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勝ったなっ!!

この土壇場になって私には王子様候補が現れた。そして、この競争に参加することが男子の中で話し合って決定してしまう。

「あの・・・・それで・・ね。

 実際問題、どうするの? 私、どういう段取りで誰とデートするの?」

半ばやけっぱちになった私は、男子たちに詰問する。

ええ。ハッキリ言います。不機嫌ですよ? だって、私の関係ないところで話が決まっていくんですもの。

男の子たち、勝手すぎませんか? 何でもかんでも私の気持ちを考えずに決めてっ!!。

でも、京ちゃんがここに混ざることに不満があるわけではないの。

「そうは言ってもな。明よ、お前は京志郎きょうしろうのことが嫌いなのかえ?」と尋ねるお姉様に返す言葉が無いほど、実は私は京ちゃんが彼氏になるかもしれないことに嫌悪感が無い。

それもそのはず。京ちゃんもとびきりいい男だから。

お日様のような金髪に青い瞳。整った鼻筋とくれば、美形の象徴のようなもの。その上、隆盛りゅうせい並みの長身の上に足がスラリと長いっ!!

聞いた話じゃ金髪は染めたものらしいけど、青い瞳は母親譲りなのだとか。それで目元も優しいのかな? そして、柔らかな笑みを湛えた口元は乙女の心を鷲掴みにする自信に満ち溢れている。

面食い? ええ、もちろんそうですよ。イケメンが嫌いな女の子なんかいませんっ!!

それに京ちゃんも隆盛や不知火先輩と同じように、どこか私と波長が合う部分がある男の子。幼いころに仲が良かったこともあり、自然と心を許せてしまう。

そんな私が不満に感じることがあるとすれば、男の子たちが簡単に京ちゃんを認めてしまう事。

どういうことなの? あかりのことを他の誰にも渡したくないって思ってないってこと?

なんで、恋のライバルウェルカムなの? 

嫉妬して、絶対に認めないとか言わない理由は何なのよっ!!

と、私は心の中で不満をぶちまける。それを面と向かって問い詰められない理由は一つ。

複数の男の子と交際している私にそんなことを言う権利が無いとわかっているから。

それでも私は憧れる。少女漫画のヒロインがヒーローに愛されるように「お前を誰にも渡さないっ!!」と、他の男が寄って来るのを許さないほど愛されることを・・・・・。

少女漫画のヒロインかぁ・・・・。ほんの数か月前までは、そんなものをさほど見ることもなく、そんなことを考えたこともなかったくせに、男の子から女の子に変わってから、完全に物事の価値観が変わってしまったのね。

お姉様に言わせると元々、性別が変わる蛇の一族の末裔だから女に変わることが本能的に受け入れやすく、抵抗なく精神面も女になるのだろうって話だけれども、確かに私は、あっさりと変わってしまった・・・・。あれ、変わってしまった・・・?

あ・・・・・。


「ああああああああ~~~~~~~っ!!!!!」

突然、絶叫する私にその場にいた全員が驚く。でも、私はそれどころではない。

そう。だって、いつの間にか・・・・・多分、いつの間にか私の心の中で復活しかけた男心をここ数日感じていないからっ!! だから、それどころじゃなかった!!

お姉様っ!! 私、今。ちゃんと女の子ですかっ!?

嬉しくなって心の中のお姉様にそう尋ねると、お姉様もすっかり忘れていたようで「そういや、そうだったな。消えとるわ。男心。」と、断言してくれた。

やったっ!!

さかき あかり。復活っ!! 

そう心の中で叫びながらガッツポーズをとった瞬間、お姉様が不吉なことを言う。

「つまり。いよいよ繁殖期ラヴシーズンの終わりが来たと思え。

 これほどお前の感情が。魂が揺れ動いたという事は、そういう事だと思って準備しておけよ。」

お姉様の ”準備しておけ” は、間違ったことが無い。きっと本当に繁殖期ラヴシーズンが終わるのだろう。お姉様は、終わってから判断すればいいと言っていたけれど、丁度その境目に告白タイムが来るか、来た直後に告白タイムが来るか・・・。とりあえず覚悟はしておかないといけない。

それはそうと・・・・。


「あ、明。突然、絶叫して・・・・・どうしたんだ?」

隆盛は大げさに顔をしかめながら尋ねる。

そう。私は、男心が消えたことを思い出して、思わず人目もはばからずに雄たけびを上げた後だった。

見ると私を取り巻く全員が「何事か!?」と、驚いた表情で私を見ていた。

しかし、私の心の中で起きたお姉様との会話を説明するわけにもいかないので、とりあえず私は「課題を忘れていたのを思い出しただけ。」と、嘘を言った。

「お、お前なぁ・・・・・。」

隆盛は呆れつつも安心したように納得する。うん。複雑な心境にならざるを得ないよね。

とりあえず、強引に話題を戻してしまわないと・・・・。


「で? どういう順番で私とデートするか決めたの? 身勝手な王子様たちは。」

「いや・・・・具体的な話は未だ・・・・。」

私の問いかけに対して、不知火先輩の返事は不満足なものだった。

「いや・・・。そんなことも決まってなかったら、私、明日は誰と何処でデートの待ち合わせをすればいいんですか?」

「・・・きゅ、急な話だったから・・・・・。」

と言葉に詰まる不知火先輩の脇から京ちゃんが「じゃぁ、俺が一番最初でいいかっ!?」なんて口をはさむ。おおう。流石はアメリカ育ち。積極的ね。

でも、それって序列を重んじる日本じゃ致命的よ?

