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お兄ちゃんが優れているところは、お兄ちゃんなところ

お盆の3日目。つまりお泊りは今日で最終日。

だというのに、お兄ちゃんはこの二日ほとんど榊一族に捕まって身動きが取れなかった。自由時間は本当に短く、お兄ちゃんと私の二人の関係にとって、このお盆休みが恋のバカンスだったというのに何も発展させられずにいた。

いい加減に私もイライラしていたのだけれども、3日目になってやっと、お兄ちゃんは解放された。パパと叔父さんとお爺ちゃんだけでお酒も飲まずに話し合うから、今日はそとで遊んできなと言われて私たちは自由になった。

「飽きられたかな?」

なんて、お兄ちゃんはさみしそうに言うけれども、きっと田舎のことだし色々と話し合うことがあるんだと思う。

それに叔父さんは、未だに優一君と私をくっつけようと画策してたし・・・。でも、そこは優一君が気を遣ってくれれ、叔父さんに「今日は二人にしてやろうぜ。」と、言ってくれた。

私が手ひどく振ったのに気を遣わせてごめんね、優一君。

それから、私を好きになってくれてありがとう。

お兄ちゃんと一緒に本家を出ていく前に私がそう言って深々と頭を下げた時、優一君は気恥ずかしそうに「もういいよ、あかり。早く楽しんできな。」と言ってくれた。

ああ・・・。優一君。君は素敵な男の子だよ。

私が3人よりも君と近い距離にいたのなら、君を選んでいたと思うよ。だって、優しいもん・・・・。


そんな優一君に感謝しながら、私とお兄ちゃんはパパの車を借りて街に出る。

コインパーキングに車を止めて、なじみの薄い街を楽しむ。里帰りと言うよりも本当に旅行に来た気分ね。

そんななじみのない街に来ていても、大人のお兄ちゃんは、私の手を引いて完璧にエスコートしてくれる。ナビを見ながら、パスタの美味しい店を選んでくれた。

「ここは口コミもいいんだけれども、俺は、外観とか内装の写真を見て決めた。

 食事はアートだ。俺の経験上、芸術的センスがある料理人の方が絶対にうまい料理を作る。」

その言葉通り、綺麗なガラス細工が飾ってある。オシャレでありながら、落ち着いた店構え。その店で出てくるパスタは確かに最高だった。

私はカルボナーラ。お兄ちゃんはナポリタン。

二人とも何の変哲もないありきたりなメニューを注文する。それはお兄ちゃんのお勧めで。

「こういう店で奇をてらった料理を頼むのは損だ。

 料理人の腕が誤魔化せないスタンダードな料理こそ、その料理人の腕がわかる。絶対にこういうメニューがいい。」

お兄ちゃんは妙なこだわりを持って言う。でもそれは、的中していた。

まず、盛り付けから美しい。そして、味も最高。生パスタ、最高!!

久しぶりに本物のパスタを食べた気がするわっ!!

てか、こういうお料理の選び方なんか、どこで覚えたのって聞くと、お仕事の先輩たちに連れられて色んなお店に行って、店の選び方を覚えたと答えた。

ふ~ん。お兄ちゃん、やっぱり才能あるから、先輩たちに可愛がられてるんだなぁ・・・・。と、思いながらも、大人の世界にいるんだなって実感する。

私がお兄ちゃんに惹かれる一番の理由はお兄ちゃんだから。

つまり、私が幼いころからずっと私を守って導いてくれた存在。私にとって最も身近で最も頼りがいのある人。それがお兄ちゃんだった。

その思い出が私が女の子になった後でも、お兄ちゃんの格を上げている。


いや・・・あのエロボイスも理由の一つだけど・・・・・・

「理由の一つで毎晩毎晩、BLCD聞くのかえ?」

なんて嫌味な事を言うお姉様のことはおいておいて、私にとってお兄ちゃんは、ただそれだけで信頼できる一番身近な男性。

だから、こうして料理一つとっても、私はお兄ちゃんのいう事に従うし、そうやって私の前では、常に頼りになる人でいてほしい。そう、願ってしまう。

つまり、不知火先輩や隆盛りゅうせいとは、全く違う次元で王子様なの。

お兄ちゃんに対する私の好感度は最初から他の二人よりも圧倒的に高かった。あの二人相手にだよ?

