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私が女の子でありたい理由・・・・。

「どうしよう・・・・。」

何度やってもお兄ちゃんが放つ恥骨直撃のエロボイスに私とお姉様は逆らえない。トライするたびに二人して心象世界に引き戻り、お兄ちゃんの声を反芻して身悶えするしかない状態だった。

私達は何度も何度もトライしたので、現実世界だったら、すでに2~3時間は過ぎたであろう時間を過ぎている。それほどの時間をかけて、お兄ちゃんのエロボイスに挑んだのだけれども、全く解決の糸口が見つからない。


「お兄ちゃんの声を聴く前に、美味しいケーキを思い描けばいいんじゃないの?」

たける様の声を聴く前に、嫌いな食べ物を考えてみてはどうじゃ?」

「お兄ちゃん以外の声優さんのエロボイスを思い出して打ち消してみては?」

たける様との幼少時の思い出で嫌な思い出を反芻してみてはどうじゃ?」


等々、私とお姉様は考えつく限り、お兄ちゃんのエロボイス対策を考えて見たものの、何をどう試してみても上手くいかなかった。

「こうなったら、もう諦めて、そのまま子作りを始めたらどうじゃ?

 お前とたける様なら、さぞかしかわいい赤子が生まれると思うぞ?」

とうとう、お姉様は問題を投げ出してしまう始末。

でもっ!!そういうの恋愛とは違うと思うもんっ!

「ええじゃないか。肉欲から始まる恋愛でも。

 最終的にお前が誰よりもたける様を愛しているのなら、それは純情というものじゃ。」

面倒くさくなって、うまいこと言って私を丸め込もうと考えていませんか?

「ぎくぅ!!

 あかり。お前バカのくせに賢いな。よく気が付いたな。」


・・・・いや。流石にバカにし過ぎでは?

「うーむ。さりとてどうしろというのじゃ? もう、妾とお前の頑張りでどうにかなる相手とは思えぬがな。たける様は神の恩寵で与えられた美声に加えて、たゆまぬ努力の末、妾達をとろかせるエロボイスを手に入れたのじゃ。こればっかりは、どうにもならぬのでは・・・・?」

・・・

・・・・・確かに、どうにもならないのかもしれない・・・・・。

はぁ。皆はこんな声を相手にどうしてるのかしら?

でも。全てを諦めそうになった時に私が何気なく呟いたその言葉が、事態を打破する答えとなっていた。


「・・・・そうじゃっ!!

 それじゃよ、あかり。そもそも、他の女たちは、どうやってこの声に耐えておるのじゃ?

 たける様のファンは妾達だけではあるまい? 妾達と同じようにたける様を愛する多くのファンが恥骨をやられておるじゃろうに、どうして、たける様は無事なのじゃ?

 本来ならば今頃、たける様は、その声に魅了された女子たちに裸で迫られ過ぎて、歩行もままならぬ状態であってもおかしくはあるまい?

 なのに、なぜ?

 なぜ、妾達だけがここまでエロボイスにやられとるのじゃ?」


そうか! つまり、他のお兄ちゃんのファンがどうやって対策しているのかわかれば、この問題を解決できるというわけですね!

「その通りじゃ。

 ・・・・・少し待っておれ。妾が時空を超えて、過去の女どもがどうやって耐えていたのか見てきてやるわ。」

・・・・・・いや、時空を超えるって・・・・。

お姉様は、こともなげに凄い事を言ったかと思うと、心象世界に私を残して忽然と消えてしまった・・・・・・。

ええ~~!?

私、待っている間。何をすればいいのかしら?

