秘密
お兄ちゃんの歌声に合わせて、私の中でお姉様が舞い踊り、その生命の舞は私たちの魂に届き、影響を与える。
初も美月ちゃんも、そして私も・・・。
男の人を体が求めていることを実感することが出来るほど、体の芯が火照っている。
そして、私達は自分の体の変化に戸惑いながら、他の二人がどうなっているのか気になって。見つめあって。・・・・・お互いのその潤む瞳を見て、他の二人もたまらなくなっていることを察しあった。
紅潮した頬は、キャンプファイヤーのせいではないし、潤む瞳も汗ばむ肌も夏の暑さのせいではない。
これがお姉様の言う「体が夜泣きする」という事なのかと、太ももをすり寄せながら私は理解する。
気持ちよりも体が先行している・・・・。それを実感していた。
そして、お姉様の舞は、不思議な事に男性には全く影響を与えていないようで、隆盛などは、キャンプファイアーの火を楽しんでいた。
その内に、誰からともなく私たちは見つめあって、合意するように頷きあうと
「少し疲れたので、先に眠らせてもらってもいいですか・・・?」と、不知火先輩のお父さんに声をかけた。
「ああ。今日は初日だから移動の疲れが出たのかな?」
先輩のお父さんは、気を遣って私と初と美月ちゃんは別荘で寝ていいよと言ってくれた。
先輩のお父さんを含む男子たちは、別荘隣の仮設のログハウスに雑魚寝するように指示する。
「何かあったら親御さんに申し訳ないから・・・・。」
お父さんは冗談めかして言っているけど、目は笑っていなかった。
まぁ、当然だと思うけどね。
別荘には幸いにもシャワー室があって、私達はジャンケンして順番を決めて交代で汗を洗い流そうと決めた。勿論、汗を洗い流すことだけが目的ではない。この火照った体を沈めるために、私達は一人になる必要があったから・・・・。その事を確かめ合う様に、男子禁制の別荘に入った途端に初が尋ねてきた。
「・・・・・凄かったね。明ちゃんのお兄ちゃんの歌声。恥骨がとろけちゃうかと思った・・・・。」
そういって自分の体を抱くようにまさぐる仕草を見せて、初はソファーに腰を掛けた。初が口火を切ってくれたおかげで、私と美月ちゃんも恥じらうことなく、自分の体の火照りを告白することが出来た。
「私も・・・・。男の人にあれだけ興奮していたのは・・・・はじめて。」
そういって、美月ちゃんは顎に手を当てながら、体を震わせてモジモジと体をよじる・・・。
「・・・うん。お兄ちゃんの声は、いつも恥骨に響くけど・・。今日は火照りが治まらないわ・・・。」
私も他の二人だけに言わせるだけでなく、自分の胸を抱き寄せながら正直に告白した。
「はああ~~~っ・・・・。」
と、三人は同時に甘ったるいため息をついた。
それが、お互いの体の変化の確認と告白だった。
お互い、同じ傷を持つ身。なにも恥じらう必要がないので、「交代でシャワー室に入って体を沈めようよ・・・・。」と、取り決めをした。
そして、ジャンケンで美月ちゃん。初、私の順番でシャワーを浴びることになった。ジャンケンで公平に決めた順番だけど、実はこれはお姉様の図り事だった。
ジャンケンが始まる一瞬前にお姉様は私を心象世界に閉じ込めて言った。
「明よ。お前が最後になる様に妾が細工をする。」
そう宣言するお姉様に私は、切ない体をよじらせて「そ、そんなぁ~、私だってもう限界ですぅ~~っ!!」と抗議したけれども、お姉様はそれを許さなかった。
「明よ。お前は妾がシャワー室に入る前にここに引き込んで泣くほど可愛がってやることが出来るが、あの二人は違う。だから、お前は最後でもよいのだ。たとえシャワーの順番が最後であっても一番最初からここで泣き濡れる体を妾が癒してやれるでな。
そして、初は男ゆえに性の仕組みが違う。女子が今の状態であの甘い香りをかげば、治まるどころか、余計に燃え上がってしまう。故に、美月、初の順番にせねばならんのだ。」
お姉様の説明を受けて私は納得する。
ああ。そっかぁ・・。初は女の子みたいだけど、体は男の子だから、出るものが違うものね・・・・。
そう思いついたとき、私の脳裏に男子の頃の自分の姿がよぎって赤面する・・・・。
