女の子、こっわ
月曜日。私がいつものように学校へ行くと、数人の女生徒たちの視線に気が付いた。
視線を感じた方向を見ると、どうやら不知火先輩の同学年の人たちのようだった。
私と目が合うとあからさまにきつい表情をするので、私は怖くなって、直ぐに視線を外して、そそくさと自分の教室に向かう。
・・・・・考えなくてもわかることだった。
あれは、絶対に不知火先輩のファンの女子だ。
不知火先輩はモテる。それこそ男子からも恋愛対象に見られちゃうほど、美しいからだ。
細見の体にセミロングの髪型。白い肌に大きな瞳をしている。特にその睫毛の量と長さが凄くて、まるで男装の麗人。それが不知火先輩・・・・。だから、当然、女子から絶大な人気を誇っている。
私は今までは、不知火先輩の可愛い後輩の男の子という立ち位置で許されていたけど、私が女の子になってしまった以上は、私は、もう見逃してもらえなくなったのかもしれない。
昨日のお兄ちゃんに語って聞かせた話じゃあないけど、多分、あの先輩たちは、全員が団結しているように見えて、実際は誰もが不知火先輩の恋人になりたい人たちだろう・・・・。そんな人たちにとって私は、浮気相手さながらの存在として見えているはず。私はちょっと怖くなった。
「まぁ、安心せい。あやつらがお前に手を上げるようなら、軒並み失神させてやるから。」
お姉様は物騒ながらもとても心強いことをおっしゃってくれる。
もし、あの先輩たちが私に暴力を振るうというなら、初が私を襲った時のように失神させてくれると言ってくれている。
それは、本当にありがたいし、心強いものなのだけれども。それでもやっぱり誰かの恨みを買うのって嫌かなぁ・・・・・・。
私はちょっと憂鬱気味に歩いていると、後ろから初がやってきて、声をかけてくれた。
「おはよっ!!明ちゃんっ!!」
「ああ、おはよう・・・・初・・・。」
私があまり元気なく朝の挨拶を返すものだから、初は心配そうに「どうかしたの?」って、聞いてくれた。
私は初に話して聞かせるべきか、一瞬、迷ったのだけれども、それでも初を巻き込むのは悪いと思って、秘密にしておくことにした。
「・・・・ううん。なんでもないの。ちょっと、月曜日は授業が憂鬱だなって思っただけ。」
そう言ってごまかすことにした。初は、「ふ~ん?そうなの?」って、ちょっと納得していないようではあるが、私の心境を察したのか、それ以上はこの事について尋ねなかった。
ただ、私と隆盛とのデートについては続けて尋ねてきた。
「ところでどうだったの?土曜日のデートは?」
堂々と私に尋ねて来たな。ライバルのくせに・・・・
「私、明ちゃんより大分、遅れをとっているから、同じ所へ行きたいなぁ・・・・。」
なんていうから、私はちょっと意地悪に
「どこに行ったのかは教えてあげない。
ただ、隆盛はちょっとエッチだったなぁ・・・・・」なんて口にする。
初は、驚いて息をのむ。そして、それから私に向かってズルいという。
「ズルい、ズルいっ!明ちゃんばっかり、ズルいっ!!」
いやぁ?君。
それは隆盛に言いなよ。私は求められている側だからさぁ・・・・・・流石にそれは初に向かって言えないけど、それでも私の意見は正しい。私は求められるがままに隆盛のデートに応じただけ。ずるい事は何もしていないのだ。だから、ズルいと言われてもなぁ・・・・・。
私が初の対応に困っていると、後ろから隆盛が声をかけてきた。
「おう!おはようっ!明。初」
土曜日、私に対してあんなにエッチに攻めて来たくせに、信じられないほど清々しい挨拶をしてくるのね。
私は少し、呆れる。だって、私は土曜日にあんなことがあったから、隆盛の分厚い体を見ただけで、顔が真っ赤になりそうなのに・・・・・・。男の子って、そういうの平気なのかな?何事もなかったようにふるまえるものなのかな・・・・?
