恋のライバルっ!!
私の腰を抱き寄せる不知火先輩は細身の体だけれども、やっぱり男性なので女の子になってしまった私には、とても力強く感じられる。そして、肩を抱き寄せられるのと腰を抱き寄せられるのとでは、ドキドキ感がまるで違うことも知る。
腰を抱くという行為は人類にとっては、性そのものを現す行為なのだと改めて思う。
だって、抱き寄せられた途端、私は不知火先輩のものにされてしまった感が半端ないもの・・・・。
こんな風に感じてしまうのは私がお姉様と同じドМだからなのか、それとも不知火先輩の美貌がなせる業なのかわからないけど、腰を抱き寄せられて耳元で囁かれるたびに私は体中の力が抜けるというか、ドンドン、エッチな気持ちになっていく・・・。
・・・ああ。やっぱり、私は今。女の子になってしまったんだ・・・・。
不知火先輩に男性としての力強さに魅力を感じている。そして女の子として扱われることにこれ以上ない歓びを感じている。
だから、私は例え美月ちゃんの水着姿に興奮したとしても、それは一時の気の迷い。
私はやっぱり、女の子なんだ。
不知火先輩は、私にそう自覚させてくれた・・・。
その事が、どんなことよりも今は嬉しい・・・・。
「ほら、明。ちゃんと集中して?」
不知火先輩に、そう優しく諭された時、私が手にしたふるいには、もう小麦粉は残されていなかった・・・。
私はずっと不知火先輩ばかり熱い瞳で見つめていたから、手にしたザルの重さなど気にも留めていなかった。
「明・・・。そんなに見つめられたら、僕は照れちゃうよ?」
などと、不知火先輩が潤んだ瞳で言う。
「ああああっ!! な、何ちゅういやらしい男じゃっ!!
女をその気にさせておいて、なおかつ、辱めるようなことを言うなんて・・・・。めっちゃ来るっ!!
いいなぁっ!! 明っ!! お前、本当に羨ましいのじゃぁあああああっ!!
だ、大体、不知火よ! お前もそんな燃え上がった瞳で何を言うのじゃ。
全く、不知火の上のお口は嘘つきじゃなっ!!」
不知火先輩の一連の行動は、私はおろかお姉様まで発狂させる。
「き・・・・・気を付けろ、明っ! こ奴、気が付いておるぞっ!!
妾達がドМだという事をっ!! 多分、これからめっちゃ虐めてくれるはずじゃっ!!
明っ!! 気を抜いたら、一撃で妾のように体が泣き始めるぞ・・・あっ・・・・はああんっ!」
ああ。お姉様・・・。既に落ちちゃったのですね・・・。
私も心の中で一人始めてしまったお姉様のあげる甘ったるい声が聞こえる。
お姉様は私の視界を通じて、私が受けているものを肌で感じることが出来るので、今、かなり来ているらしい。
わかる。めっちゃわかる。だって、私も今、メチャクチャにされたいもの・・・・。
と、私がいやらしい気分になった時、ドンッ!!と音を立てて、美月ちゃんがバターとお砂糖を混ぜ終えたガラスのボウルを机にたたきつける。
「あの・・・・。ここは、そういう部屋じゃないんですけど・・・。」
と、涙交じりのジト目でこっちを見る。
こわっ・・・。
いや、これは私たちが悪い。お料理の時間にいくらなんでもイチャイチャしすぎたわね。
私と不知火先輩は、我にかえってパッと離れるんだけれども、美月ちゃんの怒りの矛先は、どうも不知火先輩にあるらしく、不知火先輩をきっと睨みつけると、私の腕を抱いて、「明ちゃんに・・・・エッチなこと・・しないでくださいっ!」と、震えながら言いだした・・・・。
私は、美月ちゃんの震える肩と顎の振動から、美月ちゃんがどれほど勇気を振り絞って私を守ろうとしているのか悟った・・。
・・・いや、でもね。美月ちゃん。
不知火先輩は私の恋人候補であって、別に私をいじめてるわけじゃないのよ・・・と、言いかけて、私は自分の腕に押し付けられた美月ちゃんの柔らかい胸の感触に愕然としたっ!
・・・・こ、これはっ・・・!!
私ほどじゃないけれども・・・・かなりの巨乳っ!!
間違いないっ! 絶対にⅮカップはあるっ!!
私は自分の胸が高鳴るのを感じるっ!! ボディタッチにはボディタッチ。さっきまで燃え上がっていた私の乙女心を一蹴するがごとく、男心が再燃し始めた証拠だった・・・。
落ち着けっ!! 私っ!! だ、だだだ、大体。女の子の体に欲情したからってどうするの?
