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お泊りが始まるっ!!

カラオケボックスでの大失態はお姉様のお力添えがあって、私はその後、事なきを得たのですが、その日の私は自分の世界を守り続けてBLのイメージソングばかり歌い続ける美月みづきちゃんが気になって仕方なく、また男子2人も興がそがれたというか、毒気を抜かれたというか、私を口説くためのラヴソングを歌う気が失せてしまって、本当にただのカラオケ大会になってしまった。これが美月ちゃんの狙いだったとするなら、私達は見事、美月ちゃんの術中にはまってしまったことになる。

まぁ、そこは天然で空気が読めない美月ちゃんのこと、そんな気は毛頭なかったんだろうことは想像つくけどね。


カラオケが終わった後、全員がすっかり美月ちゃんのペースに嵌められたことを悟って、敗残兵のように暗い足取りで家路につく。各々の寂しい背中を一体、誰が慰めてくれようか・・・・・。なんて悲しい事を考えながらも一学期の最終日は、つまり夏休みの始まりで。学生にとってはやっぱり、嬉しい日なのです。

「浮かれておってはいかんぞ、あかり。色恋沙汰も大事じゃが、勉強も大事ゆえに気を抜く出ないぞ。折角、成績が上がったのじゃから、落とさぬように毎日しっかり勉強するのじゃぞ?」

と、教育ママのように私に釘をさすお姉様の言葉が痛い。

はい。わかってます。皆にまた迷惑をかけないように勉強します。

そして、家に着くと今度は本当のママから通知表片手に成績を落とさないようにと釘を刺される。

でも、後半の成績がいつになくよかったおかげで、お説教が短かったのが、何よりだった。

カラオケで疲れ切った体に、ママとお姉様のお説教は堪える。

私は自室に戻るとすぐにベッドに突っ伏して、人生とは何かと考える。嘘。これからどうしようかと考える。

これからとは、もちろん、恋愛について。私の繫殖期ラヴシーズンは終わりを迎えようとしていた。そのあとに恋愛に対してそこまで積極的になれない賢者タイムが来て、その状態でも好きになっている相手こそ本物かもしれないとお姉様は言うけれども、私の体は今すぐにでも男の子を受け入れたいと、熱く滾っていて私はスイッチが入りやすい状態だったりする。

私はお兄ちゃんも隆盛りゅうせいも不知火先輩も、3人とも好き。いっそのこと衝動的でもいいから、私を一番最初に好きにさせてくれた人を選んでもいいかもしれないとも思いつつも、同時にやっぱり、刹那的な思いに流されてしまうことに抵抗も覚えていた。この身の本能に任せた肉欲で相手を選びたくない。と私は当初から思っていたのだから・・・・。


そう色々と考えていると、7月はあっという間に過ぎてしまった。

8月1日は、いよいよ旅行当日。私はお兄ちゃんの車に乗って、はじめを迎えに行く。

「今日はよろしくお願いします。」なんてはじめが、らしくもなくお兄ちゃんに丁寧なあいさつをする。お兄ちゃんは、タンクトップにホットパンツ姿のはじめをマジマジと見た後に私に向かって「水着の時も思ったけど、この子は本当に男の子なのか? 何かの呪いでこうなってるんじゃないのか?」と尋ねた。

ああ。私みたいな呪いで性別が変わってしまったんじゃないかと思うほど、はじめが可愛いってことね。大丈夫。この子は生まれた時から男の娘らしいから。全く、何の因果かそこいらの女の子よりも可愛いなんて酷な話よ、本当に。

あかりちゃんもよろしくねっ!?」

はじめは、後部座席の私の隣に乗り込むと、いつも以上に可愛い笑顔で私に挨拶してくれた。

そうして、近くではじめの顔を見たときに今日のはじめがいつもより可愛い理由に気が付く。

「お化粧してるんだ・・・。」

はじめの顔を近くで見て、薄っすら化粧をしているはじめに気が付いた私にはじめは「えへへっ」っと、照れ笑いをしながら、「・・・・・だって、今日から勝負の日だから。」なんて覚悟を決めたように宣言する。

