お姉様は本気
お姉様は衝撃の告白をする。
お姉様もお兄ちゃんを狙ってるなんて・・・・。
「つまりじゃの。
お前は不知火と付き合って、武も一緒に家族生活を送ると言いたかったのじゃろうがの。
お前が武を選ばぬなら、妾が武を我が伴侶として迎え入れる覚悟じゃ。
どうじゃ?
そうなった時のことを考えて、不知火と武のどちらかを選ばねばならんと言うことを、先ず確認できたかえ?」
・・・・・・・
・・・・・・・・・・なんてこと・・・・。
なんてことなのっ!? お兄ちゃんが、お姉様の伴侶に・・・?
私はお姉様にお兄ちゃんを取られる可能性に現実味を感じて、背中に冷たい汗を感じてしまうのでした。
お姉様がお兄ちゃんを虜にできるのは本当だと思う。
だって、以前も私とすり替わってお兄ちゃんにエロシチュボイスを要求した時、お姉様は神としての姿をお兄ちゃんに見せたことがあった。
その時お兄ちゃんは
「凄い・・・・。確かにあれは神だった。
あんな美しい存在はどれだけ整形しても人間では成れないだろう・・・・。」
と絶賛してお姉様のことを綺麗だ綺麗だと連呼していた・・・・。
お姉様は数多くの神々と関係を持った豊穣神だけれども、そういうことになった理由はお姉様が地母神、豊穣神、恋愛の神と言った神性を持つ神だからと言うわけではない。
お姉様は実際に、超絶美しい女神さまだから、多くの男神や女神と関係を迫られている。世界中の地母神が豊満な乳房を持った美女であるという一定の法則があるけれども、それは男神を誘惑、発情させる能力があるということ。
それは、人間に対しても同じこと。
世界中の女神は、人間さえも虜に仕手関係を迫る。それが神性だから・・・・。
そして、その神性はお兄ちゃんにも向けられようとしていた。
でも・・・・。私が不知火先輩を選んだら、お兄ちゃんはお姉様に奪われて、私が不知火先輩を選ばなかったら、私は、不知火先輩のそばで絵を描けなくなってしまう。それは私にとって半身をもぎ取られるように辛いことだった。
そんなつらすぎる決断を私はしなくてはいけない。私が王子様を一人選ばなくていけないのは、もちろん、元々そうだったのだけれども、それでも、何とか回避できるかと思ったのに・・・・・。
まさか、お姉様がお兄ちゃんを狙ってくるなんて・・・・・。
でも、世界の神話を見れば、女神が人間の美男子を狙うことは珍しい話ではない。
逆もしかり。
だから、お姉様とお兄ちゃんが結ばれる可能性は、ゼロじゃないし、男神でさえお姉様を狙って襲ってくるほどなんだから、むしろ、お姉様の胸一つでお兄ちゃんが虜にされてしまう可能性は十分あった・・・。
とくに・・・。お兄ちゃんのエロボイス。
あれはお姉様には毒過ぎたのかもしれない。毎晩毎晩、私と一緒にお兄ちゃんのBLドラマを聞いて悶えながら一人でやっちゃってたから、お姉様は今やお兄ちゃんの声に依存している。
特にお兄ちゃんはドSな役が多いから、お姉様の性癖で言えば、お姉様がお兄ちゃんを求めるのは当然のことだった。
・・・・・あれ?
でも、実体のないお姉様がどうやってお兄ちゃんと関係を持つの?
私の物理的な問題による疑問の答えは、それが所詮、人間の身の上のことだから起きること。
神であるお姉様にとっては、問題にもならない事だった。
「妾がどうやって、武と関係を持つのかじゃと?
そんなものはどうにでもできるわ。
例えば、ここ。心象世界で妾が何度お前を可愛がってやったと思う?
武を心象世界に引き込むことくらい造作もなことじゃ。」
えええ~~~っ!?
じゃ、じゃあ、お姉様。お兄ちゃんと結ばれることになったら、私の心の中でエッチな事する気なんですか?
そ、そそそそ、それは、いくらお姉様でも流石にご遠慮願えますか?
「アホたれっ!
