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私が魔法の開拓者(パイオニア)~転移して来た異世界を魔法で切り拓く~  作者: 夢乃
第七章 インフラ整備とクリスマス

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7-6.魔法教室新体制と新魔法

 今までの魔法教室は、年齢を高校生以下とした上でマコが面接して、体表面魔力が多く、かつ(レイコにも協力して貰い)素直そうな人物を“選定”していたが、体制を変えた後の魔法教室は、最終的にマンションの全住民が魔法を魔法を使えるようにすることを目的にしているため、基本的には希望者の中から無作為に選んでいる。完全な無作為ではなく、小学校高学年・中学生・高校生・大学生以上、のそれぞれが、五人単位で組になるように調整している。一つのクラスの年齢層がばらばらでは教え難いだろうと言うことと、中学生に大学生以上の生徒の教師役は荷が重いだろうと考えたためだ。


 新体制での魔法教室の初日、マコは一号棟の魔法教室で、生徒たちの後ろの方に座って新米教師の授業を見守っていた。このクラスの教師は第一期のミツヨが務めている。

「……つまり、魔法というのは体表面に纏っている、あるいは体内に蓄えられている魔力を意識の力で操作することで、色々なことが出来るようになります。

 もちろん、何でも出来るわけじゃありません。そうですねぇ、身体や道具を使う代わりに魔力を使うだけって感じですね」

 ふむふむと頷きながら、マコは授業を聞く。


(ミツヨちゃん、あたしより先生に向いているんじゃないかな)

 そんなことを考えながら聞いている内に、三十分ほどで魔法の授業の導入部分の説明が終わる。次はマコの出番だ。

「それではこれから、本条先生に自分の魔力を感知する能力を引き出して戴きます。本条先生、お願いします」

 そんな風に紹介されるとは思っていなかったマコは、内心わたわたしつつも表面上は澄まして椅子から立ち上がり、生徒たちの注目を浴びつつ教室の前に歩いて行った。

「ご紹介に預かりました本条です。それでは今から一人ずつ、魔力を感知する力を引き出します。えっと、もしかするとこれでも感知できないことがあるかも知れません。もし出来なかったら別の方法を考えるので、あまり悩まないでください。まぁ、今までこれで感知出来なかった人はいないので、気楽にやりましょう。では、一人ずつ前に出て来てください」


 中学生男子が前に出た。

「はい、じゃ、両手を出して」

 出された手を、マコは握る。

「えっ?」

 思わずといった風に、男の子は手を引っ込めた。

「えっと、その、手を握るんですか?」

「うん、そう。今のところ、それしか方法がなくて」

「そ、そうですか。解りました」

 男子中学生はおずおずとマコの手を取った。

「恥ずかしくても我慢して。あたしも我慢してるんだから」

「は、はい」

 未だに自覚していないものの、マコは可愛い女の子の部類に入る。歳下の男子から見れば、綺麗なお姉さんだ。初心な男子中学生が綺麗なお姉さんに両手を握られたら、頬を赤らめてしまっても仕方がない。


 マコも、相手が男子だとまだ恥ずかしい。しかし、これまでに相手をしてきた二十五人のうち、約半数が男子だったのだ。いつまでも恥じらいを面に出してはいられない。

 握った右手から魔力を注入し、左手で回収する。相手の身体の中に、マコの魔力の潮流が発生する。

「え? 何これ?」

 魔力を感じるようになった時の、いつもの反応。

「今感じているのが魔力ね。正確には、体内を流れているあたしの魔力をあなたの魔力で感じている、と言うこと。その感覚を忘れないように」

 そう言って魔力を回収し、手を離す。


「はい、次の人」

 そうして次々に魔力を感知できるようにしてゆき、全員が魔力を感じられるようにしたところで、バトンをミツヨに返す。

「はい、後はこの魔力の使い方を教えてもらってください。みんな、ちゃんと正しく魔法を使えるようになってね」

「はぁい」

 どことなく気の抜けたような返事なのは、知覚できるようになった魔力に気を取られているからだろう。マコは気にせず、部屋から出た。


 ちょっと時間が掛かってしまった気がするので急いだ方がいいかも知れない。そう思ったマコは部屋から出ると、二号棟の教室の前まで瞬間移動した。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


 魔法教室新体制の初日は、比較的滞りなく進んだ。問題があったのは、五号棟の五人目の生徒を魔力感知させようとした時だ。

「はい、両手を出してください」

 その太った男の手を取った瞬間、マコの身体に悪寒が走った。

(ひゃひぃぃぃ、この人なんで、こんな汗かいてんのぉ?? こんな寒いのにぃぃ)

 その男の手は、ねっとりとする汗でじっとりと濡れていた。

(ふいぃぃぃ、ねとねとして気持ち悪いぃぃぃ、さっさとやっちゃおう)

 マコは魔力を注入してゆく。

 太ってはいるものの、男の顔は割合整っていて、笑顔だけなら爽やか系だ。それで余計に掌の不快感が増している。気持ち悪い男に触れるなら予め心構えができるのだが、体型はともかく、無理すればイケメンと言えなくもない顔立ちなものだから、心構えもなく触ってしまって、そのギャップに怖気が走る。


