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私が特別っ!!

私と不知火先輩とお兄ちゃんが美術館で浮世絵展を楽しんだ後、お兄ちゃんは不知火先輩を車で家へ送ってくれた。

「お兄さん。送っていただいてありがとうございます。・・・・・あかり、また明日学校で。」

不知火先輩は、綺麗な顔をほころばせて私にお別れの挨拶をしてくれた。

その笑顔が眩しすぎて、私は笑顔で頷くのが精一杯だった。

その様子を見ていたお兄ちゃんは、車を発進させてから「こら、とんだ強敵だな。」と呟いた。

わかる?

「とんでもない美少年だな。あの子。あれで恋人がいないって言うんだから、大変だな。」

お兄ちゃんはしみじみ言う。

どういうこと?

なんであの美貌で恋人がいないと大変なの?

私は意味が解らずにキョトンとしてしまう。

「わからないかい?

 あれほどの美少年だ。そりゃ女の子にもてないはずがない。でも、彼は受け入れてこなかったんだ。

 あの子の中にはね・・・自分が心に決めた人の理想像があって、それ以外は受け止められない厳しさがあるのさ。

 そういうところも含めて、あの子は芸術家なんだろうな・・・・・。

 あかり、お前は、そういう子に選ばれてしまったんだよ。それはもう、すごい熱量だぞ。

 もし、最終的にお前があの子を選んだとしたら・・・・もう毎日、ラブラブアタックされるぞ。しんどいくらいにな・・・・。」

お兄ちゃんはそう言って、ハンドルを右に切ると「しかし、勿体ないな。芸術家じゃなくて芸能人・・・・・それも声優になってくれたら、あの子・・・・・凄い受け役として人気出るのになぁ‥‥。」と、残念そうにつぶやいた。


いや・・・・・お兄ちゃん。受け役って・・・

恋のライバル捕まえて、まだ声優業のお話ですか・・・・。

全く、隣にこんな美少女の許嫁いいなずけがいるのに・・・・本当に役者バカなんだから。

「そういうところ。お兄ちゃんに似てるよっ!」

私がふくれっ面でそう言うと、お兄ちゃんは不思議そうに「え。どこが・・・?」と聞き返すんだけれども、そんなこと教えてあげないんだからっ!!


「ふーむ。しかし、たける様のいうことも、もっともじゃ。

 あの不知火という小僧は、あの美貌なのに全く、隙が無い。

 いや、あの美貌ゆえに女の好意の的にされてきたからこそ、隙が無いのだろうな。

 そんな不知火がお前にだけは一人の男として好意を示しているのだから、それはもう大変な事なんじゃぞ?」

お姉様は、なんども首を縦に振ってなんだか納得している。

「それにしてもじゃ・・・・これは、帰り道にしては方角が違わないかえ?」

お姉様の言葉に私も道が違うことに気が付いた。

そうだ、さっきお兄ちゃんが右に曲がったところは、左に曲がらないといけないんじゃなかったっけ?

これだと、家と逆方向へ向かっちゃうんじゃないの?

私が不安そうにキョロキョロしていたら、お兄ちゃんが「美術館じゃいいところを見せられないからな。ここからは俺の時間だよ。」と渋めの声で言ってきた。


ヤバいっ!!

ヤバいっ!!こんな車の中っていう狭い空間で、お兄ちゃんの生声にさらされたら、私、本気で即落ちしちゃうっ!!

助けて、お姉様っ!!フィルターもっと強くできませんかっ!!?

「な、何を言うとるのじゃっ!!

 こんな間近でたける様の生声を聴けるチャンスに、フィルターを強くしろじゃとっ!?

 いやじゃっ!!そんなの妾に対するいじめじゃっ!!」

お、お姉様。そんなこと言わずに・・・・お願いっ!!

「ぐぬぬぬ・・・・・。

 ちょっとだけ妾と代われ。たける様と話がある。」

え?

か、代われって・・・・お姉様っ!?

「おかしなことはせんっ!!ただ、ちょっとたける様に嬲ってもらうだけじゃっ!!

 それで取引に応じようっ!!妾は、フィルターを強くしてやっても良いぞ。」

おかしなこと言ってるっ!

お姉様っ!!十分、おかしなことを言ってるからっ!!

「だって、だって・・・・・妾はもっと罵ってほしいのじゃっ!!

 BLの受けキャラみたいに嬲ってほしいのじゃっ!!あの声でっ!!」

う~っ!!

ダメですっ!私のお兄ちゃんで変なことしないでっ!!

私とお姉様は、心の中で睨みあいをしていたけど、やがて、お姉様は観念したように深いため息をふ~っ・・・・と、一息つくと


「良いのか?

