表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/143

ハグはずるいもんっ!!

お姉様から隆盛りゅうせいについてあれこれと話を聞いて、正直、私は隆盛を警戒していた。

だって、エッチなことをしてくるって言うんだもんっ

気を付けないとね・・・・・。

だから、私は今日は防御力の高いブラウスと黒のプリーツスカートに黒のストッキング、ロングブーツを履いたセットで、待ち合わせ場所の朝の駅で少し遅れている隆盛を待つ。

「何が防御力が高いじゃ。ロリコンの気のある隆盛にそんな可愛らしい恰好したら、狼の前に子羊を投げ込むようなものじゃ」

って、お姉様、それならそうと出かける前に言ってくださいっ!!

「たわけ。豊穣神の妾が人の恋路の邪魔などするものか。産めよ増やせよが妾の教えと知れ。」

は、はめられたっ!!

お姉様の罠に嵌められたっ!!

「これ、人聞きの悪い事を言うでない。

 ああ、ほれ。隆盛が来たぞっ!」

そうして、お姉様の言葉通り隆盛が来た。

「もうっ!!朝8時って自分で言っておいて、女の子を待たせるなんてどういうつもり?」

私は少し怒った素振りを見せながら、内心では少し喜んでいた。

”女の子を待たせるなんてどういうつもりっ!”

言ってみたかったセリフだったの!!

ちょっとうれしいぞっ!隆盛めっ!!


・・・・いや、現実に隆盛は遅れてきたのは問題なんだけどね。

私の言葉を聞いて隆盛は、はにかみながら「いや、女の子を待たせた時の決まり文句をさ、ちょっと言って欲しかったのさ。」なんて呆れかえるようなことを言う。

子供か、お前は。

なんて心で突っ込みつつも、決まり文句を言えた私は少しはしゃぎ気味に「もうっ!なによ、それっ。」と突っ込みを入れる。

隆盛は、そんな私を嬉しそうな笑顔で見つめた後にその右手を差し出して「じゃぁ、行こうか?」と言って私を誘った。

・・・ああ、今日も手を引いてくれるんだ・・・・・。

そう思いながら、私は隆盛に手を差し返すと私の小さな掌は、すっぽりと隆盛の分厚くて大きい掌に包まれてしまう。その手はまるで私を包み込む様に大きくなったかのように私の手のサイズに合った・・・・・。

隆盛はプロのキックボクサーでもあるので遠征で遠い地方へも出かける。だからICカードを持っているのだけれども、私は電車にはほとんど乗らないのでそんなカッコいいものは持っていない。

「ねぇ、どこの駅で降りるんだっけ?」と、私が尋ねると、「俺が買うから気にするな」と言って1500円以上もする切符を買ってくれた。

「ええええっ!?りゅ。隆盛っ。今日は動物園に行くって言ってなかった?こんな高い切符を買ってどこまで行くつもり?」

切符の値段を見て私が驚いていると隆盛は、隣の県のテーマパークの名前を言った。

「ええっ!!そ、そこのことを動物園って言っちゃうんだっ!?」

隆盛の大雑把さに私は驚きを禁じ得ない。

隆盛は、私の驚き具合を不思議そうに見ながら「まぁ、用があるのは動物園だけだから。」と答えるのだった。

な、なんて漢らしい・・・。

隆盛はやはり隆盛だった。

それから二人で電車に乗ると二人で車窓から見える景色にはしゃぎながら、1時間半近く移動してから、駅を降りてシャトルバスに乗ってテーマパークに入る。

普通、女の子とここに来たらまずは遊園地の方を選択しない?と、思いながら地図を見ていると

「わかってるよ。でも、今日は遊園地じゃなくて動物園な。」

といった。

うう。見透かされていた。連れてきてもらったのに違う方を行きたそうにしている空気出しちゃってたのかな?ちょっと嫌な感じしなかったかな?

でも、隆盛は何事もないかのように、私の手を引いて動物園の方へ入っていく・・・・。やっぱり、隆盛は男らしい。

このテーマパークの動物園はかなり大規模な施設で、多分この地方では一番大きいと思う。楽しみながら歩くならやっぱり一日仕事だ。

パンダを見て、キリンを見て、象を見て、ライオンを見て私ははしゃぐ。そして、タヌキも!

隆盛は「お前、本当にタヌキ好きだな。」って呆れるように笑ったけど、だってタヌキ可愛いもん。

私をエスコートしてくれる隆盛はとても優しくそして男らしかった。

私の体のすぐそばに寄り添うように動物を見ながら話しかける。顔は動物の方を見ていても、体は私の方を向いているのは・・・・・多分、作戦だっ!!

何なの?このシャツの上からでもわかるヒットマッスルの大胸筋の厚みとパンチのダメージを殺すために鍛え上げられた胸鎖乳突筋と僧帽筋はっ!!

