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私が魔法の開拓者(パイオニア)~転移して来た異世界を魔法で切り拓く~  作者: 夢乃
第三章 コンタクト

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3-3.弟子たちの魔法

 休日を終えて、四回目の魔法の授業。この日もまず、生徒たちの魔力操作の練習成果を見ることから始めた。

「おお、みんなできるようになってるね」

 魔力を感じられるようになって三日目にして、五人全員が操作できるようになっていた。

「少しやってるだけで集中が切れちゃうけど」

 イツミは、掌から五センチメートルほど離したところに作った魔力球を十秒ほど維持するだけで限界のようだ。それでも、二日前には掌の上には盛り上げる程度だったのだから、かなりの上達と言える。


 他の四人も例外なく、魔力球を掌から離して作れるようになっていた。特に、二日前にはできていたヨシエの成長は目覚ましく、三十センチメートル離した空間にソフトボール大の魔力球を作っている。普段の体表面の魔力の厚みは三・三ミリメートルと、五人の中でも中ほどだが、体内の魔力は濃い方だったし、感受性も高い。生徒たちの中では最も魔法との親和性が高いかも知れない。


「先生」

 これなら魔力の変換を教えても大丈夫かな、と今日の授業内容を考えていたマコに、ムクオが手を上げた。

「はい、ムクオくん、なあに?」

「先生はどうやって、オレたちが魔力の玉を作れたって判んの? 見えないし、他の人のは判んないし」

「あれ? でもみんな、魔力を感じられるようになった時、あたしの魔力も感じてなかったっけ?」

 マコは首を傾げた。

「そう言われてみると……でも、ボクも、例えば先生の肌に二センチも魔力があるなんて判りませんけど」

 ジロウがムクオに同意した。

「そうなのか。女の子たちも、そう?」

 質問を投げかけると、残る三人も頷いた。


「うーん、そうなのか。うーん、ちょっとみんな、こっち来て並んで。右手出して」

 五人を並ばせて、扇型に出された五つの右手の上に自分の右手をかざし、魔力で生徒たちの手を覆う。

「どうかな? あたしの魔力、判る?」

 五人はちらりと目を見交わした後、代表してミツヨが口を開いた。

「いいえ、判りません」

 マコはと言えば、五人の魔力に自分の魔力が触れているのを感じている。いや、その下の皮膚にまで自分の魔力が届いているのが判る。先日気付いたことだが、伸ばした魔力の先に魔力を大量に送り込み、大きな魔力球を作れば、魔力の満たす空間にあるものをすべて把握できる。しかし、生徒たちはそれができないらしい。


「うーん、あたしは普通に判るんだけど、どうすればいいんだろう?」

 魔力と手を引っ込めながらマコは言った。

「先生は色々と凄すぎなんだよ~。何もしないで魔力を感じたり、誰かに教えてもらわなくても魔法使えたり。他にそんな人いないもん」

 イツミが言った。確かに今のところ、マコ以外に魔法を使える者は確認されていない。それだけでも、マコが特別だと言えなくはない。けれどマコは首を横に振った。

「でも、それってこのマンションに限った話でしょ? だから、どっかにはあたしより上手く魔法を使える人だっていると思うよ」

「そうかなぁ。世の中が変わって二週間かそこらですよ? それなのにあんなに精密な魔法の使い方をできる人なんて、世界中探しても先生だけだと思いますよ」

 ジロウの言う『使い方』とは、前回の最後に見せた光と炎の小さな森のことだろう。みんなも頷いている。


「まあねえ、あれくらい出来るようになるには魔力操作の練習を重ねないと無理だけど、でも、みんなも練習次第でできるようになるよ。個人差もあるから必ず二週間で、とはいかないかもしれないけどね」

 生徒たちは、そうは思えないけどなぁ、などと言っている。マコは手を軽く叩いた。

「はい、じゃ、あたしが特殊かどうかは置いといて、授業するよ。えっと、そうだなぁ、他の人の魔力を感じられなくても困らないから、それは後回しね。今日は、実際に魔法の使い方を教えるよ」

「はい」

「やっとだね」


 魔法の授業は次の段階に入った。


 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


 マコが最初に教えることにしたのは発光、魔力の光への変換だ。ムクオが「火じゃねーの?」と不平を言ったが、「いきなり火を出したら危ないでしょ。あたしなんて、それで火傷しかけたんだから」というマコの言葉で、それ以上ごねることはなかった。


