表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/143

心震える男性・・・。

「ようしっ!! じゃぁ、泳ぐかっ! 

 種目は何にする? クロールか? バタフライかっ!?

 俺はなんだって負けねぇぜっ!!」

スポーツ万能でイケメンなのに頭が悪いところだけが玉にきずの隆盛りゅうせいが意気揚々と、競泳をしようと言い出す。

いや・・・。君、テーマパークのプールを何だと思ってんの?

「誰が、そんなことするか・・・・。川瀬、君はバカなのか?」

不知火先輩が呆れたように言う。

すいません、先輩。この子、ガチでバカなんです・・・・。

しかし、隆盛は納得できずに反論する。

「なんだって? 泳がないのか?

 じゃぁ、その競泳パンツは何ですか?

 飾りですか?」

その質問にお兄ちゃんも不知火先輩も呆気にとられる・・・・

そしてしばしの沈黙の後、お兄ちゃんが「飾りに決まっているだろう? あかりに見せつけるためのな・・・。」と、背筋がゾクゾクするような声を出しながら私を流し目で見るものだから、私はたまらなくなってしまう。

いや、お兄ちゃんがガチで演技して誘惑してきているのだから、女の子ならば、この声を聴いてしまったら、誰もがゾクッとくるだろう。その証拠に美月みづきちゃんも男の娘のはじめも一瞬、身震いしていた。また、通りすがりにお兄ちゃんの声を聴いてしまった女性たちも凄い勢いで振り返ってお兄ちゃんのことを物欲しそうな目で見ていた・・・・。

彼女たちに罪はない。女性の恥骨を直撃するお兄ちゃんのこのエロボイスは、神の恩寵。人の身で抗える訳もない。

不知火先輩と隆盛も、自分を差し置いて他の男が女性の注目を集めるという異常事態をほとんど経験したことがないので、周囲の反応に驚きが隠せない・・・・。


「もしかして・・・・声・・・・か?」

隆盛は、天性の勘の良さで、女性がお兄ちゃんの声に魅了されていることに気が付いた。

その言葉にお兄ちゃんは、「悪いが、こっちは声のプロなんでね・・・。」と、気障ッたらしいセリフを言い放つ。

その威力やすさまじく、私も美月ちゃんも「やぁん・・・・カッコいいっ!!」と、思わず口にして出してしまうほどっ!!

はじめに至っては私たち以上のダメージを受けてしまったらしく、「ふにゃあああん・・・・。」と、蚊の鳴くように弱弱しい声を上げながら、私の背中に隠れて前かがみになる。

ああ・・・。私たちと同じように恥骨をやられるといはいえ、はじめは男の子。いや、男の娘か。

前かがみにならざる理由があるのだろう・・・・。特にはじめはそのロリータ体形に似合わぬご立派様の持ち主。ビキニの上にフリルの付いたスカートを履いて隠しているとはいえ、ふくらみを隠したくなったのだろう・・・・。

私は、はじめの耳元で「大丈夫。そのフリルのスカートなら、はじめのご立派様でもちゃんと隠せるから・・・・。」と、助言する。するとはじめは、恥ずかしいのか涙目になって「・・・・・ご立派様言うなぁ・・・。」と、言い返してきた・・・・。


しかし、とにかく。このまま同じ場所にいたら、私はおろか、他の女の子も恥骨をやられてしまう。私たちは一定の場所にとどまるべきではない。いくらお兄ちゃんに恩寵を与えた神様が、その威力を調整してくれたとはいえ、それでも相変わらず女性の恥骨を直撃する威力は衰えていないのだから、このままでは罪なき女性の恥骨が切なすぎることになってしまうっ!!

とりあえずこの場を離れるために私は、美月ちゃんの手を取ると、「行こっ! 楽しく遊びましょうっ!!」と声をかけて、美月ちゃんを連れ去る様にして歩き去る。

「やんっ! まってよ、明ちゃんっ!」

私の方から手を繋がれたことが嬉しいのか、美月ちゃんが可愛らしい声を上げながら、照れ笑いを浮かべて私の腕に抱きついた。その豊満なオッパイが私の腕に潰されて、大きな谷間はがさらに強調されて通りすがりの男性の興味をそそる。

・・・・私は、お兄ちゃんとか不知火先輩たちなら、ああいうエッチな目で見られても、嫌な気がしないけど、他の男の子からあんなにいやらしい目つきで見られるのは嫌・・・・。美月ちゃんは嫌じゃないんだろうか・・・・・?