 妾がここでフィルターをかけねば・・・・・たける様はお前をラブホまで連れ込みかねんぞ?」


え、・・・?

たける様は、大人の男じゃ。セックスくらい何のためらいもないぞ。実際、隙あらば狙っておるからの・・・。妾には、わかる。これはメスを狩る前のオスの匂いじゃ・・・。」

ええええええええええっ!!

ちょ、ちょちょちょちょ・・・・・それはダメっ!!

そんなの絶対にダメなんだからっ!!

私は、プラトニックな恋愛をちゃんとしたいのっ!!

エッチしかない恋愛なんて、絶対にダメっ!!

そ、そそそ、それに私は未成年なんだからっ!!エッチしたら、捕まっちゃうんだからねっ!!

「難儀な世の中よのぅ・・・。昔ならお前の年齢で子供を作っておったぞ・・・・。」

ダメだもんっ!!

絶対にダメっ!!

「ふ~、しかたない・・・・・。では、なおの事。お前にはフィルターが必要なんじゃないのか?

 そこを妾が押さえてやるのだから、取引としては悪くあるまい?」

・・う~っ・・・だって・・

お兄ちゃんで変なことしないでっ!!

「そんなことは妾どころか全国の女子に言え。て、いうか・・・・・お前が人のことをどうこう言えた義理かっ!!昨日お前がヤンキーに弱みを握られてメス堕ちさせられる教師のドラマで、()()()()()()()()()()()()()()()、言うてみいっ!!」


ううっ!!!

・・・・・しくしく・・・・まいりました・・・・・。

こうして私はお姉様の卑怯な手段に敗れ、体を明け渡すのでした。

しかも・・・・しかも、何故か・・・・

お姉様に体を奪われていた間、私・・・・意識を失っていたのですっ!

気が付いたら、私の心の中に返ってきたお姉様が、悶えまくってる姿を見ただけで、途中経過がわからないっ!!


私が肉体の支配権をお姉様に奪われている間、お兄ちゃんは一体何をされたんだろうか?

ふと、運転席を見ると・・・・コンビニの駐車場に車を止めて、ハンドルにもたれかかってうなだれるお兄ちゃんがいたっ!

「お、お兄ちゃんっ!?大丈夫?お姉様に何をされたのっ!!?」

私の声を聴いてお兄ちゃんは、うつろな目で私を見て「ああ、戻ってきたか・・・・。いや、酷い目にあった。流石の俺も・・・・あんな恥ずかしいセリフを言わされると・・・流石に・・・・キツイ。」

お、お姉様?・・・

一体、お兄ちゃんにどんなセリフを言わせたんですかっ!

「聞かぬが華じゃよ・・・・ああっ!!た、たまらぬっ!反芻するだけで、体が滾って仕方ないわっ!!」

うう~っ!!

お、お姉様だけズルいっ!!

何を言われたんですかっ!?なんて言ってもらったんですかっ!!

ズルい~っ!!

・・・・

・・・・・・・もういいもん。今日帰ったら、たくさんBL聞いて発散するんだからっ!!

「お前・・・やはり妾の眷属よなぁ・・・・・。」


私がプンスカしていると、お兄ちゃんが言った。

「お前を女にした神様・・・・本当に存在したんだな。・・・・

 いや、多分、俺は前にも会ってるな。」

お兄ちゃんは私を見ながら安心したように言う。

「うん。前にも一回、おかしなことがあったでしょ?あの時、お姉様が強引に私と代わったの。」

私の話を聞いてお兄ちゃんは「道理でおかしいと思ったんだ。あのとき・・・・。」と言って納得してた。

「何を言わされたの?」

「・・・・・きくなっ!」

お兄ちゃんは、そういうと「気分転換に何か飲むか?あかり、お前は何を飲む?」と言ってくれた。

「わーい、おごってね?」

「当たり前だ。」

「じゃぁ、ミルクティー!!」

「・・・・・・待ってろ。」

私が来るまで待っていると、お兄ちゃんはコンビニでコーヒーとミルクティーを買ってきてくれた。

「ほい。ミルクティー。」

「わーいっ!」

と、私が喜んで受け取ったけど・・・これがペットボトルだった。

・・・・・

・・・・・・・・私、女の子になってから、極端に体力が落ちて、フタが固い時は空けられないんだけど・・・・えいっ!!・・・・ん~~~~っ!!

ん~~~~っ!!

ふぬ~~~っ!!!