「まずは、今まで練習したように掌の上に魔力の玉を作ります。もちろん、魔力の糸で繋いだままでね」

 前回のように、黒板に掌の絵を描き、魔力を描く。

「あ、ヨシエちゃん、まだ作らなくていいからね」

 掌を出して魔力球を作り始めていたヨシエを注意するマコ。ヨシエは慌てて手を膝の上に引っ込めた。魔力がふっと消える。

「すぐにやってもらうからちょっと待ってね。えー、それで、この魔力球に意識を集中しつつ、光に変われ~、と強く念じます。そうすると、光が灯ります」

「……それだけですか?」

 マコの雑な説明を聞いて、ミツヨが物足りなそうに聞いた。

「うん、それだけ。強いて言うなら、そうだなぁ、念じるって言うより、魔力を光エネルギーに変換する感じかな。解るかな?」

「うーん、ちょっとイメージが湧かないんですけど……」

 ミツヨはどうも納得いかないようだ。納得できないと言うより、具体的な方法を想像できないのだろう。

「まぁとにかく、やってみよう。頭で考えるよりは実際にやってみた方が解ることもあるからね」

「はい」


 五人はテーブルの上に手を出して集中を始めた。最初に魔力球を作れるようになったヨシエの影響か、マコとは違い、みんな両手を使っている。その上に魔力を伸ばし、見えない玉を作ってゆく。

「あまり大きくしない方がいいよ。光らせた時、眩しいからね」

 マコは魔力を伸ばしていない。それが生徒たちの魔力操作を阻害しては不味いと考えたためだ。みんな眉根に皺を寄せている。上手く光らせられないようだ。

「んー、はっ、駄目、難しい」

 イツミが根を上げた。まだ十秒ほどしか魔力球を維持できないので、その間に光への変換ができなかったのだろう。

「オレも無理」

 続けてムクオも制限時間を迎えてしまった。彼もまだ、それほど長い時間は魔力球を維持できない。他の三人はまだ頑張っている。


「ムクオくんとイツミちゃんは深呼吸して、気持ちを落ち着けて、少し休んで、それからもう一度やってみて。誰だって最初は上手くいかないんだから」

「はい」

 マコが二人に助言した時、眩い光がヨシエの手元で輝いた。

「きゃっ」

 ヨシエが声を上げた。光ったのは一瞬で、すでに消えている。ムクオとイツミも突然の光に驚いてヨシエを見つめ、ミツヨとジロウも魔法の試行を中断している。

「おー、ヨシエちゃん、できたね。みんな拍手」

 マコが率先して手を叩き、それに他の四人も続いた。

「一瞬だったけど、今はそれでいいよ。光らせ続けるのは次の段階だから。ただ、今のはちょっと魔力が多かったかな。もう少し魔力を少なくしてやってみよう。他のみんなもできるから、続けてみて」

「はい」

 ヨシエの初めての魔法の成功に、歳上の生徒四人もモチベーションを上げたようだ。ヨシエも頷いて、魔力量を抑えても使えるようにと、再び両手を揃える。


「あ、先生っ、光った」

 次に成功させたのはジロウだ。それから少ししてミツヨも光を灯すことに成功する。ムクオとイツミは少し時間が掛かったものの、何度か繰り返しているうちに掌の上に光源を作ることができた。しかし、まだ一瞬だけで消えてしまう。それを維持するのは次のステップだ。


「みんな、光を灯すことはできたね。これからは、瞑想と魔力操作の他に、光を灯す練習もしてね。ただし、あまり魔力を込めすぎないように注意。目がちかちかしちゃうからね」

「先生、でもこれじゃ、カメラのフラッシュくらいにしか使えないんですけど」

 ジロウが言った。

「うん、そう。それなので、次に光を維持する方法を教えます」

 みんな、身を乗り出すようにしてマコの言葉を待っている。


 マコはチョークを持って、黒板の絵を使いながら説明した。

「今、みんなが出した光は、魔力が光エネルギーに変わったものです。魔力が光に変わると、掌の上に作った魔力はどうなるか解る? ……はい、イツミちゃん」

 手を上げた生徒の中からイツミを指名する。

「はい。光に変わったんなら、魔力は消えちゃうと思います」

「うん、その通り。こう言うことね」

 黒板に手の絵を描いて、魔力が消えたことを示す。

「じゃ、光をずっと灯したままにするには、どうすればいいかな? ……はい、ミツヨちゃん」

 今度指名したのはミツヨ。

「はい。できるか判らないけど、掌に繋いだ糸状の魔力を通して、魔力を補充する、ですか?」

「良く解ったね。その通りよ。魔力が無くなったなら、追加してあげればいい。つまり、魔力操作で掌から魔力を送り込みながら、球状にした魔力の外側だけを光に変換するの。そうすると、ずっと光ってるよ」


「それ、すっげぇ難しそうなんだけど」

 ムクオが手も上げずに言った。

「あら? 試してみる前から敗北宣言?」

 挑発するようにマコは答える。

「そうじゃねーけど。でもそれって、魔力の玉を作るのと、光らせるのと、一緒にやるってことだろ? オレにできるかなぁ?」

「すぐには無理でも、繰り返し練習すればできるようになるよ。字を書いたり泳いだりするのと一緒。例えばクロールなんて、最初は手と足がばらばらになっちゃって上手く泳げないでしょ? でも、練習の積み重ねで綺麗なフォームで泳げるようになる。魔法も同じよ」

「そう言われると……できるような気がするな……」

「でしょ? みんなも、一回でできないからって凹む必要はないのよ。できるまで何回でも試せばいいんだから。じゃ、また練習。今度は最低でも一秒間、光を灯すこと」

「はい」


 生徒たちはまた、自分の掌とにらめっこを始めた。

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