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やっぱり、王子様だっ!!

放課後になると、私はいつものように美術室に行くのだけれども、その日は、いつもと違う事態が起こった。

今朝、私を睨みつけていた先輩たち6人が、美術室へ向かう渡り廊下で私を待っていたから・・・・・。

「ね、君がさかき君?だよね・・・・・?」

先輩の一人が私の行く道を阻む様に立ちはだかる。

さかき・・・・ああ、そうだ。私、ほとんど呼ばれないから忘れていたけど「さかき あかり」がフルネームなんだ。

いや、そんな冗談を言っている場合ではないわね。向こうはやる気になっているんだから。

ま、でも大丈夫。私にはお姉様が付いている。向こうが暴力で脅してこようものなら・・・・。

・・・・

・・・・・・でも、先輩たちは暴力で迫ってくるはずがなかった。だって、女の子だし。

「君さぁ・・・・・・元男なんだって?」

かなりグサリと来ることを言われた。

私は、相手にしないように先輩をよけて先に進もうとしたのだけど、他の先輩も廊下に対して横一列に並んで私を通せんぼする。

「あの・・・・部活なんで通してください・・・・・。」

私がそう言っても、誰も通してはくれなかった。それどころか無言で真っすぐに私を見ていた。

・・・・・

こわい。

いくら相手が女の子だって言っても、今は私も女の子だし。それに6人と対峙したら、やっぱり怖いわけで・・・。

そして、私がそうやって怯んでいるのを見て、自分の優位を確信した先輩たちが次々に私を責める言葉をいう。

「あのさ、君。何様のつもりなの?」

「不知火君と馴れ馴れしすぎない?」

「不知火君の事、どうおもっているわけ?まさか、付き合えるとでも思ってんの?」

「元男が付き合おうとか夢見るの止めてくれないかな?」

「ちゃんと身の程をわきまえてくれるんなら、うちらも何にも言わないけどさぁ・・・・。」

「うちらの同中の子からさ、前に榊君と不知火君が歩いてるの見たって話を聞いてさぁ・・・・・。ちょっと挨拶しておきたいわけよ。」

全員が矢継ぎ早に私に敵意のこもった瞳で言葉を投げかけてくる。

めっちゃ怖いっ!!!

・・・・・・やだ。誰か助けて・・・。お姉様。助けて、お姉様っ!

でも、お姉様は、何もしてくれない。

きっと、私の身に危険が迫っていないから助けくれないのだろう。どうしよう・・・怖いよぉ・・・・

そうやって助けが来ないまま、先輩たちは更にヒートアップしていく。


「不知火君はさ、皆のものだからさ。君みたいな元男に付きまとわられて、不知火君が可哀そうじゃない。」

「あんたみたいな元男が不知火君と付き合ってるなんて噂が立ったら、アンタ責任取れるわけ?」


酷い・・・・・。

こうやって私を元男呼ばわりして傷つけるのが目的なんだ・・・・・。

正直、すごく傷ついた・・・・

悲しい。・・・・・悲しいよぉ・・・・・


私はこらえきれずに涙を流すと、先輩たちは勝ち誇ったように私の頭を撫でながら、「ま、これからは気を付けなさいよ?」と言って立ち去っていく。

私は悲しくてその場に座り込んで嗚咽する。

我慢が出来なかった。怖くて・・・・・辛くて・・・・悲しくて・・・・・。

悲しくて・・・・・。

「うわああああああ~ん。」

声を上げて泣いてしまった・・・・

でも、その時だった。


「まて。」


と、不知火先輩の声がした。

振り向くと6人の先輩たちに立ちはだかる様に不知火先輩が立っていた。

「・・・・・お前ら。なんのつもりだ・・・。」

珍しく、不知火先輩が怒りに満ち溢れた顔で、6人の女生徒たちを威圧する。

「断っておくが、あかりにアプローチをかけているのは僕の方だ。君たちに明が責められるいわれはない。」

不知火先輩に睨まれた6人の女生徒たちは泣き出しそうな顔をして、何も言わずに走り去ってしまった。

その背中に不知火先輩はいう。

「明は、魅力的な女の子だ。顔だって可愛いし、何よりも僕と同じ志を持つ芸術家だっ!!」

それだけ言うと不知火先輩は、床に座り込んだ私に近づいて「大丈夫だったかい?」と、声をかけてくれた・・・。


「はい・・・・。大丈夫です。・・・・・・・」

カッコいいっ!!不知火先輩っ!!。

まるで王子様みたいっ!

