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可愛い私を見てほしいの・・・・・

思えば私ほど数奇な運命をたどっている女もいないだろう。

ご先祖様の犯した不義理のせいで神の祟りを受けて男性から女性に変えられ、複数の男性に言い寄られているのだから。

そして、私に言い寄る3人はそれぞれが、非の打ち所がないほど私と相性がいい。


男の子の頃から親友だった隆盛りゅうせいは、誰よりも気が合うし、あの大きな体は私を一瞬で蕩けさせる。3人の中で一番、私の性的欲求を満足させてくれるのも、恐らくは隆盛だろう。私の体に流れるドМの血がそう予見している。


美術部の尊敬する先輩の不知火先輩は、男女を惑わす絶世の美少年で、あの瞳で見つめられて愛をささやかれただけで、私は不知火先輩の虜にされてしまう。そして、何よりもお互い芸術家としての血が、お互いを高めあえることを知っていて、双方が必要だと考えている。


血の繋がっていないお兄ちゃんは、幼いころからずっと私を守ってくれていた大好きなお兄ちゃんで、一番大切な人。しかも、神の恩寵を授かったエロボイスは、全ての女性の恥骨を虐める。最近は私もお姉様みたいにあの声で一晩中罵られたいと考え始めている。中毒性の高いエロボイス。


そして、何よりも3人とも私を誰よりも大事にしてくれる。愛してくれる。

私も3人が大好き・・・・・。

ああ・・・。どうして、私、この3人と同時に出会ってしまったのだろうか?

どこか知らない旅先で見知らぬ二人同士の出会いなら、こんなことにはならなかったのに・・・・・。

同時に3人の男性を好きになるなんて・・・・。


私が悪いわけじゃない・・・・・。本宮から帰ってきた私は心の中で自分を慰める。だって、こんな相性完璧な男の人と出会うなんて、私の数奇な運命もここに極まるって感じ・・・・。

ねぇ、お姉様。私、どうしたらいいの?

3人それぞれとデートするたびに風見鶏のようにクルクル私の心は、一番大切な人が変わってしまう。

神様の縁組はどうなっているのかしら?

でも、お姉様は「知らぬ。」と答えるだけだった。

「そもそも、お前は元々は男じゃった。本来なら、神々はお前に女と縁組させるつもりじゃった。

 ところが、お前は美少女になってしまった。運命の歯車はココで大きく崩れた。

 隆盛や不知火やたけるがお前のことを好きになったのも、その運命の歯車の崩れた影響やもしれぬ。あの3人は、それぞれに別の理由で女にモテる。その恋愛運の強さが、運命の歯車を崩してしまうお前の存在を認めたことで、我が物にしようとしておるのやもしれぬ。」

お姉様は神妙な声でそう言った。

神様にもわからないのですか? 私の恋の相手。

「わからぬ。そもそも運命が変わってしまった。

 神無月の頃に妾は出雲に行き、神々が決める縁組を聞いてくる予定じゃが、それまで、誰にも分らぬ。どうにでもなってしまうし、どうにもならぬかもしれぬ。

 誰にもわからぬのじゃ。」

ああ・・・・・。そうなんだ。

私は自分で運命の相手を決めかねている。だからいっそのこと神様のお決めになった事に従おうと思ったのだけれども、それは虫のいい話だったみたいね。

「虫のいい話じゃな。

 そも、他の男女は運命のことなど知らぬ。知らぬゆえに色々な恋愛を経験して、成長して、そして、自分の意思で恋人を決める。

 あかりよ、お前ほど非の打ち所のない相手たちから同時に告白される者もそうはおらぬ。

 それでもな。それでも、他の者たちと同じように、お前は、お前の意思で男を選ばねばならんのじゃ・・・・。」


ああ・・・・。どうしたらいいの?

隆盛とデートすれば隆盛に。不知火先輩とデートすれば不知火先輩に。お兄ちゃんとデートすればお兄ちゃんに・・・・。私の一番は簡単に変わってしまう・・・・・。

「あの者たちは非の打ち所がないからのぅ・・・・・。

 まぁ、悔やむところがあるとすれば、一度、あの者たちを断った時に日和らずに押し切ってしまえていたら、このような事にはならなかったのに・・・・・。」

うう~~・・・。だって、隆盛と不知火先輩にあんな風に言い寄られたら、断れる女の子なんかいないもんっ!!

