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私が魔法の開拓者(パイオニア)~転移して来た異世界を魔法で切り拓く~  作者: 夢乃
第八章 事件続発

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8-5.魔法使いの恋と救援要請

 二人の自衛官を見送った後、マコの前にどこからともなくフミコが現れた。

「マコちゃん、ちょっといい?」

「はい? いいですけど」

 普段と違う目の色のフミコに妖しい雰囲気を感じたものの、マコは頷き、自衛官を一緒に見送ったレイコたちとも離れてフミコと二人になった。


「マコちゃん、今日来てた自衛官の、えっと四季嶋さんの方、好きなの?」

「へ?」

 フミコが何を言っているのかを頭の中で解釈し、一瞬遅れてマコが茹でダコになる。

「あ、やっぱりそうなのね。恋する乙女の瞳だったから」

 フミコはにまにまと笑っている。

「いや、好きって言うか、確かにマモルさんの魔力に触れてると安心するけど、それは好きとは違うような」

 慌てふためくマコ。

「ふうん、下の名前で呼んでいるのね」

「え? あ、それは勢いで、普段はちゃんと名字で呼んでて……」

 わたわたとしながらも、マコはマモルと自分を並べてみる。


 マコは身長一五二センチメートル、体重三八キログラム。小柄で痩せ型だ。体型は悪くないと思うが胸がもう少し欲しい。それでも貧乳と言うほどではない。元々セミロングだった母譲りの艶やかな髪は、今では肩甲骨の下あたりまで伸びている。顔は、ごく普通と自分では思っているが、結構可愛いく整っている。

 対してマモルは、身長一八〇センチメートル以上はありそうだ。マコはいつも見上げている。見た目はかなり細身なものの、自衛官だけあって身体つきはがっしりしており、日々鍛えていることを感じさせる。顔も、二枚目とは言えないがそれなりに整っていて、マコの好みの範囲内だ。


 二人並んでいる姿を想像して、マコはますます赤面してしまう。

「マモ……四季嶋さんとあたしじゃ、全然似合わないですよ。四季嶋さんと並んだらあたし、ちんちくりんだし、えっとそれに、四季嶋さんって多分二十代半ばですよね。あたしよりレイコちゃんの方に年齢近いし……」

「そんなこと関係ないよ。マコちゃんの四季嶋さんを見る目は恋する乙女の視線だったし、四季嶋さんもマコちゃんを見守る目がとっても優しくて、マコちゃんを目の中に入れても痛くないって感じだったわよ」

 フミコに揶揄われて──本人に揶揄っている意図はないかも知れないが──マコは耳まで赤くなった。身体がぽっぽと熱くなってくる。


 でもどうなんだろう。あたしはマモルさんの魔力に惹かれているだけだし、それって恋って言っていいのかな、でもマモルさんにずっと側にいて欲しいのは確かだし、できれば手を繋いで、身体の中まで魔力を満たしていたいし、ずっとくっついていたいし、これが、恋? でもでも、目的はマモルさんじゃなくて彼の魔力だし、そんなんで好きとか言われてもマモルさんも迷惑だろうし、マモルさんもいつも優しいけどあたしが魔法使いだから大切に扱うように命令されているだけかも知れないし、でもあたしのことを少しでもいいと想ってくれていたら嬉しいし……


 マコの頭の中でマモルへの想いが暴走して止まらなくなった。異世界へと旅立ってしまったマコの思考を現世に戻したのもフミコだった。

「マコちゃん、ところでちょっと聞きたいんだけど、『四季嶋さんの魔力に触れていると安心』って、どう言うこと?」

 フミコが聞いたのは、マコの口走った気になる言葉だった。マコを見る目はまだ生温かい。

「え? あ、ええと、マ……四季嶋さんの魔力のことですね。えっとですね、魔力を操作して伸ばして、彼の魔力に触れていると、なんだかとっても落ち着けて、安心して、暖かくて、気持ち良くて、満たされるんです。他の人でそんなことを思ったことはないんですけど。彼だけです。それで、四季嶋さんも、あたしと魔力が触れていると落ち着けるって言ってくれて……」


 自分の言葉で、またマコは夢見心地の世界に入ってしまいそうになる。

「やっぱりそれは、恋だと思うよ。それも両想い。いいなぁ、わたしもそんな王子様に巡り会いたい」

 両手を組んで斜め上を目上げる芝居掛かった仕草で言われて、マコはますます恥ずかしくなる。

「フミコさん、恥ずかしいです。えっと、その、でも、魔力が気持ちいいってだけで、恋してることになるんでしょうか?」

 なんとか話題を逸らそうとマコは言った。逸らせていないが。

「そうねぇ、わたしは魔力についてはマコちゃんよりずっと疎いけれど、例えば、魔力には運命の相手を見つける能力がある、とは考えられないかな」


 フミコの語った内容に、マコはうーんと唸る。

「魔力については判らないことがいっぱいですから、そう言うこともないとは言えないですけど、確認のしようがないですよね……」

「確認できないなら、そう思っておけばいいのよ。はあ、マコちゃんが羨ましいなぁ。それで運命の人を見つけられるなんて。わたしは他の人の魔力を感じられないし」

「えっと、多分ですけど、相性のいい魔力は自分の魔力で触れれば判るんじゃないかと思います。マモル……四季嶋さんも他人の魔力は判らないそうですけど、あたしの魔力が触れると落ち着くって言ってますから」

「そうなのね。それじゃわたしも運命の人を頑張って探してみようかな。それには魔力を遠くまで伸ばせた方が有利よね。毎日の瞑想と練習、頑張らなくちゃ。マコちゃんも四季嶋さんと頑張ってね」

