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可愛いって言われちゃった!!

「そう言えば、お兄ちゃんは私が女の子になったからって、よく結婚の対象に考えたわね?」

ドライブデートの帰り道の車の中で私は尋ねてみた。

お兄ちゃんは、「あー・・・。」と、少し自分でも、自分の行動を再確認したのではないかと思われるような声を上げた。

私は続けて疑問をぶつけてみる。

「皆もそうなんだけどね・・・・・。

 つい最近まで男だと思っていた相手が女の子になったからって恋愛の対象になったりするの?」

この質問は前から私に好意を抱いてくれている4人に聞いてみたかったことだった。

それを聞きたくても、聞けなかった。

どんな答えが返ってくるのか、想像できなかったからだ。でも、勇気を振り絞ってお兄ちゃんに聞くことが出来たのは、やっぱり、私が一番信用できる相手がお兄ちゃんだからという事もあるのだろう。

しかし、お兄ちゃんの答えは、とてもシンプルだった。


あかり、お前だってつい最近まで男だったのに、女の子になった途端に男を恋愛対象として見ているじゃないか・・・・。」

「・・・・・・あっ!!」


答えは自分自身の中にあった。

そうなんだ。女の子になってしまった私は、お兄ちゃんたちの男性らしい部分に自然と胸がときめいてしまう。それと同じように皆も女の子になった私を女性としてしか見れなくなったということなの。

そして、それは自分のことに置き換えてみると、ごく当たり前のことだと気が付いた。

でも、私って女の子になりだした最初の頃って、そんなに女の子として魅力あったかなぁ?

今でこそ、オッパイもおおきくなってるけどさ・・・・。


「ねぇ、お兄ちゃん。私って多分、女の子らしくなったのって、本当につい最近の事なんだよ?

 女の子になる途中経過というか、オッパイが大きくなりだす前から、男の子たちは、私のことを異性として認識してたみたいなんだけど・・・・なんでだろう?」

お兄ちゃんは私の疑問を聞いて、「はははっ!」と、とても愉快そうに笑った。

「そんなこともわからないようじゃ、あかりは一人前の女の子だな。」

と、意味深な発言をする。

「いいか、?明。男はな、ケダモノなんだよ。あの不知火って子やはじめって子もな。

 あんな女性的なイメージのある子たちでも、お前の女性としての魅力をかぎ分けて、異性として認識してしまう。何故って、それが男だからさ。

 男はな・・・。極端なことを言っちまえば、抱ける相手は、全部攻略対象なのさ。だから、お前がほんの少しでも女になっていたら、そりゃ、意識してしまうものだ。

 俺だって、そうだぜ。

 あれは、多分。俺がラジオ番組を獲得したという報告に返ってきた晩のことだったと思う。

 あのとき、既にお前の声は完全に女になっていた。そうなると、俺はお前をもうすでに”女の子のようだ”って認識していた。」

ええっ!?こ、声だけでっ!?

「当たり前だ。声のプロ舐めんな。

 どれだけ低い声をした女の子だって、どれだけ高い声を出せる男だって、俺は目隠ししていても、その人物の性別を判断できる。

 その俺の耳がお前を女として認識していたんだ。驚いたよ。実際、アフレコ現場に来ていた先輩たちもお前の声を女性として認識していたから、演技に熱が入っていた。女の子と濡れ場を演じている気がすれば、当然のことだよな・・・・。」

ぬ、濡れ場ってっ!!

お姉様っ!!お兄ちゃんがセクハラしますっ!!

「いや、あれは誰がどう聞いても濡れ場じゃろう。直接的な性描写はないがの。未成年が演技に参加している作品じゃから、表現は押さえておったが、あれは濡れ場としか言いようがないわ。

 文句があるなら、あのラジオドラマが放送されたら、聞いてみい。客観的にお前が判断しても濡れ場というぞ。」」

いやー--っ!!私のエッチな声が放送されちゃうってことっ!?

「まぁ、吐息ぐらいのものじゃから、ギリギリセーフってことじゃっ!!!」

ううっ・・・・。あの日はお兄ちゃんだけじゃなくて、凄い声優さんたちに囲まれていたから・・・もう夢心地であまり覚えてないけど・・・・・・ああっ・・・・・そ、そう言えば、結構、エッチな内容だったかもしれない・・・・・。


「あ、あの~・・・。お兄ちゃん。あの時のラジオドラマって・・・・その、放送キャンセルできたりしない?ほら、未成年者にエッチなシーンをさせるとか、放送倫理に引っかかるというかぁ・・・・・。」

私はダメもとで思いっきり甘えた声でお兄ちゃんに放送をやめてくれないか頼んでみた。

でも・・・・・。

「大丈夫っ!!

 さかき あかりという名前は、そもそも出していないしっ!!

 あの声を出した”男性声優”なんか、そもそも今、現実に存在していないっ!!

 だから・・・・・全っ然、問題ないっ!!」

と、メチャクチャ強引にお断りされてしまった。

クスン・・・・。

ああ・・・・あの声が電波に乗って流されちゃううう~っ・・・・・

「だ、大丈夫じゃ。明、そもそも女子は、受け役のお前に対して耳を傾けてはおらんわっ!!

