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女の子としての幸せの在り方

隆盛とのデートが終わり、家に戻るとリビングには不機嫌そうな顔したお兄ちゃんが座ってた。

「お、おかえり。お兄ちゃん・・・・・。」

「お帰りはそっちだろ?そんな可愛い恰好して、どこに行ってたんだ?」

・・・・・え~~っ?

なんか、亭主関白っぽい空気醸し出されてるんですけどっ!!

ちょっと嫌な感じ・・・・・。

「何を言うとるかっ!!この束縛された感じ、最高じゃろうがっ!!」

ドМは、黙っててください。

「・・・あのね。お兄ちゃん。聞いてほしいことがあるの。」

「なに?」

「あのね・・・・学校で皆と決めたんだけど・・・。」


不機嫌そうにしているお兄ちゃんに皆で学校で取り決めたことを話すと、お兄ちゃんは天井を見上げて深いため息をついた。

「・・・・あかり。じゃぁ、俺は日曜日しかお前とデートできないのか?」

寂しそうに言うもんだから、思わず胸がキュンとくる。

・・・・お兄ちゃん。時々そう言う姿を見せてくるけど、ワザとなの!!?

お兄ちゃんがそう言う弱気な姿勢を見せてきたら、私、母性愛がダダ洩れになっちゃうんですけどっ!!

「ワザとに決まっとろうが・・・・・。言うたじゃろ、たける様は女性経験が豊富だと。

 ありゃ、そうとう女心を把握して操作してくるぞ。気を付けろよ。お前みたいな乙女は、すぐに毒牙にかかってしまうぞっ!!」

えええええええっ!!

・・・・・・・

・・・・いや、まぁ、ちゃんと恋愛して好きにならせてくれるなら、別にそれでもいいのだけれども・・・・

「・・・・まぁ、そうか。はたで見ているものからしたら、お前がチョロすぎて面白くないがな。」

私、チョロすぎる?

「うむ。今は耳にかけたフィルターを強化しているから、耐えられているがの。無かったら、とっくの昔に妾と一緒に服を脱いで跪いているところじゃぞっ!!」

・・・それ、お姉様がチョロすぎるだけじゃないですかっ!!!!

「ううっ!!

 あ、当たり前じゃ!!豊穣神がチョロくなかったら、毎年、作物が実らずに、あっという間に大飢饉じゃぞ!!

 妾がチョロいのは、お仕事っ!!いや、もはや、権能であると言っても良いっ!!

 その眷属のお前までチョロいのも致し方ない事じゃ。それを妾が頑張ってサポートしてやっておるのじゃっ!!」

すっごい立派な事のように自分のドМを正当化してきた・・・。

でも・・・・なんかお兄ちゃんの手練手管でちょちょいのチョイってのも、ちょっと嫌かな。

そういうのじゃなくて、ちゃんと私にお兄ちゃんの全部をぶつけてほしいかな。

私は随分と考えた後に、私の母性愛をくすぐる作戦に出たお兄ちゃんの罠を噛み破る方法を考えた。


「お兄ちゃん、日曜日だけじゃ、私を落とせない?」


それを言われて、お兄ちゃんの顔色がちょっと変わった気がする。

「・・・言ってくれるじゃないか。あかり・・・・・。」

そういうとお兄ちゃんは、立ち上がって私に近づく・・・・・その空気に押されて後ずさると、あっという間に壁際に追い詰められてしまった・・・・。

そうしてお兄ちゃんは、壁に手を当てる。

・・・・うそっ!!これが噂の壁ドンっ!!

・・・・・・・トキメクというよりも、なんかこのままキスされそうで、緊張するっ!!

てか、やっぱり顔が近いしっ!!

「壁ドンくらいで、身動きできないお子ちゃまが、俺を挑発するとはな・・・・。」

やんっ!!お兄ちゃんっ!!

・・・・そのセリフ、やめてっ!!!

ゾクゾクしますっ!!

「わかるっ!!滅茶苦茶わかるぞっ!!明っ!!

 やっぱり、妾の眷属よのうっ!!」

お姉様、私・・・・どうしようっ!!

なんか、今、押し倒されちゃったら、受け入れてしまいそうで怖いんですけどっ!!!

「うらやましい話じゃっ!!

・・・・・・・いや、落ち着け、あかりっ!!

 母親がいつ来るかわからないリビングで妹を押し倒す兄貴はおらぬぞっ!!」

あああっ!!!そ、それもそうですねっ!!

で、ででで、でも・・・・お姉様私どうしようっ!!