そう思いながら、美月ちゃんを見つめると、私と目が合った美月ちゃんは照れ臭そうに「えへへ・・・」と笑う。

ああ・・・・。この百合娘にとって、今はそれどころじゃないのか・・・。恋は盲目というか、もしかして、美月ちゃんが虐められていた理由って、オタク趣味じゃなくて、この百合百合っぷりじゃないの?



さて、遊ぶと言っても、体力のない私と美月ちゃんは大きめの浮き輪を借りて、流れるプールで一緒にプカプカ浮くことにした。すると、意外なほど活動的なはじめが「折角、テーマパークに来たんだから、滑ろうよっ!!」と、強引にスライダーに乗ろうと誘ってきた。

はじめは、「やだやだ。怖いもんっ!」と言って、抵抗する私の手を取ってずんずん進んでいく・・・・。ううっ! や、やっぱり力じゃ、男の子には勝てないっ! 小っちゃいけど私なんかよりもはじめは力が強いので、苦も無くスライダーに連れ去られてしまう・・・・・。

「ここ、二人用の浮き輪を貸してくれるからさ、カップルで滑れるんだよ?」

と、嬉しそうにはじめが言うと、男子3人は黙ってはいなかった。

「ようし、ここは正々堂々とジャンケンで決めようじゃねぇかっ!!」

「いいだろう、僕は異存がない。お義兄にいさんは、どうですか?」

「いいぜ・・・・。やってやろうじゃないかっ!!」

と、すっかり私が滑ることを拒否する権利を忘れて盛り上がっていた。

「最初はグーっ!!」

で、始まるジャンケンは、隆盛が一番を勝ち取り、次が不知火先輩。最後はお兄ちゃんという順番に決まってしまった。

ええええええ~~~~っ!! わ、私、3回も滑るの~~~っ!

と、恐怖に震えていると、はじめと美月ちゃんが抗議する。

「明ちゃんだけズルいっ! 私も隆盛と滑りたいもんっ!!」

「わ、・・・・私も明ちゃんと滑りたいっ・・・・こ、怖いけどっ・・・」

隆盛は自分の胸を太鼓みたいにドンドン叩くはじめの頭を撫でながら、「二回目はお前と一緒に滑ってやるから・・・・。」と、ステキな笑顔を浮かべて言う・・・・。そんな素敵な笑顔で言われて、何にも感じない女の子はいない・・・・。はじめも顔を真っ赤にしながら、浮ついた表情で小さく頷くのが精一杯だった・・・。

ああ・・いいなぁ・・。ああいうの。

私ももっと優しく可愛がってほしい・・・・・。私はちょっとだけはじめに焼きもちを焼いた。


「じゃあ、行こうか?」

と、隆盛は、大きな掌を私に差し出す。

優しい声と優しい笑顔は、私を怖がらせないためのものだろう・・・。その優しさが嬉しい・・・・て、いうか。憎たらしいほどステキだ。

そう、隆盛はこういう男だ。

強く、雄々しく、曲がったことが大嫌い。傍若無人で恐怖政治を引いているかと思えば、弱者をいたわる優しさを持ち合わせている。

きっと、空手流儀のトップの家系という特殊な環境が隆盛を戦士として、紳士として育て上げたのだろう・・・・。私の勝手なイメージかもしれないけど、スポーツで大成する人って、大体が自分勝手でわがままで協調性がない。スポーツのエリートで育ってきたから、「他の事はしなくていいよ。」と言われてきた人は、スポーツの世界ではそれは厳しい指導を受けているのだろうけど、それ以外の部分は、わがままに育っていることが多い気がする。なのに隆盛は、とても気配りが出来て優しい。

隆盛は、そういう子。

・・・・・・女の子だったら、誰だって、こんなカッコいい人。

好きになっちゃうんだから・・・・。

私は、隆盛が差し出した大きくて優しい手を取りながら、胸の高鳴りに心震えていた・・・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