 顔が良くても損をすることもあるんだなぁ、と失礼なことを思いつつも、マコは男の魔力感知能力を引き出した。

「それじゃ、続けて魔力の使い方を教えて貰ってください。では失礼します」

 マコはそそくさと部屋を後にすると、一番近い五号棟の防災井戸までダッシュした。瞬間移動するための魔力操作を瞬間的に行えないほど、嫌悪感に集中力を乱されていた。

 井戸には、他の井戸と同じように、遊び半分の子供たちがポンプの番をしていた。幸い、誰も水を汲みに来ていない。

「水お願い。手を洗いたいの」

 言ってから、差し出した両手にふと違和感を感じる。いや逆だ。さっきまであった違和感、嫌悪感がなくなっている。

(あれ? なんで? ねとねともない……)

 そう思った瞬間にポンプから水が流れ出し、マコの疑問を押し流してしまった。


「ありがとう。もういいよ」

 手を洗ったマコは礼を言い、井戸を後にした。

(取り敢えず、考えるのは後にしよう。今は次の教室に行かなくちゃ)

 掌の魔力を熱に変えて水滴を蒸発させてから、マコは六号棟の教室前に瞬間移動した。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


(あれは何だったんだろう……)

 八棟九教室を回り終えた後、マコは一号棟へと歩きながら、五号棟での出来事について考えていた。

(ねとねとの汗が掌についたのは確か。その後、ドアを開けた時もねとねとだったのは間違いない。それから……えっと、手を握るのは気持ち悪かったから、掌を開いたまま走って、井戸に着いた時には無くなってた……走ってた時の風で乾いたから?)

 それは違うような気がした。水分はそれで飛んだとしても、分泌物は残ってしまう気がする。

(無意識に温度を上げて蒸発させた……蒸発するのは水だけだよね。なら、他には……)


 うんうんと唸りながらのたのたと歩くマコ。ふと、寒さを感じていないことに気付く。

(無意識に、ほんの少しだけ体表面の魔力を熱に変えてる……無意識のうちに魔法を使っているんだね。と言うことは、無意識のうちに何かやったのは確かだと思うけど……

 ……汗……汗の分泌物……タンパク質なのかな?……違うとしても、何かの分子だよね……ん? 分子? まさかとは思うけど……分子レベルで魔力を運動エネルギーに変えて、異物を弾き飛ばした?)


 それなら、乾くのと違ってねとねと成分を排除できそうだ。しかし、そんなことができるのだろうか?

 マコは立ち止まると、しゃがみ込んで右手を地面についた。手を上げて掌を見ると、当然、沢山の砂の粒子が付いている。

(砂つぶ周りの魔力に意識を集中して……うーん、難しい……小さ過ぎるよ)

 〇・一ミリメートル単位までなら、ほぼ自在に魔力をコントロールできるようになったマコだが、それより細かくなると困難を極めた。それでも、砂の粒子という目標物があるからか、何も無い場所に極小の魔力を集めるよりは、やりやすい。


(これで砂つぶ一個を捉えた。これで力に変えると……)

 粒子が一つ、掌から弾け飛ぶ。

「やったっ。……でもこれ、すっごい大変だよね……。砂つぶ一個弾くのに気力を随分使ったような。魔力はほとんど使ってないけど。これはやってられないなぁ。砂つぶ一個でこれじゃ、分子レベルでできるとも思えないし」

 無意識レベルならできるのかも知れない。

「だけど、何とか意識してできないかな。意識的にやれたら、身体の汚れとか汗とか、一気に飛ばせるんだけど」

 ぶつぶつと呟きながら手を払うと、マコはまた、歩き出した。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「あ、あれ使えないかな」

 夕食後、分子レベルの魔法行使について考えていたマコは、机に向かって異世界ノートを見返している時に声を上げた。

「どうしたんですか?」

 ヨシエが首を傾げる。ベッド脇で眠っているタマはぴくりともしない。

「新しい魔法について考えてて、そのヒントを見つけたの」

「どんなのですか?」

「出来なかったら恥ずかしいから、試してからね。えっと」


 マコは掌を下に向けて右手を机の上に載せると、その手の上に魔力球を作り出した。冷気に変えて空気を冷やす。水滴がマコの手の甲に数滴落ちた。

 これからが本番だと、マコは手の甲、その表面に精神を集中する。身体を覆っている魔力の膜、その一部分を意識し、その外側の魔力をほんのひと皮だけ、力に変換する。手の甲に載っていた水滴がひとしずく弾けた。

「やったっ。できたっ。これならそんなに集中しなくても出来るっ」

「何したんですか?」

 ヨシエがまた首を傾げた。

「えっとね、身体の表面の魔力をほんの少し、薄皮一枚分だけ、力に変えて水滴を弾いたの」

「……それって、何に使うの?」

 水滴を退かすなら、そこに魔力を集めて力に変えればいい。わざわざ『薄皮一枚分』などと考える必要はない。


「これはね、目に見えないくらいに小さい身体の汚れを弾くのに使えるんだよ。今、お風呂も入れなくてタオルで身体を拭くだけでしょ? それだとどうしても汚れが残るじゃない? これできれば、いつでも身体を綺麗に出来るよ」

「……先生っ。やり方教えてっ」

 そこまで喰いつかれるとは思わなかったマコは、ヨシエの剣幕に笑みを零した。

「じゃ、よく聞いてね。えっと……」

 マコは説明を始めた。



マコの使える魔法:

 発火

 発光  ─(派生)→ 多色発光

 発熱

 冷却

 念動力 ┬(派生)→ 物理障壁

     └(派生)→ 身体浄化(new)

 遠視

 瞬間移動

 念話

 発電


マコの発明品(魔道具):

 魔力灯

 魔力懐炉

 魔力電池

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