私もう、お兄ちゃんの唇しか見てないわっ!!

「ううう、それはまずいのっ!たける様のおもうつぼじゃ・・・・・

 そうじゃっ!!あかりっ!!!

 明日、何処へ連れて行ってくれるか尋ねて、話題を誤魔化せっ!!」

そ、その手がありましたかっ!!

流石、お姉様っ!!私頑張りますっ!!


お兄ちゃん女性を落とすテクニックにアッサリとやられそうな私は、お姉様の機転に助けられた。

出来るだけ冷静を装って、お兄ちゃんに問い返すのでした。

「・・・・じゃぁ、私を落とすために、お兄ちゃんは明日、何処へ連れてってくれるのかな?」

お兄ちゃんは、こんな風に言い返されると思ってなかったのか、ちょっとキョトンとしていたけど、やがて「ふうん・・・。」と呟いて、壁から離れる。


「明日は俺とドライブしようか?どこに行きたい?」


と、誘ってくるのでした。

て、言われても今日、話題の展望台に行ってきたところだしな・・・・・。

どこがいいかなぁ・・・?

しばし、首をひねって考えていたけど、どうも思いつかない。

お兄ちゃんは返事が返ってこないので、「じゃぁ、俺が決めていいかな?」と言うので、私はそれを受け入れる意思表示するために頷くと、お兄ちゃんは黙って部屋を出て行った。


こ、怖かった・・・・・。

私がヘナヘナとその場にしゃがみこむと、夕食の買い出しから帰ってきたママがドアを開けて入ってきた。

「あら?明。帰ってきてたのね。それじゃ、着替えてママのお手伝いして頂戴。

 女の子なんだから、ちゃんとお料理しないとね。」

・・・はっ!!そうだった!!ちゃんと花嫁修業しないとっ!

私は、我にかえって部屋に戻ると、服を着替えてママのお料理の手伝いをする。

今日の夕食はお兄ちゃんの大好きな煮込みハンバーグ。

私はママにひき肉の手ごねの仕方を教わる。「たっぷりの水を入れると肉が固くならないのよ。」と、意外なほどの水を入れてこねるハンバーグは、ホックリと焼き上がり、それをママが作ったソースと一緒に煮込むと、我が家自慢の煮込みハンバーグの出来上がり。

すっごく美味しそうにできたっ!!

「・・・・・あかり、美術やっているだけあって、手先が器用ね。日に日に上手になっているわよ!」と、ママも太鼓判を押してくれた。

えへへっ!!この分だと、あの肉じゃがもマスターする日は、そう遠くないかな?

そうして出来上がったハンバーグにサラダを盛り付けて、準備完了。

さっそく、お兄ちゃんを呼んで夕飯にする。

お兄ちゃんも気に入ってくれたみたいで、一口食べて「美味いっ!!」と、声を上げる。

「美味しいでしょ?これ、あかりが作ったのよ?」なんて、ママもフォローを入れてくれる。本当は、ソースはママが作ってくれたんだけどね。

それでもお兄ちゃんは美味しそうに、全部、平らげてくれた。多分、500グラムぐらい食べてる。

凄く、嬉しいっ!!

私、なんか自立したカッコいい女の子よりも、こうやってありふれた生活に憧れるかもっ!!

何もなくてもいい。ただ、私と好きな人が、お互いの時間を過ごせるなら、それで幸せなのかも・・・・・。


その晩、私はお姉様のリクエストにお応えして、BLを聞くのだけれども、いつもよりも側にお兄ちゃんを感じられた気がする・・・・・・。

だから次の日は、特別装った服を着るんじゃなくて、白のブラウスにデニムパンツというありふれた服を着て見せる。

それは特別なデートじゃなくて、日常的な時間をお兄ちゃんとゆったりと過ごしたいという、私の意思のあらわれ。その姿を見て、お兄ちゃんは全てを悟ったように、本当にドライブ旅行だけに出かけようと言い出した。

二人で当てもなく出かけて景色を楽しみ、知らない道の駅に車を止めて、ちょっと変わったメニューの昼食をとったり、何もない公園に車を止めて散策したり・・・・そういうありふれた日常を過ごす。

その時、なんて言うか・・・お兄ちゃんは、お兄ちゃんでもあり、恋人でもある様にふるまってくれた。

ああ・・・・。なんて安心できるの・・・・。

ずっと、私を守ってくれていたお兄ちゃんだからこそ得られる安心感に、私は幸せを感じていた・・・・・・。

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