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サービスしてもらいますよ

「ち、ちがうよっ! 

 僕は明みたいなおっきな胸した子が好きっ!! ・・・て、・・・。」

とっさに出た浮気の言い訳がまさかこんな肉体的なことだなんて・・・・不知火先輩って意外とエロエロ魔神なのでは? 

そういう疑いの眼差しを向けていたら、不知火先輩は「僕だって、男なんだぞ・・・。」って軽くむくれる。

「確かに八也やつなりは可愛いけど、恋愛対象には絶対にならないよ。・・・理由は言うべきことじゃないけど・・・・。」

八也・・・。八也って誰だっけ・・・?

あ、はじめの苗字だわ。いっつもはじめはじめって呼び捨てにしてたから、名字忘れてた。

「不知火先輩、そう言えば・・・・私以外、名前で呼びませんよね?」

それって・・・私が特別ってこと? と、聞きたくなった瞬間に時間切れのアラームが鳴る。

「あ・・・んっ、もうっ!!。」

私が悔しがっていると、先輩が「あかり、君が特別だからだよ・・・。」って、次のお相手であるお兄ちゃんの所へ向かう私の背中に言ってくれた。


・・・・私が特別・・・・。

こんな素敵な待遇はないんじゃないっ?

やっぱり、私だけを見てくれる人って最高だよね・・・・。って、不知火先輩、美月みづきちゃんのオッパイに滅茶苦茶誘惑されていたし、まだまだ油断できない・・・・・か。

振り向くと案の定、嬉しそうに美月ちゃんがそのオッパイを擦り付けるようにして先輩の腕に抱きついていた・・・・。ああ、あの娘。ああいう空気読めないところもいじめられた原因の一つだというのに・・・。

「何を甘ったれたことを言うとるのじゃ、明よ。

 これは女同士の戦いじゃ。武器は全て使え。

 見よ。はじめは、自分の幼さを最大限に生かしておるっ!」

お姉様の忠告を聞いた私が振り向くと、隆盛はまたはじめをお膝抱っこして花火をさせている。

甘ったれた様子で足をバタバタさせて可愛い子アピールをしている。

普通だったら頭を引っ叩きたくなるところだけれども、あの子がやったら、本当に可愛いのよね。

ペンギン歩きの時の破壊力ったらなかったものね・・・・。

私は改めて天然の年齢詐欺の破壊力を思い知らされる。


でも、恨みごとは言ってはいけない。これは女同士の戦い。特にスタートが私と違う二人にとって、このお泊り会は重要度が違うのだろう。男の子たちが、ここを勝負所に決めているように、あの子たちにとって今晩は勝負の日なんだわ・・・・。

だったら、私も武器を使わないとね。

そう覚悟を決めて私はお兄ちゃんの前に立つ。

実は、今回のお泊り会、一番株を上げているのはお兄ちゃんだった。

だって、全員、恥骨をやられちゃってるもの。本当は、3人ともお兄ちゃんにメロメロだもの。

だからこそ、私はお兄ちゃんに自分の武器を使う。それは妹という特権ではなく・・・・・。

妹を捨てるという私にしか使えない切り札。


「明・・・。待っていたよ。」

そう言って私を迎え入れてくれたお兄ちゃんに私は、「はい・・・。たけるさん・・・。」と答える。

これはお兄ちゃんが私に教えてくれた、私がお兄ちゃんに対して作っている壁。

私にとって幼いころから私を守ってくれたお兄ちゃんとの思い出が一番、私にとって大事なのだけれども、その反面、私にとって”お兄ちゃん” という立場が恋愛感情の足止めをしている。

初めてお兄ちゃんのことをたけるさんと呼んだ時のカタルシスは、一言では言い表せない。だからって、二言以上でも言い表せないんだけれどもね。

要するに言葉では表現できないってこと。

今は既に何回かお兄ちゃんのことをたけるさんと呼んでいるから、あの時ほどの高揚を得ることは難しいのだけれども、お兄ちゃんのことを一人の男性として意識することに胸が高鳴らないわけがなかった。

親友だった男の子の体を。尊敬する先輩の体に異性を感じた時、私は自分が女であることを意識せずにはいられなかった。でも、お兄ちゃんのことをたけるさんと呼ぶ行為は、お兄ちゃんが男の人なんだって意識させられてしまう。

”お兄ちゃん。私の大切な人・・・・。

 たけるさん。私の大切な人・・・・・。”

