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揺れる思い・・・・

 いよいよ私の恋愛模様も混乱の様相を呈してきた。

 最初の内は圧倒的に私はお兄ちゃんが好きだった。その理由の一つにお兄ちゃんの恥骨に悪い声があるのだけれども、それも今はお姉様との取引で大分、我慢できるようになった。それでもお兄ちゃんが好きな理由は、幼いころからずっと私を支えてくれたお兄ちゃんへの思いがあるんだと思う。その思いがあるから私は3人の中で一番お兄ちゃんの恋人になりたいと思った。それはすなわち、お兄ちゃんのお嫁さんになるという事。

 そのことについて何も思わないわけではないのだけれども、私はそれを歓迎できるほどにお兄ちゃんのことが好き。

 ・・・それなのに私は、お兄ちゃん以外の男の人から告白され、心が揺れ動いている。


 親友だった隆盛りゅうせいは誰よりも気心が知れた仲だった。親友だったがゆえに本当の恋心を抱くのに時間がかかったけど、いま、私は隆盛が好き。隆盛は男の子だったころから、私をリスペクトしてくれて特別扱いしてくれた。その特別扱いの方向が、恋に変わった。きっかけはお姉様の見せた夢が原因ではあったけれども、隆盛はそこから確かに私を好きになってくれた。その思いの強さは抱きしめられたときに伝わってくる隆盛のぬくもりから感じられた。隆盛のその気持ちに嘘はないと思う。だから、隆盛に全てを投げ出してもいいくらいに今、私は隆盛を信じられる。


 美術部の先輩だった不知火先輩は、他の2人とは全く違う方向で私にとっての憧れだった。

私が気ままな趣味の絵描きだとしたら、不知火先輩は生まれついての芸術家。

部活動の時間に私は不知火先輩が絵を描く姿から、多くのものを学んだ。その学んだものの多くが私には実践できないものではあったのだけれども、それでもその時、学んだものは私の中で生きている。

中学生の頃よりも確実に絵描きとして成長していると思う。不知火先輩はきっと美大に進学するのだろう。そして、私も不知火先輩を追いかけて同じ美大に行きたいと思っている。それくらい尊敬している。

その上、不知火先輩はこの上ないくらい、美しい。

その美しさを武器に私を捕えようとする。私はまるで女郎蜘蛛の巣にかかった蝶のように、不知火先輩の美しさにからめとられてあがくだけ・・・・。


3人ともとても好き。大好き・・・・。

なのに私は、いつか3人の中から一人を選ばないといけなくなる。そう思うと気が重くなる。

思えば、以前。お兄ちゃんと付き合うから他の二人とは付き合えないと断った時、私の心は確かにまだ熟してはいなかった。3人と正しく向き合っていなかった。だから、思い切って断ることが出来た。出来てしまった・・・・・。


でも、今は違う。私には、そんな簡単に3人の内の誰かを選ぶことなんて出来はしない。

「はぁ・・・・・どうしようっか。」

一人、自室で深いため息とともに出てくる言葉は、そんなことばかり。

ずっとこのままの関係を続けられたら、それはそれで楽なんだろうけど、3人の気持ちに誠実に応えるためにも私は近いうちに3人の内の誰かを選ばないといけない・・・・。

お姉様に相談しても

「しらぬ。

 それはお前が決めることじゃ。

 ・・・・・・妾なら3人ともいただく」

 とか、言うだけ。私の参考にはならない。

「当たり前じゃ。誰かの意見を参考にする? 他人の気持ちなど参考にしてどうする?

 大切なのは、お前が誰を思っているかということじゃろうが!!

 例えば、お前は妾がたける様にしろと言ったら、そうするのか?

 それが本当にお前の思い人だったとしてもじゃ、その気持ちを決めるのが他人でいいはずがないじゃろうがっ!

 お前の気持ちはお前が決めろ!!」

私の心を読めるお姉様に隠し事は出来ない。私が心の中で思うほんのちょっとした愚痴にもお姉様は容赦なく突っ込みを入れてくる・・・・。それが正論過ぎるから、私には反論の余地がない。

てか、私。本当にプライバシーが無い状態なのよね。

「もちろんじゃ。お前は本来なら我が眷属の蛇。我が配下。プライバシーなどあるわけがない。

 妾には、お前が3人の誰が一番好きかもわかっておるし、お前がどのBL作品が好きで、どのシーンが一番()()かもわかっておる。」

ちょ、マジすか?

