表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/143

これからは友達で

最初にはじめの乱入と言う普通では起らない事態があったものの、最後は隆盛りゅうせいと間接キスをするステキな経験が出来て私は嬉しかった。

そして、翌朝。何の前触れもなく、突然、美月みづきちゃんが我が家を訪れる。

「おはようっ! あかりちゃんっ!!」

「・・・お・・・・おはよう・・・・。」

美月ちゃんの突然の訪問に、唖然とする私。

今、朝の9時だよ? 何の連絡もなしにこんな時間に来る? 普通・・・・・。

いや、普通じゃなかったわね。この子・・・・。

「明ちゃん。夏休みの宿題、終わってる? 一緒にやらない?」

と言って嬉しそうにカバンを掲げる美月ちゃん。

ふふふ。美月ちゃん。私、生まれ変わったのよ? ちゃんと夏休みの勉強してたもん。

遊んでばっかりいるようで、もうアホの明とはサヨナラして今は真面目な女の子なんだよっ!!

私は、すでに夏休みの宿題の9割が終わっていることを告げると、美月ちゃんも同じくらい進んでいるから答え合わせしながら、復習しようといいだした。

「こうしたら、あんまりお金使わなくても、デートできるでしょ?

 お家デートっ!」

私の部屋に入った美月ちゃんは嬉しそうにそう言った。

うん・・・。ていうか、今の私ってもう女の子にあんまり興味が無いから、デートって言われてもね。

と、思いながらも、別に美月ちゃんのことが嫌いじゃないから、二人で一緒に勉強する時間は嫌じゃない。

「ちょっと、まっててね。

 飲み物持ってくるから・・・・。」

私はボトルに麦茶を入れると、二人分のコップと一緒にお盆に乗せて部屋に運ぶ。

部屋に戻ると、美月ちゃんが私の本棚を食い入るように見ていた。

「・・・・気になる本。あった?」

「きゃっ・・・・・ごめんなさい。」

美月ちゃんは部屋を物色していたことを謝りながら、「こ・・・これ・・・。」と言って、お兄ちゃんが出演しているBLの原作シリーズを指差す。

「ああ。それ・・・。お兄ちゃんが初めて受けた仕事でいきなり主人公の恋人役をゲットした作品。

 デビュー作で大役任されて、それで一気に人気が出た色々な意味で記念作品ね。」

そう説明したら美月ちゃんは、「わかる・・・。女の子は皆、恥骨やられちゃうもん・・・・。」と、顔を真っ赤にしながら、下腹部を押さえる。

こらこら・・・・。いくら女の子しかいないからって、はしたないわよ。

そう言いつつもお兄ちゃんの声を思い出して、股間をやられそうになっている私がいた。

「そういえば、美月ちゃん。お兄ちゃんのことを最初から知ってたわよね。

 やっぱり、ファンだったの? サイン、貰ってあげようか?」

有名人を兄に持つ私はちょっぴり優越感に浸りながらそう言うと、美月ちゃんは「本当っ!? じゃあ、このシリーズ持ってくるから、今度書いてもらってもいいかな?」ってとっても嬉しそうに笑った。

「うん。本当は、そんなに気軽に頼んじゃいけないかもしれないけれど、声優さんてそこまで厳しくないし、美月ちゃんは一緒にデートしている仲だし、全然、問題ないはずよ。」

私がそう言うと、美月ちゃんは本当に嬉しそうだった。

「美月ちゃんは、いつからお兄ちゃんの事を知ってたの?」

「うん。元々、原作本買ってたし、それがドラマCDになるって聞いて喜んでたの。

 そしたら、聞いたことが無い声優さんが配役されてて、最初、”あ~あ”って思ったの。

 でも、これが凄くって・・・・。今は未だBLの世界だけだけど、この先、絶対にたけるさんは伸びると思うわ・・・。」

美月ちゃんは、目をキラキラさせながらいう。

私もお兄ちゃんが褒められて鼻が高いっ!! 嬉しい。

少し話が長くなってしまったので「勉強しよっか」の一言で気持ちを切り替えて勉強を始める。

二人でしばらくの間は無言でいたのだけれども、その内、喉が渇いてきて、二人で麦茶を飲むと、再び会話が出てきた。

「あのね。明ちゃん。

 正直なところ、幼馴染まで出てきて、夏休みの終わりまでに誰と付き合うかなんか決められるの?」

「・・・・う~ん。正直、今まで3人と関係を深めてきたから、一人増えても、割り込むすきがあるのかなって、思うけど・・・ね。」

「ふ~ん・・・・。じゃぁ、可哀そうだけど磯貝いそがい君はチャンスが少ないのね。」

美月ちゃんは、そう言いながら体を寄せてきて、「じゃぁ、私は?」と言ってきた。

み、美月ちゃん・・・。

その漆黒の瞳で見つめられると吸い込まれそうな気分になる。でも、私の心にはすでに男心が残っていない。だから・・・・と、言いかけたとき、

「ああ・・・・。もう、揺るがないのね。あかりちゃん・・・。」

そう言って、美月ちゃんは、私から離れた。

アッサリと引き下がる美月ちゃんの違和感から、私は一つの答えを導き出す。

「でもね、そういう美月ちゃんも私に気持ちが無かったように見えるけど?」

「・・・うん。」

「美月ちゃんを変えたのは、誰かな? 