 やっぱりBLは攻め役こそが華っ!!

 明、お前もそうじゃろうがっ!!攻められている受け役など、お前の投影にしかないっ!

 そうやってお前も毎晩毎晩、自分が受け役になったように妄想しながらっ・・・・!!」

やめて、やめてっ!!・・・・

お姉様、本当にそう言うの、恥ずかしいから改めて言うの止めてってばぁっ!!!

「なんじゃ、一緒にたける様の声でした仲じゃないかっ!!あの時、妾達はたける様に可愛がられる一人の雌奴隷として意識を一つに・・・・・・」

やめてー----っ!!

・・・・・

・・・・・・・・

ハァッ、ハアッ・・・・・・!!あ~、心の中で息切れしてしまうほど、私は必死になってお姉様と戦うのだった。

当然の話だけど、お兄ちゃんは私のそんな心の中の激闘を知る由もなく、車を運転しながら淡々と私に話の途中を聞かせてくれるのでした・・・・。


「俺にとっても衝撃的なことだっよ。

 弟と思っていたお前から女の声が聞こえてくるんだから・・・・・。

 それにな、あのころすでに顔つきも大分、女の子になってたんだぞ。本当のことを言うとな・・・・。多分、お前のクラスの同級生たちも、お前にドキドキしていたはずだ。

 お前は元々、顔の作りがいいから、女の顔になったら、そりゃ、可愛いしな・・・・。」

・・・・・か、可愛いって言われちゃったっ!!

やだ、ちゃんと男の人から可愛いって言われたの初めてかもっ!!

ねぇ、お姉様っ!!お兄ちゃんに可愛いって言ってもらえましたっ!!

「なんじゃっ!!自慢かっ!!

 いっておくが、妾の方が絶対に美人じゃからなっ!!豊穣神は美の化身じゃっ!!

 妾を見れば、たける様だって、・・・・絶対、・・・・絶対に・・・・ぐすっ・・・・

 絶対に妾の方が可愛いって言うのじゃ~~~~っ!!ああ~んっ!」

や、やだ、お姉様っ!!。泣かないでっ!!

ごめんなさい。ごめんなさいっ!

だ、大丈夫ですっ!お兄ちゃんも絶対にお姉様の方が可愛いって言いますっ!

ほら、私。お姉様の眷属でしかありませんからっ!!その頂点のお姉様の美しさに敵うわけないじゃありませんかっ!!

「ぐすっ・・・・・当たり前じゃっ!絶対に妾の方が可愛いのじゃっ!!

 ああっ!妾もたける様に可愛いって言ってほしいっ!!

 ズルいのじゃっ!あかりばっかり。ずるいのじゃ~~~~っ!!」

はいはい・・・・。



その後も心の中でグズり続けるお姉様をなだめながら、私は家に帰りついた。

車が家の駐車場に止まった瞬間、お兄ちゃんは私の手を取った。


あかり・・・・。俺にとっても、お前はもう弟じゃない。

 断っておくが。当然、妹ってわけじゃない。

 一人の女として見ている・・・・。

 だから・・・・。忘れないでくれよ?」


そう言って私を見つめるお兄ちゃんの目は真剣そのもので・・・・・。

そんな熱い目で男の人に見つめられる経験のない私は、頭がポーっとして、身動きするのも忘れてしまうのでした・・・・・。


翌日の学校の教室には、私を待っているはじめがいた。

「おはようっ!!明ちゃんっ!!」

「おはようっ!!はじめっ!!今日はいつもより早いね?どうかした?」

・・・・私の問いかけにはじめは、少し戸惑いながら「土曜日のデート・・・・どうだった?隆盛と、どこに行ってたの?なにかされなかった?」と、心配そうに尋ねてきた。

「ああ、大丈夫よ!隆盛は女の子に優しいのよっ!

 変な事されたりしないわっ!

 ほら、あの有名な展望台にいっていたの・・・・・。」

私がそう言うと、はじめは、息をのんだ。

「あ・・・・あの、有名なデートスポットに・・・・・JKなら誰もが一度は経験したい、あの場所に・・・・?」

「う、うん。・・・・どうしたの?はじめ・・・・。そんなにショックな顔して・・・・。」

土曜日に隆盛とどこに行ったのか、尋ねてきたくせにはじめは、とてもショックな顔をしていたので、私は心配になってしまった・・・・。


はじめは、少しため息をついて悲しそうに視線を床に落としてから、・・・顔を上げて宣言する。


あかりちゃんっ!!私、負けないからっ!!!」


いつものセリフに勢いを感じさせる。そして、その一言だけ言うと、はじめは隣のクラスに戻っていった・・・・。

なに・・・・あの子・・・・。そんなに隆盛が先に私を展望台に連れて行ったのが悔しかったのかな・・・・・・。

はじめの突然の変化に私が呆然としていると、お姉様が心の中で小さく「鈍い奴よのう・・・・」と呟くのでした・・・・・。



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