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ママの浴衣

「浴衣・・・・作る?。」

私が今年の火祭りに出かけると聞いたママが嬉しそうに聞いてきた。

浴衣・・・・。そっか、浴衣かぁ・・・・。

私はすっかり忘れていた浴衣のことを思い出した。

そして、同時に浴衣姿の自分が隆盛りゅうせいと不知火先輩。それぞれと浴衣姿でデートに出かける姿をイメージしてみる。

ああ・・。隆盛はあのガタイだから、似合うんだろうなぁ・・・・。浴衣を着ることで逞しい胸板が印象的なシルエットを作って、より男性らしさが強調されるのが、容易に想像できる。

不知火先輩は、あの美貌だから、浴衣なんか着たら大変。声をかける男性が殺到するんじゃないかな?

しっとりとした艶やかなセミロングの髪に、妙な色気をまとった細身の肉体は男女問わずに魅了されるはず・・・。

そして、この私。元々、美形だったけど女の子になって浴衣の似合う美少女に変わった私の浴衣姿はさぞキュートだろう・・・・。出るところが出て、引っ込むところは引っ込む。完璧なスタイルは、浴衣を着ても変わらないだろう・・・・。

あ、それに。男の子の視線が集中するこのオッパイも浴衣を着れば隠せるかも・・・・。

そう思いながら自分の胸を掴んでみると、ママが見透かしたように「そんなスイカみたいな胸を隠せるわけないでしょっ!」と、酷い事を言う。

「まぁ・・・でも。Tシャツ姿よりは、絶対に目立たないわよ?」

ママは、どうしても私に浴衣を作らせたいらしい。

でも・・・。

「ねぇ、ママ。

 浴衣を作ると言っても、火祭りはもうすぐなのよ?

 間に合うのかな? そんなの・・・。」

私は浴衣と言うものは、男の子の頃から着たことが無かった。だから、浴衣を作ると言っても製作期間は見当がつかなかった。そもそも、手縫いで服を作るのって、大変じゃない?

そう思っての質問だったけど、ママは「私なら3日あれば十分よ?」と、あっさり答えた。

流石ママ。専業主婦の上に企業の偉いさんのパパの後妻に選ばれるだけあって、教養がある。家事全般に長けていた。

「3日で浴衣を作れちゃうんだ・・・・・。」

それを聞いて私は興味津々になる。そんなに簡単に自分で作れるのなら作ってみたい。

そう思った。

「よしっ! じゃぁ、時間がもったいないわ。早速ママと生地を買いに行きましょうかっ!!」

ママは手をパチンと叩き合わせながら、嬉しそうに言う。

「ママ。そんなに嬉しいの? 娘の浴衣を作るのが?」

「貴方もママになったらわかるわよ。

 自分の娘と浴衣を作る喜びが・・・・・。」


ママの言葉に嘘はない。生地を買いに店に行ったときもJKに帰ったみたいに、私とキャイキャイはしゃぎながら、生地を選んだ、

「いやーんっ! ね、ママ来れ可愛くない?」

「似合うわよ~。絶対、アナタにこのピンク色は似合うわよ~。」

と、言いながらママと選んで生地を買う。

で、フト。ママも生地を買っていることに気が付いた。

「あれ? もしかして、ママも作るの?」

そう言うと年甲斐もなく、顔を真っ赤にしながら「今度のお盆に久しぶりに会うパパに、着て見せてあげるの。」と言った。

あ~・・・。ママ。可愛いっ!!

「うんうん。女ざかりのこの年齢。

 男とこれだけ長い間、一緒に暮らせぬのは辛かろうて。

 お盆休みのわずかの間に夫と過ごせるのなら、せめて綺麗な自分を見せてあげたいと・・・・。

 そう願う気持ち、妾にはようわかるぞ。」

あ~。凄いステキな話ね。

そう言えばママとパパが会うのは、私が女の子って発覚して以来のことだものねぇ・・・・。

そう考えると、ママは本当に寂しかったに違いない。その日のための浴衣ってことね。

「いや。お前の母親はお前が思うよりチョコチョコ夫に会いに行っとるぞ。」

えええっ!? そ、そうなのっ!!? ぜ、全然、知らんかった。

「そりゃあ、そうだろ。

 あかりよ。お前の母親だって、女じゃし、お前の父親だって、男なのじゃぞ?