私は窮地を救ってくれた王子様を見てポーっと呆けたようになってしまう。

そんな呆けた私を見て、不知火先輩は「可哀相に・・・・こんなに気が動転してしまって・・・・もう大丈夫だからね。」と言って私を抱きしめてくれた・・・。

し・・・ししし、正面ハグっ!!

隆盛のバックハグは、エッチすぎて気がどうかなりそうだったけど、この正面ハグは、なんて言うか全く別物ね。私の心が甘くとろかされてしまうのを私は実感しながらも、抗えなかった・・・・・。

優しくて、かっこよくて、美しい先輩。

トクン・・・・トクン・・・・と、胸が甘くトキめいている。

ずっとこうしていてほしい。

私は、思わず自分からも腕を伸ばして先輩に抱き着いてしまった。

「・・・・先輩。カッコよかったです。・・・」

そんな私に不知火先輩の方も安心したように「そ、っか。」と言った。


私たちは、しばらく廊下に座り込んだまま、抱きしめあっていた。

それが5分か10分かわからないけど、その間に私の涙はすっかり止まっていた。

「先輩・・・・ありがとうございます。おかげで、落ち着きました‥‥。」

私が体を話すと先輩は、「名残惜しいよ。」なんて冗談を言いながら立ち上がった。

「ね?あかり

 僕はヒョロヒョロで頼りなく思えるかもしれないけど、君を守るためなら、どんなことでも出来るんだよっ!!」

不知火先輩はそういうと、そのきれいな顔をほこばらせてステキな笑顔を見せてくれた・・・・。


その笑顔に見とれた私は「先輩・・・キレイです・・・・。」なんて言っちゃったものだから、不知火先輩は「それじゃ、あべこべだよ。それはボクがあかり、君に言うセリフじゃないか!」なんて嬉しそうに笑った・・・・。

ああ。綺麗な先輩は、やっぱりどこまでもスマートだっ!!

・・・・・と、思っていたけど、やっぱり先輩も男の子ね。女体の変化に敏感というか・・・・。私の変化をあっさりと見破った。

「ところで、あかり・・・・。君。また色々と大きくなってるね。胸もおしりも・・・・また新たにデッサンしなおさないと・・・・。」

ああああああー----っ!!!

違うもんっ!!お尻はおっきくなってないもんっ!!

「ど、ドドドど、どこを見てるんですかっ!!先輩のエッチっ!!」

「うわああっ!!あ、あかり。ご、ごごご、ごめんっ!!・・・・その、変な意味じゃないよ?絵描きとして、冷静に君の体を見てだねっ・・・・。」

不知火先輩はそのあともあれやこれやと言ってきたけど、絶対、エッチな目線でも私の体を見てるっ!!わかるもんっ!!

もうっ!


美術部の部活が終わったあと、私は帰宅して自分の部屋で不知火先輩の雄姿を思いだしていた。

キレイな先輩が怒った瞳は、氷のように冷たい視線だった。それだからこそ、不知火先輩先輩の美しさを引き立たせているように思う。

あの綺麗な不知火先輩が王子様のように私を守ってくれた・・・・・・

私の胸は幸せで一杯になる。

そんな私にお姉様が「これであの時、妾が助け舟を出さなかった理由が分かったか。妾にはもうすぐ不知火が来ることが割っておったのじゃよ。」なんて嬉しそうに言う。

う~ん。正直、直ぐに助けてほしかったけど、確かに不知火先輩のあの雄姿が見れたのは、よかったかも。

「吊り橋効果という奴じゃな。お前は不知火の雄姿を見て、かなりトキめいただろう?

 今日一日だけで相当、気持ちが不知火に傾いたんじゃないかえ?」

うん。今日の不知火先輩カッコよかった・・・・。本当に胸キュンだった。

一気に不知火先輩のことを好きになっちゃったかも・・・・。


・・・・・・

それにしても、あの6人の先輩の話を思い返せば、私って今まで本当に恵まれていたんだなって思う。

今まであんなに「元男」って私を中傷する人はいなかった。だから、耐性が無くて泣いちゃったんだ。

これからもきっと不知火先輩を思う人はああ言って私を中傷するだろう。

でも、私・・・・もう、女の子としてしか、生きていけない。

そう決めている・・・・・。


ふと、姿見の鏡に映った自分を見る。

確かに私は可愛いし、胸もおっきい・・・。男の子が見ちゃうのも仕方ないかも・・・。

きっと不知火先輩も私の体に欲情して、色々、妄想することがあるのかな?

そう思うと、私はまだ晩御飯の前だというのに落ち着かなくなった。

いつの間にか下着をズラして、私を思って、私と同じように色々妄想している不知火先輩を想像してしまう。


ああっ・・・・・不知火先輩。

ダメです・・・・・そんなエッチな事・・・・・

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