あ、開かない・・・・。そりゃ、こんな腕力だったらはじめにだって、押し倒された時に抵抗してるフリをしてるだけって誤解されちゃうよね・・・・。

私がペットボトルの蓋に苦戦していると、お兄ちゃんが「ほらっ」と言って、開けてくれた。

「ありがとう・・・あ、あのね。今のワザとじゃないのよっ!?

 私、女の子になってから以上に体力が落ちちゃって・・・・・

 あざとい子って思っちゃったかな・・・・?」

私は、流石にこういう芝居がかったことは、したくないんだけど、事実なんだから仕方ない。

お姉様が心の中で「あざとい女じゃのう・・・・」って、呆れてるしっ!!

お兄ちゃんっ!!本当に私、そう言うのじゃないのっ!

って、思ってたら、お兄ちゃんの口から意外な言葉がっ!!!


「知ってる。コミズサマから、お前を無茶苦茶弱体化させているから、押し倒したらいけるぞっ!!って、アドバイスされたからな・・・・・。」


・・・・ああん?

おい、ちょっとお姉様ぁ~・・・・これ、どういうことですかぁ?

「が、ガラがよろしくなくてよ。あかりさん。」

もしかしてっ!!私の体力が以上に落ちてるのって・・・・・・ワザとかっ!!

「うむ。その方がお前に女の子になった感を与えやすいと思ってな!!」

おかげでこっちははじめにレイプされかけるわ、日常生活でも大変な不憫を強いられているんですけどっ!!

大体、押し倒したらいけるぞっ!!ってなんですかっ!?何の情報与えてるんですかっ!

「いや・・・・音声の交換条件にたける様が知らないあかりの秘密を教えてくれっていうから、教えたまでじゃっ!!」

それ、絶対に自分が襲われたいから言ったやつでしょっ!!

「・・・・うんっ!!」

うんっ!じゃ、ありませーんッ!!

「し、しかしのう・・・・たける様の方は、お前を抱く気ではおるぞっ!!」




えっ・・・・・


ええええええええええっ!!

「だから言うたじゃろ。たける様は大人の男じゃ、いつまでもプラトニックのままなんかあり得るわけなかろうにっ!!」

でも・・・・そんな・・・・

ええっ!?

私が、ドキドキしながらお兄ちゃんの方を見ると、お兄ちゃんは私の動揺に気が付いたのか、少し驚いた顔をしていたけど、「そうか、あの女神から聞いたか・・俺の気持ち・・」と、少し寂しそうに笑った。「う、うん。でもねっ!!お兄ちゃん。私、もうちょっとプラトニックな関係を・・・・あのっ・・・・」

と、しどろもどろになりながら、肉体関係への話題をそらそうと必死になった。

そんな私をじっと見ていたお兄ちゃんは、運転席からググっと、私の方へ身を寄せてきた。

「あ・・・・あの・・・・・?」

驚く私の頬に手を当てて、唇を重ねようとするお兄ちゃん。

私はビックリして押し返す。

「いやっ!!こういうのはちゃんと手順を踏んでっ!!

 わ、私だって、エッチなことに興味が無いわけじゃないのよ?

 でも、・・・・でも、ちゃんと私、恋愛してからがいいのっ!!」

正直言うと、自分でも驚きだった。

前から思っていた・・・・。お兄ちゃんに押し倒されたら・・・・多分、自分は受け入れてしまうって。

だから、どうして自分が拒絶してしまったのか、わからなかった。

・・・・どうして?

私・・・・正直、皆の中でお兄ちゃんが一番好きなのに・・・・?

私は、一体何を望んでいるんだろう・・・?

そんな風に驚いていると、お兄ちゃんは興ざめしたのか、運転席側に体を戻して車のエンジンをかける。

「あ、・・・・あのねっ!!違うの。私もお兄ちゃんのこと好きだよっ!・・・・・でも、なんかっ!・・・・・」

私は自分でも意味が解らずに涙目になって、言い訳をする。

お兄ちゃんは私の方を見ながらクスっと笑った。

「いいよ、今日は性急すぎたかもな。でもな、あかり。俺は今まで女の子に遠慮したことなんかない。皆、俺は仕留めてきた。キスなんか止めたのはお前が初めてだろうな。

 それだけ、お前は特別だってこと、忘れないでくれよ・・・・・。」

それだけ言うと、お兄ちゃんはハンドルを切って家に向かう・・・・・

やだ・・・・

やだ、なにそれ・・・・・超ステキ

だって、私がお兄ちゃんが今まで付き合ってきた女の人の誰よりも特別大事にしてくれてるってことでしょっ・・・・・

私、今・・・・・・女の子として、今までで一番ドキドキしてるかもっ・・・・

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