別に武の心の中ででもこの世界は作ることは出来るわ。」
あ、そっか。
「それに手段はそれ以外にもある。
武を神域に召喚してそこで暮らせばよい。
ほれ、浦島太郎のおとぎ話を思い出してみい。あれは、龍神の作り出した神域に人間が召喚された伝説じゃろ?
そういう手段はいくらでもある。」
う、浦島太郎の竜宮城って龍神の神域だったんですか?
「なんじゃ、そんなこともわからんのか? 乙姫は龍王の娘じゃろ?
竜王と言うのは、龍神の中でも支配地域を持つ力を持った龍神のことを言うのじゃ。」
へ~・・・。
じゃぁ、龍王って一杯いるんですか?
「うむ。元々、”王”という称号は、”皇帝”と違って、豪族クラスの棟梁に使う言葉じゃろ?
龍王もそういう意味合いじゃ。いうてみれば豪族クラスの龍のことじゃ。
それこそ、日本には山の中にある竜宮城や、川の中にある竜宮城に召喚される伝説が意外とあるじゃろ? ・・・・知らぬか? 有名な話で言うとムカデ退治の俵藤太は、山の支配権を争ったムカデに負けた龍神の話じゃろ? お前たち人間が知らぬだけで、この国にも数多くの竜宮城があるのよ。」
た・・・・俵藤太?って、だれですか・・・?
「・・・・。
あとでスマホで調べよ。
ま、まぁともかくじゃ。妾だって支配地域を持つ女神じゃから、神域くらいは持っておる。そこへ武を召喚して、妾の伴侶となってもらうことも容易いのじゃよ?
そうなったら、毎晩のように緊縛プレイしてもらうんじゃっ!!」
・・・・・お、お姉様って。本当に爛れているというか、性欲重視で愛とか考えないんですか?
「愛などいらぬっ!! 」
うわ~っ・・・。カッコいいってなりませんからね?
「う~む。
ぶっちゃけ、愛なんて肌を重ねた後でも湧いてくるもんじゃ。
優先順位とか人間が勝手に決めておるだけでの?
それこそ武士の時代なんか、あったこともなかったオッサンと12~3歳の少女が結婚させられて、孕まされて・・・・。それでも愛は築けるわけじゃろ?」
・・・・
・・・・・・それは・・・そうなのかもしれないですけどっ!!
私は、ちゃんと恋愛してからの方が良いと思いますっ!!
お姉様は私の話を楽しそうに聞きながら、茶化すように「面白い手段としてはの・・・。」と、切り出した。
「面白い手段としてはの。
妾が時折、お前の体を乗っ取って武と情を深めるという手もある。
その時は、不知火から見たら、お前はただの浮気者じゃがな。」
裁判沙汰じゃないですかっ!!
そういうの絶対にやめてくださいよっ!!
「ふふふ。案外、男は喜ぶかもしれぬぞ。
そうじゃな、たまには武だけでなく、不知火の小僧を抱いてやっても良いかもしれぬな。」
きゃ~~~っ!! もうっ!! お姉様の淫乱っ! スケベっ!! 色狂いっ!!
そんなの絶対に、絶対にダメですからねっ!
「ダメという事はあるまいよ。
愛に正しい形はない。体の関係から生まれる愛もあれば、許容範囲の広い愛もある。
いけるかもしれんぞ?」
いけませんよっ!!
そんなの真面目な不知火先輩が許すわけがありませんっ!!
「そうはいうがの。明よ。
初めにお前が言うとった、不知火と武と一緒に住むというのはそういう事じゃぞ?」
・・う。
私、凄い混乱してたんですね。 今、お姉様に諭されてわかりました。
「ふふふ。わかればよい。
それにしても、ここ最近、お前は望み通り、ちゃんと男と恋愛してきたのじゃから、そろそろ決断しなくては・・・の?」
・・・
・・・・・・はい。
「何かを手にするという事は、何かを失う事。
そういったことは、これまでも話してきた。だから、辛い決断でも頑張ってきめよ。」
・・はい。
「まぁ、最悪、お前が武を選ばなかった場合は、妾の旦那様になってもらう故、心配するでないっ!!」
お姉様は、そう言って、自己主張の激しすぎる胸を張る。
・・・・あ。それ本気だったんですね。