同じ大切な人であるのに、その意味することが大きく異なる。

そして、私がお兄ちゃんのことをたけるさんと呼ぶことは私が本当の意味で女の子の扉を開けてお兄ちゃんを迎え入れようとしている合図なのだと、お兄ちゃんにも伝わっている。


「明・・・。」

お兄ちゃんは嬉しそうに私の手を取って、花火に誘った・・・。

たけるさん・・・。私、線香花火がいい・・・・。」

バチバチと光と音を上げる激しい花火よりも、しっとりと燻る様に小さな明かりを灯す線香花火の方が絶対に良い。

「あ、これ。国産だね。和紙の具合もいいし、種火が落ちない・・・。」

粗悪品はすぐに種火が落ちて終わってしまう。チリチリと細く長く燃えることこそ線香花火の美しさ。

私達は、並んで座って小さな灯の美しさに浸った。

「可愛いね。 私、この花火が実は一番好きよ。」

そう言って花火を楽しむ私にたけるさんは、「家に帰ってからも、時々しような」と、しみじみと語る。

私達には、特に語ることが無い。だって、長い間ずっと兄弟として育って、ずっと一緒にいた私たちが男女になれば、それは熟年夫婦のようなもの。言葉少なくしてお互いの気持ちを理解しあっていた。

とても穏やかな時間が流れていたけれども、私達はお互いの存在が近くに感じるだけで幸せだった・・・・。


嘘つきました。本当は、メチャクチャにしてほしいってくらい、私、今。お兄ちゃんを求めているっ!!

でも、お兄ちゃんは大人だから、そんなこと考えてないんだろうなって・・・・・。

ああ・・・。駄目よ、明っ! お兄ちゃんの事を思うだけで、そんなに体を夜鳴きさせてどうするの?

もうっ!! お兄ちゃん。もっと、威勢よく明を食べちゃおうとしてよっ!!

プラトニックな恋愛こそを大事にするはずの私にしては珍しくスキンシップを求めずにはいられない夜だった・・・・。

そうして、各々、最後の花火を終えるころ、ちょうど交代の時間を告げるアラームが鳴った。

「ふふふっ・・・・。何もかも切りが良いね。」

不知火先輩は楽しそうに笑ったけど、時間切れのお預けを食らった私たち女性陣は、欲求不満が多く残る花火大会になってしまった。

だから、男の子たちと別れを告げて別荘に戻った時、再びジャンケンが始まるのだった。


「わかるよね? じらされて、たまんないよね・・・・・?」

特に積極的にスキンシップを仕掛けていた美月ちゃんが紅潮した頬を室内灯に反射させながら、ジャンケンを誘うように構える。

それを呼び水にしたかのようにはじめと私がジャンケンのポーズをとる。

「今日、誰が一番、心に来た?」

ジャンケンを前に私が聞きたかったことはそれだったけれども、二人とも私と同じくお兄ちゃんの存在を口にした。

「本当にヤバい。あの声にやられた後に隆盛にスキンシップするの、本当につらかった。体が反応しているのバレたらどうしようって思ってた・・・・。

 ほら・・・私は体が男の子だから・・・・。」

過激な告白をするはじめ。そして、それに同意する形で私も美月ちゃんも恥ずかしそうに頷いた。

そう、女の子は皆、あの声にやられちゃうのです。

特にお姉様の生命の舞の影響で・・・・。て、いうかお兄ちゃんの声の力を制御しておいて、今度はその効果を上げてくるんだから、お姉様って本当にメチャクチャよね・・・・。

「これこれ。いい加減、妾への苦情はやめぬか。

 おかげでそれぞれの恋愛感情に波が出来たじゃろうが・・・・。」

より恋愛模様が複雑化しただけと思うのですけど。

「複雑結構! 人間の心理が単純であってたまるものか。 

 例えば、甘いものを食い続けたら、いくら甘いもの好きでも塩辛いものを食いたくなるじゃろう?

 それと同じじゃ。人は同じ刺激だけを受け続けることは出来ない。変化を受けて、より好みが強まることはあっても、それだけで満足できぬように出来ておる。

 はじめも美月も新たなる刺激を受けて、趣向が変わる可能性もあれば、より元の相手が好きになる可能性もある。

 全て、人の心のままじゃ。」

人をかき乱しておいてなんて言い分なんですか、償いに今夜はサービスしてもらいますよ。

と、心の中で言いながら、私はどうせ最後の順番になることがわかっているジャンケンを始める。

はじめも美月ちゃんも限界来ているみたいだし・・・ね。


「妾を風俗嬢みたいに言うなっ!!!」

そんな中、お姉様が私の心の中で怒号を上げていた・・・・・。

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