私、ドМだよ? 超受け身だよ?
どうするの? 美月ちゃんに・・・・・力強い男の子ならわかるけど、可愛い女の子に攻められて、楽しいの?
・・・・・やっば・・・・アリかも・・・。
私は脳裏で思い描いた美月ちゃんに攻められる百合シーンを想像するとゾクゾクしてしまう自分に気が付いてしまった・・・。
いや、そういや。私、すでにお姉様に攻められるの結構好きになっちゃってるし・・・・女の子もありなんじゃ・・・・
・・・・こんなにも何でもありになっている自分が怖い・・・・。
いけないわ。そんなの・・・だって、それってレズじゃんっ!!
立ち直るためにもここは一つ、名残惜しいけど勇気を振り絞って、美月ちゃんの腕から離れないと。
私は「ごめんね。美月ちゃん。まじめにやるから・・・ね?」と言いながら、その腕をほどくと、美月ちゃんは「やあんっ!!」と、だだっこのように抱きついてくるっ!
ああっ!! こ、この天然娘っ! 年頃の女の子が、こんなにも気安くオッパイを他人に押し付けるんじゃありませんっ!!
一刻も早く美月ちゃんのエッチな体の誘惑をかき消さないとっ!!
それには、不知火先輩の美貌を見て、自分を取り戻さないと・・・・。と、思って不知火先輩を見ると、不知火先輩は見当違いの方向を見ながら、「お・・・お前ら・・・・。」と、呆然自失気味に呟いている。
不知火先輩の視線の方向を見ると、私達とは違うテーブルで隆盛と初が抱き合って、お料理をしている姿が見えた・・・・。
え・・・・。ちょっと待ってよ・・・・。
どういうこと?
私は状況がつかめない。だって、隆盛が初を後ろからハグしながら、楽しそうにお料理している。
「どうした? 手が震えてるぞ?」
「ほら、手元があやふやになってるぞ・・・。」
と、隆盛が初を虐める言葉を言うたびに、その耳たぶに甘噛みする。
そのたびに初は体を痙攣させながら、ハァハァと呼吸を乱す。
そして初も初で
「やぁん・・・・もっと抱っこしてぇ~・・・
・・・・・ほらぁ、僕小っちゃくて柔らかいでしょ? ねぇ?」
と、むしろ隆盛をけしかけるように甘えるのでした・・・。
(うっわ・・ガチのBLじゃない・・・・・エッロ・・・・・)と、思うよりも早く、私の心に嫉妬の火が付いた。
「お料理しに来たのに、何してるのよっ!!!」
と、自分のことを棚に上げて思わず大きな声を上げてしまう・・・・。その言葉に初が「やああん。・・・・明ちゃん、邪魔しないでぇ・・・。」と、私を挑発するように甘ったるい声を上げながら隆盛に腕を絡めるものだから、私はもう、我慢が出来なくなって、初から隆盛を引き剥がす。
「やりすぎっ!!」
と、隆盛の頭をポカリと叩く。でも隆盛は私の方なんか見ずに不知火先輩の方を見ながら「だからいったろ? 嫉妬するのはどっちかわからないって。」と不敵に笑いながら言った。
見ると、初から引き剥がすために隆盛に抱き着いた私の姿を見て、不知火先輩の綺麗なお顔が嫉妬に歪んでいるっ!
ああ・・・不知火先輩が・・・・・あの綺麗なお顔を歪めて・・私に嫉妬しているの?
なんかちょっと快感・・・・。
て、それどころじゃないっ!!。隆盛っ!! 私の気を引くためにここまでするのっ!? 初が隆盛のことを知ってるくせにっ! これじゃ利用された初が可哀そうじゃないっ!!
私は思わず隆盛の顔を引っ叩いてやろうかしらと、思った時、お姉様が衝撃的なことを言う。
「いや。本気じゃったよ・・・。
隆盛は本気で初を可愛がっておったよ・・・・。」
え・・・・? それって・・・・マジですか?
「マジもマジじゃ。
初は恐ろしい子じゃのう。あの愛らしさじゃ。
年頃の男が戯れにもあの子を抱き寄せたりしたら、燃え上がってしまうわな・・・・。」
・・・・やっぱり、初って私のライバルなんだ・・・・。
でも、私がそう自覚したとき、私のもとへ美月ちゃんが走ってきた。
そして、今度は隆盛から私を引き剥がすと、声高々に宣言するっ!!
「私の明ちゃんに・・・・エッチなことしないでっ!!!」
その言葉にその場にいた全員が冷水を浴びせかけられたかのように固まってしまった・・・。
・・・え? お主、今。なんと言うた?
私は、突然の告白にキャラ崩壊してしまうのでした・・・・。