ほら、隆盛が割って入ってきた。

「おい。先輩を差し置いて、何を勝手なことを言ってるんだ?」

「あ・・・。あのさ、喧嘩は良くないぜ…。」

ちょっと怯えながら隆盛をなだめようとする京ちゃんは、ちょっとカッコ悪いけど、実際、仕方がない面もある。だって、隆盛は見るからに強面だから。この筋骨隆々な体は見せかけではなくて、戦うために鍛え上げられたキックボクサーのもの。一般人にとっては恐怖の対象でしかない。私もちょっと情けないとは思いつつも京ちゃんに同情もする。

隆盛に睨まれた京ちゃんは蛇に睨まれた蛙。その殺気に満ちた目にはじめなんか怯えて震えている。


でも、そんな空気を全く読めない美月みづきちゃんが「じゃぁ、公平になる様に女の子の私が決めてあげましょうか?」と立候補する。

あまりに唐突に空気を読めない天然美少女の発言に流石の隆盛も目が点になっていた。

しかし、険悪なムードを断ち切る良い展開。これを逃す手はないと、私は「どうぞ・・・・・。」と言って、強引に美月ちゃんの提案を承諾する。

皆のお姫様の私が承諾するんだから是非もないとばかりに男の子たちは納得して、美月ちゃんの発言を待つ。

「順番は、隆盛君、磯貝君、不知火先輩の順でローテーション汲むのはどうかな?」

美月ちゃんは何やら自信たっぷりにこの決定を発表するけど。多分この場の全員が悟っている。

”絶対に脈絡もなく順番を決めている” と。

そしてさらに美月ちゃんは、「で、午前中は私が明ちゃんと過ごします。」と、訳の分からないことも言いだしてる。

混乱する男子たちは、深堀することを恐れるかのようにお互いを見つめあってから頷きあい、その提案を受ける。


「ちょ、ちょっとまってよ!! 私の意見はどうなるの?

 朝から晩までデートだったら、お勉強する時間が無いでしょっ!!」

と、言う抗議は無視される。そして、その無視を象徴するかのように隆盛が私の右手を取って、

「じゃぁ、行こうか。お姫様・・・・。」

と言ってくれた。それだけで頬が赤くなっちゃうんだから、我ながらチョロい。

でも、ほんの4日ほどあってないだけなのに、この逞しい腕に手を引かれるのが久しぶりの気がする。

そして、この大きな体が私を守ってくれるかのように少し前を歩く姿に私の胸はトキメクの。

・・・・・ああんっ!! 今日もステキよっ!!

隆盛の上腕三頭筋っ!!

そんな私の心の叫びも知らずに、隆盛に手を引かれてその場を離れていく私を見つめる不知火先輩と京ちゃんの寂しそうな顔がまた母性愛をそそる。

もうっ!! ズルい人たちっ!!

なんてことを考えていたのに・・・・なぜか、私達にはじめがついてきていることに気が付いて一気に萎える。

「・・・あの?」

「なに?・・・・明ちゃん。」

白々しいはじめの返事にイラっと来た私が隆盛の右腕にしがみついたはじめを押しのける。

・・・・・ふにゅううううううう~~~~っ!!

う、動かないっ!! ず、ずるいぞ!! 

はじめは、小さくても男の子なんだから、あかりが力で敵うわけないのにっ!!


「ね、ねぇ。はじめ・・・・。これから私と隆盛がデートなの。

 邪魔しないで・・ね?」

私がお願いするように頼む。この美少女におねだりされて断れる男なんかいないっ!!

・・・でも、はじめには効果が無い。うん、知ってた。

でもね・・・? はじめは、私が隆盛に会えない3日の内の2日間も会えるんだよ?

だから、今日は遠慮してくれないかな? って、お願いしたら、まさかの涙目で懇願された。

「ごめんっ!! 明ちゃん。ごめんね。

 でも、私も隆盛と1週間ぶりにあったの。

 だから・・・・ねぇ~~、明ちゃん。 お願いっ!!」

はじめは、珍しく私に対して下出になっておねだりしてくる。

・・・・・いいわね。これ。

女の子になってから、はじめには、圧倒的に優位に立たされていたからこそ、私におねだりする姿を見るのは、気持ちがいいっ!!

・・・・ふっ!! 勝ったなっ!!

「も、もう~~っ。仕方のない子ね・・・・。

 今日だけだからね~~っ!?」

ちょっと優越感に浸ってはじめを許してしまう。それがはじめの策略と知りつつも抗うことが出来なかった。・・・・我ながら、チョロい女ね。私・・・・。

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