川遊びが始まるっ!
事情を知らない初と美月ちゃんは、お姉様の生命の舞の影響で起きている自分の体の変化に戸惑っていた。
それはそうでしょうとも。実際、事情を知っている私でも戸惑うレベルの抑えがたい性的衝動なんだから。
特に百合娘の美月ちゃんは、自分がこんなにも男性の体に興奮するとは思っていなかったので、初のご立派様に心動かされることなど想像もしていなかったことで、戸惑うのは当然のことだった。
「でも・・。」
と、美月ちゃんは言う。
「・・・・でも、初ちゃんは可愛いし、そういうのもアリなのかなって思う。
不知火先輩も。
でも、川瀬君と明ちゃんのお兄さんのことまで良いなって思うのは、なんでなんだろう?」
その答えは事情を知らない初と美月ちゃんには永遠に出せないだろう。ただ、初は「明ちゃんのお兄ちゃんは、あの声だから・・・・・。あの声は恥骨に悪すぎる。」と、答えた。
美月ちゃんもそれにはすぐ同意する。
「ああ、そうね。
あの声は反則よね・・・。あの歌声には本当に下半身から溶かされるかと思っちゃった。」
な、なんて大胆な告白・・・・・。でもそれは昨晩、共に分かち合った火傷の痛みを知る者同士、恥ずかしがる間柄でもなかった。
だから私も「わかる。私もたまらなくなっちゃってた。」と同意した。
でもそれは普段からお兄ちゃんと接している私でも起きることなのかと初は不思議がっていたけれども、あのエロボイスの破壊力は、妹でもイチコロにされるのよって教えてあげた。
「そっかぁ・・・。まぁ、でも妹でもああなっちゃうよねぇ・・・。」
男の娘の自分でさえああなっちゃうんだから・・。と初も納得するしかない。
その後、しばしの沈黙ののちに美月ちゃんは「こんな凄い人たちから言い寄られる明ちゃんって、一体・・・・・。」と、呆れるように言った。
本当にねぇ‥‥。皆、本当にどうして私なんだろうね?
私だって、わかんないよ。そんなこと・・・・。
掃除が終わると次は川遊びの時間。
私と美月ちゃん。それと初は、二組に分かれて水着に着替える。
海に行くのと違って、山の中はビーチサンダルを履くわけにもいかないし、露出が多すぎると、行く途中で木々で肌を傷つけてしまう恐れがあるので、水着の上に服を着ないといけない。
それで私は水着の上に白のTシャツを羽織ったんだけど、それを見て初が
「あ~っ!! 水着が透けてるっ!! エッチ!!
私もそれ、するっ!!」と、言って私の真似して白のTシャツを着る。
その胸元を見て私は初の胸のサイズが大きくなっていることに気が付いた。
「ねぇ、初。パッドを盛ったの?
それともホルモンの影響?」
私がそう尋ねると初は胸を張って嬉しそうに「・・・えへへ。最近、またちょっと大きくなってるのっ!!」と言って喜んだ。
初は隆盛に喜んでもらおうと、ネットで購入した女性ホルモンに手を出した。それが発覚した以降も両親と医者に相談して、ホルモンを摂取をしているそうだ。男性が女性ホルモンを摂取してもそうそう大きくはならないんだけど、初は比較的、順応しやすい体質らしく、結構、順調に胸が成長しているらしい。
「・・・本当なら、こっちも小さくなってくれるはずなんだけどなぁ‥‥。」
ただ、胸に御利益のある女性ホルモンの力をもってしても初のご立派様には効果がないらしい。気の毒な話だけど、こればかりは他人はどうしようもない。私と美月ちゃんはかける言葉も思いつかないので、何も言わずに外に出ることにした。
別荘の外はパラダイスだった。
女子と違って男子は肌も気にせずビキニパンツ姿で私たちを待っていたからだ。流石に不知火先輩のお父さんは短パン姿なんだけれども、苦笑いしていた。
「皆気合が入りすぎててね。
健全な男女交際を頼むよ。」
なんて冗談交じりの本気のお願いをしてきた。
みんなそれぞれにBBQの道具をもって沢に降りて行くと、山の中には、そこそこの川が流れていた。
「へ~。こんな高い山なのに、少し下るとこんな大きな川があるものなんですね。」
想像もしてなかった水量に私が感動の声を上げると、不知火先輩のお父さんが「あちこちの山の水がここに合流していて、それにこの山には湧水があるんだよ。飲めるくらい綺麗な水なんだけど、まぁ、どんなに綺麗でも生水は飲まない方が良いと思うね。」と注意する。
川遊びの場所は、川の曲がり角の比較的、平坦な陸地がある場所に元々決まっている。そこは不知火家が以前、別荘に通っていたころは毎年、BBQをしていた場所だそうで、コンクリート造りのBBQコンロが置いてあった。
「少し川遊びしたら、体が冷えてくるから、BBQをして一休みしよう。」とプランの説明が終わると、私達は服を脱いで水着になる。
その時の男子たちの「はぁ~・・・。」というため息はたまらない。なんという優越感。複数の男子を自分の体の魅力で虜にしてしまうという快感は女の子でしか味わえないものだと思う。特にその視線が好きな男の子たちによるものなら・・・・。
「ね? 隆盛、可愛い?」
と、初なんか、隆盛の前に歩み出て自分の水着姿を披露するほど積極的な行動に出る。きっと、大きくなった胸を褒めてほしいのだと思う。隆盛は照れながらも「ああ。可愛いよ。」と、言いながら”それ以上、大きくなってくれるなよ” という思いが見え隠れする目線をしている。オッパイ見過ぎだよっ!!
