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友達として・・・・・

土曜日のデートにはじめがコスイベに連れて行ってくれるというので、古着屋でスーツを買った私は、

「スーツ代だけでも大出費だけど、こういうの自分たちで作っている人たちは、本当にすごい大変なんだなぁ」と、しみじみ思った。

はじめは自分でコス衣装を作ったり、ネット販売している既製品を買うこともあるそうだ。

凄い出費だろうによくやるね?って聞いたら、公然と女装して歩けるからいいのって嬉しそうに答えてた。

う~ん。

やっぱり、苦労してるんだなぁ・・・・。

お姉様にはじめを女の子にしてあげられませんか?と、頼んでみたけど

「たわけっ!!

 お前、忘れとるかもしれんが、本来、お前の女体化は神罰じゃぞ!?

 そうそう、人間の性別など変えられてたまるか!」

って、怒られた。

なんでも、人間の性別を変えるのには、本来は色々と手続きがいるらしい。

というのも「縁組」という神様の仕事があって、神無月。つまり10月になったら日本中の神様が出雲に集まって来年の1年間、収穫量や人の運命についての計画を話し合うわけだけど、その会議の議題の中に男女の縁組があるらしい。その時に問題が発生していると、会議の遅延が発生してしまうので基本的に神様であっても簡単に性別を変えたりは出来ないのだとか・・・・。

「妾もお前が女で生きることを望むとは思わなんだ。

 とんだ誤算じゃ・・・・

 あとあと、面倒なことにならぬと良いがのぉ・・・・。」

面倒な事って?

「お前を女にしたのは、妾じゃから、その影響がお前に及ぶことはない。神のしたことは神の中で決めること。お前は何も心配せんでもよい。」

と、お姉様はいってたけど、お姉様は面倒なことになるのか・・・・。大ごとにならなければいいけど。

・・・・・・そんなわけで私と違ってはじめを女の子にするのはかなり難しい事らしく、私はなんだか申し訳ない気になりつつも、「これも運命じゃ。」と、お姉様に説得されて諦めることにした。


そして、土曜日。

お兄ちゃんが会場まで車で送ってくれるというので、朝からはじめを迎えに行ってから、現地に到着した。お兄ちゃんは「身バレすると面倒だから・・・」、と言って一度、車で家に帰り、イベント終了前に再び迎えに来てくれる

屋外のコスイベントであるけれども、一応、近くの市民センターの2部屋を貸し切って着替え場所を確保をしているとのこと。私とはじめは一度、更衣室用に貸し出された部屋に移っていった。

ただ、はじめは車の中でお兄ちゃんの恥骨に悪い声の洗礼を受けすぎたので、着替えるまでには大分、手間取ってしまったらしい。

女装OKのイベントではあるものの、女装用のスペースが特別に用意されているわけではない。はじめは家であらかた着替えておいて、順番良く着替えればアウターの着替えのみで済む様に準備してきていたらしい。初動こそ遅れたものの割かし早くに着替えを終えていた。

今日のはじめの衣装は、日曜日の朝にやっているような魔法少女のコスだった。

よく見ると、前の日曜日に来ていたゴスロリの衣装はこれを流用しているようだった。

「うまく着まわさないと、お小遣いいくらあっても足りなくなるから・・・・。」

と、はじめは得意げに語る。

はじめの場合、女の子になるために他の男子には必要がないような出費があるから大変だもんね。それこそ、下着とかも自分で買っているわけだし、大変だぁ。

「お小遣い、大変だね。」

私がしんみり言うと、はじめは「YouTubeでちょっとだけ収入があるの。」と、何でもないように言うのだった。

・・・・・変なことしてないと良いけど・・・・・・身バレしているんだし・・・・・。

私はちょっと心配になったけど、まぁ、色々と事情があってのことだから私が口を挟めることではないのではじめの安全だけを祈るのみだった。

「衣装ばっちり似合ってる、可愛いわよ。はじめ。」

私は本心からそう言った。だって、はじめは本当に可愛かった。

とくにニューハーフさん直伝の化粧技術は完璧で、本当にお人形さんみたいにはじめは可愛かった。

私は、はじめを褒めたのに、はじめの方は私を上から下まで舐めるように見た後、「このオッパイで男装は無理があるんじゃない?」なんて、セクハラまがいの発言をしてきた。

・・・・・このやろう。

いいのっ!!私は今日だけのレイヤーなんだからっ!!