・・・・・お姉様を待っている間、私は、お姉様が私の心の中に作り出した異界「心象世界」の中で、一人待つしかない。

その間に私は、これまで自分の身に起こったことを振り返ってみる。


・お姉様に女体化させられた時のこと。

・女体化してから、隆盛りゅうせいの男らしい肉体や不知火先輩の美貌にドキドキしたり、お兄ちゃんのエロボイスに恥骨をやられるようになってしまった時のこと。

・いつの間にか4人から迫られるようになり、私自身も彼らを求めるようになってしまったこと

・そして、私自身が男に戻りたくないと思いだしたこと・・・・


思い返せば、自分でも訳が分からない人生を歩んでいるなぁ・・・・私・・・・。

そもそも、なんでこんなに女の子になることに抵抗が無いのだろうか・・・・・?

その事について、改めてじっくり考えてみるのだけれども、思い当たる節は一点しかなかった。

その一点とは、「私自身が、男の人を好きになってしまったから」ということ。

私が女の子でありたい理由は、実は男の人が原因なんだ・・・・・・。

あの3人の誰かにずっと愛されたいから、その思いを捨てたくないから、私は女の子でありたいと願っている。

私にとって、最重要項目は、やはり恋愛なんだ。

だから、やっぱり色欲に溺れて身をゆだねてしまうのって何か違うんだ。私は、本気で好きになった人に全てを捧げたい・・・・・。お姉様を待つ間、私は改めてそう思った。


・・・・・そういえば、私の心の中にお姉様がいない時間なんて、本当に久しぶりだな・・・・・。

本当の意味で一人きりになれたような気がする・・・・

・・・・・・・怖い・・・。

私は、改めて今、自分が一人になったことを考えた時、喜びよりもこの孤独に怯えていた。

肩が震えて、呼吸が乱れ、恐怖から涙がこぼれ落ちる。


怖いっ!!

怖いっ!! 一人きりってこんなに怖い事なんだ。

これまで心の中から、ずっと私を支えてくれたお姉様がいないと私は不安で不安で仕方が無くなってしまった。

頼りになる人がいなくなったことで本当に私は怖くて「お姉様・・・早く帰ってきてっ!!」っと、泣きながら何度もつぶやいた・・・。

自分の肩を抱きかかえるようにして身を震わせながら、心象世界の中で震えて待つ時間は苦痛でしかない。そうやって恐怖の時間を過ごしたものだから、お姉様が外界から戻ってきてくれた時、私は思わずお姉様に抱き着いて・・・・声を上げて泣いた・・・・。


「あああ~っ!! 怖かったよぉ~・・・・。

 お姉様。もう、絶対に私を一人にしないでっ!!」


なのに、お姉様は、泣いてすがる私を押し戻すと、とても残酷なことを言うのでした・・・・・。


「ええか? あかり。これから妾は、しばしお前と離れる。

 思えば妾達は共鳴しすぎておった。そのせいでたける様への愛も強くなってしまって、それが原因で、エロボイスに簡単にやられてしまうのじゃ。

 先ほど少し離れ離れになって気が付いたのじゃ。妾の中でたける様への思いが若干薄れてきたことを・・・。

 このまま現実世界に換算すると半日ほどの間、妾達が冷却期間を置けば、元通りになるはずじゃ。」


お姉様の提示する解決策を聞いた私は一瞬、軽いめまいを覚えたが、直ぐにお姉様に抱き着いて

「やだっ!! 

 お姉様と離れたくないっ!! ずっと、一緒にいてくれないと嫌なんだからっ!!」と、駄々をこねるのでしたが、お姉様は私を突き放すと・・・・・・


何も言わずに私の心の中から出て行ってしまったのでした・・・・・。


いやあああああ~~~~~っ!!! お姉様っ!! お姉様ぁっ!!


心象世界に半狂乱になってお姉様の名前を叫び続ける私がいた・・・・。

現実世界で半日。その時間。誰もいないこの世界に一人っきりになるというのは、本当に苦痛で、わたしの心はズタズタに引き裂かれる思いだった・・・・。

そして、それは本当に心を引き裂いている時間だと悟ったのは・・・・・



私の中で3人への思いが少し薄れていることに気が付いた瞬間だった・・・・・。

その思いは、私が女の子でありたいと思う理由だったのに・・・・。

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