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私はここに住む

そして・・・・・テストが帰ってきた。

いらない・・・・全部返すから、先生っ!!あかりにもう一回チャンスを頂戴っ!!あかり、次はやれるからっ!

「やれるか、バカ者。ええかえ?明、お前はそもそもこのテスト期間中もさほど勉強せずにだな・・・・・」

あ、お姉様。そういうの大丈夫なんで。

これから家に帰ったら、絶対にママに怒られるから。

私が散々なテスト結果に頭を悩ませていると、隆盛りゅうせいがやってきた。

あかり。美術部に行かねぇのか?」

・・・・いかない。

私はここに住む。そうしたら、もうママに怒られなくて済むもの・・・・・。

「お前さ。俺は特待生で大学行けるし、プロだし、実家が宗家だから何とかなるけどさ、お前はしっかり勉強しないとダメだろ。」

・・・うっ!!ズルいっ!!!

勉強しなくても大学行けるのズルいっ!!

「・・・・お前、やるか?空手。歓迎するぞ?」

・・・さーせん。

やりません。ああ・・・・。帰りたくないなぁ・・・・・なんて、机にしがみついて家に帰りたくないと駄々をこねていたら、教室の外で私と隆盛を待っていたはじめが教室にやってきた。

「ねぇ~、何やってるのぉ?・・・・ん?どうしたの明ちゃん?」

はじめは、机に突っ伏している私を見て首をかしげて尋ねる。

・・・・・なに、その猫みたいなしぐさ。

あんたさ。本当に男の子?

可愛すぎんでしょうがっ!!

「・・・・・ごめん。はじめ・・・・私帰りたくないの。だからここに住むの・・・・。」

「はぁ?明ちゃん、本当に頭おかしくなっちゃったの?」

おい、こら。はじめちゃんさんよぉ・・・・・それどういう意味よ?

事と次第によっちゃ、ただじゃ済まさないわよ。

「・・・・もしかして、明ちゃん。テストの成績が悪いから家に帰りたくないとか、小学生みたいなこと言わないよね?」

そ、そそそそ、そんなわけないじゃないっ!!

いやですわっ!!はじめさんたらっ!!あたくしがそんなテストの点数が悪いなんて・・・・・

「いや、そうなんだよ。ママに怒られたくないからって、さっきから駄々こねてさぁ・・・・。」

あっ!!余計なこと言わないでっ!!隆盛っ!!

はじめは、事情を知って、呆れたようにため息をつくと「・・・・・バカじゃないの?」って、小さく呟いた。


うわああああああんっ!!いじめるっ!!

お姉様、やっつけてっ!この男をやっつけてっ!!

私のこといじめるのっ!!

「たわけっ!!なんちゅうことを妾に頼むのじゃ、お前はっ!!

 誰が聞いても、勉強しなかったお前が悪いわっ!!」

ふぇええっ・・・・・だってぇ・・・・・

「そもそも、お前は将来どうなりたいんじゃ。

 なんでそんなに勉強したくないんじゃ?」

私、将来はお絵描きして生活するの。漫画家になって、アニメ化決定して印税生活で暮らしていくのっ!!

「お前、この間は専業主婦になるって言っておったろうが。

 そもそも漫画なんか書いておらんじゃないか。せいぜい、BLで抜くぐら・・・。」

きゃああああっ!!

な、ななななっ。なんでそういうことすぐ言うかなっ!?お姉様はっ!!

「いわれたくなかったら、さっさと部活に行かんかっ!!

真面目に学生せいっ!!一度きりの青春時代を無為に過ごしたら一生、後悔することになるぞ。」

・・・はいはい・・・。

私は、軽くて小さいお尻をまるで重いように持ち上げると、重い足取りで美術室に向かうのだった・・・・・。

その後ろ姿を見てはじめが「明ちゃん。今度勉強教えてあげるからっ!」って声をかけてくれた。

いい子ね。

はじめ、貴方が友達でよかったわ・・・・・・。



美術室に向かう途中、はじめの優しさを思い出しながら、フト、はじめが前に見せたペンギン走りを思い出した・・・。

・・・・・・・気分転換に私もやってみようかな?あの時のはじめ、楽しそうだったし・・・。

さぁ、駆け出してみようっ!明日にっ!!