さて、イベントは、市民センターから徒歩10分ぐらいの所にある古墳が地味に観光スポットにもなっている公園を利用したものだった。古墳公園は1キロ四方位あって、そこに古墳や湖、水路、遊具が設置されている。

平日はともかく休日は、一応、デートする男女や子供連れの親子の姿も見られるのどかな場所で、地味なコスイベは毎月、即売会やパフォーマンスも含む大きなイベントは年4回行われるという。地元民だったけど、はじめに教えてもらうまで全然知らないイベントだった。

はじめは、ここの常連なの?」と尋ねると常連だと答えた。

その割に、他のレイヤーさんと話をしていない。他の人たちは再会を喜び合って楽しそうにしているのに・・・・・。

「・・・・ほら、やっぱり女装って肩身が狭いから・・・・。」

と、はじめはちょっと悲しそうに言った。

まぁ、そうだよね。そういう難しい環境にあっても、はじめはこれまで一人で頑張ってきたんだよね。それって凄い覚悟と情熱がないと出来ないことだと思う。

「・・・情熱じゃないの。ただ・・・・友達が欲しかったの。

 一緒に女装できる友達が。

 だから、あかりちゃんと出会った時、私、誰にも渡したくないって思った、

 どんなことをしてでも、あかりちゃんを私のものにしたいって思ったの・・・・。」


・・・・そうだったのか・・・・。

はじめにとって、私は初めてできた、ごく身近な同胞だったわけね。

それで、私に執着したんだ。

でも、それって・・・・・

恋愛じゃないと思うの・・・・・・・・。

はじめは、私にそう言われると、暫く黙っていたけど「・・・・これからも一緒に女装した私のそばにいてほしいの」と、寂しそうにつぶやいた。

「勿論よっ!はじめには感謝していることはたくさんあるんだからっ!

 私たち、友達同士としてもやっていけるはずよっ!!」

はじめと手を取り合って、私たちは友情を誓い合った。

そうやってはじめが女性の私と普通に接している姿を見て、安心したかのように他のレイヤーさんが、時々、はじめに話しかけてくれるようになった。

「ありがとうっ!あかりちゃんっ!!明ちゃんがいなかったら、こんな素敵な事、起きなかったっ!!」

帰りの車の中で興奮気味に何度も感謝の言葉を述べるはじめと、また一緒に行こうよと約束して私たちは、その日別れた。

お兄ちゃんは、そんなはじめを見て「大変だぞ。あの子・・・・。世の中そんなに甘くないからな。まぁ、学校では、せいぜい守ってやれよ。」と、心配そうに言った。

・・・・・う~ん。

どうだろう?学校には隆盛りゅうせいがいるからなぁ・・・・・。危ないとしたら、学校の外だと思うの・・・・。ずっと守ってあげられるわけじゃないから、ちょっと心配だなぁ・・・・。

私がそんな心配をしていると、お兄ちゃんが「さて、明日は俺の番なわけだが・・・・・?」と、言って距離を詰めてきた。

「・・・・じゃあねぇ、明日は何処に連れて行ってくれるの?お兄ちゃん?」

私は、軽くブロックしつつ、なおかつ期待を込めた声で尋ねるとお兄ちゃんは、「じゃぁ、二人で映画でも見ようか?」と答えた。

「・・・・映画館?へ~。意外、もっと大人な感じに攻めてくるのかと思った。」

私の挑発的なセリフを聞いたお兄ちゃんは、笑いながら


「何言ってるんだ。俺の部屋で一日、映画鑑賞だよっ!」


といった・・・・。

え、・・・・それって・・・。一日中、お兄ちゃんの部屋で二人っきりってことぉっ!!?

それって・・それって・・・・

距離感、ヤバくないっ!!

ソファーに座るお兄ちゃんの隣に一日いる自分の姿を想像しただけで、私は、胸が高鳴ってしまうのでした・・・・・。

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