「明、はしゃぎ過ぎじゃ。マッスルが好きなのは妾も同じじゃが、マニアックな筋肉の名前が出てきたのう。すっかりBLの影響に染まっておるのうっ!!」

ち、違うもん!!これはデッサンの勉強で覚えたんだもん。

石膏デッサンのモチーフになる胸像は大体、マッスルな兄貴ばっかりだから、筋肉の形状を覚えるために学習したのっ!!

「では、胸鎖乳突筋とは?」

鎖骨から耳の後ろへとつながる筋肉っ!!

「では、僧帽筋とは?」

背面の首を支える筋肉っ!!特にお相撲さんが凄いのっ!!

「お前は相撲取りまで守備範囲かいっ!!」

違うもんっ!!勉強だもんっ!!

「では、ヒットマッスルとはっ!?」

パンチ力やキック力に特に影響を及ぼす筋肉っ!!ミドル級以上のボクサーが特にすっごいのっ!!

・・・・・あ・・・・・

「デッサンに特に関係がない筋肉の知識じゃとよくわかる一言じゃったのぅ・・・・。」

ず、ズルいズルいっ!!

今のは、ズルいですっ!!私を罠に嵌めるつもりでっ!!

「人聞きの悪い事を言うなというに。お前が喋ったんじゃろうがっ!!

 ・・・・で?隆盛の体は?合格点か?」

・・・・・すっごいエッチです。

「うむ。妾もあの逞しい体に抱きしめられてみたいのぅ・・・・。」

わかる。すっごいわかる。

隆盛のそばにいるだけで私と隆盛が男の女だって、意識させられてしまう。

細身でモデル並みに均整のとれた美しさの不知火先輩と違って・・・・・なんて言うか隆盛は野生のオスのようなフェロモンが香ってくるような色気があった。

私が、そんな風に隆盛を見ているのが悟られてしまったのだろうか・・・・隆盛は不意に私の肩を抱き寄せると、自分が指さした場所と私の視線と合う様に私の体の位置を調整しながら「ほらっ!あのシマウマ見て見ろよっ!」と、嬉しそうに声をかける。

突然の側面からのハグに私は固まってしまう。

なに?なに?なにっ!!?

何で急に強めのスキンシップ仕掛けて来てんの?

やだ、・・・・なにこれ。超気持ちいいっ!!

太い腕と分厚い胸板に包み込まれて守られているような感覚っ!!

そして、なによりも男性の肉体が刺激的すぎるわっ!!

こ、ここここ、こんなの反則だよっ!!心臓がどうにかなっちゃいそうなくらいときめいちゃうっ!!

私が隆盛に片寄せられて、こんなにもドキドキしているっていうのに、隆盛は構わず「おい?ちゃんと見てるか?あれだよっ!」なんて声をかけてくる。

その声に抱きよせられたショックで固まっていた私も我に返ったけど、慌てて思わず「は、はいっ!そ、そそそそ、そうですねっ!!」って、大声を出して敬語で返事をしちゃった。

私の態度がおかしかったのか、隆盛は「どうした?急に敬語なんか使っちゃって・・・」と、呟いてから、私の後ろへするっと回ると私の前首に手をまわして絡めてきた・・・・・


は、はははは、背面からのハグとかっ!!そういうの恋人同士じゃないとしちゃだめなんだからっ!!

「どうした?俺を親友から男として、意識しちゃったか?」

なんて、意地悪を言う。

「しょ、しょうがないでしょっ!!こ、こんなのダメっ!!反則だよっ!!

 こんな事されたら、嫌でも隆盛が男だって意識しちゃうに決まってるでしょ?」

私が隆盛の腕を振りほどこうと抵抗しても隆盛の腕が私の力で動くわけがない。

それでも隆盛は、サラに両手を優しく絡めてきてこういった。


「だって、仕方ないだろう?わかってるぞ。お前の深層心理にまだ、俺が親友としていることを・・・。

 それを突き崩すには、こうやってお前が女で、俺が男ってことを教えてやらなけりゃな。

 いったろ?これからは、本気を出すって・・・・。」


低く甘い声で私の耳元で隆盛が囁くたびに私は首筋がゾクゾクと震えあがるほど、隆盛に求愛されていることに屈服したくなってしまう。

女性が背後を男性に明け渡す行為は自然界なら、関係を受け入れてしまったことを示すサインになる・・・・なってしまう。

そうとわかってはいても、私はまるで匂い立つように強烈なオスのフェロモンをまき散らす隆盛の肉体にあらがえないの・・・。

いつの間にか私の腕は、隆盛の腕を振りほどこうとはせずに、慈しむ様に抱き寄せていた・・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