「まだ四季嶋さんが運命の人と決まったわけじゃ……」


 マコは言いかけたが、フミコはさっさと立ち去ってしまった。

(フミコさんも女子高生なんだなあ。いつもはもっと大人しくてお淑やかな感じなのに、色恋沙汰になるとあんなに喰い付いてくるなんて。

 ……でも、どうなんだろう? あたしって、マモルさんのこと、好きなのかな。でも、ずっと一緒にはいたいな。マモルさんの魔力、本当に気持ちいいし。マモルさんも同じように想っていてくれたら嬉しいな)

 普通に考えて、それは恋と呼んで差し障りのない感情なのだが、恋愛経験のないマコには解らなかった。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


 深夜。本条家の扉が激しく叩かれた。何度も、何度も。

「……ううん、何だろう。まだ真夜中なのに……」

 マコはのろのろと身を起こす。隣で眠っていたヨシエも目を擦ったが、マコが「寝てていいよ」と言うと、頭から布団を被った。

 マコは、足元に暗い光を灯し、タマを踏まないようにベッドから下りた。魔力懐炉を使っていても寒いので、魔法で身体を温めつつ、ヨシエやタマの邪魔をしないように暗く灯した光を頼りに歩いて行く。


 部屋の扉を開ける前に、玄関の音は消えていた。レイコが応対に出たのだろう。マコも部屋から出て玄関に向かう。

「……を起こして下さい。交番に助けを呼んで、それから……滞在中の自衛隊にも連絡を。わたしもすぐに会議室に行きます」

 マコが玄関に着いた時には、ちょうど扉が閉まって魔力灯を手にしたレイコが振り返るところだった。

「どうしたの?」

「緊急事態よ。ちょっと出掛けてくるから、マコはまだ寝てなさい」

 レイコの口調に、言葉以上の緊迫感を感じたマコは、考えるより先に口を開いていた。

「あたしも一緒に行く。魔法が役に立つこともあるでしょ」

「それは……いいわ、すぐ支度なさい」

 問答をしている時間も惜しんだのだろう、レイコはマコに頷いた。


 一度部屋に戻ったマコは、手早く支度をする。少し考えてヨシエに心配無用と書き置きを残し、部屋を出た。ほとんど時間をおかずに隣の部屋から出て来たレイコと一緒に家を出る。

「何があったの?」

「隣のコミュニティが無法者に占拠されたらしいの」

「占拠?」

「ええ。昨日の朝、どこからか現れて持っていた銃で住民を脅して、食糧を強奪したり女性に乱暴を働いたりしているらしいわ」

「そんなこと……」

 マコは、何を言っていいのか判らず、それ以上言葉が出なかった。

「詳しいことは下で聞くことになるけれど、おそらく、救援を出すことになるわね」

「……解った」

 それ以上は口を開かず、母娘は急ぎ足で階段を下りた。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


 襲われたコミュニティから逃げて来たと言う住民から可能な限りの情報を聞き取った後、レイコはまだ中学生の彼を休ませた。


 会議室に集ったのは、管理部の一部──今では八棟に跨っているため、全員では多過ぎた──と二人の警官、自衛官六人、それにマコ。レイコは全員を見渡すと、まず、逃げて来た住民から聞いた内容を整理した。


・襲われたのは、マンションの元駐車場から出て一・五キロメートルほどの場所の小規模なコミュニティ。

・襲撃者は十三人。全員が武装している。

・武器は、小銃、ライフル銃、猟銃、拳銃など。

・ほかに刃物も所持している。

・元の公民館に陣取り、住民たちは公民館の周囲五百メートル内の家に集められている。

・食糧や女性の略奪を行なっている。

・抵抗した住民、逃亡した住民のうち、数人が殺傷された。


「十三人で全住民の逃亡を阻止できるとは思えないのですが」

 自衛官の一人が聞いた。

「それですが、逃げ出そうすると、彼らの数人がすぐに駆け付けて銃を使うそうです。どうも彼らの一人が魔法を使えるようです。抵抗した住人の一人は、手から打ち出された炎で火傷を負わされたそうですし」

 場が騒めいた。


 マコも相手の力量を考察する。住民を集めている範囲からして、魔力の展開範囲は半径五百メートル。全方位にそれだけ魔力を張ったままにするなど、マコにもできない。

(でも)

 とマコは考察を進める。球状に広げるとマコは精々百五十メートル。しかし、平面状に広げるならもっと広げられる。

 それに、魔法を使えるのは一人だけらしい。と言うことは他人の魔力感知能力を引き出せないことになり、それは他人に魔力に気付けない可能性がある。

(いやいや、油断は禁物。他人の魔力を感知できるけど、引き出すことができないだけかも)


 火球を使ったと言うことは、身体から離した魔力をエネルギーに変えることは思いついていない可能性が高い。恐怖を植え込むなら、突然全身火達磨にした方が効果は高いだろうから。

(あまり大したことはなさそうだけど、魔力量と気力は問題かも)


「では、本隊に応援を求めましょうか」

 自衛官の一人が言った。

「いえ、それでは時間がかかり過ぎます。朝までに件のコミュニティまで移動、夜明けと同時に制圧します。申し訳ありませんが、自衛官の方々にもご協力いただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

 せっかく滞在している兵力を、レイコは無駄にするつもりはなかった。

「解りました。相手は銃で武装していると言うことですし、ご協力します」

「感謝します。それでは、作戦なのですが」

 レイコはテーブルに地図を広げ、作戦の検討に入った。

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