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私が魔法の開拓者(パイオニア)~転移して来た異世界を魔法で切り拓く~  作者: 夢乃
第三章 コンタクト

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3-6.念話と応用教育

 その日の夕食が済んだ後、マコは自分の部屋から隣室へと魔法を送っていた。細い魔力の糸を伸ばし、隣の部屋で膨らませる。ある程度の大きさになったところで、レイコとキヨミを確認できた。なお、マコの目的は盗視聴ではない。

 キヨミは有り合わせの布で何かを縫っている。大きさから服ではないだろう。レイコは机に向かって何か書いている。今後の生活方針でも考えているのだろう。


 マコはほとんど部屋全体に広げていた魔力をレイコの周り、頭を包むように集中させる。

〈レイコちゃん、聞こえる?〉

 マコは、魔力を通してレイコに呼びかけた。

「えっ、何っ? 今の?」

 レイコがびくっと頭を上げて左右を見回す様子を、マコは魔力越しに捉えた。

「え? キヨミ、今の聞こえなかった?」

 キヨミが何か聞いたようだ。同じ部屋にいる友人が突然挙動不審になったら、疑問に思うのは当然だ。マコはキヨミも見えるように魔力を広げた。

「……にも聞こえなかったよ?」

「そう? 気のせいかしら?」

「レイコ、頑張りすぎなのよ。たまには休まなきゃ」

「そうなんだけど、今が踏ん張りどころだから」


 またそれぞれの行動に移るのを待って、マコはもう一度レイコに話しかけた。

〈驚かないで、レイコちゃん。あたしよ。マコ〉

 またびくっとして、しかし声を出すことはなく、ゆっくりと頭を巡らせるレイコ。

〈聞こえてる? 聞こえたら、頭の中で返事してみて〉

 しばらくして、レイコが何かを頭に思い浮かべた。

〈%ん*う☆ま〆♪の〉

 何を考えているのか読み取れない。ただ、レイコにはマコの声が聞こえているようだ。

〈良く読み取れない。レイコちゃん、ゆっくり、考えてみて〉

 レイコは深呼吸して心を落ち着け、ゆっくりと頭に言葉を浮かべた。

〈この$え、マコ、なのよね? ど#にいるの?〉

 完全ではないが、読み取ることができた。

〈隣のあたしの部屋だよ〉

〈これも魔法?〉

〈うん。初めてだから上手くいくか判らなかったけど、上手くいったみたい〉

 最初はレイコの言葉を読み取りにくかったが、すぐに慣れた。

〈どんどん色々なことが出来るようになるわね〉

〈うん。そろそろネタ切れだけど。レイコちゃん、頭痛くなったりとか、ない?〉

〈え? ええ、別になんともないけれど〉

〈良かった。また後で試させて〉

〈……まあいいわよ。でも、こっちの都合も考えなさい〉

〈はーい〉


 マコは隣の部屋から魔力を引き上げた。

「ふう」

 この程度の魔力放出・回収であれば、最近では疲労を感じることもないのだが、今は少し疲れている。初めての“心話・遠話”という、慣れていない魔力の使い方をしたからかも知れない。

(面倒だから、“念話”でいいか)

 マコは異世界ノートに書き込みを始めた。


[念話]

・魔力で話したい人の頭に覆えば話せる。

・相手の言葉を読み取るには慣れが必要。ラジオのチューニングみたいなもの?

・思考を読んでいるわけではなさそう。相手が言葉を思い浮かべた時に、頭の周りの魔力が振動して、それから言葉を読み取っているみたい。

・それなので、心を読むとか、その手のことは無理。口に出さずに独り言を言っている人がいれば、その言葉は読めるかも。

・こちらの言葉はどういう理屈で相手に伝わるのか判らない。


「あ」

 マコは手を止めた。

(レイコちゃんに聞いとけば良かった。普通に耳で聞くように聞こえるのか、頭の中で聞こえる感じなのか)

 それによっては魔力の使い方が違うと思われた。

 すでに陽も暮れてしまったのでレイコへの確認は明日にしよう、と思いつく理屈を書き留めて、今日は休むことにした。


・こちらの言葉はどういう理屈で相手に伝わるのか判らない。

 ・魔力で鼓膜を振動させている?

 ・魔力で耳元の空気を振動させている?

 ・相手の頭の周りの魔力を振動させている?


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


 翌日の魔法の授業は、魔法の使い方の応用だ。生徒たちの希望した魔法の使い方にも繋がる。量的に少し詰め込みすぎになるかもしれないが、そうしたい理由もあった。


 マコは、いつものように、黒板を使って説明を始めた。

「魔法を上手く使うためには、いくつか越えないといけない壁があります。まず、魔力を手から離したまま維持すること。ずっと維持し続けるのは無理だけど、数秒間は保たせないと、魔法によっては使い物にならないよ」

 黒板に、いつもの掌から魔力球を作った絵を描き、掌と魔力球を繋ぐ魔力の糸を×印で切り離す。

「因みにあたしは、今なら五秒はいけるかな」

 最初は一秒も維持できたかどうか、というところだったので、それに比べれば五秒はかなり長い。


「取り敢えず、みんなやってみて。まずは魔力球を作って、手から切り離すだけ。切り離しても自分の魔力なら判るはずだから、やってみて」

 みんな、テーブルの上に手を出して試している。

「先生、一秒も保たないんですけど」

 ジロウが言った。

「オレも。離したらすぐ消えちゃう」

 ムクオが同意する。女の子たちも同じようだ。

「でもみんな、『消えた』ことは判ったのよね?」

 マコの質問に、みんな頷く。


「それじゃ、次はこんな風にやってみて。切り離す前に、魔力球を固めるイメージを送るの。力に変えるんじゃなくて、中央に集まれ~って命令する感じ」

 黒板の魔力球に、内側へ向かう矢印を書き込む。

「こうすることで、身体から離れた魔力を少しはその場に留めることができます。じゃ、やってみて」

 簡単な説明だけですぐに実習と言うのは、側から見れば手抜きにも見えるが、そもそもマコにも具体的な仕組みが解っていないのだから仕方がない。習うより慣れろ、いや、習えないから慣れろ、である。


