであることはある程度気が付いていたけれど、私以上に、初が不知火先輩の声に反応してしまって「ごめんなさい・・・。」と、謝りながら、すごすご隆盛から離れたので、男女の組み合わせで座ることになった・・・・。
男性は、左から隆盛、お兄ちゃん、不知火先輩。
女性は、初、私、美月ちゃん。
という、順番で座ることになった・・・・。
これが意外なことに最っ高だった!!
目の前に座るイケメン諸君の美貌と肉体を堪能しながら、両脇に美少女を侍らせる・・・・・
女性としての私と男性としての私の両方を満足させるシチュエーションじゃないっ!
ああっ!! こ、これほどのハーレムがあるのっ!!?
私は心の中でガッツポーズをとった。