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ちょっとまってよっ!!

翌日。投稿して教室に向かう途中に偶然、隆盛りゅうせいと出会った。

「おうっ!あかりおはようっ!」

爽やかな笑顔で挨拶されると気持ちのいいもので、こちらも元気よく「おはようっ!」と返事をしてしまう。

「そういや、もうすぐテストだなぁ・・・・・。」

なんて他人事みたいに言う。

隆盛はイケメンでスポーツ万能なのに頭が悪いところだけが玉にきず。テスト大丈夫?

あかり、お前ちゃんと勉強しているか?お前は見てくれはいいけど頭が悪いところが玉にきずだからなぁ・・・。」

おおう。第一話の会話かね。

あれ一度の会話だったので、すでにお忘れの人も多いかもしれないが、私たちは実はそれなりに美男美女である。

そして・・・・・勉強はお互い苦手なの・・・・・。

あかり。勉強は大事じゃぞ。あんまりBLばっかり聞いてないで勉強も・・・・・」

ああ・・・・・もうっ!!お姉様、ママみたいっ!!

正論ほど耳が痛く、イライラするものはない。思うに正論は他人に逃げ場を与えないから、言われた相手の反感を買うのだと思う。

”BLも大事だけど、留年しない程度に勉強もしてね。”

これぐらいの優しさが欲しいもの。

「アホたれ。将来、困るのはお前じゃぞ・・・・・。いいかえ?大卒と高卒ではな、年収が大きく異な・・・・。」

いいもんっ!!私美人だから、お金持ちの旦那様に娶られて専業主婦になるんだもんっ!!

「たわけ。世の中そんなに甘くないわ。金持ちの妻ほど夫の足を引っ張らぬように教養を身につけさせられるんじゃ。バカな妻に粗相されて社会的立場を失ってみろ。目も当てられんわ。

 だからな、明よ。一番にならんでもいいから、人並に勉強をな・・・・・」

ああっ!!うるさいうるさいっ!!

私が、教育ママになったお姉様の小言にイライラしていると、向こう側からはじめが嬉しそうにやってきた。

「おはよう~、明ちゃんっ!!隆盛っ!!」

私はその姿に唖然としたっ!!


・・・・・・・学ランの美少年が・・・・

ペンギン走りでやって来るですって・・・・・・・・っ!!!!


それは目を疑うような光景だった。

て、いうか、ペンギン走りなんて女の子は嬉しそうにやってるけど、大抵の男子はイラッと来る可愛いい子アピールなのにっ!!

この女子の私を差し置いて、学ランを着たはじめが堂々とやるなんてっ!!

・・・・・悔しいけど、私の負けよ

はじめ。私、貴方には女子として勝てないかもしれない。

て、いうか。貴方、身バレしてることを知ってから、あからさまに女の子してるけど、大丈夫?

「身バレしてるの知っちゃったら、隠してるなんて意味ないから。

 正直、あかりちゃんみたいにセーラー服で登校したいけど、学校に相談したらやめとけって説得されちゃった。

 まぁ、言いたいことはわかるし、我慢するけど・・・ね」

いや、それよりもいじめられたりしない?

「うーん、隆盛と仲良くしているからかな?皆、私によってきたりはしないけど、反対に嫌がらせもしてこないよ?」

ふーん・・・・・。役に立ってるんだぁ。隆盛。

「おうっ!!困ったことがあったら、何でも言って来いっ!ははははっ!!」

隆盛ははじめの頭を乱暴に撫で繰り回しながら、豪快に笑った。

その立ち振る舞いが既に周りに対して「俺の友人だからはじめをいじめるなよ」ってアピールに繋がっていることを隆盛は知っているのだろうか?