 先ほどと同じように、生徒たちがテーブルの上に手を乗せる。

「あ、さっきよりほんの少し、長く残ってる感じ」

「オレも」

 イツミとムクオが実感を声に出す。

「ワタシも、二秒近く保ちました」

 ミツヨも続いて報告する。ジロウとヨシエも先ほどとの違いを実感しているようだ。

「みんなできるようになったかな? 今度から、毎日の練習にこれも追加してね。ただし、お家の手伝いもきちんとやること」

「はい」

「では次に行きます」


 次に、魔力を火へと変換する方法を教える。実のところ、これはマコにも理屈が解っていない。光であれば光エネルギー、物を動かすのなら運動エネルギーへの変換で可能だが、炎自体はエネルギーでない。敢えて言うなら熱エネルギーだが、魔力を熱エネルギーに変えても、そこに燃える物がなければ火は点かない。

 炎への変換の場合、魔力と空気中の酸素が結合しているのではないか、と最近のマコは考えているが、それも確実ではない。火を起こすことはできているので、一先ず考えることは後回しにしている。


 力への変換で中学生組が苦労したことが記憶に新しいマコは、面倒な上にあやふやな理屈は言わずに『光に変えるのと同じように、魔力を火に変える』とだけ生徒たちに伝えた。その結果、五人ともそれほど苦労することなく、炎を生み出すことに成功した。

「でも、滅多なことで火を出しちゃ駄目よ。火傷ならまだいいけど、火事になったら大変だから」

 以前にも似たようなことを言ったが、大切なことなのでマコとしては、今後も折を見て何度も繰り返し伝えるつもりだ。


 さらに、二種類の魔法を同時に使う練習だ。

「こうして、左右の手のそれぞれに魔力球を作って、右手のを光に、左手のを炎に変えるの。やってみて」

 今までに教えたことを両手で行うだけなので、実演以上の説明は省いた。しかし、なかなか上手くいかない。魔力球を二つ作ることにはそれほど苦労をしていないようだが、それぞれ別のものに変えるということが難しいようだ。喩えるなら、右手と左手で○と△を同時に書くようなものだろうか。両手とも同時に光か火のどちらかになったり、右手に光を灯して左手に火を点けると、右手も火に変わってしまったり。


「先生、難しいよう」

 イツミがテーブルに突っ伏した。

「今日一日では無理かもね。毎日、魔力を操作する練習を繰り返していれば、できるようになるよ」

「今までもやってますけど……具体的に効率的な方法とかありませんか?」

 同じように苦労しているミツヨが言った。

「うーん、そうね、みんな、どんな練習をしてるかな」

「手に作った魔力の玉を大きくしたり、できるだけ身体から離したりだけど」

 ムクオが答えた。

「そうか。もっと具体的に言っておけば良かったね。えっと、例えばこんな風にするのよ」

 マコは両手を前に出すと、それぞれの手に魔力球を作った。魔力球を作っただけでは見えないので、表面を光に変えることも忘れない。そして、魔力球の形を様々に変えてゆく。板状にしたり棒状にしたり文字の形にしたり。もちろん、左右で違う形だ。


「こんな感じで、色んな形に操作するの。『操作を練習』って言ったのと最初に光の森っぽいの見せたから、それでみんな解ると思っちゃって。ちゃんと言ってなくてごめんね」

 マコは光を消して謝った。

「いえ、良いですけど、先生はいつもそんな風に練習しているんですか?」

 ミツヨが聞いた。

「あたしのやってるのはもう一段上かな。こんな感じ」

 言うなり、マコの身体から多数の光が伸び、様々な形にうねうねと動く。

「もちろん、練習の時は光らせてないけどね。まずは両手の魔力を別の形にできれば、光と炎を同時に出せるようになるよ」

 そう言ってマコは魔力を引っ込めた。


「解りました。ところで先生」

 ジロウが言った。

「はい、ジロウくん、なあに?」

「えーと、今日の授業、いつもより盛り沢山な気がするんですが、何か理由はあります?」

「あ、気が付いた?」

 マコは苦笑いを浮かべた。

「えーと、昨日に引き続き、明日も課外授業になります。明日は狩猟チームと一緒に、魔法を狩りに使えるかの確認ね」

「やったっ! じゃ、先生、ファイアーボール使うんっ!?」

 ムクオが興奮して叫び声を上げる。

「それは明日行ってみてからね。でも、今日までの授業でやったことをきちんとマスターすれば、火の玉、ファイアーボールもできるよ」

「おっしゃ!」

 ガッツポーズを取るムクオ。

「そのためには、魔力操作をしっかり頑張ってね。これくらいできるようにね」

 マコが両手を出すと、今度は様々な光の花が咲き乱れた。しかも、小さな芽から成長するように。

「それは厳しいなぁ」

「あら? もう根を上げるの?」

 ムクオの言葉にマコは挑発するように言葉を返す。

「そんなことねーって。いつか先生をぶっ飛ばしてやる」

「ぶっ飛ばしちゃ駄目でしょ」

「ってかそれ、何十年かかるの?」

 ムクオの物騒な宣言に、ミツヨとイツミが突っ込みを入れ、室内に笑い声が広がった。



マコの使える魔法:

 発火

 発光

 発熱

 冷却

 念動力

 遠視

 瞬間移動

 念話(new)

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