そして「じゃぁ、仕方ないか。」と、納得してお姉様の図り事に乗っかった。
「最初は、グー!!」
の合図で始まったジャンケンは、お姉様の力で予言通り、美月ちゃんが最初になった。
「いやああ~~~んっ!!」
と、口惜しそうにお尻を振りながら、二番目になった初がたまらない声を上げていた・・・。
「ごめんね・・・私も限界だから‥‥。」
美月ちゃんは恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、着替えと愛用のソープ類を持って、いそいそとシャワー室に消えていった。
その姿を「やあああん・・・・。」と切なそうな鳴き声を上げて、初が見送った。
その気持ちは凄くわかる。だって、私ももう下着を今すぐ脱ぎ去りたいくらいに燃え盛っていたから。それでも、私はいい。だって、この待ち時間の間でも実は現実世界とは違う時間軸の中で、この体の火照りを沈めることが出来るのだから‥‥。
でも、初は男の子だから、多分、男の子が痛いくらいに腫れあがっているに違いなかった・・・・・。私も元男の子だから、今の初の辛さを理解してあげられる。私が初の恋人だったら、その体の火照りを治めてあげたいけど・・・・・それは、お互いにするわけにはいかないのだから、耐えるしかなかった。
そうやって30分近くも時間が経ってから、美月ちゃんが少し気だるい色気を秘めた瞳で「・・・・・ごめ~ん。」と言いながらシャワー室から出てきた。
初は、直ぐに立ち上がってから私の顔を見て「・・・・ごめんね、明ちゃん・・・。」と一言言ってからシャワー室に消えていった・・・・。
美月ちゃんは、初の入っているシャワー室を見つめながら、ぼそっと「男の娘って一人でどうやるんだろうね・・・・?」と、つぶやいた。
な、何ちゅうことを言い出すんだ、この娘は・・・。と、心の中で突っ込みながらもBLで得た知識で初が今、シャワー室で何をしているのかを想像すると興奮する。
あの可愛い顔で。小さな体で。きっと隆盛を思いながら、一人で鳴き声をこらえている初の姿が脳裏をよぎる。それは美月ちゃんも同じのようで、「やだ・・・体洗ったばかりなのに・・・」と、小声でつぶやいてからトイレに消えていった。
下着の替えの数は決まっているんだよ・・・。と、心の中でつぶやく私だったけど、実は私は、既に体の方は落ち着いていた。
だって、私はもう、お姉様に・・・・。
そうやって、また30分もすると腰砕けになった初が「ご、ごめんなさい~~・・・・。」と、か細い声を上げながらシャワー室から出てきた。
「お、遅くなってごめんね。明ちゃんも辛いよね。」と謝る初に私は無言で笑顔を送り、シャワー室に入る。気を遣わせて謝らないといけないのは私の方だった。
シャワー室には美月ちゃんと初の愛用のソープの香りと男性の香りが微かに残っていた・・・。
ああんっ! 初もやっぱり男の子なのね‥‥。
私は、その残り香に身をよじらせながら、床にへばりつくように崩れてしまう。
「ううむ。さっきあれほど可愛がってやったというのに、初の香りでここまで乱れてしまうのか・・・。繁殖期の終わりに焦る体に、この香りは、ちと酷じゃったか・・・。」
お姉様は、私を再び心象世界に引き込み、私の衣服を剝ぎ取りながら「哀れな子じゃ。妾がもう一度可愛がってやろう・・・。」と、私の体に手をかける・・・・。
現実世界とは違う時の流れの中、私は普通の女の子では一生味わうことがないであろう繫殖期の苦痛を癒すために、お姉様の手によって再び快楽の海に沈められていった。
お姉様と二人っきりの世界の中、私のすすり泣くような歓びの歌がかすれるように流れていった。
翌朝、私達がベッドから起き出して、顔を見合わせると、昨日のことを思い出して恥ずかしそうに「えへへ・・・・。」と笑いあって「男子には内緒だからね。」と誓い合った。
私三人は交代で体の火照りを治めたのだけれども、それは一時的な効果に過ぎない。だって、私たち女の子の体には、まだお姉様の生命の舞の呪力が掛かっていたから・・・・・。
2泊3日のこの旅行の二日目は、とても長くなるのではないかと、私達は未だに燻っている体で予感していた。