「マジじゃ。

 当たり前じゃろう。一緒におかずにしておる仲じゃぞ。お前の好みなどお前以上に心得ておるわ。」

ええ~っ!? さ、流石に恥ずかしすぎる・・・。

「意外なのが、あかり。お前は妾の眷属じゃというのに、妾ほどドМじゃないのう。

 Ⅿ気はあるが、ドМじゃない。

 もう一つ、妾のノリに付いて来れないのが、寂しいのう。もっと二人で盛り上がりたいのじゃが。」

お姉様は、ドМ過ぎるんです。


「にしてもの・・・・・・。

 お前はそろそろ決めないといかんと考え始めたわけじゃな?」

・・・・はい。

「1学期が終わるまでか? それとも夏休みが終わるまでにか?」

・・・・うう~ん。そ、それが決めかねてて・・・・。

「まぁ、早期に決めればいいというものでもないし、長引けば、それだけ傷口が深くなるというもの。

 さじ加減が難しいところじゃの。」

・・・・・次のデートの時に決めてもいいのかもしれない。

「それは早いの。」

それには理由があります。

あのね、お姉様。私の心の数値化。また見せてもらってもいいですか?

お姉様は、黙って頷くと、虚空に私の心のグラフを出す。


「もはや数値の意味を説明する必要はないの?

 隆盛が18。

 不知火が18。

 隆盛も不知火も伸びたのぅ・・・・・・

 じゃが、たける様はさらに伸びて25じゃ・・・・・。」


やっぱり・・・。

私は自分の気持ちがずっとお兄ちゃんに傾いていることを知っていた。

2人とは、ずっと会っているし、ずっと触れ合っている。

だから数値が上がるのは当然なのだけれども、お兄ちゃんは、会ってなくても数値が上がる。

私はその事を心の底で感じていた。

だって、会えない間。私はさみしかったから。

会えないからこそ、思いが強くなるってことはあると思う。お兄ちゃんはそういう存在。

2人は会えば会うほど思いが強くなる。

だから、これ以上、恋人候補として会ってしまうと、私は本当に誰のことも決められなくなるほど好きになってしまうかもしれない。


「好きには・・・・なるじゃろうな。

 それは、お前が妾の眷属だからという事だけが理由ではない。

 そもそも愛というものは、一人にだけ注がれるものではないからじゃ。」


そうなんですか?

「それはそうじゃろう。例えば誰かに恋して、失恋したとする。その人間は、失恋した相手以外は、もう誰も愛さないのかえ?

 そうではあるまい。人は何人でも愛せるように出来ておる。

 ただ。他の人を愛せないほど好きになりたいと憧れているだけじゃ。

 憧れ、自分もそうなりたいと願う。だから、一人を愛することを尊ぶようになるのじゃ。

 お前は、その途中におるにすぎん。

 その途中で複数から好意を示され過ぎれば、そりゃ、全員愛してしまうこともあるじゃろうな。」


私は、その意見を両手を挙げて賛成することは出来ない。だって、やっぱり、複数の人間と交友して好きになるとかいけない気がするもの。

ねぇ、お姉様。やっぱり、そういうのって不純じゃないかしら?

私は今の状況が異常だと思う。違うかしら?

「違うの。全く正しくはない。」

どうして?

「そりゃ、お前。現代の常識で考えるから、そうなるんじゃ。

 それこそ、一昔前なら・・・・・いや、神の尺度でものをいうたわ・・・・それこそ平安の頃なんぞは、一人の女に幾人もの男が群がって求愛して、語り明かして、その上で一人を選ぶという事くらい知っておろう?

 そうやって男を選ぶやり方が異常と感じるのは、現代の尺度であって、人間の恋心の在り方の根本とは違う。人の感情を基準にものを考えれば、色々な男と関係を持ってから一人を選ぶ方が自然なのじゃ。」

ああ・・。そういう風習。確かに世界中にあったわね。

そう思うと、今の状況って自然に思えてくるから不思議ね。


・・・・でも、お姉様。私、やっぱり、このまま3人とも好きになってしまうのが怖いの・・・・。

なんだか、3人の気持ちを弄ぶみたいだし・・・・・・。

私のその問いかけには、お姉様は大きく首を振ってこたえる。


「安心せい。あかり、お前は必ず特定のある人を選ぶ。

 それはお前よりもお前の気持ちを知っておる妾が保証する。

 お前は、あの3人の気持ちを弄ぶようなことは絶対にできん。そんな真似ができる人間でないことを妾が保証してやろう。」


お姉様はそういうと、とびっきりの笑顔を私に見せてくれた。

ああ・・・・。悔しいけど、私、お姉様にそんな笑顔をされたら、逆らえない。お姉様のいう事を信じてもう少し時間をかけて3人を見たいと思えるようになってしまう。

私に呪いをかけて女の子にしたくせに、ずっと私を心の中で支えてくれたお姉様をいつの間にか私は、誰よりも信頼するようになっていたから・・・・

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