「明日に向かってどうする。行くなら、美術室にじゃろう。」

いいもんっ!!こういうのは、気分なんだからっ!!

私は両手を開いたり閉じたりするかのようなペンギン走りで十数歩歩いてみた・・・・

・・・・やだ、なにこれっ!

もしかしたら、今の私、滅茶苦茶可愛いかもしれないっ!!

そうかっ!!皆。この感覚が欲しくてやってるんだっ!!

満たされる欲求・・・・・・・私、今。すっごく可愛いかもしれないっ!!

気持ちいいいいいっ!!


テストのことなどすっかり忘れた私が上機嫌でパタパタあるいていると、不知火先輩が目ざとく見つけて声をかけてきた。

「やあっ、明っ!!どうしたの?機嫌よさそうだね?」

・・・・

・・・・・・・・・いやー-----っ!!み、見られちゃったぁっ!

は、ははは、恥ずかしいっ!!

私、可愛い子アピールしてくるウザい子って思われたかなっ?

やだやだっ!!不知火先輩にそんな子って思われたくないよぉっ!!

私が真っ赤になって硬直してると、不知火先輩は「ま、そういう気分になることもあるさ。女の子なんだし・・・・。」って、変に大人の理解力を示してきた・・・

それがっ!!

その大人の優しさがっ!!

今は逆につらいのぉおおおおおおおおおおっ!!

あかりなにをしておるのじゃ、一人漫才しておらんで、さっさと美術室にはいれ。アホの子と思われるぞっ!!」

はっ!!そうだったっ!!ありがとう、かみさま~~~~~っ!!

「・・・・・壊れ過ぎじゃろう・・・・・そんなにテストの成績とペンギン走りをみられたのがショックか・・・。」



私が美術室に入ると、不知火先輩は怖いくらい綺麗な笑顔で「明?・・・・テストはどうだったのかな?」って、尋ねてきた。

「黙秘します。」

間髪入れずに私は黙秘権を行使する。

しかし、不知火先輩は笑顔で成績表を求めてきた。

私は観念しておずおずと成績表を手渡すと、不知火先輩はそれを見て固まっていた・・・・・。

訪れる静寂・・・

過行く時間・・・・

やがて、不知火先輩は「これからテスト2週間前になったら、ここで勉強会をしようね?」と笑顔で言うのだった。

不知火先輩は学年上位の成績の持ち主で、学級委員。信じられないけどはじめもかなり頭がいい。

そんな二人から見て、私ってさぞかしバカに見えるんだろうなぁ・・・・・。

ちょっと悲しくなった。

そんな気持ちで筆を握っていても、楽しいわけがない。

私は今日も筆が進まない。なのに不知火先輩は、とうとう、私を一体、書き上げてしまった。

・・・・・・可愛い・・・。

不知火先輩が描いた私は、まだオッパイが小さかった頃の私。

ああ・・・・この頃の私ってこんなに儚げだったんだ・・・・・

そして、よく見ると私の瞳には小さく不知火先輩が映っていた・・・・・。

たった、それだけのことでこの絵には物語生まれる。そこを不知火先輩は見逃さない、大切に描く。


「明。僕が君を見ていたように、君も僕を見ていたから、この絵が出来たんだよ・・・・。」


そういって絵を見つめる不知火先輩は私ではなく、絵が描かれた私を見つめて語り掛けている。

よかったね。この時の私・・・・・。不知火先輩はこんなにも君のことを大事に思ってくれてるのよ。


良かったのはここまで・・・・私には最大の難関が待ち構えていた・・・・。

勿論ママだ。

ママは学年の下から95位という成績に頭を抱えながら、「パパになんて言ったらいいの?ねぇ、明。あなた・・・・大学は何処を目指すの?」って尋ねるので、私は笑顔で

「専業主婦っ!!」

って、答えたら、私の晩御飯のおかずから、唐揚げを一つ減らされてしまった。

「専業主婦舐めてんのっ!!!?」って、にらまれた。

・・・・・ごめんなさい・・・・・。

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