「まぁ、それはそうじゃのう・・・・。

 特にお前は、多く神々や人と交わってきた豊穣神の眷属。体を求められたら、断りにくい属性じゃ。

 難儀な事よの・・・・・。」

・・・・。

・・・・・・・そういえば・・・。

「なんじゃ?」

お姉様ってこの人って心に決めた人はいなかったんですか?

「おるわいっ!

 妾だって女じゃ!!」

ええ~~っ!!

意外~~っ!! お姉様って男だったらなんでもいい淫乱なだけの神様かと・・・・。

「ようし、ぶっ殺す。

 明、短い付き合いじゃったが、お前のことは忘れぬぞ。」

うそうそうそうそっ!!

冗談ですよっ! そ、そそそ、それよりも恋多き豊穣神のお姉様の心を射止めた男性って?

そう言うと、お姉様は天を指差す。

「ツクヨミ様じゃ。」

え・・・・。

えええええええええ~~~~~~っ!!!!

あ、あんな大神と会ったことがあるのですか?

「何を抜かしておる。水神、蛇神の流れを汲む妾とその眷属であるお前も、ツクヨミ様の支配下の存在じゃぞ?」

ええええっ!?

「ふふふ・・・。妾はあの方に早々会えぬがな、ご尊顔を拝しただけで絶頂に達してしまうほどお綺麗なお顔をされておってな。妾も何度かお情けを頂戴したことがあるはずなのじゃが、まるで覚えてはおらぬ。記憶を失うほど、壮絶な快楽を植え付けられたのじゃろうなぁ・・・・・。」

・・・・。か、顔を見ただけで? 

そ、想像できない。

「不知火のようなものじゃと思え。あれが神の領域に達していたら、顔を見ただけで女は正気を失って、子種を漁りだすわ・・・・。」

こわ・・・・・。なにそれ・・・・。

「まぁ、神の話はよい。

 問題はお前が誰を選ぶかという事じゃ。」

・・・・この夏休みの終わりに・・・・ね。

・・そういえば、私の好感度の数値化って今、どうなっていますか。

「見るまでもない。全員、好感度を振り切っておるわ。

 誰を選んでも妾は問題ないと思う。」

・・・・選べないよぉ・・・・・・みんな大好きだもん・・・・・。

「泣いても笑ってもあと20日足らずの事じゃ。焦らずにしっかり考えて選べ。

 一つだけアドバイスしておくが、誰を選んでもお前を幸せにしてくれようぞ・・・・。」

ああ~~~っ!!

さ、参考にならない~~~~っ!!



私は、考えるのに疲れてその日は眠ることにした。

心の中でお姉様の子守歌が聞こえてきた・・・・。

ステキな高音で甘く優しく歌い上げる。その歌い方には愛情がこもっていた。

私を大事にしてくれる、お姉様の愛情を私は感じていた・・・・・。


翌朝。

私はお姉様の子守歌のおかげか、ぐっすりと眠ることが出来て、良い目覚めをすることが出来た。

ママが下のリビングから、朝食を済ませなさいと怒ってる。

ああ。そうだ!

今日も部活に行かないとっ!!

自分の部屋を出て顔を洗ってリビングに出て、ママにおはようの挨拶をしてから、オレンジジュースとサラダと目玉焼きにトーストの朝食を済ませると、歯磨きして制服に着替えて、学校へ向かう。

学校へ近づくと隆盛が待っててくれた。

「おはようっ! 明。」

「おはようっ! 隆盛。」

今日はどうしたの? なんて野暮な質問はしない。

この夏休みの終わりに私は意中の男性を決める。特にお盆は帰省するから、お兄ちゃんが私を独占できる。それまでの短い間に少しでも私に会って話したいんだろう。

宵宮の夜。隆盛は私に言った。


「明。お前が欲しいっ!

 夏休みが終わるまで残された時間は少ないし、正直、自分が勝てる気がしねぇ。

 それでも、俺は諦めないぞ。最後の最後まで、お前に俺が好きだと言わせて見せるっ!!」


その一途で熱い気持ちを私は知っている。もしかしたら、私は望んでいるのかもしれない。

隆盛が自分を虜にしてくれるのを。

だから、隆盛がとりとめのない話をしていても、彼の目から私は目を背けられなかった。

隆盛にとびっきり可愛い笑顔を見せてあげたい。隆盛の前では可愛い私でいたいと願っていたから・・・・・・。

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