まぁ、知ってやってなくても、はじめにとっては助かるだろうな。隆盛の優しさは・・・・・。


私たちはその後、少し立ち話をしてからそれぞれの教室に分かれて授業を受ける。

試験が近いから、当然、「ここ、テストに出すからな」って、言葉に敏感になってしまう。

ああ・・・・そっかぁ・・・よく考えたら、来週から中間テストかぁ・・・・・

「何を呑気なことを・・・・・。これは今回のテストはダメじゃなぁ・・・・・。」

そ、そんなことないもんっ!!頑張るもんっ!!

見ててよっ!!必ず満点を取って皆を見返してやるんだからっ!!

「・・・・・アホの子が妄想しやすい内容の典型じゃの。非現実的で身分不相応なことをまるで理解しておらぬ。己の実力を知らぬものは己の足らずを知らぬから、己を磨きようがないのじゃ・・・・・。」

・・・・・正論って嫌いっ!!

あ、そうか・・・・来週からテストってことは、部活は今日で終わりだ・・・・。

なんてことを考えていたら、不知火先輩から、全員に呼び出しがかかった。

放課後に私たちは美術室前に集合すると不知火先輩は言う。


「今回のテストの成績が悪かったら、デートは2週間に一度にしよう。学生は勉強が本分だ。

 恋愛にうつつを抜かしてバカなあか・・・あかりが将来を棒に振るようになっては困るんだ。」

ん?先輩、今。”バカな明”って言いました?

言いましたよね?

「言ってない・・・・・・・。言いきってはいなかったはずだ。」

それ、言ったも同じですからねっ!!

しかし、まじめな不知火先輩らしい意見だ。

ただ、意外なことにはじめが「私、戦線離脱するからいいよ。これからは、あかりちゃんの女装友達ってことで・・・・・。」と、あっさり引き下がったことだ。

・・・・・・・・いや、私の場合、女装じゃなくて普段着なんですけど・・・・・・。

それを聞いて不知火先輩はホッとしたように「そうか、君は可愛いから実は脅威に感じてはいたんだ。明から手を引いてもらえるのなら、助かるよ・・・・。」と答えた。

・・・・・

・・・・・・・・どうしよう・・・・。

私、多分。もうお兄ちゃんに心を決めてる。

これ以上、皆に気を持たせるようなことは、したくないかも・・・・・。

「・・・・・・。うむ。お前がそう思うのなら、そうしてやれ。

 お前がたける様に心を決めたのなら、これ以上の関係は、弄ぶのと同じことじゃ。

 ・・・・・・すっぱりと言ってやれっ!!」

お姉様に後押しされた私は深呼吸してから「あのっ!!・・・・」と、声を上げて切り出した・・・・。



「ごめんなさい。あのね・・・・。

 私・・・・私、お兄ちゃんが一番好きかも・・・・。だから、

 ・・・・・ごめんなさい・・・・。」


一瞬の空白の後、はじめが私を支えてくれるように抱きしめてくれた・・・・。

ヤバい‥‥はじめの優しさに泣きそうだよ・・・・・

でも今は、泣いたらダメ。・・・・

私に今、泣く資格なんかないんだから・・・・・

私は胸を張って隆盛と不知火先輩を真摯に見つめた・・・・・・。

しばしの沈黙の後・・・・隆盛が「そっかぁ・・・・じゃぁ、しかたねぇなぁ・・・・。」と言ってくれた。

それに続けて不知火先輩も大きなため息をついて「ああ・・・・仕方ないね。」と同意してくれた・・・・・。

ごめん。

ごめんなさいっ!!不知火先輩っ!!隆盛っ!!

そして、こんな男から女の子に変わってしまった私を好きになってくれて、ありがとうっ・・・・・・!!


私が二人に深々と頭を下げた時、隆盛が力強くいった。


「じゃぁっ!!これから本気出すかっ!!」

・・・・・・

・・・・・・・・はいっ?

え?・・・・・何言ってるの?こいつ

私が唖然としていると、不知火先輩も


「ああっ!!僕も今まであかり初心うぶさに配慮して気を使って手加減してきたけど、ここからは、本気を出さないといけないみたいだねっ!!」

そう力強く言うと、不知火先輩と隆盛は力強く手を握り合って

「負けないよっ!!」

「俺も、負けませんよっ!!」

と、誓い合った。


いや・・・・いやいやいやいや・・・・・待ってよっ!!