 不知火先輩? 隆盛? お兄ちゃんかな? それともまさかのはじめ?」

問い詰めるものの美月ちゃんは恥ずかしがって答えてくれなかった。

お昼前になって、美月ちゃんは家に帰る。

その前に「明日からも来ていい?」と聞いてきたので、私は勿論、と答える。

家を去っていく美月ちゃんの後ろ姿を見ながら、私は、心のどこかでホッとしていた・・・・・。

でも、百合よりのバイセクシャルな美月ちゃんの心を射止めた男の子って誰だろう?

もしかして、本当にはじめだったりして・・・。この場合、二人がくっついたら女装百合が成立するのかもしれない


なんて、バカなの事を考えている前に、服を着替えて京ちゃんとデートに行かないと。

京ちゃんとは初デートだから、二人でご飯を食べに行こうって誘われてるし、早く準備しないとね。

でも、京ちゃんって長い間全然、付き合いがなかったから、どんな服装が好みなのか想像もつかない。

ここは、私好みの清楚な水色のワンピースにしようかな?

とかいろいろ考えながら服を着替えて、色々準備してから、外に出る。

外はアスファルトが焼けて、むわっとする熱気が漂っていた。8月の熱さは日傘をさしていてもかなりキツイ。できるだけ日影を通りたいけど、そうそう都合よく日影もなく、熱い思いをしながら待ち合わせ場所に着くと、ランニングを着た京ちゃんが立っていた。

「ご、ごめんなさいっ!! 暑いのに待たせちゃった?」

慌てて駆け寄る私を見て京ちゃんは「すっげぇ、乳が別の生き物みたいに揺れてる‥‥。」って、興奮気味に言ったので、思わずビンタしてしまった。

「ばかっ!! 

 エッチっ!!

 嫌いっ!!」

この三言で話を終えて、立ち去ろうとする私に平謝りする京ちゃん。簡単には許してあげないけれど、

流石に5分も往来の中で男の子に「ごめん」と頭を下げさせ続けさせるわけにもいかず、私はとりあえず許すことにする。

「京ちゃんっ!! 言っておくけど、他の3人は紳士なのよっ!!

 女の子に向かってそんなエッチなこと言わないんだからねっ!?」

そう言ってむくれながらも、京ちゃんを連れて、私、お勧めの喫茶店に行く。

中に入ってすぐにクーラーの有難みを感じる私達。

「涼しいね。」

「ああ。悪いな。俺がエスコートしてやりたいんだけど、日本に戻って間なしだから・・・。」

「いいのよ。ここ、美味しいから期待してね。」

そう言ってほほ笑み返す私を青い瞳でじっと見ながら、京ちゃんは言う。

「つい最近まで、男だったって聞いたけど、そんじょそこらの女の子よりも清楚だな。

 まるで、お嬢様だよ・・・。

 ほかの連中も恋に落ちるのも納得だ。」

京ちゃんは、私の変化について興味を持ったらしい。

「男から女に変わるのに抵抗なかったのか? その言葉遣いとか、仕草とか。」と、不思議そうに質問を重ねる。

それは・・・。言葉遣いはお姉様に強制されたのが始まりだけど、私のこの性格の急変は、元々、先祖から受け継いだ習性なんで、抵抗なんかあるわけがない。でも、普通の人は、そう言うのってあり得ないわよね。

「わかんないけど、私、体が女の子になって行くことにも、この仕草に変わるのも全く抵抗なかったわ。きっと、元々、そういう風にできていたのよ。私。」

「ふ~ん・・・。そういうもんか。」

そう言いながら、京ちゃんは、不思議そうにしていた。

これ以上、この話題を広げられても困るので、私は、逆に京ちゃんのことを尋ねる。

「そういう京ちゃんこそ、アメリカで何をしていたの? 日本に来てやりたいことある?」

「あるぜっ!? やっと俺に興味持ってくれたな?」

京ちゃんは目を輝かせながら、ギターを演奏する素振りを見せる。

「エアギター?」

「なんでだよっ!! ちゃんとギター弾けるわっ!!」

京ちゃんは、嬉しそうに突っ込みを入れながら、自分がお母さんについてずっとギターを弾いていたことを話してくれた。京ちゃんのお母さんはギタリストであり、作曲家でもある。ただ、母親であることよりもミュージシャンであることを望んだ彼女とお父さんが離婚することになって日本に帰ってきた。

少し悲しい話だけれども、お母さんのことは今でも尊敬しているらしく、自分も同じ道を歩みたいと。日本でミュージシャンとして成功したいのだと、嬉しそうに語った。

「で、さ。今、親父に頼んで路上ライブの申請をしてもらっているんだ。許可が下りたら、是非聞いてくれよ、あかりっ!」

「はい。勿論聞かせてもらうわ。」

久しぶりに会った京ちゃんはとってもエッチな子に成長していたけど、芸術家としての魂は今でも健在だった。それが私には嬉しかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