この泥棒猫ちゃんたちめ~~~っ!!
「たわけっ!! 冷静にならんかっ!!」
お姉様のお叱りの声で私たちは我にかえって、反省する。
「確かに、まだ不知火君の番が残っていたな。
今、明の唇を奪うのはフェアじゃなかったな。」
お兄ちゃんは、少し反省しながらベタベタに濡れた私の髪を撫でながら笑った、
私もお兄ちゃんも冷水を浴びせかけられて、すっかり熱気を奪われてしまった。
「もどろうか・・・・?」
そういって私の前を一人で歩きだしたお兄ちゃんの背中を見て、私は少し寂しくなった。
確かに私は冷静になったものの、さっきお兄ちゃんにキスしてほしいと思ったのは本当の気持ち。
だから、このまま終わってしまうことに、少なからず寂しさを感じていた。
何事もなかったかのように、何事かあったことを隠すように大人の対応をして忘れようとするお兄ちゃんが恨めしくて、私に戻ろうと促したお兄ちゃんの背中に
「・・・・・・はい。武さん・・・。」と返事してやった。
その声を聴いてお兄ちゃんは、ビックリしたような顔で振り向いた。
「明・・・・・。」
嬉しそうに笑うその顔に「もう、子供みたいっ!!」と、私は笑ってやった。大人の対応なんかいらないんだからっ! 私への想いを誤魔化さないでよねっ!!
私の気持ちを悟ったのか、それともしてやられたと思ったのか、お兄ちゃんは、今度は私の手を取って「もどろうか?」って言ってくれた。
それだけで、私の胸は幸せで一杯になる。この手を放さないでほしい。そう思った。
ところがです。この気持ちを一瞬で台無しにする出来事が起こったのですっ!!
「あ~~~~~~~~っ!!」
その光景を見て私は怒りの声を上げるっ!!
私がっ!!
いない間にっ!!
この泥棒猫ちゃんたち~~~~~ぃっ!!
なんと私とお兄ちゃんが皆の所に戻った時・・・・。
隆盛は初を膝の上に乗せて後ろから抱っこしてるしっ!!
美月ちゃんは、不知火先輩の腕に抱きついて、その豊満なオッパイを押し付けて先輩を誘惑していたのっ!!
こ、ここここ。こんなの反則でしょっ!!
こんなエッチな手段、反則でしょっ!!
初は隆盛の右ひざに両太ももをまたがせて座りながら自分の柔らかそうな太ももを隆盛に摺り寄せている。隆盛は、まんざらでもないのか、爽やかな微笑みを浮かべて初の頭をなでなでしてあげているしっ!! いや、あれはまんざらでもないどころか、気持ちいいに決まっているっ!!
だって、初はあんなに可愛いし、太ももも男のくせにプニプニで柔らかそうなんだもんっ!!
そして、巨乳マニアの不知火先輩は、すっかり美月ちゃんに篭絡されたみたいにエッチな目で自分の腕を飲み込む様に吸い付く美月ちゃんのオッパイを凝視していたっ! そんなに気持ちいいのっ! 先輩のバカーっ!!
「うるさいなぁ・・・・明ちゃん。戻ってきていきなり何なの?」
初がいけしゃあしゃあと、大声を上げた私を非難する。
「ちょっと、なんなの? なにしてるのよっ!!
太ももスリスリなんか、ダメよっ!! そんなエッチな事っ!!」
私の猛抗議に初は、「だって~~。隆盛がだっこしてくれるんだもん~~~。」なんて、小憎たらしい事を勝ち誇ったように言う。
「隆盛~~~?」
私のジト目に隆盛が「いや、だって。こいつ河原ではしゃぎまわって・・・・。こんな石ころまみれのところ、転んだら危ないだろ? だから・・・・。」と、慌てて弁解しつつも、初の小さな頭を無意識のうちにナデナデしている手を止めていない。
ああ。そうでしょうともっ!!
気持ちいいよねっ!! 初の髪っ!! すっごい高いコンディショナー使ってるもんねっ!! スベスベでテカテカでっ!! 子猫みたいな肌触りだもんねっ!!
「・・・・いつまでナデナデしてるのよっ・・・・・。」
「・・・はっ!!」
我に返った隆盛が慌ててをのける。その手を名残惜しそうに「や~んっ・・・・。」と嘆く初。
それでも、これは女の戦い。初は、直ぐに気持ちを入れ替えて私に向かっていつもの宣戦布告をする。
「明ちゃん。いつも言ってるけど、勝負は未だついてないんだからね~?」
そう言いながら、隆盛の筋骨隆々の太ももを平手でピシャピシャ叩く初は、まるで勝者気取りだった。明だって、負けてないんだからねっ!!