その言葉の重みを知っている私は改めてはじめを真っすぐに見つめる。私とはじめ。真っすぐに見つめあう二人には、これ以上言葉はいらない。視線だけで意思の疎通が取れていたから。

ああ・・・・。そうね。はじめ、アナタも私と同じことを考えていたのね。

私達は、笑顔を交わしながらも静かな闘志を燃やす。

その空気を敏感に感じ取ったお兄ちゃんが冗談交じりに「おいおい。穏便に頼むよ。」と笑いかけた。


明るい話題を振りまきながらも、どこか殺伐とした雰囲気でドライブを終えて、目的地に着いたとき、先に不知火先輩御一行が到着していた。

「やぁ、遠いところをようこそ。」

スラッとした長身のカストロ髭の男性がステキな笑顔で迎えてくれた。

え、ええ~~~~っ!

こ、このダンディな男性が不知火先輩のお父さん?

きっと、私達3人は同時に同じことを思ったはず。細身だけど精悍な顔つきの男性は、中性的な不知火先輩には似ていなかった。

いや、よく見ると、その涼しげな目元とスラッと高い細い鼻筋は、不知火先輩に似てなくもない? いやいや。それは無理がないかな? などと考えていると、その気持ちは相手に伝わってしまうみたいで、先輩のお父さんは苦笑しながら「息子は私の妻に瓜二つなんだよ。驚くほどね。」と言って、スマホを取り出して先輩のお母さんの写真を見せてくれた。そこには、双子かと思うほどそっくりさんの不知火先輩と先輩のお母さんが映っていた。


「はぁ~~~・・・・。」

この世にはこんなそっくりの母子がいるのかと思わず呆気に取られてた私たちの大きなため息に先輩のお父さんは「息子なんだからもうちょっと私に似ていてくれてもいいのにねぇ・・・。」と冗談めかして笑いながら、小学生時分の不知火先輩の写真を見せてくれた。

そこには女装した美少女すぎる不知火先輩が映っていた。

「おかげで妻は、小さい頃、この子を着飾って困ったものだよ・・・・。」

先輩のお父さんは、大げさに顔をしかめながら笑っていた。

「ああっ! お、お父さんっ!! 後輩には見せないでくれよっ!!」

不知火先輩が慌てて、スマホを取り上げて恥ずかしそうに抗議する。

ああ・・・。そうか、不知火先輩の美貌はここからくるのか。

ダンディでイケメンな男性と美女が結婚したら、絶世の美少年が生まれてくるのか・・・。その時、誰もが、不知火先輩の美貌の秘密に納得せざるを得なかった。

後で知った話なんだけど、不知火先輩のお母さんは元アイドルらしい。すぐにお父さんと結婚して引退したから、あまり有名ではなかったのだけれども、アイドルマニアには、歴代アイドルNO.1の呼び名も高い評価が付いていたらしい。不知火先輩の美貌を見ればその評価も納得です。


私達が不知火先輩の家庭事情に夢中だったとき、先に先輩の車で来ていた隆盛が不知火家のランクルの運転席に座って嬉しそうにはしゃいでいた。

「おお~~、かっけ~~~っ!!」

まるで、小さな子供のように車に夢中だった。

その様子を見てはじめが「もうっ!! お姫様たちが到着したってのにっ。男の子だなぁ・・・・。」って、言うから笑っちゃった。

いや、君も男の子でしょ・・・。なんていうのは野暮なんだけど、事情を知らない先輩のお父さんは、「あれ? 女の子の人数が聞いていたより多いんじゃないか?」と言って小首をかしげる。

「おい、忠保ただやす。確か、男子4人。女子2人って言ってなかったっけ?」と問いただす。

そして、はじめが男の子と聞いて、驚きの声を上げる。

「男っ!? これが、男かっ!? どうなってるんだっ!?」と、自分の息子を棚に上げて驚愕する不知火先輩のお父さん。

いやいや。お父さん。貴方の息子さんも相当なものですよ。Tシャツにジーパン姿なのに、セミロングの髪をなびかせた絶世の美少女にしか見えませんよ。

全く、世の中、どうかしてるわよ。



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