 肌が恋しくて眠れぬ夜もあろう。時折、夫に会いにいって、しっぽりと・・・な。」

うわっ・・・。両親の濡れ事とか、子供は絶対に聞きたくないことなのに・・・・。

でも・・・・。そっかぁ、そりゃそうだよね。愛する男の人とこれだけ会えなかったら、体も夜泣きするしね。そうしないと狂っちゃうわよね。

「明よ。妾がこう言うのも何じゃが、お前も大概、狂ってきたな。

 妾、そこまでひどい事は言えん。」

ちょ~~っ!! ちょっと、こんな考え方をするように私を育てたのは、お姉様じゃないですかっ!!

「ふふふ・・・・。」

お姉様は、買い物をする私達、母娘の姿を微笑ましそうに見守ってくれていた・・・。


「それじゃ、体を測っていくわよっ!!」

家に帰ると早速ママは、私の身体測定をする。

「既製品と自分のサイズに合わせた浴衣じゃ、着心地が全然違うんだからっ!!」

そう言いながら、私の体を測るママは、途中で絶句する。

「あ・・・・貴方なんて、いやらしいお乳してるのよ・・・・。

 何このサイズ。トップとアンダーの差・・・・

 そして、このくびれにお尻のサイズ・・・・・。これは男にとって毒よ・・・・。

 なに、これ・・・・。信じられない・・・。」

娘の美ボディに完全敗北したママは跪いてうなだれる。

「明・・・・。これで勝ったと思わないでよね。

 男の人は、オッパイが大きい女の子が好きとは決まってないんだからねっ!!

 ママなんか学園のアイドルだったんだからっ!!」

女のプライドをズタズタにされたママが苦々しそうに負け惜しみを言った。いや、娘と何を貼りあっているのよ? ママ。


でも・・・・。今のママを見ると、若いころは学園のアイドルだったって言われても納得する。

今でもきれいだものね、ママは。学生の頃はどれだけ綺麗だったか・・・・。

「うむ。お前の母親は、JK時代は、それはそれは美少女だったぞ。

 清楚で品行方正、勉学に秀でクラスの男女の憧れの的。生徒会長に選ばれるほど、優秀な子じゃった。

 どれ、そのころの映像をお前にも見せてやろうか・・・・・。」

お姉様がそう言うと、私の脳裏にセーラー服に三つ編み姿のJK時代のママの姿が投影される。

その清楚すぎるほど清楚な立ち姿に私は息が止まるかと思った。

「やだ・・・。ママ、私や不知火先輩よりも圧倒的に美少女じゃない・・・・。胸は薄いけど・・・。」

「その薄さが逆に男子の恋心をくすぐるのじゃよ。

 時にそういう魔術的魅力を秘めた女子がおる。そういうおなごはな、そうじて男子は胸に甘づっぱい何かを感じさせられてしまうのじゃ・・・。

 お前の母親は間違いなく、お前やはじめ、美月と比べて女としての格が違う。洗練されておるのじゃ。」

「・・・・・わかります。私のママは・・・。まるで男性の好みに合う様に計算尽くされて作り出されたお人形さんみたいに綺麗・・・。」


お姉様に見せていただいたJK時代のママは、洗練された美少女だった。今の私じゃ到底及ばない。

でも・・・・。私もこんな風になりたい。

いや、ならなくてはいけない・・・・。そうでなければ私の恋人候補たちに私はふさわしくないものっ!!

自分を磨き上げることの凄さ。素晴らしさを感じた私は、ママみたいになりたいと、強く願った。

だから、私はママに言った。

「ママ。必要なことを教えて。ママの娘として、ママみたいに完璧な女になるために必要なことを私も手に入れたい。」

「明・・・・。あなた・・・・。」

ママは、私の言葉に酷く感動したようで、涙を目に溜めながら、震える声で私を見た。

「ママ。私、血は繋がってなくても、魂はママと繋がった本当の母娘だと思ってるの。

 だから教えて。ママの全てを。私はそれを引き継ぎたい・・・・。」

私の言葉に感極まったママは、言葉を出すことが出来ずに、ただコクコクと頷くだけだった・・・。



そうして、夏の火祭りの日が来た。

私は、ママと作ったピンクの浴衣を着て、恋人候補の一人。隆盛の元へと向かうのでした・・・・。

私の胸はママと一緒に作った浴衣に対する誇りと、浴衣を着た可愛い私を隆盛に見せてあげたい気持ちで一杯になっていました・・・・・・・・・・。


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