それだけ見ても、お兄ちゃんを思う私の気持ちの深さをわかってもらえると思う。

お兄ちゃんは特別な存在なの・・・・・。

その頼りがいは、このエスコートぶりで分かる。

お兄ちゃんは、馴染みのない街に来ても、的確に美味しい店を選んでくれたし、その後も私好みのアクセサリーショップを探し当ててくれたりもした。

ちょっと意地悪してランジェリーショップに入ってみても、お兄ちゃんは動じることなく堂々としたものだった。女性遍歴は推して知るべし・・・・ってところね。

それは、ちょっと嫌だけれども、正直、女の子の扱い方を熟知している男の人って、女の子の立場からすると安心する。

お兄ちゃんが女性経験が多いことはお姉様から聞かされているけれど、それも安心材料ではある。

とにかく私の中でお兄ちゃんはとっても頼りになる人ってこと。


そんなお兄ちゃんと二人っきりでカラオケに行ったら、どうなってしまうのだろう?

以前、私は学生同士でカラオケに行った。

男子二人とも、最初は私にラヴソングを歌って聞かせてムードを作ろうとしたけれども、BLのイメージソングばかりを歌う美月ちゃんの天然っぷりに感化されて、その後はただのカラオケ大会になってしまった。

あれは大多数で行ったカラオケ。もし、あれが個別に隆盛や不知火先輩と二人っきりだったら、どうなっていたかわからない。

そのどうなっていたかわからない状況に、今。お兄ちゃんと二人でカラオケに来た私はなっている。

ここには大ボケする美月ちゃんもいなければ、他人の目を気にする必要もない。完全な個室。

私は、完全に蜘蛛の巣にかかった蝶状態だった。

なんといってもあのエロボイス。あの歌声の洗礼を私は既に不知火先輩の別荘を借りたお泊り会の時に体験している。女の子はおろか、男の娘のはじめですら、恥骨をやられて夜にシャワー室で煩悩を抜かなければいけないありさまだった。

あれは、例えるならサバトの夜だった。女の子たちはお兄ちゃんのエロボイスに狂乱した。悪夢のようなステキな地獄が再び来るのかと思うと・・・・・。心震える思いで楽しみです。


もちろんお兄ちゃんにはカラオケボックスに入る前に「必要以上のボディタッチは、禁止っ!!」と、言い含めていたんだけれども、さりげなく私の横に並んで座った時点で、その約束が守られるわけがなかった。

私に対するラブソングを歌いながら、さりげなく私の肩を抱き寄せるお兄ちゃん・・・・。

「・・・あっ・・・。」と、声を上げるものの、私には抵抗の意思はない。最初の一瞬は確かにあったけれども、この歌声に身も心も蕩かされてしまって、私の上げる声は熱を帯びていた。

「あっ・・・・。」というその一言でお兄ちゃんは私の心の変化を読み取ったのか、私の肩を抱き寄せたその腕は次第に下に滑り落ちていく。

肩から、腕へ。滑り落ちながら、くびれに到達すると、お兄ちゃんは私の腰をさらにグイッと抱き寄せる。

「あんっ!!」

と思わず声を上げながら、自分からお兄ちゃんに体を傾ける私の気持ちは既に覚悟が決まっていた。

見つめあう二人・・・・。

どちらかと言うことなく気持ちが決まり、私は瞳を閉じた・・・・。そして、歌うことをやめたお兄ちゃんの選曲が流れる中、・・・・・終了5分前のコールが来る。

「ちっ・・・・・。」

お兄ちゃんは舌打ちしながら受話器を取って、延長をしないことを告げると電話を切った。

そうして、カラオケボックスの中には再び歌われることが無い曲のネロディーが流れるだけになった・・・。


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