それに・・・・ぐぬぬっ・・・。
「美月ちゃんのそれは・・・・絶対にやりすぎっ!!
先輩のお父さんに怒られちゃうんだからねっ!!」
と、声を上げたはいいが・・・不知火先輩のお父さんの姿が見えない。
「あ~~。お父さんは・・・・そのビールの飲み過ぎで・・・・トイレに行ったまま戻ってない。」
ああ~~~~っ!
これだからっ!! これだから中年のおじさんのアウトドアはっ!
私のパパも旅行先でよくそうなってましたっ!!
う~~~っ・・・・・。
「で、・・・・でで。でも・・・・・。確かに、これはやりすぎだよね。
さ、沢口さん。離れてねっ・・・・。」
そういって、美月ちゃんの体を押し戻そうとする先輩だけれでも、その腕に力は入ってなく、美月ちゃんは私の方を恨めしそうに見ている。
「明ちゃんが、先に浮気したんだもんっ!!」
・・・・・
・・・・・・・いや、浮気って‥‥。
その言葉に全員が凍り付いた。
特に不知火先輩は生まれてこの方、男女を魅了してきた立場だったので、生まれて初めて自分が当て馬にされたことに、驚きを隠せなかった。
「あ・・・・ええええ~~~?」
困惑する不知火先輩を救い出すために私は美月ちゃんの手をほどいて、不知火先輩を抱き寄せる。
これ、私のだしっ!! と、言わんばかりの主張をする。
不知火先輩は、接近した水着ごしの私の胸を見て「うっわ・・・・・。すっご・・・・。」と、正直すぎる感想を漏らす。・・・・今だけは許してあげる・・・・。
おさまらないのは美月ちゃんだった。
「何よっ!! デレデレしてっ!
私だって、明ちゃんほどじゃないけど、十分、おっきいのにっ!!」
美月ちゃんが無自覚に言ったその一言に、初が呆然としながら、
「美月ちゃん・・・・。それ、明ちゃんに嫉妬してるの?
不知火先輩に嫉妬してるの?」
と、呟いた・・・・。
その一言に美月ちゃんはハッとした表情で・・・。
「わ・・・・わたし・・・?」
と、狼狽えていた。
そんな姿に私たちも呆然としていたけれども、お姉様はそっと、アドバイスをくれた。
「妾の生命の舞の影響で、美月の無意識化の本能が呼び起こされておるのじゃ。
特に不知火は女性のような外見じゃからの。美月は引き寄せられやすい。
その事を言うて安心させてやれ。女同士の情けじゃ・・・。」
ああ、そういうことですか。
それは仕方ありませんね。元々、百合よりのバイセクシャルとはいえ、美月ちゃんがここまで男の人に積極的になることはきっと珍しいのだと思う。それは今回の旅行中の美月ちゃんの戸惑いぶりを見てもわかる。
特に美月ちゃんは私と違ってお姉様の呪力のせいでこんなことになっているなんて思いもしないだろうし、自分の変化が怖くて仕方ないと思う・・・。ここはお姉様の言う通り、友達として安心させてあげるべきよね。
「美月ちゃん。不知火先輩はこの通り、女の子にしか見えない外見だし、百合の美月ちゃんの触手が動くのは当然だと思うの・・・。」
「・・・・・おいっ!!」
私の助言に不知火先輩は少なからず傷ついたみたいだけれども、美月ちゃんは、少し冷静さを取り戻した。
「そうね・・・・。先輩、こんなにも綺麗だもんね・・・・。」
美月ちゃんは、そういって冷静さを取り戻した。
これ以上の長居は不毛な議論を呼びかねないと、私の女の勘が警鐘を鳴らしていたので、私は、不知火先輩の手を取って、その場を離れてデートに向かうことにした。
「・・・あっ・・・・」
当名残惜しそうな美月ちゃんの声には、友達として少なからず胸が痛んだのだけれども、ここは譲るわけにもいかなかった。これは、女同士の戦いだもんっ!!
そう覚悟を決める私にお姉様は忠告する。
「明よ。その言葉の重みをお前はわかっておるのか?
女同士の戦い。
それは正にその言葉の通りの意味じゃ。
美月は、タダのお前の友達ではないぞ・・・?」
その言葉の重みを・・・・・私は少し理解していた。
だって・・・・・それこそが私の女の勘なんだもんっ!!