でも、初の体は男子らしい筋張った感じが無く、誰が見ても美少女の裸体だ。そばで見ているお兄ちゃんも不知火先輩も先輩のお父さんも初の水着姿に驚きを隠せない。
「いや、本当に男の子なのか? この子。」
先輩のお父さんは呆れるように言うけれども、アナタの息子さんなんか、ビキニパンツ一つですけど、どう見たって痴女ですよ。ビキニ着なさいよって言いたくなるくらい綺麗だった。
「・・・なんだか、皆、女子力ありすぎて、本当の女の子の私が霞んじゃう・・・。」と、小さく愚痴を言う美月ちゃんだけれども、君も超高高級のプロポーションしてるからね?
私と比較するから、そう思うだけで美月ちゃんもすっごいオッパイ大きいからね? 実際、オッパイマニアの不知火先輩は私と美月ちゃんの胸を交互に見ている。そういや、不知火先輩のママも写真で見る限りではそこそこ巨乳だった気がする。・・・・・外見はお父さんに全く似なかった不知火先輩だけど巨乳好きはお父さんからの遺伝かな?
「じゃあ、皆で水遊びするか。」
と、お兄ちゃんが音頭を取って、水に入る。
「冷たっ!!」
川の水は流れも速く、より冷たく感じやすい。誰もが水に入ってすぐに声を上げてはしゃいだ。
川は海と違って砂地じゃなくて石が多いので、ビーチバレー的なことは出来ない。皆で水に入って水を掛け合ったり、川の流れに身を浮かべたりするのがメインになる。
でも、こんなときだっていうのに男連中は私と美月ちゃんが歩くたびに弾む胸を楽しんでいる。わかってはいたけれど仕方のない人たちね。でも、今みたいにみんなで楽しくしているだけじゃ、恋愛は発展しない。女の子の私から言うわけにもいかないんだし、男の子たち、もっと頑張ってチャンス作ってよ!!
私と同じことを考えていたのがお兄ちゃんのようで、このまま時間が過ぎるのはもったいないと提案する。
「交代で明と二人っきりの時間を作るべきだ。」
「そうしましょう。」「それがいい。」
と、隆盛も不知火先輩も私の意見も聞かずに決定して、ジャンケンで順番を決める。最初は隆盛、次がお兄ちゃん。最後は不知火先輩になった。
隆盛は私の手を取って「じゃあ、向こうに行こうか。」と歩き出した。その様子を見た初が「いいもんっ!! 私も他の子を誘惑しちゃうんだからねっ!」と隆盛に文句を言う。
そして美月ちゃんも不満そうに「私もそうします。」と言った。
そりゃあ、今の状態って女の子のプライドが傷つくよね。特にお姉様の生命の舞の影響を受けて男子を意識せざるを得ない体にされてしまっている二人にとって、男性を勝ち取ろうという競争意識が目覚めるものね・・・・・。
私が二人を見て思った感想にお姉様が同意する。
「そうじゃぞ。妾は大地に実りを授かる豊穣神。妾の周りにいる生きとし生ける者は産めよ増やせよの影響を受けるのじゃ。あの者たちも口には出さぬが、子種を求めて体がうずきだしておる頃じゃ。」
子種を求めてって・・・・。
「わかっておるはずじゃぞ。明、お前の体の女の部分が男を求めている感覚を。
それがあの二人にも起こっておるのじゃ・・・・。」
そう言ってから、お姉様は自分の発言に疑問を思われたのか「・・・・はて?」と考え込むように言う。
「そういや、おなごの美月はわかるが、男の初(はじめ)がどこの部分でこんなにも子種を求める影響を受けておるのじゃろうかのう?」
・・・いや、そんな、BLで勉強しているじゃないですか。
「いやいや。そういう事じゃなくて。どこで男を受け入れるとかそういう話じゃなくての。
妾が言うておるのは、初は魂の部分で男を受け入れる要素があるかもしれんと言う話じゃ。もしかしたら、本当にあ奴は、魂の入れ違いかもしれんな。」
お姉様は、心配そうにそう言った。