それって、それこそズルいと思う。女の子にここまで思わせておいて、何も感じてないなんて・・・・。
そう思いながらも、私は隆盛を直視できなかった。
初は、私の変化に感づいたようで「んっ?・・・・んんんっ!?」と、眉間にしわを寄せてから、慌てる。
「なにか・・・・あったんだ・・・。土曜日にっ!!」
いや・・・そういう事、言われても困るし・・・・・。
て、いうか・・・・今、私。お兄ちゃん並みに隆盛に落ちかけているから、結構・・・その・・・・二人の間を茶化されると・・・・・その・・・逆に燃え上がっちゃうかも・・・・。
正直、二人が出来てるとか言われるのを想像したら、結構気持ちがいいし・・・嬉しいかも。
「もう、初ったら・・・・な、なにもないわよ・・・・ね?」
初の追求を振り切るために、そういって隆盛に同意を求めて視線を向けると、隆盛は信じられないほど優しい笑みを浮かべて、嬉しそうに私を見つめていた・・・・・・。
なによ、それ・・・・・
なんで、そんな・・・・優しい顔で私をみつめるの・・・・・?
その視線に私の胸は高鳴る・・・・。
自分の顔が再び紅潮するのを感じて、私はそれを見られるのが恥ずかしくてその場から走り去る。残された二人が何を話していたのかは知らないが、5分ほど遅れてから隆盛と初が教室に入ってきた。
いや、初。君は隣のクラスだよね。
そう思いながら、初を見たら、やや興奮気味に「明ちゃんっ!私、負けないからねっ!!」と、宣言して、教室を出て行った。
君、何回おんなじこと言うの?・・・・言われる方の身にもなってよ・・・・
「ねぇ、どうしたの?あの子。なんであんなに盛り上がってるの?」
私がそう尋ねると、隆盛は気まずそうに「あ・・。いや、明ばっかりズルい。自分もデートに連れて行けとかなんとか言いだしてさ・・・・。」というのだった。
あ~・・・・・そっかぁ、初、遂に攻勢に出たんだぁ・・・・・。
相手は男の子だからって油断できない。だって、初は本当に可愛いから・・・・。
私は一応、確認のために聞いた。
「ふ~ん?で、連れて行くの?」
隆盛は気まずそうに「さぁ?どうするかな?」なんて答える。
連れて行く気ね・・・・連れて行く気なんだわ。この男っ!
「ふ~ん。ま、隆盛がどうする気かは、これ以上聞かないけどさ・・・・・・
私の女の勘をなめないでよね。隠してたって、わかっちゃうんだからねっ!!」
私はそういうと自分の机に倒れ込む様にして、寝たふりをする。
今日は、もう一日、口きいてあげないんだからっ!!
て、いうか・・・・恋のライバルが男の子って、なにそれ?
一体、どういうシチュエーションなのよ?
そんなことを考えていると、私の胸が苦しくなってくる・・・。
どうしようっ・・・・・隆盛のことを考えただけで、こんな気持ちになるなんて・・・・
私は、隆盛と初が仲良く手を繋いでいる姿を想像すると、悲しくなってくる。
そういうのって。こういう嫉妬心って自分にはないものだと思っていたのに・・・・
この胸が締め付けられるような気持ちは・・・・きっと・・・・
そう、きっと、私が本当に隆盛のことを好きになった証・・・・こ
「いや、ブラがきつくなっている証拠じゃな。
お前、またデカくなっておるぞ。」
えええええええっ!!!?
こ、この胸の締め付けらるような苦しさはっ!?
「マジで締め付けられとるな。
これだけ短期間で大きくなったのはやはり、土曜日に隆盛に攻められすぎて、興奮しすぎたせいじゃな。
まぁ、致し方ないな。エネルギーを使いすぎて背もまた縮んどるぞ・・・・・。なのに胸と尻ばかり大きくなりおってからに、このエロ娘がっ!!」
だ、だだだだ、誰がエロ娘ですかっ!誰がっ!!
大体、私お姉様と違ってお尻は大きくないって言ってるでしょっ!!
「ヒップのサイズを言うてみいっ!!!」
いやあああああああああー-------っ!!
心の中で私の悲鳴が空しく響くのだった・・・・・。