「ふ、二人とも、誤解しないでっ!!私、二人を煽ったわけじゃなくて・・・・お兄ちゃんが一番好きって言ってるのっ!!」

私は二人の誤解を解くために思わず大きな声で二人を否定しまった・・・・・。

しかし、二人はどうじなかった。

それどころかお互い一度見つめあってから、ニッコリ笑うと、一気に私の方へ詰め寄ってきた。

なに?

なになになにっ!!怖いっ!!

私は二人が急接近してくるから怖くなって後ずさりすると、一気に壁に押しやられてしまった。


「うわぁ・・・・・両方から壁ドンされてるし・・・・。」

はじめの言ったことは正しい。私は両人から左右それぞれの腕で壁ドンされている状態だ・・・・。

右に隆盛、左に不知火先輩・・・・・・。

てか・・・二人とも顔が近いしっ!!!

私は、美少年二人に見つめられて、死んでしまうかもしれないほど心臓が高鳴ってしまう。

と、いうか・・・・・少女漫画のヒーローみたいに綺麗な不知火先輩が、さらにその美しいご尊顔を私の顔に御近づけになって

「ね?明・・・君は今、ものすごく女の子の顔をしているよ。それって、まだ僕達にも勝機があるってことじゃない?」

なんて、耳もとで囁いたりするもんだから、私はゾクゾクと身震いしてしまう。

わ、わたし・・・・・今、そんなに女の子の顔してますか・・・・・?

「うむ。呆れるほど、恋する少女の顔をしておるぞ・・・・。」

ええええええっ!?

ど、どどどど、どうしてっ!!?

そんな私が心の中でお姉様へ投げつけた疑問に答えるかのように、今度は隆盛が顔を近づけてきた・・・・・。


不知火先輩とはまた違う、彫りの深い隆盛の男らしい顔に私は目が背けられなくなってしまう・・・・・。

「お前は無自覚かもしれないけど俺たちのことも好きだ。

 あの日、展望台でお前の手を握った時。お前の顔は俺に惚れていた・・・・・。

 そして、今も俺たちに言い寄られてお前の恋心は揺らいでいる。

 だったら、俺たちは諦めるわけにはいかねぇよ!!」


隆盛が男らしい低い声で私の耳元で囁くものだから、私は自分がとろけそうになっていることを嫌でも自覚させられてしまう・・・・・

私は、あまりに興奮しすぎたために、膝に力が入らなくなって、そのままズルズルと床にへたり込んでしまった・・・・。

「ほらね、あかり。君が思っているほど、勝負に決着はついていないよ。

 今日はこのぐらいで勘弁してあげるけど、明日からは本気出すからねっ!!

不知火先輩は眩しいほどの笑顔を私に向けると、廊下に座り込む私を置いて帰ってしまう。

隆盛も「ここからが、本番だぜっ!」と、言って帰ってしまう。


ああ・・・・こ、こんな美形二人にいよられて・・・・揺らがない女の子なんかいないよっ~~~!!


修羅場を乗り越えて、呆然自失の私の前には仁王立ちのはじめが立っていた。

あかりちゃんっ!!私、負けないんだからねっ!」

そういうと、はじめまで私を置いて、帰ってしまう。

・・・・・て、いうか。

あんた、戦線離脱を表明したばかりでしょ・・・・・

呆れるように去り行くはじめの背中を見ていると、はじめは隆盛に追いつくと、嬉しそうにその腕に抱きついて「早く帰ろうよっ!」と、声を上げるのだった・・・・・・


・・・・・ああ、あれはそういう意味だったのね・・・・・

あかりちゃん。私負けないんだからっ!!」

・・・・私はその時、ずっと誤解していたはじめの言葉の意味をこの時、悟ったのでした・・・・・

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