61.家事と勉強の両立初心者
気が付けば1週間が飛ぶように過ぎていました。
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~~ 妹Side ~~
その日からお兄さんは本当に家事をしなくなりました。
朝起きても朝食は用意されておらず、学校から帰ってきて冷蔵庫を開けてもデザートのプリンも無くて、夕飯も毎日私が買い物に行って料理して洗い物してと全部やってます。
初日なんてご飯を炊くのを忘れていて仕方なくおかずだけで食事を終えました。
また気が付けばクローゼットの中に着れる服が無くなっていて、何でだろうって思ってたら洗濯物が山になっていました。
……これ、今まで全部お兄さんがやっててくれたんですね。
一人暮らしをして初めて親のありがたみが分かる、なんて言いますけど、これは確かにいかに自分がお兄さんに依存していたかがよく分かります。
ただ、そうして私が満足に家事をこなせていない中、お兄さんは怒ることなく私の頭にポンっと手を置いて「頑張れ」って言ってくれるのでめげずにやれてます。
でも明らかに以前より生活レベルが下がってますし、お兄さんも不満に思う事は多々あると思うのですが。
気になって夕飯を焦がしてしまった日に聞いてみました。
「こんなに失敗してるのに、お兄さんは怒らないんですか?」
「えーっと、それはつまり、ちゃぶ台ひっくり返して『こんな飯食えるかー!!』をやってほしいのか?」
「い、いえ、やってほしい訳じゃないですけど」
「そうか。まぁ気にするな。何でもすぐに出来たら出来なかった俺の立つ瀬が無くなる」
お兄さんもはじめの頃は失敗の連続だったみたいです。
むしろ私よりひどくて丸1日まともな食事にありつけなかったこともあったとか。
私の場合、簡単なものなら失敗せずに作れるのでそれほどひもじい想いはせずに済んでます。
ただ。
「うーん。今日の夕飯何にしよう」
私が一人で作れる夕飯のレパートリーって片手で数えれるくらいしかありません。
一昨日は気合を入れて豚の角煮を作ってみたら、見事味が染みてなくてガチガチの肉の塊が出来上がりました。
それでもお兄さんは文句の一つも言わずに食べてくれましたけど。
教室の机で頬杖を突いていたら呆れたようなため息が聞こえてきます。
「うーん、まるでどこぞのお母さんみたいな呟きが聞こえてきたね」
「ほんと余裕そうねぇ」
「まぁ幸せそうだから良いじゃないですか」
顔を上げるとゆっこ達が私の席のところまで来ていました。
どうやらさっきの一言が聞かれてしまったみたいですね。
「ちなみに、万里っちは期末試験は大丈夫なの?」
「……期末試験?」
「ああ、やっぱり」
何の事かと首を傾げていると、ささっとスマホを操作して今月のスケジュールを見せてくれる千歳。
えっと、今日が20日だからクリスマスまであと4日ですね。
来週は試験の返却があってその後は例年よりも短くなった冬休み……ん?
あれ、ちょっと待って。
「……明日から試験?」
「そうだよ。最近忙しそうにしてたから、試験勉強を頑張ってるのかと思ったんだけどね」
「その様子だと全然勉強して無さそうね」
「う、うん」
すっかり忘れてました。
というか、最近は勉強もそれなりにしかやってないから、結構ピンチ?
「大丈夫ですか?一夜漬けでどこまで出来るか分からないですけど、今日くらい勉強に集中させてもらえるように賢護さんにお願いしてみたらどうですか?」
「うん。そう、だね。聞いてみる」
流石に試験勉強しながら家事をやるのは無理ですし、お兄さんだってちゃんと説明すれば代わってくれると思います。
先月まではお兄さんがやってくれてた訳ですしね。
ただ昼休みの間にメールを送っても返事はなし。
お兄さんは普段凄い速度で返信をくれるのですが、今回に限っては返信が送られてきたのは放課後になってからでした。
『了解。ただ今夜は帰りが遅くなるから夕飯は自力で調達してほしい』
飾り気のないシンプルな文面。
というかお仕事中ですから仕方ないですね。
そう言えばお兄さん、先週からちょいちょい帰りが遅くなっている(といっても20時くらいに帰ってくる)ので、もしかしたら以前より忙しいのかもしれません。
食後も作業スペースでお仕事してる姿が見られますし。
ドラマとかでも年末になると『納期が~』とか『締め切りが~』って慌ただしくなりますし、師走っていうくらいですからね。
ま、お兄さんですから忙しいって言っても楽勝でしょう。
それより私の試験勉強の方がピンチです。
今月は家事に時間を割いていたので予習復習もほとんどしてませんでしたし、今夜は徹夜で勉強かな。
なら晩御飯も面倒だから久しぶりにカップ麺でいいですかね。
そうと決まれば帰り道でスーパーに寄ってカップ麺コーナーに向かいました。
「色んな種類があるけどどれが良いかな」
カップ麵大国と呼ばれる程、日本には数多くのカップ麺が存在します。
近所のそれほど大きくないスーパーでも1棚に収まりきらずワゴンの上にも山積みでカップ麵が売られています。
ま、今日は久しぶりですし初心に戻ってミッシンのヌードルカップにしましょう。
私はしょうゆ味を食べるとして、お兄さんは何派でしょう?
分からないのでカレーとシーフードと1つずつ買って行こうかな。
どうせ今日食べなくても保存は効くし。
家に帰って早速お湯を沸かします。
ラップを外して蓋を半分まで開けて熱湯を注いで3分。
3分、長いんですよね。
美味しそうな匂いが立ち込めて来ますし、気が付けば2分ちょっとで蓋を開けてしまう私がいます。
このちょっと硬めがまた良いんですよね。
と悦に入ってる間に無くなってしまいました。
このどことなく物足りない感がにくい絶妙な量なんですよ。
……もうひとついっちゃう?
いやいや、ここは我慢ですね。
お風呂に入って勉強をしましょう。
試験範囲を考えれば完徹しないといけないくらいですから。
そうして勉強を続けて居たらお兄さんが帰って来ました。
一瞬、家事をお願いしたことでなにか言われるかなって思いましたが、ちゃんとご飯を食べたか聞いただけで直ぐに居間に戻って行きました。
時計を確認すればもう21時。
なのでいつもより更に遅い時間です。
このくらいの時間になると、お兄さんも外で夕飯を済ませてきたのかもしれないですね。
差し入れにホットミルクを作ってくれるのも流石です。ありがとうございます。
ふぅ。よし。
引き続き勉強頑張りましょう!
カリカリと明日の科目の英語の勉強を進めているのですが、日本の教科書はどれだけトムが好きなんでしょうね。
そして現実に照らし合わせて考えると、トムは間違いなく変人です。
それとも欧米ではこれが普通なのでしょうか。
気になったのでネットでトムの奇行を調べてみると……やっぱりおかしいみたいです。
更に日本の教科書に載ってる英語と外国人が使っている英語(英会話)には大きな隔たりがあるのだとか。
『私に言わせれば日本人は辞書を覚えるように英語を学んでいる。
それとも日本人は日本語を覚えるのに国語辞典を使っているのか?
だとしたら物凄い努力家だと褒めなければいけないね』
なんて投稿もあるほどです。
文法なんて多少めちゃくちゃでも会話は成立しますからね。
でもそれだと外国の教科書ってどんな内容なんでしょうか。
ちょっと調べてみましょうか。




